Kalamari Greek Taverna（カラマリ　グリーク　タベルナ）

新鮮で質のいい材料、ハーブとスパイスの上品な香り、高純度のオリーブオイル、そして素材の持ち味を生かしたシンプルな調理法、これがギリシャ料理の美味しさの秘密。それを味わいたくてチズウィックにある「Kalamari Greek Taverna」を訪れた。
エ！タベルナ「Taverna」？日本人が聞いたら、冗談で一瞬箸を止めて指をくわえ、ジッと料理を見つめてしまうかも・・・？でもこれは「居酒屋」の意味。社交的なギリシャ人のように、深夜までにぎやかにお酒や食事を楽しむ場所だ。数人で料理をシェアーして、豪快に食べるのが似合う。丁度お腹がすいていた私達には絶好の場所たった。どんな料理があるのか楽しみだな・・・。

テーブルに着くとすぐに、オリーブ、野菜そしてピメントウ（アマトウガラシ）のピクルスの盛り合わせがピタと一緒に用意された。これだけ揃えば迷わずタラモサラタ（Tamarasalata ￡4.00タラの卵で作ったディップ）が欲しい。早速注文。クリーミーな舌触りとほのかなレモンの香りが食欲をそそる。もう一つのスターター、焼きハロウミチーズ（Halloumi Cheese￡3.00）も焼き蒲ぼこのようで香ばしく、百年以上の歴史をもつというギリシャ北部産のザンタリ（Tsantali　￡8.50 Carafe入り）ワインとの相性が実にいい。何だか本当に居酒屋にでもいる気分になって来た。どうしよう！普段はあまりお酒を飲まないというのに、この進み具合。でも、美味しいんだから仕方ない。

メインに注文したムサカ(Moussaka ￡9.25)とクレフティコ(Kleftiko ￡10.50)の匂いに誘われて、やっとワイングラスから私の手が離れた。次の関心はムサカへ。ラム挽肉とスライスされたナスを重ねた上にベシャメルクリーム(Bechamel Cream)を乗せてオーブンで焼いたもの。誰もがなじみのある味だと思うが、日本料理でもナスと挽肉の組み合わせはとてもいい。それに加えてまろやかなクリーム。肉の旨味とオリーブオイルがナスに染み込み、三つの味をそれぞれが引き立て合っている。それを癖のないクリームが包み込むから一層優しい味だ。余分な味付けをしていないから、素材が持つ自然な風味が生かされているのだろう。

もう一方のクレフティコは、数種類のハーブとオリーブオイル、レモンジュースを混ぜた漬け汁に一晩漬け込んだ骨付きラム肉のオーブン焼き。ナイフを使わなくても肉が骨からはがれてくるほど柔らかい。口の中では芳香なハーブと塩、胡椒が控えめに肉本来の味にアクセントを加えている。見事な味の演出だ。

この感激で再びワインが欲しくなり、いつしか手はワイングラスへと伸びていた。この一口で最後にしよう、と思っても美味しい料理がワインを誘い、ワインがまた食を誘う。友人はお酒が入らなくても話し好きだというのに、輪をかけて話が弾んでいる。このままだと本当に深夜迄居座ることになってしまうかも？そんな心配をしながらフッと思った。「ああ・・・もしかして・・・これが“居酒屋”といわれる由縁？だとしたら、Kalamariは本当にギリシャの居酒屋を提供しているんだ・・・」と。

いつもなら締めくくりはデザートと決めているが、さすがにお腹は一杯。メインと一緒に注文したグリークサラダ(Greek Salad ￡4.00)も食べきれなかったくらいだ。甘いものは別腹、という感じでもない。それに、ギリシャのお菓子類は隣国のターキーと同じらしいから、きっと蜂蜜タ～ップリで甘いに違いない。うん！やっぱりやめておこう。その代わり、コーヒーでさっぱりさせることにした。ところが、コーヒーと一緒にサービスでターキッシュ・ディライト（Turkish Delightゼリー）が出された。一口大でピンク色の可愛いお菓子。メインの料理だけでもこんなに幸せな気分になれたというのに、その上食事を終えたお客へのメッセージともとれるTurkish Delight（心の安らぎ）のプレゼントとは何とも粋な演出だ。また来よう・・・。（茉）

2006年8月取材