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May 10, 2007
スリ
やられた。
会社の帰りにスーパーに寄り、お金を払おうと思うと財布がない。
ちょっと、待ってー、と青い顔になった。
「お取り置きしますよ、このまま」と親切なレジのおにいさん。
あのね、焦っているのは、ここの支払いができないことじゃないのよ。
ものすごく混んでいた帰りのバスだろうか?
家に帰るとあわててカード会社にキャンセルの電話を入れる。
「最後にカードを見たのは、いつですか?」
ランチタイムのサンドイッチショップだ。その時間と場所を聞かれる。
「最初にカードがなくなったのに気づいたのはいつですか?」
夕方のスーパーマーケットだ。時間を答える。
カードに盗難保険をかけていてよかった。専用電話番号なのですぐにオペレーターにつながって 「グリーンスリーブス」も聞かずにすんだし。
スリに狙われるのは 「いかにもカモになりそうなマヌケ顔の奴」と思っていたのだが、自分が被害に遭ってみると、この持論を撤回しなければならない。
本日をもって宣言するが、スリにやられるのは 「優しそうな顔の人」である。
(どうして気がつかなかったんだろう? 私のバカ、バカ、バカ!)と思ってはいけない。
このように、いけ図々しい自己正当化・・・いや、柔軟性のある考え方を心がけるのは、ストレスの多い外国生活では必要不可欠である。
私はいくらドジを踏んでも、決して自分を責めないことにしている。
さて、 「顔の優しい」私がイギリスでの10数年間で、財布を抜かれたのは2回目だ。最初はビクトリア駅に近いパブでやられた。足元に置いていたので安心していたのだが。
「未遂」は2度ばかり。
一度は地下鉄の中、ふと、気がつくとバッグの口がパックリ。ハッとしたが、財布は無事。
横に立っている若い女の子がなぜか赤い顔をしている。おまけに腕にふわりとスカーフをかけた様子がなんとなく不自然だ。何も盗られなかったし、証拠はないので何も言わなかったが。
2度目の未遂事件もやはりパブだ。ここはロンドンブリッジの近く。
飲み物を注文しようとバーにいると男がハンドバッグに手をかけた (らしい)。このときは一緒にいた友人が気づいて声をかけたので、そいつはゴニョゴニョと言い訳をしながら、どこかに行ってしまった。
現在のところ、すられたのが2回、私が先に気づいたのが1回、友達が止めたのが1回だ。
スリ2、私1、引き分け1 というスコアである。負け越しなのがイヤだけど。
イギリス暮らしが続く限り、このスコアは更新されていくことだろう。
私の 「ものすごく、しっかりした」友達もオックスフォードストリートの店でやられたという。自他とも認めるタフな人間で、私なんか 「東京銘菓 ひよこ」に見えるくらいだが、さすがの彼女もプロのスリにはあっけなくカモられて 「まさか、あの人が?!」とみんなを絶句させたのだった。
武勇伝も聞いた。ある日本人女性がローマに旅行中にジプシーの子供たちに取り囲まれた。
ん? と思うと、ウエストポーチ(日本人ツーリストのお約束)のファースナーが半分開いている。が、ラッキーなことにまだ盗まれていない。
と、頭に来たその人、ジプシーのグループの中の一番年長そうな子供を捕まえると日本語で怒鳴りながら、
――――パッチーンと頬をひっぱたいたそうだ。(危険です。マネをしないようにね)
後ろ暗いところがある子供たちなので、文句を言いながらもさっさと逃げていったという。
先週、メールが回ってきた。
セントラルロンドンのキャッシュマシーンでお金を下ろそうと、暗証番号を打ち込んだ瞬間に、左側から新聞の無料紙が差し出された。右側にも人が立ったのが見えたが、しつこく差し出される新聞を払いのけるのに必死。200ポンドの現金が引き出されたのに気づいたのはふたりがいなくなってからだ。後ろに人が並んでいたのに、新聞の男に気をとられていて、もう一人の女が右からボタン操作をして現金を奪ったのはわからなかったらしい。警察に行くと同じパターンの被害届けがたくさん出ているので、現金の引き出しはなるべく銀行内のATMを利用してくださいと言われたとか。
悪い奴らがいっぱいいる。みなさんも気をつけてね。
投稿者 lib : May 10, 2007 08:28 AM
コメント
洋子さま
こんにちは。
私も14年の在英生活で、1度だけスリに遭いました。(これって、かなり優秀な方?)
友人といっしょに地下鉄に乗っていて、他の友人宅のホームパーティーに行く途中だったのですが、私は大きな花束をかかえていました。 で、なんとその車両で浮浪者風のオジサンがビール片手にタバコを吸い始めたのです。勿論地下鉄内は禁煙。
それから、その隣に座っていた好青年風の若者に、そのオジサンが飲んでいた缶ビールを差し出したのです。おまえも飲むかって。そしたら何と、その若者が「はい、戴きます」ってビールを飲み始めたのですよ。 もう乗客の目は彼らに集中。今思えば、その時にすられたのだと思います。あれは間違いなくグループの犯行でしたね。 でも、どんなに注意していても、アジア人は欧米では否応なしに目立ちますからね。致し方ないとは思いますよ。 チャイナタウンに行くと、妙に落ち着くのはそのせいかも。
投稿者 まっきー : May 10, 2007 09:27 PM
はじめまして、いつも楽しく読ませていただいています。災難でしたね。私も昔パブで足もとの鞄を盗まれて悔しい思いをしました。もっとショックだったのは母が日本からはるばる来てくれた時、ロンドンに到着したその日に、私がついていながら駅のエレベーターで財布をすられたことです。自分を責めずにいられませんでした。
でも逆に幸運な経験もあります。通っていた学校のあるオックスフォードストリートの人混みの中を歩いていて、現金とカード、定期券、学生証の入ったパスケースを落としてしまったことに気づき、学校に駆け込んで銀行に電話したりしながらパニクっていると、拾った人から学校に連絡が・・・自分の不注意で落としたわけですが、親切な人に拾われ、中身全て無事だったというロンドンでは奇跡のような幸運でした。
ともあれ、悪い奴らがいっぱいいることに変わりはありません。「暴漢に襲われて財布を取られたので家に帰るためのお金を貸してほしい」なんていう白々しい詐欺師にも何度か出くわし、自分はそんなに「いかにもカモになりそうなマヌケ顔」なのかなぁと思っていましたが、洋子さんのおっしゃるように「優しそうな顔」なんだと思うことにします・・・
投稿者 ぱぴぃ : May 11, 2007 02:11 PM
ようこさま、
5週間くらい前に、このブログを見つけ過去の分もずっとさかのぼり読みました。もう、爆笑。はまってしまいました。ようこさんのつぼが私のつぼと合うようで。。。
私は9ヶ月まえにここイギリスにきたのですが、まだスリには遭遇してないです。これからも遭遇はしたくないですが。
これからもこのブログを楽しみにしています。
投稿者 shiho : May 13, 2007 01:07 PM
スリの被害に遭ったとみんなにふれ回り、同情を受けてチヤホヤされています。痛い思いをしてリストカットなんかしなくても、周囲の注目を簡単に集めることができます。
おまけに 「かわいそうだから、ランチ奢ってあげる」とか 「高くてもいいよ。好きなワインをお飲み」と経済的効果もありました。
最近では、転んでもタダでは起きない 「わらしべ長者」と呼ばれることもあります。
投稿者 十貴川 洋子 : May 14, 2007 02:11 PM