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June 30, 2005
妊娠は、おいしい LiBホームページへ
私は出産の数ヶ月前まで会社勤めをしていたのだが、念のため初期は妊娠した事を公にしていなかった。幸いなことに、つわりも一切なかったし、見た目は普段と全然かわらなかっただろう。
いわゆる安定期というのは妊娠16週目くらいからのことを言うらしいが、その頃になっても私のおなかは全然目立たなかった。そうなると、記録に挑戦してみたくなった。いつまで妊娠した事を会社の人に隠していられるか。もしずっとおなかが目立たないままだったら、ある日突然「生まれました~」と言って皆を驚かしたりして。
・・・が、5ヶ月目を過ぎた頃、さすがに少しずつおなかが大きくなってきた。手持ちの服がきつくなってくる。そろそろマタニティウエアを買わないといけないかな、と思い始めた。
マタニティウエアを着てみた。ちょっと妊婦っぽくなったか。しかし周りは特に私の変化に気づく様子もなく、いつも通り黙々と仕事をしている。なんだか言わないのもつらくなってきた。誰かが気づいてくれたらいいのに。いや、もしかすると、皆とっくに気づいているのに知らないふりをしているだけかも?騙されているのは私の方かも、という疑念さえ沸き起こってきた。
そんな被害妄想で頭が一杯になりつつも、おなかは日に日に大きくなってくる。なんだか妊娠した事を誰にも言えないティーンエイジャーのような気持ちになってしまった。で、ばかばかしくなって上司に白状、いや報告した。
びっくりしたのが社内に「いやー、実は僕知ってましたよ」という人がいたことだった。彼は私のプライベートの友達の友達なので噂が入ってきたとの事だった。恐るべき狭きロンドンの日本人社会。彼経由で、「オフレコだけど」と実は社内の半分くらいの人は知っていたらしい。やはり私の妄想は半分当たっていた?
しかし、晴れて「妊婦」とカミングアウトすると、得することも多かった。まず、人々が優しくなった。同じ会社にいても今まであまり言葉を交わした事がなかった人まで体調を気遣ってくれる。
おなかが目立ってきて、一目で妊婦と認識される様になると、地下鉄やバスでは必ず席を譲ってもらえた。意外だったのは、いつも行くスーパーの駐車場の子供連れ専用のスペースにMoms to beも停められることだった。ラッキー!と素直に特権を行使した。
ラッキーと言えば、妊娠中は体調もとても良かった。私の場合、冷え性で肩こりがひどいのだが、妊娠中は体温が上がって血の巡りが良くなるのか、こうした不調が嘘の様に消えた。確かに妊婦はいつも暑がっているイメージがある。これは嬉しい副産物だった。
定期健診も問題なしだった。日本では、太り過ぎないようにとか、塩分の取りすぎに注意だとか妊娠中の食生活をあれこれ指導されるらしいが、そういった事は一切言われなかった。物足りなかったので自分の方から聞いてみると、「野菜やフルーツを沢山とるように」とだけ言われた。妊娠前からすでに臨月のような体型だったり、妊娠してもタバコやドラッグをやめられない人が、ざらにいそうなイギリスでは私みたいな妊婦でも(年齢以外は)優等生なのかもしれない。
ちなみに、定期健診はGPに通った。病院に通うか、GPに通うかは選んだ病院によって違うらしい。私の場合はスキャンと母親学級の他には初診以来、一度も病院で診てもらうことはなかった。そして、結局内診も一度もなかった。
おなかの子供が動き始めると、ああ、人間は誰もみな始めはおなかの中にいたんだなあ、と当たり前のことに驚愕するようになった。街を歩いている、あの人もこの人も、皆はじめはおなかの中に裸で眠っていたのだ。人間は、動物だったのだ。
お友達 LiBホームページへ
ロンドン在住早1年半。十数年ぶりの学生生活も早1年半。
お友達もほどほどにいるのですが、
国籍は日本、韓国、ブラジル、イタリア、ドイツ、チェコなどなど。
イギリス人の友達はほとんどいません。
ごくわずかなイギリス国籍の友人はロンドン郊外に住んでいたりして、
おまけに彼らは日本にいたときからの友人なので
こちらに来てから知り合ったわけではありません。
ここはイギリス。どうしてでしょう。
先日、語学学校の授業のひとコマ。
20にもおよぶ英語の慣用句がずらりとならんだ用紙を
まいてぃーちゃーが楽しそうに生徒に配る。
「はーい。これからこの紙を持って道ばたのイギリス人に
意味を聞いてきなさーい」
もちろん楽しく「はーい、いってきまーす」
なんて気分にはならないわけです。
当日雨。私は午前中のクラスなので朝6時起き。
「手抜きしやがって。ちっ」
おまけに33才の私は
「そんな小学生のようなことができるか。ハゲ」
と心の中でつぶやくのですが、
日本人の性なのでしょう、いやいやながらも
重い足取りで教室をあとにするのでした。
「あのぅ。すみません、ちょっと授業の一環で・・・」
ここでようやく目が覚める。
道ばたにイギリス人がいないのだ。いぎりすじん。
数人に声をかけたもののどいつもこいつもイギリス国籍ではない。
英語は流ちょう話すものの、意地の悪い慣用句なんぞ知らない人がほとんど。
半ば諦め気味に「こいつも違うだろうな」と思いつつ
強面の太ったおじちゃんに接触。
いました。ようやく。正真正銘のイギリス人。
全部教えてくれました。ありがとう。これで教室に戻れるよ。
まあ、半分は間違ったことを教えてくれたのが発覚しましたが
そんなことはどうでもよろしい。
私にイギリス人の友人ができないのは、当然。
だってロンドンにはイギリス人あんまりいないんですもの。
June 28, 2005
オー・ペア LiBホームページへ
オー・ペアというのは、住み込みで家事や子守の手伝いをするためにイギリスにやって来る若い子たちのことである。年齢制限もあり、一種のワーキング・ホリディのようなものだろうか。昔は日本人にもオー・ペア・ビザが出ていたらしいが、今は廃止されているようだ。
1日に5時間程度働き、週休2日。自分の部屋をあてがわれ、食費もホストファミリー持ち。お小遣いとして、週給50−70ポンドが支払われる。仕事の内容は簡単な家事。家の掃除をしたり、ホストファミリーの子供の学校の送り迎えである。
私もずいぶんとお世話になった。
1年間にひとりずつ、7人の女の子が順番に私の家に住んでいた。国籍はクロアチア、チェコ、スロバキア。あのあたりでは大学に進学するのは大変らしく、(政治家や役人にコネがないと入学できないとか言っていた)高校を卒業すると、就職に役立つ英語を身につけるためにイギリスをめざすという。
オー・ペアの紹介業者から写真つき履歴書と手紙が送られてくる。候補者を選ぶと電話でインタビューをして、英語の能力をみる。
あまり英語ができない子では困る。ロンドンの希望者が多いので、私はたくさんの中から選べる立場だった。イギリスでも、ものすごい田舎だと、オー・ペアが行きたがらない。田舎に回されてくるのは、町中のホストファミリーが欲しがらない貧弱な英語力の子らしい。
日本人英語もいろいろと問題があるが、彼女たちの英語も楽しかった。
「私は自転車を運転したい。自転車を買ってください」
Rideではなく、Driveを使うところがシブイ。意味は通じるけど。
「歯を洗います」
Wash(洗う)ではなくて、Brush(磨く)を使いましょう。
「彼女が壊れてしまった。水が流れてくる」
彼女って誰? 誰から水が流れているの? と慌てると、洗濯機を指さしている。たぶん洗濯機は女性名詞なのだろう。
真夜中に国のボーイフレンドから電話がかかってくる。
「ごめんなさい。彼は兵役中で、この時間だと見張りに立っている兵舎の電話から、無料で国際電話がかけられるんです」
兵役?
「空襲があったときは、防空壕の中で家族の安否を心配しました」
空襲? 防空壕? 旧ユーゴスラビアから来た子たちには戦争の経験がある。みんな18歳くらいだったけど。
「英語はまだ苦手ですが、ロシア語ならできます」とスロバキアの子。
そう言われても、私のほうにロシア語の心得がないんですけど。
世界は広い、と思い知らされた。
それぞれのオー・ペアは箸の使い方をパーフェクトに習得し、日本のカレーの大ファンとなって、家族へのみやげにハウスバーモンドカレーの大箱とキティちゃんグッズを持ち帰っていった。
もうオー・ペアは置いていないが、週に2回ほどクリーニング・レディが来て、家の掃除をしてもらっている。それというのも、私は掃除をしようとすると頭痛がしたり、倦怠感が現れるという奇病にとりつかれているのだ。2時間で10ポンド。キッチンからバスルームまでピカピカにしてくれる。
現在のクリーニング・レディはポーランドの女の子とリトアニアのおばちゃん。最近、晴れてヨーロッパ連合の一員となり、ビザなしでイギリスで働けることになったからだ。
June 23, 2005
「風邪をひいたら」<主婦編> LiBホームページへ
何年かぶりに、ひどい風邪をひいてしまった。少し喉が痛い気がして、常備してある日本の某風邪薬を飲んだのだが防ぎきれなかった。高熱を伴い、咳、鼻水、頭痛、関節痛とすべての症状に襲われ、20分毎に体温を測るたびに、熱は高くなり、39.5度になったらどうしよう!?とボーッとしながらも怖くなってしまった。近所のGPには新しい患者は受け入れられません、と拒否されたばかり、でも他のGPに電話をかけて探す気にもなれず、ただ氷の入ったビニール袋を頭にのせ、うつらうつらしていることしか出来ない。
旦那に電話を入れ、帰りに私の病気食の定番、バナナとゼリーを頼む。
熱はどれくらいあるのか、聞かれたので「39℃」と繰り返したが、そこは英国人、「華氏Fahrenheit」で言わないとピンとこないらしく、お互いにまんじりともせず受話器を置いた。
子供の頃、「9度5分の熱」が出たら大ごとだった。まず8度を超えた時点で、すぐに病院に連れて行かれ、喉の奥に変な味の薬を塗られ、時には注射や点滴を打たれたものだ。家では母親がさっとお粥を作ってくれて、あとは汗をかくほどの布団をかけられ、ひたすら眠れと言われたっけ。
パブに寄り道した旦那は、買い物袋をさげて8時頃帰宅した。私の額に手をやると、ようやく事態を理解してくれた。
しかし、寒い!を連発する私が夫に言われたのは、
「冷たい風呂に入れ」。…ふざけているのかと思った。
「私、高熱があるのよ!」。
「だから、水風呂で温度を下げるんだ!」。
とくとくと、イギリス式の風邪の治し方(薄着になり、窓を開けて新鮮な空気を吸う方法、ステーキ(肉類)を食べるなど)を説明されたが理解不可能だった。こちらの風邪薬はフルーツフレーバーの顆粒剤をお湯に溶いて服用したり、子供薬のようで信用したことはなかったが、やはり治し方も違っていたのだ。
結局、日本の薬を飲み続け、母の教えを守り温かくダルマのように過ごすこと2日、熱はさがり人にうつし、風邪は完治した。
June 21, 2005
クロイドンへの道 LIBホームページへ
クロイドン(Croydon)-それは駐在員にとって忌むべき地名です。最近、お洒落な街として急速に発展しているようですが、外国人にとっては、Lunar Houseの殺伐としたイメージしか思い浮かばないでしょう。この地こそは、Home Officeの入国管理局の牙城であり、古より滞在許可を巡る苦労話に事欠きません。英国のダーク・サイドを象徴する場所といってもよいでしょう(ちょっと言い過ぎでしょうか)。
本日の午前中に、ヴィザの延長のためにクロイドンに行ってきました。多くの駐在員は、赴任時に滞在期間を完全にカバーするワーク・パーミットとヴィザを取得し、帰国まで安泰なのでしょうが、私の場合、派遣期間が徐々に延長されたこともあり、ヴィザの関係では分不相応に苦労してきました。
2003年の夏に赴任した際、一年分のヴィザしか持っていなかったため、2004年の夏に一度延長したのですが、丁度その間に制度の抜本的な変更があったことが不運でした。ご存知のように、2003年までは、有効なワーク・パーミットさえあれば、空港の入国審査ですぐにヴィザがもらえました。そのため、もし延長することになっても、どこか旅行にでも行って帰ってきたついでにすればよい、と気軽に考えていたところ、2003年末から空港ではヴィザを発給しないことになり、Home Officeへの申請が必要となってしまったわけです。昨年は、Home Officeの「指示」通り、郵送でヴィザ延長の申請を行ったのですが、これは平均8週間かかるという(そして実際本当に8週間かかりました)とんでもないものでした。その間、パスポートが手元にないので、夏休みのシーズンに丸々2ヶ月も国内に足止めです(そのおかげで、Peak DistrictやYorkshire Daleなど国内の名所を再発見することができましたが)。しかも、その途中、状況が全く分らないので、非常に不安でした。通常は、申請して2週間ぐらいで、費用の支払いの確認がなされ(これ自体に2週間もかかるのが理解できませんが)、とりあえずその通知が来た後、本審査に回される(これに6週間かかるのはもっと理解できない)のですが、私の場合、何か手違いがあり、その最初の通知すら来ませんでした。Royal MailのSpecial Deliveryを使っていたので、これで追跡してみたところ、何と行方が確認できないというのです。このままでは、パスポートが無くなり、しかも不法滞在になってしまうという最悪の状況です。Home Officeにメールを送ったりいろいろして(電話はほぼ絶対につながらない)、ようやくちゃんと審査に回っていたことが確認できました。どうやら、Royal MailがHome Officeに大量の文書を届けて一括してサインをもらっていたので、個別の文書について送達が確認できなかったようです(だったらSpecial Deliveryの意味が全くない!)。
さて、思わず昨年の話が長くなりましたが、今年は去年の経験に鑑みて、クロイドンで即日ヴィザが取れるという「Premium Service」を迷わず利用しました。なお、人の話を聞くと、このプレミアム・サービスに相当するものは以前も存在していたようなのですが、昨年の申請時に参照したHome Officeのホームページのガイダンスには一切そのような記述はなく、郵送による方法しか書いてありませんでした。
このプレミアム・サービス、500ポンドもするので確かに「プレミアム」です(本来はこのぐらいやって当然のところを「プレミアム・サービス」と呼ぶのは若干おこがましいようにも思いますが・・・)。もっとも、ヴィザの費用が急に値上がりした背景には、政府全体で財政的な締付けが厳しくなったこともあり、英国財務省に勤務する私としては若干責任の一端?も感じます。
いざクロイドンに行ってみると、案外手続は簡単で、職員の対応も悪くなく、また待合室などはそれなりに印象を良くするよう配慮しているようにも思われました(行列待ち用の吹きさらしのスペースは相変わらずですが)。もちろん、ワーク・パーミットのある私は恵まれている方で、例えば学生ヴィザなどの場合はもっと苦労されているのかもしれませんが。
英国の入国管理は厳しいという印象がありますが、実際には、最近のアメリカほどではないかもしれませんし、あるいは日本の方がもっと厳しいのかもしれません(我々は日本人であるため実感しませんが)。いずれにせよ英国は、黙っていても世界中から人が集まってくることが最大の強みであり、人の流入がなくなれば英国の繁栄も終わることは、政府も(おそらく)認識しているだろうと思われます。
ただ、うっとうしいのは旅行して帰ってくるたびに空港で質問されることです。シェンゲン協定に加盟している大陸ヨーロッパの国々の間では入国管理は全くありませんが、英国では、何十回入国しても必ずチェックされます。別に大した質問ではないのですが、何となくこれが待っていると思うと、旅行帰りの飛行機の中で心置きなく酔っ払えないような気がしてしまいます。ただ最近は、以前に比べて、入国審査で意地悪な係官の割合が減り、フレンドリーな人が多くなったように思うのですが、いかがでしょうか? スタンステッドなどではたまに面白い人に出くわします。以前ケンブリッジの留学中に、スタンステッド空港で、自分が所属するカレッジの名前を聞かれた後、「オリバー・クロムウェルの首はどこに埋められているか?」という質問をされたことがありました。私が、「わからない」と答えると、彼は、「その通り。その本当の位置は誰にもわからないのだ。」と言って通してくれました。これまで会った中で最も奇特な係官です。(注:私が所属していたSidney Sussex Collegeには、チャペルの床の下にクロムウェルの首が埋められているという言い伝えがある。)
こういう入国審査をも楽しむ域にまで達すれば(そんな日はいつまでたっても来ないような気がしますが)、真のイギリス通といえるのかもしれません。
June 15, 2005
いざ!NHS LiBホームページへ
出産予定の病院からレターが届いた。初診とスキャンのために来院するように、とある。
今までにも友達の赤ちゃんのスキャン写真を何度か見たことがある。妊娠12週目位でも、頭や胴体や背骨が写っていて、きちんと人間の形をしているのに驚愕した覚えがあるが、いよいよ来たぞっという感じだ。弾む気持ちでレターを読んでいくと、そこには
「スキャンの1時間前には2パイントの液体を飲み膀胱を満タンにし、スキャンが終わるまで、膀胱は空にしないでください。」
と書いてあった。2パイント飲んでトイレに行くな、って、それって拷問じゃ・・・。
言われるがままに、当日たぷたぷのお腹をかかえスキャン室を訪れた。待合室で、他の人も同じように大量の水を飲んで来たのだろうか、と見渡すと、皆、余裕で雑誌など読んでいる。
ぐるりと一周して隣に目をやると、なんと座っていたのはロンドン市長のケン・リビングストンだった。妊娠した彼女の付き添いで来たらしい。きちんと膝をあわせ、ぴんと背筋をのばし、無言で膝の上の本に視線を落としている。本に熱中していたのか、周りに気づかれたくなかったのかは分からないが、名前を呼ばれるまで一度も顔を上げなかった。その姿は緊張している優等生の小学生の様で、なんだかとても微笑ましかった。(翌日のケン・リビングストンの彼女妊娠のニュースを、イブニングスタンダードに漏らしたのは私です、て、うそです)
他人のおめでたに和みながらも粗相もせず無事スキャンを終え、同じビルの地階の産婦人科検診に移動する。尿を採取し(こんな事もあろうかと、スキャンの後にトイレに駆け込みたい気持ちをぐっとおさえたもんね。)助産婦に見せると、限りなく透明に近いそれを見て、開口一番
「あなた、水を大量に飲んだの!?」
と叫ばれた。だって、それ、あなた達が・・・・・・。
こんな不条理にも気をとりなおして、問診に答える。家族の病歴や、生活習慣について聞かれるのは日本と同じだろう。
「タバコは吸う?」
「吸いません」
「アルコールは?」
「はあ・・・ちょっとだけ。」
助産婦の瞳の奥がきらりと光る。
「ちょっとだけって、どれくらい?」
「えっとお・・・。たまにビール半パイント位・・・・」
「・・・・・」
次の瞬間、診察室中に響き渡る大爆笑。隣にいた研修中の学生まで笑っている。
「あなたね、それ、飲むって言わないわよ。ソーシャライズね、ソーシャライズ!」
ソーシャライズっていうんですか・・・。「お付き合い程度」ってところかな。確かに、ここは水2パイントどころか、ビール5パイント位平気でいけるツワモノがごろごろしてるイギリスだった、私が馬鹿でした、はい。
次は血液検査。HIV検査や、胎児のダウン症の可能性を調べる検査も一緒に出来るとのことで、これらは自分の希望次第。どうしたいか、ひとつひとつ聞かれた。せっかくなので、全部調べてもらうことにした。
この血液検査をはじめ、イギリスでの妊娠から出産は、「あなた次第」と言われる場面が多かった。日本で出産したことがないので比較はできないが、少なくとも病気の時は、お医者さん主導型で患者の希望を聞かれることがあまりなかったような気がする。やはり、こちらの方がインフォームド・コンセントが普及しているということか。いいことなのだと思うが、患者であるこちら側に決定権を持たされるということは責任も感じる。「どうする?」と聞かれた時にすぐに答えられるように、ある程度の事前勉強も必要だな、と実感した。
ちなみに無料が前提のNHSも、スキャン写真の持ち帰りは有料だった。たしか2ポンド位だったか。モニターで見るのは医療行為だが、記念写真?はオプショナルサービス、または嗜好品といったところなのか。ちょっと笑えた。
技師の人が「今、指をくわえていい場面だわ・・あ、撮り損ねた、もう一度」などと言いながら、プリクラのノリで何度も撮りなおしてくれた。お陰さまでいいショット?が撮れました。
June 14, 2005
パーソナル・トレーナーの巻 LiBホームページへ
スポーツジムで「夏までにお腹をへこますシェイプアップ」セミナー(無料)に参加した。
7時過ぎのスタートまでに少し時間あったので、つい友達を誘ってパブに行ってしまい、遅刻した上にほろ酔い加減という状態で見学した。
翌日、ジムから電話が入る。
「きのうのセミナーはどうでした? 興味はありますか? もっと詳しく説明しましょうか?」
実を言うと酔っていて、内容をほとんど覚えていない。で、話を聞いてみることにした。
これは特別プログラムで、パーソナル・トレーナーによる個人指導だという。
パーソナル・トレーナーといえば、マドンナやJ−LOなどセレブが雇っているアレか? これで私もセレブの仲間入り、と思ったわけではないが、ちょっと興味がある。
で、ハウマッチ?
一時間40ポンド、最低5セッションでセレブのようにへこんだお腹はあなたのもの、ということだ。ふーん、全部で200ポンドか。これが高いか安いかは結果が出るかどうかによる。私はがんばりに欠ける人間だが、セコイので「高い金を払ったからには元をとらなければ」的な考えはよく効く。試してみることにした。
エクササイズは確かに効いた。衆人環視の中、へそ下までトレーニングパンツをおろしてお腹をむき出しにし、姿勢を正す長い棒を背中に押し当てられ、筋肉の動きを見るために腰にひもを巻かれるというマゾなトレーニングだったが、さすがに高い金を取るだけのことはあった(と信じたい)。
笑ったのはダイエットの方だ。
「完璧に同じものである必要はありません」という事だったが、2週間の短期集中メニュー(家庭調理用)がすごかった。
月曜日
朝食 いわしかサバをグリルしたもの。グレープフルーツサラダ。
昼食 「天然物の」鮭の蒸し焼き。グリーンサラダ。
夕食 ハリバット(タラの一種)のステーキ。温野菜。
普通の家庭です。シーフードレストランじゃないんです、うちは。
水曜日
昼食 バッファローか鹿肉のステーキ。蒸し野菜。
困ったな。近所で売ってるかしらん?
「バッファローか鹿肉のステーキをお願い」などと肉屋に頼んで、
「今日はいいのが入ってますよ。腰肉あたりをお切りしましょうか?」と言ってくれるだろうか? 無理な気がする。
June 07, 2005
スポーツジム 入門の巻 LiBホームページへ
大柄なイギリス人に囲まれて暮らしていると、自分が痩せていて、ほっそりと華奢な体型をしているような気になる。しかし、これは「環境のいたずらによる大いなる勘違い」というものだ。
その証拠に日本に帰国すると、
「どうしたの? そんなに太っちゃって!」と友人や家族から正直なコメントを聞くはめになる。
洋服を試着しようと、つい、いつもの習慣でSサイズの服を手に取ろうものなら、店員がダッシュしてくる。
「お客様はその・・・(しばし沈黙)・・・グラマーでいらっしゃるので、こちらの方がよろしいかと思います」
そう言って、Lサイズの服を手渡される。無理に着て縫い目がほつれたらどうするつもり? ということか。ごめん、私が悪かった。
というわけで、会社の近くのスポーツジムに通うことにした。
キャンペーン中につき入会金は無料(年中キャンペーンをしている気がするが)で月の会費は55ポンド。一年間はキャンセルできない。
目的は健康管理とシェイプアップだが、まったく下心がなかったとは言わない。
厚い胸板と二の腕がきっちり筋肉で盛り上がり、イギリス女の憧れのシックスパックと呼ばれる引き締まった腹筋をした男が、
「やあ、君も毎日ワークアウトをがんばっているね。もしよければ帰りにクィックドリンクでも?」
なんて白い歯を見せて微笑みかけてくるかもしれない。
ただし、男があんまり健康フリークで、
「いい店があるんだ。筋肉増強剤入りのプロティン・ドリンクがうまくてね。サラダはオーガニック野菜とフリーレンジの卵しか使ってないから安心だよ」
とか誘われたら、どうやって断ろう。
「それよりも、キリッと冷えたビールとカルビにビビンバのおいしいコリアン・レストランなんてどう?」などと答えると二度と口をきいてもらえないかもしれない。
しかし、そんな心配は杞憂に終わった。
私が通うのはランチタイムだ。ランニング、バイク、ウエイト・リフティング等のマシーンに自分のキーを差し込む。強度や時間が個人別に組まれたプログラムがコンピューター管理されている。それに従ってのエクソサイズが約20分。前後のストレッチ体操が15分で、軽くシャワーを浴びると、近くでサンドイッチかサラダを買って会社に戻り、ランチを済ませなければならない。これを1時間で消化しようとすれば、ナンパをしかけている暇はないのだ。
これがローカルのスポーツジムなら、もう少しゆったりとした時間が過ごせるのだろうが、ここはビジネス街のシティ。よく言えば目的意識が高い、悪く言うと気持ちに余裕がないジムかもしれない。
おかげで私も余計なことに気を散らされずに、健康保持にまい進できるということだ。
でも何故か、少しだけ悲しい。