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July 31, 2007

ロンドンの理容室 (2)

mama.gif

すたすたと店に入っていく息子の後に続いて、床屋さんに足を踏み入れた。
考えてみれば、日本だろうがイギリスだろうが「美容室」でなくて「理容室」に入るのは始めての体験だ。

ヘアドレッサーは二人。(推定アルジェリア人)
先客の仕事中の彼らに、
「予約していないんだけど、この子お願いできますか?」
と聞くと、一人が黙って椅子を指差した。
予約制ではなく、来た順番に椅子に座って待つシステムらしい。

既に待っている客がひとり。
その隣に座り、改めて店内を見回すと、壁のペンキは剥げ落ちてるし、ソファにも穴が開いているし、「場末感」が非常に漂ってくる。
「タオルはちゃんと洗ってあるのだろうか、ハサミを通じてシラミが移ったりはしないだろうか」
とだんだん不安になってくるが、隣に座っている息子は初の床屋体験にやる気満々の様子。
ここは彼の意思を尊重することにする。

彼の順番が来て、椅子に座る。
「どういう風にする?」
とヘアドレッサーA。

そういえば、自分以外の、それも男の子の髪型を注文するなんてこれも初めてだ。
漠然と、短くすっきりしてもらおうと思っていたが、なんと言って良いのか分からず、
「み・・・短くしてもらえる?」
と言ってみた。
(床屋で髪を短くするのは当たり前だと心の中で自分に突っ込みをいれつつ、これ以外の表現が見つからなかった。)
「どの位短く?」と聞き返され、
「う・・・なんて説明したらいいのか分からない」
と答えると、A氏は
「彼くらい?」(同僚のヘアドレッサーBを指差す。彼は殆どスキンヘッドの上に後頭部が禿げ上がっている)
「それとも僕くらい?」(A氏の髪は2,3センチの長さに刈ってある)
「それか彼くらい?」(同僚B氏が切っている、筑紫哲也風の長めのロマンスグレーの客を指差す)

写真などではなく、「生きた人間サンプル」を目の前に提示され、一瞬たじろいだが
どうやらここでは、「長・中・短」の3種類のメニューしかないらしい。
「うーん、じゃああなたくらい」
と無難な「中」を注文。

A氏はうなずくと、おもむろにバリカンを取り上げ、慣れた手つきで息子の襟足から思い切りよく刈って言った。

今まで「ヘアカット」というものは、その人の頭の形や髪質に合わせて切っていくものだと思っていたが、私の常識を覆すようなバリカンさばきだった。
がんがんがんがん、後ろから、横から何のためらい無く刈って行く。
その姿、芝刈りのごとし。
トップは少し長めに残し、ハサミで処理して終了。

近所でよく見かけるフットボールシャツを着ている男の子のヘアスタイル、一丁上がりである。
なんとなくその足で、アーセナルのシャツを購入しに行きたい衝動にかられた。

途中から様子を見に来た夫がB氏のハサミ捌きをじっと見ていたかと思うと
「彼、いい仕事してるな。僕も切ってもらおうかな・・・」
と言い出した。

「そうね、やってもらえば」
と投げやりな気持ちで勧める。

B氏は夫の髪も基本はバリカン、トップはハサミで仕上げていた。
普段は彼も日系の美容室に行っているが、驚いたことに仕上がりは普段と何の変わりもなかった。

料金は2人で15ポンド。驚きの安さである。大人8ポンド、子供7ポンドの内訳だろうか。
夫は普段は35ポンド払っているはずだが、4分の1以下の値段。
日系サロンではハサミを中心に、1時間程かけてカットしてもらっているらしいが、工程がどうあれ仕上がりは同じという結果となった。
頭髪がかなり寂しくなってきている夫、お金や時間をかけても限界があるらしい。
薄々感づいてはいたが今回、それが図らずも証明された形となった。

しかし息子は印象が随分変わってしまった。
「ハンサムね」とか「将来はジャニーズ?」とお世辞でもたまには言ってもらえた彼だが、坊主頭寸前にされ、「フットボールファンのオヤジの息子」というより、「中国の農村地帯の子供」みたいになってしまった。
まあ本人は気にいっていて、ご満悦の様子だが。

今後は息子は引きずってでも、もう少しまともなヘアサロンへ、夫はこのバーバーに送り込み、家計の均衡を保つこととする。
バリカン刈りの父と子、そして金髪まじりの母は家路についたのだった。

投稿者 lib : July 31, 2007 11:31 AM

コメント

ふきだしてしまいました。うちの主人も初めは某日系美容室でチップを入れると40ポンドぐらい払っていたんですけど、今はSOHOにある6ポンドカットみたいなお店で切っていますよ。この間15ポンドで近所の床屋に行ったときに納得がいかなかったようで、また6ポンドカットに戻っちゃいました。アルジェリア(推定)人の床屋さん、上手だったんですね。。。髪で人間、こうもかわるのか?というぐらい印象が違いますよね。ジャニーズから農村地帯の子という変化には、ちょっと動揺しちゃいますね。。。。

投稿者 Hiroe : August 1, 2007 03:59 PM

Hiroeさん
私もこの後、街の床屋さんを注意して見るようになったんですが、確かに6ポンドとか、5ポンドのチェーン店とかありますね。
アルジェリアン(推定)バーバーは実は、床屋業界では割とポッシュな店だったのかも・・・。
息子の髪は少し伸びてきて、「中国の農村地帯の子」から「日本の野球少年」くらいのイメージになりました。

投稿者 子育てママ : August 3, 2007 12:12 AM

こんにちは。
子どもの髪はすぐに伸びますからね、す~ぐ「ジャニーズ」に戻りますよ~!
人相って、髪型で変わりますからね~子どももそうですが、私くらいの年齢では髪をきちんとしてないと非常に貧相になります(キチンとしていても貧相な私ですが)
娘はロンドンを満喫しているようです。
昨日は「アベニューQ」今日はオーランドゥ・ブルームのミュージカルを観に行くとのコト・・・
「楽しい生活」だけならどうってことなくても、具体的に「オーリー♡」となると心中穏やかではなくなりそうです。アハハ

投稿者 べっち : August 4, 2007 07:47 AM

べっちさん
ロンドンでオーランド・ブルームがミュージカルやってるんですか?知らなかった・・・私も見にいこうかな。
住んでいる人間より観光に来る人の方が情報通だったりしますよね。良い情報をありがとうございました。
ところでお嬢さん、美容室には行ったんでしょうか?そちらの方の結果もお知らせくださいね!

投稿者 子育てママ : August 6, 2007 11:33 PM

オーリーのミュージカル、3Fで10ポンドで観たそうです。それでもしっかり顔が見えたそうです。なんと、出待ちをしてオーリーを間近で見たけど、興奮して写真は撮らなかったって・・・なんのためにカメラ持たせたのか・・・(って、違うか)
娘はチャレンジャーではありませんでした、函館で上手なパーマを掛けていきました。
送って来る写真では古着を買っているようです。
格好の良い人が着ると「おっしゃれ~」でも貧相な娘が着ると、ただお金のない人にしか見えないって、若すぎて気がつかぬ、娘が不憫で・・・(爆)
若いって、子どもって、盲目的で昔を思い出させてくれて笑えますね。

投稿者 べっち : August 7, 2007 06:12 AM

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投稿者 ムートンブーツ 通販 : December 3, 2009 01:03 AM

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