« 掃除 <番外編その2> | メイン | イギリス人のホンネ オリンピック編 »
February 23, 2006
通勤電車 化粧事情
毎朝、同じ時間の電車に乗り込むとおなじみの顔の乗客がいる。
学生の通学時間には少し遅いので、乗客はほぼ全員が勤め人風である。女性のうち、そのメイクが気になってしかたがない人たちが数人いる。
全工程パブリック公開型
席に着くとすぐに化粧ポーチの中身を膝の上にしっかりと広げる。メイクの基本はまず乳液から、 (イギリスではあまり化粧水や下地クリームを見かけない。なぜだろう?) というわけで、乳液を顔にのばし、ファンデーション、パウダーと進む。慣れた手つきだ。
が、見ているほうは、電車が揺れるたびに膝の上のコスメが落ちないか、マスカラのブラシを目の中につっこんでしまうのではないかと、いつもハラハラしていてしまう。
「使用前」 に 「使用後」 とか 「ダイエット前」 に 「ダイエット後」 の写真をよく見かけるが、彼女の場合は 「乗車前」 と 「乗車後」 である。 刑事が尾行していても、あれだけ顔が違えば降車駅で見失ってしまうだろう。
舞台化粧型
60歳前後だろうか? 白髪の長い髪をカチューシャでまとめている。通勤電車に乗っているイギリス人には珍しく、ブランド物のバッグを持ち、高価そうだが有閑マダム風ではない、しゃれたデザインの服装をしている。
品の良さそうなおばちゃまで、日本語を話せば (話さないとは思うが) 「あたくしはね・・・」 なんて口調が出そうである。
しかし、ものすごい厚化粧、というか舞台化粧のメイクである。黒々としたアイラインが上下に入り、真っ青なアイシャドー、眉の下のハイライトはなんと、オレンジ色だ。日によっては、ピンク色のときもある。
朝っぱらから、ロイヤル・バレエのプリマドンナを目の前で見ているようで、目がチカチカする。
この大げさなメイクで出勤するとは、いったい何をする人なのか気になっている。
ハリウッド女優型
マレーネ・ディートリッヒという往年のハリウッド女優がいる。たしか北欧出身のクールビューティで、みごとな脚線美と細い弓形の 「おもいっきり不自然な眉」 で有名だ。
この 「ディートリッヒ眉」 をした女性がふたりいる。
よく 「目鼻立ちのはっきりした、外人みたいな顔」 なんて言い方をするが、イギリス人のなかには、白人らしからぬ、平面的でインパクトの薄い顔が存在する。
ひとりはそういった典型的 「洋風 こけし顔」 をしている。もし、この人の髪と瞳が黒ければ、日本のひなびた温泉宿の売店でおせんべいを売っていても、まったく違和感がない雰囲気である。
で、もうひとりはものすごくエラが張った顔で、野球のベース、将棋の駒、アメリカ国防省の建物である 「ペンタゴン」 という名詞が頭に浮かぶ。そのなかにちいさな目、みごとな団子鼻とおちょぼ口がおさまっている。
彼女もよく、電車内でメイクのしあげをしているのだが、その真剣すぎるまなざしに、胸が痛む。
この 「地味顔」 のふたりが何ゆえに、あえて 「ハリウッド女優眉」 を選んだのか???
やはりこれが、 「女のサガ」 というものだろう。もって生まれた目鼻立ちはどうしようもないが、顔の中に何か華やかさをとりいれたい。きっと、そんな思いが、過激な 「ディートリッヒ眉」 に二人を走らせたのだ。
女心に国境はない、と、いたく心を動かされる通勤電車である。
投稿者 lib : February 23, 2006 07:51 AM
コメント
そういえば、以前、眉のかっこいい女優御三家の眉テンプレートが売っているとファッション雑誌に掲載されていましたよ。ヘップバーンとデートリッヒと誰かじゃなかったかな...。きっと彼女らはそれを使ったに違いない。 笑
投稿者 匿名さん : February 24, 2006 08:00 PM