« ハイメンテナンスな女 | メイン | こうもり親子 »

August 28, 2008

それぞれの結果 其の弐

teacher.gif
先週に引き続き、GCSEの結果について。

私のクラスの他の生徒たちの結果はどうだったのか。

ほぼ予測したとおり、もしくは数人が私の予想を超えて良い結果に終わっていました。大体、私の学校ですとA-Cを取ることが目標なのですが、最後まで授業を受けていた大半がその目標を到達したので嬉しかったです。

でも、途中から諦めてしまってやる気をなくしてしまった生徒、最後の一ヶ月半、引き抜かれた生徒の結果はやはり良いとは言えないものでした。これに関しても予想とそれほど外れたわけではなかったので驚くこともあまり無かったのですが。

それでも心残りなことはありました。なんとかCを取りたいと言っていた生徒の一人がその目標に到達できなかったことです。

その子は読解や暗記など歴史に必要なスキルがなかなか伸びず、試験が不得意で一年目は授業中もあまり積極的ではありませんでした。それが二年目である11年生に入ってからは態度も落ち着き、目覚めたように歴史が好きになり頑張っていました。

明るくて、冗談が好きで、たまに素っ頓狂なことを言ってはクラスを笑わせるH。他の教科でも勉強はそんなに得意ではない彼女は、なんと昨年の夏学期のSchool production(生徒でおこなう舞台)であったミュージカルGreaseでは主役を務めたくらい演劇の才能があるのでした。

彼女は歴史を続けたい、せめてCを取りたいと思う反面、自分の能力に自信が無く、母親に「不得意ならやめて他の科目に集中しろ」といわれて益々落ち込んだり、一時は数学の補修クラスのほうに行ってしまって最後だけ歴史クラスに戻ってきたりと落ち着きませんでした。私は「ここ一年でたくさん成長した。努力は報われるはず。最後まで信じて続けるべき」と言い続けてきましたが、彼女自身、最後まで不安で迷っていたようでした。

教師として冷静に見たとき、確かに彼女は理解力、筆記力などCを取るのは難しいレベルにいました。私はそれでも彼女に歴史の勉強を続けて欲しいと願っていました。「あなたならCは絶対とれる」と確たる根拠も無いのに安易に言うことはできませんから、授業中にとにかく良いところを褒めて、試験問題のアドバイスも丁寧にやるくらいしか出来ませんでしたが。

なんとか復習を頑張って試験を受けた彼女。試験後に会った時に、彼女は思ったよりも出来た感触のあった自分にほっとしたと言っていたのですが。

この国の歴史試験では単純な選択式の問題は1つもありませんから、生徒の理解・読解力、暗記力、説明力、筆記力などの総合的な力が結果としてはっきりでてしまいます。まぐれが通用しないようになっているのです。

そして、いったん結果が出れば他の教科とあわせてAやA*がいくつ取れたかで結局のところ判断されてしまう厳しい現実が待っています。

それじゃあ、成績はなかなか伸びないけれど人一倍歴史が好きで理解しようと頑張る生徒はどうなるのか。もともとの能力はあるのに教科に積極的に取り組まず、努力しない生徒と向き合う授業よりHのような生徒たちがいてくれる授業のほうがどれほどやりがいのあるものか、、、。

でも、これが結局試験というものなのですね。なんというか、私自身、中高時代に歴史は大好きなのに暗記が不得意でテストの成績はいつもいまいちだったこともあり、彼女に自分の昔の姿を少し重ねていたこともあったのかもしれません。

さぁ、様々な生徒と出会い、喜び、葛藤した一年が今年も終わりました。私がもっといい教師、力のある教師であったのなら生徒たちももっと努力して、試験の結果も違っていたのではないか。そう思ってしまいそうな瞬間がありました。これは教師として人間として非常に怖い問いかけです。自分自身の教師としての自信を常に揺るがす可能性のある恐ろしい想像、、、。答えは誰にも分からない、でも完全に打ち消すことは難しい問いであります。

だからこそ、このときたま恐怖とも思える緊張感を頭の片隅に持ちながらこれからも前に進んで努力していかなくてはならないのだと思います。だって、ひとりひとりの可能性を最大限に伸ばす、生徒の興味を惹く力のある授業、やっぱりやりたいですから。そして、最後に満足そうな生徒の笑顔を見たいですから。

長い長い教師の道のり。これからもずっとこれが私の課題です。

投稿者 lib : August 28, 2008 11:53 PM

コメント

ブログを読んでいて、月子先生がすばらしい歴史の先生だって、よおく分かります。文章のはしばし、行間からも分かります。私は(勝手に)カガミにさせてもらっています。そして応援もしています。フレーフレー月子先生!
何よりも描き表わされている生徒への眼差しがその証拠です。

投稿者 dekobokoミチ : August 30, 2008 07:59 PM

力強いコメント有難うございます。とーーーっても嬉しいです。

こうして、私の様子を気にかけてくださる方がいることが大きな力になっています。

正直、怠け心・下向きな心が出てきてしまう時もあるのです。そんな心に活を入れつつこれからも頑張ります。

Dekobokoさんの教師姿もDekobokoさんのブログからたくさん伝わってきます。私もたくさん学ばせて頂いています。

これからも「同志」としてよろしくお願いいたします!!!

投稿者 Decobokoさん : September 5, 2008 11:08 PM

コメントしてください




保存しますか?