英語圏の国に住んでいれば、誰でも一度は「ナイジェル」という名前の人に出会ったことがあるだろう。直接の知り合いでなくても、銀行やショップのフロアースタッフが「Nigel」というネームバッジを付けているということもあるかもしれない。


ナイジェルがこの世からいなくなる!?

イングランド中部バーミンガムに接するウスターシャーで「Fleece Inn(フリース・イン)」という名のパブを経営するナイジェル・スミス氏。ナイジェルという名前をもっと広めることを人生の目的とする、ちょっとエキセントリックなおじさんだ。

ある日、最近の出生記録を何気なく見ていたスミス氏。2016年にナイジェルと命名された赤ん坊が1人もいなかったことを知って衝撃を受けてしまった。そのとき自分の名前が絶滅危機にあることを悟り、これはなんとかしなくては!と一念発起。全国のナイジェルを集めて「ナイジェル・フェスト」を開催することを決めたという。

ちなみに、彼が生まれた1963年には、5,000人のナイジェルが誕生し、偶然にもその年がナイジェルと命名された新生児数のピークだったそうだ。


実現した「ナイジェル・フェスト」

第1回ナイジェル・フェストを開催した2019年には、同名の仲間とパイントビールをシェアしようと430人以上ものナイジェルたちがイギリス内外から集まった。参加者は写真付き身分証明書を持参し、「The Book of Nigel」に署名。ナイジェルを集めたイベントとしては、(おそらく)歴史上最大のものとなった。

コロナ禍を経た2022年の9月は、これよりもやや少なめの372人のナイジェルたちが集まった。フェストのエンターテイメントを提供したミュージシャンの名前も、当然ながらナイジェルだ。


幅広い参加者の面々

その日一番高齢だったのは84歳のアメリカ人で、最年少は30代。彼らのように「一番ナントカ」だったナイジェルたちにはトロフィーも授与された。

幅広いのは年齢層だけではない。はるか国境を超え、ロサンジェルス、フロリダ、テキサス、ニカラグア、ジンバブエ、スペインと、世界各国のナイジェルたちが勢揃いするインターナショナルなフェストとなった。

1回目のナイジェル・フェストにも参加したという「テキサス・ナイジェル」は、2度目の参加となる今回、同じくテキサスからやって来たもう1人のナイジェルに出会ったそうだ。

心優しいナイジェルたちは自分たちだけが楽しむのではなく、「British Heart Foundation」のために3,000ポンドもの寄付金も集めた。これには、現在存在しているナイジェルたちの多くが、体の衰えを心配する年に到達したからという理由もあったのかもしれない。

主催者のスミス氏は言う。「本当に素晴らしいイベントだった。集まった皆が楽しい時間を過ごすことができた。ほとんどの参加者は初対面だというのに、まるで古い知り合いに会ったような気分になれた。『ナイジェル』であることを共に祝う特別な日になった。

世界ではいろいろなことが起きていて、何かと大変な世の中だけど、こうして大勢のナイジェルが集まって楽しいときを過ごせたのはとても良かった。2〜3年ごとにこんなイベントをやりたい!という気持ちにさせられたよ。きっとまた開催すると思う。」

今回のイベントに参加した人たちの多くは、3年前にこのフェストについて知り、2回目のこの機会を待ち焦がれていたのだという。スミス氏は、次回の開催を2025年と決め、すでにパブの予定表に書き込んだ。

ちなみに、ナイジェルという名前を付けられた赤ちゃんが1人もいなかったという2016年のトレンドは、2020年の時点でまだ続いているらしい。