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December 07, 2007
カルチャーショック?
月曜日にA-levelの歴史を学んでいる12年生の生徒5人を一般にstudy conferenceと呼ばれるイベントに連れて行きました。
A-levelというのはAdvanced levelの略(正式にはGCE A-level)で、11年生(日本だと高校2年生)がGCSE(General Certificate of Secondary Education)という試験コースを終えた後に進むことのできる二年間のコースです。A-levelのコースを持つ学校を6th Form Collegeと呼びます。私の勤務校の場合はSecondary schoolとSixth formが繋がっています。もちろん、Sixth formの無い学校、Sixth formだけの学校もあるわけです。
このA-levelでは大学で学びたい教科を視野に入れて、ほとんどの生徒が3教科をより専門的に勉強します。大学の予備コースのようなものでしょうか。そして2年間の間に試験を受けて、その結果によって行ける大学が決まるのです(もちろん選抜を厳しくするために面接を課す大学もありますが)。
さて、私が教えているクラスは生徒数が6人。お世辞にもうちのSixth formは人気があると言えず、とくに人文学系の科目は生徒数が少ないのがここ数年の傾向です。現在、私が教えてる単元は「エリザベス朝の政府と政治」というタイトルだけだと「つまらなそう」と言われそうなトピック(笑)。エリザベス1世は一般的にはイギリスでは成功した君主と高く評価され、様々な小説家や映画やドラマ制作者が好んで取り上げる歴史人物です。一般的なそのポジティブなイメージにいかにチャレンジし、エリザベスの君主としての成功を主に政治的な観点から評価していくのがこの単元での一番の目的です。
今回行ったイベントはこのエリザベス朝の政治問題、宗教問題、議会と君主の関係などについて、大学の教授陣が講義を行うというものでした。1月にある試験に向けて生徒にとって良い復習になるかなと思って連れて行ったのです。一つの講義は40分。それが朝と午後に二つずつで計4本。私たちのほかにも会場にはイギリスのいろいろな地域からやってきたA-levelの生徒達が100人以上いました。
こういう時に気付かされるのは、いかに私の学校のある東ロンドンが特殊な地域かということ。私の連れて行った生徒は全員が人種的にはバングラデッシュ系のアジア人。彼女らは生まれも育ちもイギリスで英語もネイティブですが、ほとんどの家庭で両親と話す言語はベンガル語、宗教はイスラムで一人を除いては全員ヒジャブ(頭にかぶる布)を付けていました。普段そういう子供たちと当たり前のように接してる私は地下鉄でも会場に行くまでの道でも何とも思わなかったのですが、会場についてあたりを見回すとほとんどが白人イギリス人の若者たち。ちらほらインド系と見られるアジア人の生徒もいましたが、ヒジャブをかぶっているアジア人女性はうちの生徒だけ。さらに驚いたのは体格の違い。東アジア人である私の背丈はまぁ標準で、自分の生徒と同じくらいの体格ですが、周りの他校の生徒達は頭一個分以上大きい子が大半!特に女子校勤務の私には男子生徒が大きく見えること!!私のほうがきっと子供に思われていたことでしょう。現に他の学校の生徒の隣りで一生懸命内職(いえ、生徒のノートの採点です)してたら、ぎょっとした目で見られました。
私の生徒たちもこれには相当驚いたようです。女子校でずっと学んできた上に、ムスリム女性は家族以外の男性と交流する機会もそんなにありませんから(例外あり)、当たり前といえば当たり前ですね。休み時間に「圧倒されたよ~」とさざめきあってました。そして講義中はいつもより緊張した面持ちでまじめにメモを取る生徒達。自分の学校にいるとあんなに堂々としてるのに外に出るとすごくシャイなのです。これは彼女らに限らず、うちの学校のほかの生徒にも言えることですが。低学年は恐ろしいことに集団化するとどこに行ってもすごいうるさいですけれど。
さて、肝心の講義の感想を聞いたら、全員が口を揃えて「情報は役には立ったけど講義自体はつまらなかった」ですと。理由を聞いたら「だってただ座って聴いてメモ取るだけなんて!もっと講師と生徒の対話があった方が良い!!」と意見が。「大学の大講義って基本はこんなもんだよ」と言うと「えぇぇっ?大学行きたくなくなった、、、」なんて冗談半分本音半分の反応が返ってきました。イギリスの生徒達は授業中に発言の機会がかなり与えられており、普段からディスカッションを通して学んでいくことが多いので、大学スタイルの講義というのは未知の世界だったようです。まぁ、貴重な経験になったと思います。
今回はそういうわけで色々な意味で彼女らにとってはカルチャーショックとなった一日でした。さぁ、一月の試験に向けて私も根気入れて指導にあたらなくては!
投稿者 lib : December 7, 2007 12:20 AM