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May 26, 2005
お局
もちろんイギリスの職場にも「お局様」は存在する。
古株で独身の社長秘書あたりが多い。オールドミス(死語)とか、この頃のはやり言葉なら負け犬などと陰口を叩かれる。
ベテランと呼ばれずに、お局と呼ばれる条件としては、こんな感じか?
1.長く勤務しているわりに、たいした仕事をしていない。
2.一目置かれているというよりは、敬遠されている。
3.新人に仕事を教えず、文句をつける。
4.どれほど不便でも、自分のやってきた方法、業者を決して変えようとはしない。
5.同僚の女性にかかってきたボーイフレンドの電話に異常につっけんどんに対応する。
6.インターネットやエクセル等、コンピューター関連が苦手。
私が入社したとき、お局様の最初の言葉が、
「コロネーション・ストリート、見てる?」
「え? いいえ」
「これから見るといいわ」
「はあ? はい」
私はほとんどテレビを見ない。しかも、コロネーション・ストリートのようなソープ・オペラは大の苦手である。そのままシカトしたが、どうも「コロネーション・ストリート友の会」があるらしい。
「ジョンの浮気、絶対に許せないわ。奥さんが病気だっていうのに」
などと真剣な顔をして言っているのだが、よく聞いてみるとテレビの話である。おい、自分の知り合いなのか? と突っ込みたくなるほどの力の入れようである。
おしゃべりはいい加減にして仕事しろよ。
私は日本関係の仕事をするために雇われたので、彼女との関わりが少なくて被害は少なかった。しかし、電話の応対をしたり、コピーをとったりするジュニア・セクレタリーはとにかく居つかない。電話の取次ぎひとつでも、気に入らないと皆に聞こえるように大きくため息をつく。機嫌が悪いと一日中ぶつぶつと文句の言い通しで、異様に元気な日は鼻歌を歌う。彼女のその日の気分がどちらに転ぶのかわからず、新人はピリピリとしっぱなしで、疲れてしまうのだ。
急な案件で日本に出張を命じられたときのことだ。お局様から内線電話が入った。
「日本に出張ですって? ねえ、もう少し考えて欲しいわね。来週は秘書の子が一人ホリディで休むじゃないの。人手が足りないときに勝手なことをされると困るわ」と言う。
遊びに行くわけではなく出張である。それに私は電話の取次ぎなどの秘書業務はしていない。それを説明したが、なかなか納得しない。私は電話を切り、その場で彼女のボスである社長の所に直談判に行った。優柔不断なイギリス男の典型で、女同士の問題に関わりたくないのが見え見えだったので、仕方なくお局様に直接かなり強い口調で抗議した。お局様を皆の前で泣かせてから、自席に戻った。
私を怒らせないように、というメッセージはしっかり伝わったらしく、それ以後、お局様は私に対して余計な事は言わなくなった。よくやってくれた、という他の女性たちの賞賛の声も聞いた。日本女性がおとなしいとか従順だのといった偽情報に騙されないようにね。50年前じゃあるまいし。
しかし、と私は不安になった。もしかして、私が新お局などと呼ばれてはいないでしょうね?
May 24, 2005
「英国病院はヴィクトリアン?」 LiBホームページへ
妊娠した事を親しい友人に告げると、「日本で里帰り出産するの?」と聞かれることがあった。
そういえば、かのマドンナは長男ロッコ君の出産のために、「イギリスの病院は設備もヴィクトリアンだから」と言い捨てアメリカに里帰りしたという。マドンナ様に「ヴィクトリアン=時代遅れ」との烙印を押された大英帝国ホスピタル。確かに思い当たる節もあるだけに、ちょっとおっかない気もしたが、私はイギリスで産もう、と自然に決めていた。
出産は病気ではないし、何よりも夫のそばで産むのがスジじゃないか、と思った。一番の関係者である夫の手の届かないところで産むのはなんだか申し訳ないように感じた。
2番目に、良くも悪くも、生まれてくる子供はイギリス社会にどっぷり浸かって育つことになる。どの道これから、イギリスのシステムのお世話になるのなら、誕生時からそのシステムの中で生まれてくるのが、これまたスジのような気がした。
イギリスで産むと決まったら、次はNHS(国立病院)か、プライベート(私立病院)かの選択だ。
イギリスのプライベート医療は、とにかくお高い。産婦人科も例外ではない。ヴィクトリア・ベッカムなど英国セレブ御用達の、某有名プライベート病院で産めば最低で総額8000ポンド(約160万円)はかかると聞いた。正常に自然分娩し、2、3日入院した場合でこの額だ。もし緊急の手術が必要になったり入院日数が長引いた場合は、もちろん支払い額がどんどん膨れ上がる。入院費だけでも最初の一泊が1500ポンド位(約30万円)、その後が一泊500ポンド(約10万円)以上だという。そんな計算をしていると、それだけで難産になりそうだ。まあ、そんな心配しなければならないヤツは来るな、ってことだろう。事実、英国女性の90%以上はNHSで出産しているというし、自分のそれまでの経験でもNHSに特に悪い印象がなかったのでこれも迷わずNHSを選んだ。なんといっても無料だし。
それにしても、病院がいい例だがイギリスは価格設定が極端な国だ。プライベート病院はホテル並みの豪華さだというが、費用が高すぎて一般人にはとても手が出ない。となれば、一切無料のNHSにお世話になるしかない。外国人にもお金がない人にも、無料で医療を提供する制度は素晴らしいとは思うが、医者に会うのが予約制で、専門医にかかるには更に数週間から数ヶ月間も待たなくてはならなかったりする。本当に具合の悪い時には、少しはお金を出してもいいから、専門の医者に、予約なしで駆け込める日本式も選択肢にあればいいのに、と思う。
ともあれ、GPにNHSで産むと申し出ると、家から近い3つの病院から、好きなところを選びなさい、と言われた。好きなところを選べと言われても、口コミ評判も知らないし、どうやって選べばよいのやら。悩んでいると、タイミングよく、“Good Hospital Guide”という小冊子が新聞に折り込まれてきた。全国NHS病院のランキング表だ。イギリス人はランク付けの好きな国民だが、情報の乏しい異国人に、これは有難かった。候補の3つの中から、単純に一番ポイントの高い病院を選んだ。ここはロンドンの中心地にあり、その頃勤めていた会社から通いやすそうでもあった。
かくして、産む病院が決まった。なんだか、出産が急に身近なものになった気がした。
May 19, 2005
日常の危機管理 LiBホームページへ
最近、何人かの仲間と共に、Maida ValeのPaddington Groundで休日にテニスをしています。この季節、広々とした公園の中で体を動かすのは爽快です。夏の間は日の長さを活かして、平日の夜に仕事の終わった後テニスをすることも可能ですが、日本ではまず考えられない生活です。スポーツをして汗を流した後は、パブでのビールが最高です。折角運動したのにビールなど飲んでは意味がないかもしれませんが、これがなければもともとやる気がしません。
先日も、いつものように4人でテニスをし、その後パブに行くことになりました。4人のうち私とYさんが車で来ており、公園内に停めてあったYさんの車にとりあえず皆乗り込みました。少し離れたSt. John's Woodにあるパブに行き、日の当るテラスで白ビールを楽しみます。ここまでは素晴らしい日曜日です。ところがこれから事件が置きました。
Yさんに、自分の車の近くで降ろしてもらい、乗ろうとしたところ、はたと気付きました。ラケットとバッグがYさんの車のトランクの中に入れっぱなしだったのです。ラケットなどどうでもよいのですが、バッグには携帯電話と、さらに重大なことに、自宅の鍵が入っていたのです。私のフラットは、休日はポーターがおらず、このままでは、家に入ることさえできません。Yさんの車はもう走り去ってしまっています。公園の脇で、爽やかな風が吹き陽光が照りつけるのどかな情景と、自分の置かれた危機的な状況とのミスマッチに、妙な違和感を覚えます。携帯があれば、Yさんの車に同乗しているWさんに電話すれば(Yさんの電話番号は知りませんでした)直ちに解決ですが、携帯もバッグと共に去ってしまっています。悪いことに、Wさんの電話番号を記憶していないので、公衆電話からかけることもできません。家にさえ帰れればもちろん、電話番号はすぐに調べられるのですが、鍵と携帯を同時に無くすことがどれほど効果的に行動の自由を奪うかということを痛感しました。
さて、この場で悩んでいても仕方がなく、これからどう行動するかを考えなければなりません。人間、ピンチに陥ったときほど、まずは冷静に頭を働かせることが重要だということは日頃から自分に言い聞かせています。手元には、もちろん車の鍵はあり、また、パブに行くときに身につけていたので財布はあります。したがってとりあえず移動手段と金には困りません。まず考えたのは、車でYさんを追いかけることです。しかし、まだそう遠くに行ってはいないとはいえ、どの道を通っているかもわからないものに追いつくのは至難の技です。こういうとき、やみくもに動くのはよくありません。まずは考えることが大切です。
ここから、心理ゲームが始まります。Yさん達がいつこの事実に気付き、そのときどのように行動するか。より重要なのは、相手が、自分がどのように行動すると予想するかです。ひとつの選択肢は、この場で待つことです。彼等がすぐに気付けば、おそらく引き返してくるでしょうし、その場合、私が合理的な人間であれば、その場を動かずに待っていると、彼等は予想するでしょう。しかし、彼等がそうすぐに気付くとは思えません。彼等が最初に気付く機会はおそらく、途中で同乗しているWさんを降ろすときです。運が悪くそのとき気付かなければ、Yさんが家に帰って初めて気付くということになるでしょう。
とりあえず、まずは自宅へ向かうことにしました。例え家に入れなくても、こういう非常時にはまず本拠地の近くに戻った方が、何かと有利です。また、バッグの中には携帯が入っているので、彼等がそれを見れば、私に電話で連絡を取ることができないことがわかるはずです。その場合、彼等は親切な人達ですし、私の自宅の位置もおよそわかるはずなので、自宅にバッグを届けに来てくれる可能性が高いと思われます。Wさんの家はこの場と自宅の丁度中間にあるので、彼等がWさんを降ろした時にバッグに気付き、そのまま私の自宅に向かったのであれば、彼等のほうが先に到着していることも考えられます。
そして自宅前まで戻りましたが、さすがに彼等が既にそこで待ってくれている、というラッキーな展開にはなりませんでした。さてどうしたものか。家にも入れませんし、誰かに助けを求めようにも、誰の電話番号もわかりません。唯一わかる自分の携帯の番号に、公衆電話から電話してみます。彼等がバッグの中の携帯を見つければ、私がそこに電話をかけることを予測して、着信を待っているかもしれません。しかし、残念ながら通じませんでした。
ではどうするか。歩いて数分の場所に友人のOさんの住むフラットがあり、危機の際にはまず最初に頼るべき所です。フラットのポーターから電話してもらったところ、幸い彼女は部屋におり、さすがに急に押しかけたので驚いていましたが、10分くらいしたら下に降りてきてくれるということでした。彼女はWさんを直接は知らないようですが、何人か人をたどれば、Wさんの電話番号がわかるかもしれません。彼女が降りてくるのを待つ間、頭の中で電話連絡網を組み立てていました。もちろん、その鎖の中の一人でもつかまらなければ、通信は途切れてしまいます。しかし、その時名案に気付きました(もっと早く気付くべきでしたが)。インターネットに接続できれば、自分のメールアカウントにアクセスすることができ、そこにあるWさんからのメールを見れば、彼女の電話番号が一発でわかるはずです。これで解決の糸口が見えて、一気に気が楽になりました。
そして、OさんのPCでインターネットにアクセスさせてもらい、(いまどき)ダイアルアップ接続だったのでページがなかなかうまく表示されずひやりとしましたが、結局首尾よく電話番号を見つけ、Wさんとついに連絡をとることができました。すると予想通り、彼女達はバッグを見つけ、私の自宅へ届けに向かってくれている途中ということでした。
こうしてめでたく、自宅前でYさん、Wさんと感動の再会?を果たし、自宅のすぐ前のパブで祝杯を挙げることとなりました(当然、ここは私のおごりです)。
今回の一件を通じて、危機は身近なところに転がっており、日常的な危機管理が重要であることを改めて実感しました。Yさんの車の中にバッグを忘れたのは全く間抜けでしたが、例え気をつけていても、バッグをひったくられたりすれば、いつでも同じ状況に追い込まれてしまいます。
携帯を失うと、そこに入っている電話番号も一挙に失ってしまい、いかに携帯に依存しているかを痛感する、というのはよく聞く話です。大切な電話番号は、手帳や自宅のPCにも保管しておくというのは定石ですが、今回のような場合、それらにアクセスすることもできません。今回役に立ったように、インターネット系のメールアカウントは、何処からでもアクセスできる情報源として有効で、主要電話番号を書いた自分宛てのメールを送っておくというのは有効な防御手段かもしれません。そうすれば、街中のインターネットカフェからでも調べられるわけです。
鍵についてはより難問です。常時ポーターがいるフラットに住んでいれば、鍵を無くしても家に入れないという心配はありませんが、そうでない場合は、何らかの手段で自宅の外に合鍵を保管しておくことが必要となります。近所の信頼できる友人に託しておくというのは良い方法ですが、常にその友人がつかまるとは限りません。自宅の外で、24時間365日自分が手ぶらでアクセスでき、かつ他人に盗まれる心配のない場所−何か名案はないものでしょうか?(自分についてはとりあえずひとつ思いつきましたが。)公園の木の下に穴を掘って埋めておく、というのも手かもしれませんが・・
また、今回は、危機といっても実際にはそれほど大したことはありませんでしたが、さらに追い込まれた状態—例えば、自宅の鍵と携帯に加えて、車の鍵も財布も無かった場合—にどう行動するか、事前にいろいろとシミュレーションしておくことが、いざというときに冷静に対処するために重要と思われます。
May 17, 2005
イギリス肥満事情 LiBホームページへ
今年も日本の桜を見逃しましたが、イギリスでも桜がみられます。
種類が違うのか、異常な発達を成し遂げたのか、
やたらと花持ちのいい桜です。
すでに2月ごろに咲き始めて、1カ月くらいは余裕で咲いていた。
やはり桜はすぐに散ってしまう儚さがいいのに。
イギリス人は日本人のように機微を理解できない人種のように理解していますが
イギリス育ちの桜もそれを受け継いでいるってところでしょうか。
さて。今日のお題目は「イギリス肥満事情」です。
こちらは、本当にびっくりするほど肥満の方が多く、
私の見る限り、イギリス人の10〜20%は肥満なんじゃないかと思われます。
年齢、性別は問いません。
若い10代の女の子の間でヘソだしルックは定番ですが(例え真冬でも)、
肉がパンツに二重・三重にのっているという光景は普通に見かけることができます。
フラットメイトのフランス人に言わせると、
「体型を全く気にしないファッションセンスに欠けた信じられない」国
イギリスだそうです。
で、イギリス政府も相当憂慮しているようですが、
「肥満税」として脂肪分の高い製品(チーズとか牛乳とかなのか)に
税金を掛けるなんて本気で話し合っているからたまらない。
おいおい、肥満じゃない人からもそんな税金とるのかーーー!こらー!
標準体重をオーバーしている人から直接搾取すればいいじゃないか!
とそのニュースを見るたび怒りを抑えられません。
先月、私の住んでいるフラットにイギリス人の女の子が加わりました。
たぶん20代前半の子ですが、彼女もまた肥満体型。
たまにリビングで映画を見ながら寝そべっている彼女をみると
日本を出国する前に行った多摩動物公園の
「水辺の生き物」のコーナーを思い出してなりません。
ええ。それでも彼女は年頃の女の子。ダイエットだってしているんです。
最近、エアロバイクをご購入。週に3回くらいは騒音をたてています。
冷蔵庫にはお野菜たくさん。なるほど。ベジタリアン生活ですね。
健康にもいいことです。感心。感心。
しかし、よく見てください。
彼女の夕食はサラダと「チップス(フライドポテト)」
そして「ダイエットコーク」。
おまけにチップスの量は膨大・・・。
そして、毎週末パブで相当量のアルコール・・・。
私「い、意味ないのでは・・・?」
彼女「う〜ん、わかってるんだけどね〜(冷凍食品で)簡単だし〜
おいし〜し〜。油で揚げないから大丈夫」
(冷凍食品なので既に揚げてあると思うんですけど。)
結局、本気で痩せる気はないのでしょう。
(だから彼氏もできないんじゃボケ!)
こいつらのために我々までへんな税金取られると思うと
ふと寂寥感に苛まれるのでした。
では、また。
May 12, 2005
職場と公園 LiBホームページへ
私の職場の目の前には公園があります。ご存知の方も多いかとは思いますが、St. James's Parkという公園で、バッキンガム宮殿に面しています。Hyde ParkやRegent's Parkに比べれば小さいですが、個人的には、美しさではロンドン一ではないかと思っています。(かのベストセラー小説「Da Vinci Code」にも登場する由緒ある場所です。)
昼休みなどに散歩すると、実にいろいろな人達に出くわします。場所柄、常に観光客で賑わっていますが、ベンチに座って熱心にタブロイド紙を読んでいる人や、わざわざそのために持ってきたと思われるパンをちぎりながら池の水鳥に放り投げている人もいます。芝生やデッキチェアの上でピクニックしている人達に混じって、スーツ姿のビジネスマンが大木に寄りかかって気持ち良さそうに寝ていたりしますが、仕事は大丈夫なのかと余計なお世話ながら心配してしまいます。
東京の職場は、霞ヶ関という非常に殺伐とした場所でしたが、少々歩いたところに日比谷公園がありました。普段忙しい時には朝から晩まで建物の中にこもりっきりですが、夏など、少し余裕のあるときには昼休みに外に出て(といっても隣のビルに行くぐらいですが)、本当に余裕のあるとき(あまりありませんが)は日比谷公園まで繰り出すのが最高の贅沢でした。公園の噴水の周りでOLなどが座ってお弁当を食べていたりするのを見ると、全く別世界に来たような気持ちがしたものです。
しかしこういっては何ですが、ロンドンの公園はやはり日比谷公園の比ではありません。職場から数十メートルしか離れていないところで、リスやペリカンに出くわすなどという環境は東京には無いでしょう(当たり前ですが)。物価の高さやサービス業の質の低さにいつも文句を言いながらも、イギリス、ロンドンの生活が何となく気に入っている日本人は多いと思いますが、イギリスの定義し難い良さは、こうした公園や、さらにはカントリーサイドに集約されているようにも感じられます。
先日、知る人ぞ知る、St. James's Parkの無料ガイドウォークに参加しました。公園の案内板に小さく掲示されているもので、まさに知る人ぞ知る企画ではないでしょうか。平日のランチタイムですが、どこから湧き出してきたのかというぐらい、意外に大勢の人が集まっています。観光客らしき人はいません(というか、観光客がこんな企画の情報をキャッチして参加するのは不可能でしょう)。スーツを着ているのは私だけでした。多くは、近所の主婦や、年金生活者のご夫妻かと思われます。このウォークはなかなか優れもので、いつも何気なく目にしている木々にまつわる小話や、バッキンガム宮殿の前に聳え立つVictoria Memorialにどういう意味があるかといったことまで教えてくれます。ロンドンに住んでいると、あまりこうしたツアーなどに参加する誘因がありませんが、灯台下暗しというように、結構新たな発見があるものです。近所の別の官庁で働く友人も、最近課の懇親会で、「切り裂きジャック」(Jack the Ripper)のゆかりの場所を回るウォーキングツアーに皆で参加したと言っていました。(懇親会でJack the Ripperというのもどうかと思いますが。)
いずれにせよ、職場の周りにこうした豊かな自然があるというのは、東京ではなかなか得がたい贅沢であると改めて実感します。
May 05, 2005
妊娠生活その1<子育てママ編> LiBホームページへ
「ロンドン生活」がテーマなのに、いきなり香港の話から初めて恐縮だが、私は初めての妊娠を、チャイニーズニューイヤーで湧く、旅先の香港で知った。その前に足を伸ばして行った中国本土では、舗装されていない道路を観光バスで何時間も揺られたり(お尻がぽんぽん跳ねる、トランポリン状態)、ガイドに注意されたにもかかわらず道端で売っていた食べ物を買い食いしてお腹をこわすは、ホテルで何故かお湯が出ず冷水をあびるは等々、散々な思いをした。香港に戻りホテルで妊娠が分った時、知らなかった事とはいえ、妊娠初期の妊婦が避けるべき行動(長時間のフライト、重いスーツケースの持ち運び、無理な日程の旅行、お腹を冷やすetc・・・)を一通りやってしまった・・・・でも何だか大丈夫そうだ。これでもう怖いものは何もない、と妙な自信が胸をよぎったのを覚えている。
ロンドンに戻り、早速GPに行き妊娠したらしい事を告げた。GPでも一応は検査するだろうとは思っていたが、「はいはい、おめでとう」と直ちに私の自己申告を信じてくれた。尿検査も内診もなし。これで正式に妊婦として認定されたらしい。本当にいいのだろうか。自分で言ったこととはいえ、何だか心配になってきた。もし私が、単にボーイフレンドと結婚したいがために妊娠したと言い張っている狂言女だったらどうするのだろう。「あんた、患者が『妊娠しました』と言えばそれが70歳のおばあちゃんだろうがオカマだろうが鵜呑みにするのかいっ?」と突っ込みたくもなったが、まあそんな事をする人もいないのだろう。妊娠初期に飲むといいという葉酸の錠剤と、イギリス版「妊娠のしおり」のような小冊子をもらって、おとなしく帰途についた。
家で早速「妊娠のしおり」をぱらぱらとめくっていると、「避けるべき食べ物」の項ではたと目が止まった。なんと筆頭に上げられているのは、日本の妊婦の定番食品、鉄分豊富なレバーではないか。理由はビタミンAの過剰摂取になるからとのこと。そういえば日本ではお勧めの海藻類も、体を冷やすから食べない方が良いと香港の友人にアドバイスされた。ひじきの煮物、好きなんだけどなあ・・・。どんな食べ物にも一長一短あるのだろうが、国によって、長の部分を重視するか、短の部分を重視するかの違いなのだろう。だとすれば、レバーは嫌いだから英国式に従えば食べなくても済む。ひじきは大好きだから日本式を取り入れることにしよう。うん、なかなか便利だ。
よくよく考えればそんな単純なことではないような気もするが、何はともあれ私の妊婦生活は、こうして順調に?スタートしたのであった。(続く)