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April 12, 2012

ポルトの旅

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LIB ポルトの旅ポートワインで有名なポルトに行ってきた。

おととし行ったリスボンに続き、2度目のポルトガルである。ポルトガル第2の都市、といっても人口は23万人とかで、街の中心からほとんどの観光名所が徒歩10分で行ける。 (市の全体が坂だけど・・・)

まずはポートワイナリー見学。アルコールの中でポートワインが一番好き、と言う友人と一緒だ。

ドゥロ川の向こう岸には Taylor Graham Croft とたくさんのメーカーの看板が見える。 その中で、怪人二十面相みたいなマント男のロゴが目立つ Sandeman というポートワインメーカーに入った。 数ヶ国語のツアーがあり、4.5ユーロ。

ひんやりと薄暗いセラーに樽がずらっと並んでいるのは壮観。 テレビのコマーシャルで見るような風景だ。 カッコいいなあ。 巨大な樽もあり、樽の大きさは作るポートの種類によって使い分けるそうだ。 赤い色のポートはルビーと呼ばれ、大きな樽で酸素に触れることが少ないため、赤い色が保たれる。 タウニーという黄褐色のは小さい樽で酸素に触れることが多くて、色が薄くなり、かつ茶色がかってくるとか。

ワインもポートも同じ葡萄で同じように製造されるが、ポートは3日目でアルコール度77度のグレープブランディが注がれ、発酵が止まる。 葡萄の糖分が発酵に使われないまま残るため、ワインより甘く仕上がるそうだ。

それぞれのメーカーの葡萄畑は、ポルトを流れるドゥロ川の100キロ上流にあり、土壌や気候で特色が出るらしい。 次回は畑のあたりにも行ってみたい。

最後にお楽しみのテイスティング。 白いポートと赤いポートがほんの少しずつ配られた。 おいしい、でも、もっと飲みたい。 で、売店に走りボトルを買った。 売店は都合よくティスティングのテーブルのすぐ横にあるし。

さて、ここで問題がある。 格安航空会社 EasyJet で、持ち込みバッグだけで旅行している私たち。 機内に液体は持ち込めない。 しかたない、4日間の旅行中に1本飲みきるか・・・。

10年物のヴィンテージポートに30ユーロを払った。 で、ホテルに備え付けのグラス (バスルームにある歯磨き用)で寝酒にぐびぐびと飲んだ。 ちょっともったいない気もしたが。 おまけにヴィンテージには澱がある。 デカンターなんて洒落たものはなく、終わりごろにはグラスにどっさりと葡萄の固形物が入り、つぶつぶグレープジュースのノリである。 安ワインみたいな飲み方で申し訳なかったな。

もう一軒のポートワインメーカー Croft はドウロ川の遊覧船とセットになっていた。 どうやら、Sandeman のように川に面し便利な場所の見学ツアーは有料。 「坂」 を上っていく必要があるメーカーは無料のようである。 Croft では、アーモンドやチョコレート (別料金)をおつまみに、ピンクポート、20年もののトウニー、2008年のヴィンテージという試飲セットを8ユーロで飲んだ。

ポルトガルの物価は安い。 スーパーでビールの大瓶、ミネラルウォーターを3本買ったら、2.40ユーロ。 確か、イギリスのガトウィック空港ではミネラルウォーターが1本で1.75ポンドだったよね・・・。

ポルトの料理はシンプルだ。 鰯、タコ、塩タラの天ぷらとかあじの塩焼き、豚肉の串焼き、牛肉やモツの煮込みといった 「おかず」 に白いご飯か南米風の豆ごはん、それにフライドポテトやサラダ。 これらの 「ワンプレート定食」に飲み物をつけたら、

1.ドウロ川のほとりの観光客用のレストラン ひとり 12ユーロ
2.街中のカフェでひとり 7ユーロ
3.駅裏のローカルカフェで ひとり 4ユーロ シティのバーでワインのラージグラスを頼んだら、8ポンドくらいはする。 

うーむ、ポルトガル、イギリスの物価の3分の1、いや4分の1かも? もっとも英語が通じたのは 1 だけだったが。ポルトは英語が通じます・・・とガイドブックに書いてあったが、ホテルと観光地だけだ。 まず、数字の One からして通じない。 Large とか、Meat,Fish、Rice もダメ。 ガイドブックで単語を調べても私の発音では伝わらない。結局、物をさし、指で数字を出し、手で大きさを示すことにした。

スーパーで 「ハムありますか?」 と聞いたら、お姉さんに 「ハム? ハムって何かしら? ハムって単語は知らないわ」 と 「英語」 で聞き返されたので、 「えーっと、じゃ、コカコーラ (万国共通語、ただしペプシコーラが出てくることもある) ください」 と仕方なくコーラを買ったこともあった。

去年、スペインのバルセロナのカフェに入った時、 「ハム」 「チーズ」 「サラミ」 「卵」 「野菜」 を頼んだ。 こちらとしては、 「タパスの皿」 を注文したつもりだった。 ウエィターは不審そうな顔で 「5つか?」 と聞き、 「そうだ」 と答えた (友人は少しスペイン語ができる) で、待つこと15分。 「ハムサンドイッチ」 「チーズサンドイッチ」 「サラミサンドイッチ」 「卵サンドイッチ」 「野菜サンドイッチ」 が出てきた。 それで 「5つ(も食べるのか)?」って聞かれたのね・・・。

ポルトガル語とスペイン語は似ていて、友人の初級スペイン語に頼ったものの、上記のこともあり、カフェで 「何が出てくるかは予測不可能」 とういう楽しみを持たせてもらった。

ホテル近くの駅裏で、焼き鳥屋のように炭火焼をしているレストランを見つけた。 ローカルオンリーみたいな店で、入るには少し勇気が必要。 店の人も観光客慣れしていなかったようで、お互いに緊張の注文である。 店の人も 「あの観光客はこれが食べたいのだと思うが・・・どうかな?」 と不安だったに違いない。メニュー (何が書いてあるかは不明)を見ると定食が2.95ユーロ。 注文(したつもり)のものと違っていても、これならいいや。翌日も同じ店に出かけると、「おお、また来たか」 という感じで、最初から言葉でのコミュニケーションはあきらめ、その日の定食の皿を見せてくれたので、その中から指差しで注文というスピーディーな展開を見せた。

ホテルの朝食は可もなく不可もなく、コーヒーはイマイチだったので、ホテルの前にあるカフェに入った。 おいしー。 この時点でカフェオレが頼めるようになっていた。 というか、ガイドブックの写真を指さすことを覚えていた。 おかわりはカップを指差し、1本指を立てれば、OK。 安い! 一杯が80円くらい。 ポルトガルはブラジルとの関わりが深いのでいい豆が入るのかもしれないね。

続く

投稿者 lib : 11:50 AM | コメント (0)

February 22, 2012

ロンドンファッションショー

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私はファッショナブルではない。 

暑さをしのぎ、寒さを防ぐ。 脱ぎ着が楽。 洗濯に手間がかからない。 と小学生の体操服のような機能を信奉している。 会社では地味なスーツ、家ではジャージ、ただし、パーティだけはド派手で下品なドレスが基本だ。 トレンドは追わないが、季節を追わざるをえないのは長袖と半袖を交換する必要があるためである。

そんな私がファッションショーに誘われた・・・。

残念ながら、ロンドンファッションウィーク (LFW) の最前列での鑑賞ではない。 行ったのはファッション 「トレード」 ショー で、PURE LONDON というイベントだ。

1100社 (主催者発表)ものファッションメーカーが、2012年秋冬物の商品を展示。バイヤーを迎えて商談をするそうである。 業界の人のための催しだが、キャットウォークもあると聞き、ファッションに縁遠い私も怖いもの見たさに出かけてみた。

誘われたとき、正直、気後れした。 ファッション業界の人の集まりに、いったい何を着ていけばいいのか? 「何、あの服?」 と後ろ指をさされ、石を投げられたりしないだろうか? 「ダサい女は来るな」 とステレトゥの鋭いヒールを頭に突き立てられたりしないだろうか? 

「商談にしか興味ないから大丈夫だよ」 と友人。 
「何とか自分の製品を売りつけようとして、メーカーはバイヤーと見ればガンガン声をかける。 声をかけられてもバイヤーじゃないといえば、すぐに開放してくれるから」 とのことである。

入場の登録をしてもらった。 最初は友人のアシスタントのふりをしようとしたが、トレードショーなので、名前の他に役職名と会社名が記載された名札をつけさせられる。 友人の会社名を使うわけにも行かず、ファッションに関係のない 「個人」 とした。 ま、声をかけられなくていいか・・・。

展示会場のオリンピアはウエストフィールドショッピングセンターも顔負けの広さ。 店がぎっしりと立ち並んでいるので、全体を見渡すことはできないが、歩いても歩いても歩いても会場の端まで行き着かない。今日だけは、バイヤーもファッションよりも歩く距離を考えているらしく、全員がフラットシューズだ。 

メーカーの展示は仮設店舗としてブティック風に飾られている。 会場のど真ん中に君臨する10畳 (たたみで広さを示すと、わかりやすいでしょ?) クラスの店から、屋台のようなサイズの店やトイレと壁にはさまれた、しけた場所での出店もある。 

大きな店には 「クリエイティブなんです、私」 という雰囲気を漂わしている50代くらいのデザイナー、「商談まとめます、私」 とキリリとした顔つきでコンピューター前に座る実務担当 (30代くらい) とそのメーカーの服を着て、「日払いです、私」 とニッコリと立っているモデル (20歳前後)がセットになって待機している。 

デザイナー、実務担当、モデル、の順に年齢に反比例して背が高くなっていくようだ。 

モデルのおねえさんたちは170センチプラスの身長に15センチのヒールを履いていて、キリンさんのようである。 バイヤーを求めて、目がキョロキョロと忙しく動いているメーカーさんに比べ、キリンさんだけは 「今日だけの仕事だしー」 とのんびりした雰囲気だ。

ファッション業界なので、会場内にデブは皆無である。 普通に道を歩けば、4割 (控えめな数字)がデブ傾向にあるイギリスにおいては異常な光景だ。
 
今年流行のシルバーヘア(つまり白髪。 白髪を隠すための白髪染めでなくて、白髪に染めてある)も目に付く。 白というよりは、銀髪か灰色っぽく仕上げてある。

やっぱり、皆 カッコいいなあ、ファッション業界の人って。 めだってないだろうな、私、・・・悪い意味でだが・・・。 人が集まるところは本来得意なので、ウキウキしてはしゃぐことが多い私だが、もう少し服装に気を配ればよかった、と気弱になり静かにしていた。珍しいことである。

フットメーカーのエリアでは (ずいぶん安物の靴だわ・・・・) と思われるのではないかと不安になり、思わず足早で通り過ぎたりした。

「ええっと、これで20000ポンド」 「残りの予算は・・・・」 「じゃ、これを200ユニット」 「納期は・・・」 いった会話を聞いた。 また、会場の写真を撮った人にスタッフが文句を言っている。 写真からデザインだけ盗まれてコピー商品を作られるのを心配しているのだ。 しばらくもめていたが、結局、カメラから写真を削除させたようだ。 

突然、友人の顔が紅潮した。 

「Kat Von D だ。 ほら、 彼女のデザインの服を売り出してる」
「誰? Kat 誰?」
アメリカ人で有名なタトゥーイスト (刺青? 入墨師、だよね?)らしい。 テレビ番組もやっているとか。 背中、肩、腕、脚はもちろんのこと、顔すらも額から横顔にかけて入墨が入っている。 きれいな顔をしているけど、堅気ではない凄みがあるな・・・。

「彼女と一緒に並んでくれる? 写真が撮りたい」 と友人。

なぜ私が彼女のような 
(1) 小顔で細身の美人
(2) その筋の人よりも入墨の面積が広い人 

の横にいかなければならないのか? ・・・特に (1)がひっかかる。

ラッキーなことに、商談なのかファンなのか、ずっと人に囲まれていたので、友人は彼女に声をかけることができず、しぶしぶ諦めてくれた。 

大手のメーカーの店では、宣伝のためにブランド名入りの大きなバックを配っていた。 そろそろ帰ろうということになり、急にほっとした私は、あちこちの店から図々しくバックをかき集めてから、家路に着いたのであった。

小学校の体操服では太刀打ちできない世界もある・・・・。

投稿者 lib : 10:42 AM | コメント (0)

January 26, 2012

2012年

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ふと気がつくと2012年である。

ここ1-2年いろいろと面白いことがあったのに、 「これ、書こう」 と思いながら、怠惰を決めており、深く反省。 「今年こそダイエット」 と同時に 「今年はブログを頻繁に書く」 のが目標である。 
その他にも 「田中造顔マッサージをする」 とか 「骨盤体操で肩こりをほぐす」 なんてのも、考えている。

いつの間にか、ギリシャの首相もイタリアの首相も失脚し、スペインの内閣は変わっている。 思えば、最近ホリディに行った国ばかりだ。 もし、私が経済テロリストかなんかだとすると、行く先々の国で経済が破綻するような工作を・・・・するわけないか。

天気は悪く、冴えない食べ物文化で、海水は冷たく、意地悪な人が多いイギリスから、ホリディに行きたいような国といえば、太陽はサンサンと輝き、食べ物は安くておいしく、海は暖かくてキレイ、人々は陽気である。 こんな楽園に住んでいれば、借金の返済なんていやな事を優先的に考えるわけがなく、そんな国々に金を貸したのが大間違いであろう。 

個人ベースで考えれば、ビーチに寝転び、オリーブとシーフードをつまみに、ワインをすすりながら、のんびり暮らしている輩に 「ぜーったい、ぜーったい、返すからね。 一生懸命働いて返すよ。 汗水流して働いて返すからさあ。 ね、だから、お金貸して」 と言われて、貸すバカはいないだろう。 ユーロ圏の今後はどうなるのか。

そういえば、ローマの話が終わっていなかった。  

さて、旅行中のハイライトといえば、同じ旅でも人によって違う。 

カソリックの友人はもちろんバチカン市国への訪問。 

前日に他の教会に寄ったとき、 「懺悔、受付中。 ランプのついたブースにどうぞ。 英語もOKのブースあり」 みたいな表示を見たらしい。 で、それなら、いっそ、カソリック総本山のバチカンで・・・と思ったらしい。

サンピエトロ寺院では、荷物検査(危険物を持っていないか)の他に、服装検査(ショートパンツ、ミニスカート、肩だしトップはダメ)がある。 ガイドブックを読んでいれば、スカーフを巻いたりするだけでOKなのに、何の準備もなく、エセックスあたりの場末クラブに出かけるような格好で来て、入館を断られている女を見た。おまけに彼女のボーイフレンドは、「じゃ、待ってて」 とカメラを手にさっさと入ってしまい、 「せっかくのローマ旅行なのに、あのふたり、これっきりだろうね・・・」と友人と顔を見合わせたのであった。

懺悔?(告解?)はカソリック教徒から、神父さんに 「今日、今週、あるいは今月、自分で反省するべきこと」 の報告らしいが、友人は何年も 「溜めていた」 とのこと。 毎日曜日に教会に行っているのに 「地元の神父さんだと気心が知れていて、懺悔するのはちょっと恥ずかしい」 そうである。 意味不明だが。

その他にあれやこれや、いったいどんな悪いことをしてきたのかは知らないが、 「ものすごく怒られた」 とマジで汗を流しながら帰ってきた。 それでも、「今後は、悔い改めなさい」 と小さな金のペンダントを神父さんからもらったという。 「懺悔をしたので、天国に行ける。 帰りの飛行機が落ちても、大丈夫」 と喜んでいたが、カソリックでない私を巻き込まないでほしい。 別の飛行機にしようかしら。 (でも私には地元の神社の 「交通安全」 のお守りがあるからOKのはず)

私のローマのハイライトは 「スイカ」だった。

「すべての道はローマにつながる」 そうだが、実際のローマの道は一方通行が多い。 同じ番号のバスが行きと帰りでまったく違う道を走ることがあるのを知らなかった。 

オペラを見に行った帰りだ。 音楽学校の庭のようなところであった小さいオペラで、ビールを飲みながら夜空の下での鑑賞。 ほろ酔いでホテルに帰るはずの番号のバスに乗ったら、交差点で知らない道へと進んだ。 あわててバスを降りたが、見覚えのないエリアである。
 
友人の 「こっちだと思う」 という言葉を半信半疑に聞きながら進む。 ローマでは流しのタクシーがいないのもつらい。 時間は真夜中に近い。 無事にホテルに帰れるのか? 

大都市の郊外で場所の見当もつかないままにバスを降りる。 こんな無謀なことをアメリカですれば、あっという間に身包みはがされて、頭に風穴が開いているだろう。 とりあえずここはローマ、私たちのホテルのある地域は高級住宅街で、危険そうには思えなかったが、それでもわからない。げっ、やばくない?

と、そのとき、目の前に現れたのは、

・・・・・・・・・・・・・スイカの屋台

である。 

軽トラックの荷台にいっぱい積まれたスイカとメロン。 その隣には煌々と明かりをつけた屋台にテーブルと椅子。 そこで、小さい子も含めた家族連れが楽しそうにスイカにパクついているのである。

私は怪奇話が好きだ。 「夜道で見た、見てはならないもの」 といった話には結構詳しい。 このスイカの屋台の突然の出現はそれに近いものがあり、狐に化かされたような気分である。 そこから50メートルも進むと別の屋台もあったので、どうやらローマ市民にとっては夏の夜の日常風景のようであった。

二人できょとんとしていたが、ホテル近くのマクドナルドが目に入り、なんとかホテルに戻った。 

あの屋台でスイカを食べてもよかったな、と今になって見れば思うが、翌朝、スイカの代わりにしゃれこうべを抱いて目が覚めた恐れもある。 

ゆえに、スイカの屋台が私のローマ旅行のハイライトだ。 異議、意見のある方はご連絡を。

今年もよろしくね。

投稿者 lib : 09:54 PM | コメント (0)

August 30, 2011

UFO 目撃情報

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2011年8月26日 (金) 9pm 南ロンドンで、UFO らしきものを目撃したので報告しておく。

窓を開けると、西の空にオレンジ色の光が並んでいた。  線香花火の終わりにできる赤い玉のような色と形でくっきりとした丸い光が、10個くらい宙に浮かんでいる。 最初は近くの公園で花火を打ち上げているのかと思ったくらいで、けっこう大きい。 遠い星の大きさではなく、20メートル先の赤信号レベルのサイズである。

んん? と友人と顔を見合わせた。 「あれ、何?」 「さあ・・・」

友人がぜんぜん動揺していないので、 (胆の据わった奴だ・・・) と感心したのだが、後日聞くとメガネをかけていなかったので、イマイチよく見えていなかったとのことだった。 (目撃者として不適当)

光の玉はヘリコプターのような音はなく、飛行機のようには直線で移動していない。

はじめは編隊を組んでいるみたいに、クリスマスツリーのような長細い三角形を作っていたが、そのうち、編隊が崩れてバラバラとなり、ひとつずつ離れていき、雲に隠れて消えた。

見ているとき、UFOという単語が出なかったのは、あまりに堂々とした出現の仕方だったからか。 できれば皆様の注意は引きたくないという遠慮が見えなかった。 光の玉もでかかったし、数もあった。 撮影したければ、どうぞご自由に、というおおらかな態度である。

最近、UFOの目撃情報が多いと聞くが、それは携帯の普及とYoutubeのせいだろう。 昔なら、映像で記録したり、公表する機会はなかったもんね。 が、残念ながら、私の携帯は超旧式で、 「電話をかける、受ける」 「テキストを送る、受ける」 以外の機能がない。 ポカーンと口を開けて見ていただけだ。

NASAには秘密情報がある。宇宙人の死体が保存されているとういう噂もある。 

宇宙人といえば、クラゲのようなのとか、逆三角形の緑の小人がよく描かれている。 とりあえず目鼻があって、手か、手の機能を持つものがあるあたりが、人間の形をベースにしただけで想像力に乏しいよね。 もしかすると、サイコロの形でころがりながら移動するとか、腕時計の形でチクタク地面を滑って動く生物かもしれないのにねえ。

NSAは色々なことをやっているらしく、怪しげなダイエット広告ではNASAが秘密裏に研究開発したダイエットサプリなどもあることになっている。

空に浮かぶ奇妙な物体はときどき見かける。 あれ? という感じで空を見上げると、つられて見る人がいるのでおかしい。 反応がないときは 「何かしら・・・」 とつぶやいて注意を即す、ということもやっている。 個人的には、昼間の空に浮かぶ銀色の物体は糸の切れた風船 (銀色) だと思う。 田舎道での夜間のドライブで見るのは車のヘッドライトの反射だったりするらしい。

でも、何だったんだろうな、昨夜のオレンジ色の光の編隊。 不思議。

そういえば、子供の頃、夕方、空を見ていると怪しげな物体が飛んでいるのを見たことがあった。 いそいで母親に報告に行ったのだが、

「UFO? そう、よかったわね。 で、宿題は終わったの?」 という返答だった。

UFOの目撃情報よりは、宿題のほうが重要であるという教訓を得た大切な瞬間である。 

さて、宿題をしなくてもよい年代の私。 最後の光が雲に隠れると、

「あーあ、見えなくなっちゃった。 じゃ、ワインでも開けますか?」 と友人と酒盛りに入った。

大人になった今、UFOよりはワインのほうが重要である人生を送っている。

PS.Youtubue で検索すると、 UFO Fleet という所にたくさん映像があった。 「やはり、UFOの編隊だったか・・・」 と思っていると、その後、 Chinese Lantern の項目があり、願い事をこめて空に放つ提灯(?)がUFOと勘違いされる、とのこと。 ちっ、UFOでなかったのか・・・。

投稿者 lib : 11:15 AM | コメント (0)

July 11, 2011

ローマの休日 その1

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ローマに行ってきた。 2度目だが、前回はうんと昔で、確かシーザーの治世だった(嘘)。

インターネット専用の安エアラインで、何ヶ月も前に予約すれば、さらにお得。 「春、夏の予約すれば、この値段!」 という広告につられた友人のお誘いである。 二人でロンドン、ローマの往復で保険込み、123ポンドとは驚きだが、行きは朝4時起き、帰りは真夜中着のフライトという、へビィな日程だ。

ホテルもインターネットで、 「ミステリーホテル」 を半額でしとめた。 これは空室つぶしのための予約方法で、正規の宿泊料で客が集まりにくい時期のディールで、予約して初めてホテル名と住所が知らされるというギャンブル性の高いものだ。 だいたいが4スターか、5スターだが、中心地から離れていることが多い。

ホテル名はわからないものの、大体の位置とホテルの設備紹介から、そのあたりにある4スターホテルを選び出し、ホテルの目星をつける。 送迎バスありなら、たぶんこのホテル、プールつきなら、きっとこのホテルといった具合だ。 予約が成立して知らされたホテルは推測した通りだった。バチカンに近い4スターホテルが一泊あたり朝食付きで64ポンドと激安。

プールつきホテルなので、 「これを機会にビキニボディを目指しますか?」 と無謀な計画を立てた。 友人はなんと7kgの減量に成功。しかも、甘いものと炭酸飲料を止め、スポーツジムに通うという立派なダイエットだ。 私のほうは、今週はサラダだけ、で、意志弱く次の週はカツカレーを食べ、その次の週は心を入れ替えてサラダだけ、で、その次の週はついフレンチを食べに行き、デザートまで平らげ・・・と週替わりで、 「ダイエット」 「リバウンド」 を繰り返し、やっと2kgの減量だ。

ホテルに着くとプールは写真で見たとおり・・・の形だが、サイズは3分の1。どこをどうやったら、3倍もの大きさのプールに写るのか? カメラマンの手腕に感心する。 

ビキニボディというよりはポテポテのルネッサンス・ボディ(あちこちの教会や美術館の絵画にある裸の女のたいへんに 「女らしい」 体型) レベルにしか到達できず、サンベッドからプールに入るまでの数メートルは、爪先立ちし、息を吸い込んで止め、お腹を凹まして歩くという技を取ることにした。 が、周りを見渡すとトド体型のおばちゃま方が体内脂肪を太陽で溶かさんばかりに日光浴している。 気にすることはないか・・・。

7月のローマは暑い。 何を着ていくかで大いに悩んだ。 薄着が基本だが、教会に入るには肩のむき出しやミニスカートは禁止。 白いコットンのワンピースなどは最高だが、下着が透けて見えるのが難点。透けないようにするにはペチコートを履く必要があり、逆に暑くなるし・・・。 と、街を見渡せば白ワンピースで闊歩する観光客でいっぱい。 当然、ブラもパンツも影絵のようにきっちり透けて見えている。 (ああ、着てこなくて良かった) と思うと同時に、どう見ても、気にしている風でもない大らかな態度に (別に見えてもいいのかも・・・)と気にしすぎる自分がバカのようでもあった。

服装はタンクトップで教会入館用にカーディガンを持ち歩いた。 さんざん、日焼け止めクリームを塗ったものの、ローマの太陽は強く、肩はタンクトップ(数種類)の紐、ショルダーバックのストラップの位置だけが白く残ったシマウマ状態となってしまった。 まるで胸元から光があふれ出ているようであり、宗教的である (わけないか)。

友人はカソリックなのでバチカン市国へ。 長時間並ばなくてもいいようにオンライン予約していった。 と、バチカンに一歩足を踏み入れた瞬間、怒号のような音とともにどしゃぶりとなった。 おまけに稲光はピカピカ、雷も鳴り響く。 (あらら、傘を持ってきてないし、予約の時間に遅れたらどうしよう?)と思っている私の横で、友人は 「カソリックとしてきちんとした生活をしていないことに神の怒りが・・・」 などと言っている。 あのね、信仰心の弱い信者が来るたびに雷雨を起こしているはずはないって。

今回の旅では新しい試みをした。 Rick Stevens というガイドブックを出しているアメリカ人のオーディオガイドをIpodに入れてきたのだ。 コロシアム、ローマンフォーラム、パンセノン、そして、もちろんバチカン市国。 日本人の常として、「あー、これが有名なシスティーナですか。りっぱですね」 と5分で通り過ぎることができなかった。 なんせ、それぞれ20-30分もあるオーディオガイド。 (しかも、2回繰り返して聞いた。・・・聞く羽目となった。カソリックの友人のために) が、これがなかなかおもしろかった。天井絵は天地の創造、アダムの誕生、ノアの箱舟に、と有名なシーンが続いている。 で、イブの誕生だ。 アダムの肋骨から生まれたというあれだが、本当にイブはアダムの背中からにゅっと出てきているのだ。キノコみたいに。アダム、痛かった? 

祭壇の後ろの壁画は 「最後の審判」。 キリスト教徒にとっては重要なシーンだ。 エセ宗教家もこのネタはよく使う。 要するに信じる者は救われ、信じない者は地獄に落ちると脅して、エセ宗教家はお布施を集める。 で、世界の最後の日を予言するのだが、予言した日に世界は終わらず、苦し紛れに半年ずつ延期したりする。 

キリストは十字架にかけられ、やせ細りぐったりした姿がなじみだが、天国での栄養がよかったのか、この壁画では隆々とした筋肉の持ち主になっている。腕のこぶなんか、ポパイなみだ。 キリストの後ろで聖母マリアはオロオロしている様子。 「坊や、そこまでする必要あるの・・・?」と言いたげ。 右側は地獄に落ちる人の群れ、左は天国に引き上げられる善人たち。 

ここではミケランジェロ自身も 「さて、そういう自分はどちらへ?」と皮だけの姿になってベロリと垂れ下がっている。 が、おかしいのは彼の作品に批判的だった人が右側の一番下、つまり地獄側で蛇に巻きつかれた状態で描かれている。 当時は彼のおXXXXも極端に小さく描かれていたそうだが、それは後にぼかされたらしい。 芸術家を非難するのはやめましょうね。 何世紀にも渡って恥をかかされることになるもんね。

続く

投稿者 lib : 01:26 PM | コメント (0)

May 09, 2011

震災

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イギリスに住んでいると、チャリティには食傷気味になってくる。

アフリカの飢餓、南米のストリートチルドレン、パキスタンの洪水、ハイチの地震。 イギリス国内でも、難病、身体障害へのチャリティに次々と募金を求められる。

募金をする、募金を集めるというのは、「クリスチャンとしての義務」 なんでしょうかね。 会社でも、 「XXのため」 の回覧が毎月のように回ってきて、気分は 「冠婚葬祭的社会義務」 である。

健康で不自由のない生活をしている者にとっては、困っている人達の映像を見ている間は、かわいそうだと思い、募金でも 「しなくっちゃ」 という気にはなる。 が、その場が過ぎてしまうと、他人事として忘れてしまうことが多い。

東日本の震災は感じ方がまったく違っていた。

規模がすさまじかったせいもあるが、直接の知り合いに被害がなくても、同じ日本人として、人ごとには思えなかった。 大変なことが起こったと頭で理解するよりは、胃のあたりがずっと重たく痛い感じが続いた。

津波の映像は強烈で、町が破壊されていくさまはまるで映画の中の出来事のよう。 最初の2日、Youtubeで見続けるうちに、気分が悪くなってきて、映像を追いかけることを止めた。

正直なところ、しばらくの間、精神状態はかなり不安定だったのではないか。 朝、通勤電車で震災関連の記事を読みながら、ウッときて、会社に着く頃にはマスカラでパンダ目を形成していることは珍しくなかった。 電車内では目元を赤くして涙をこらえてる人が他にもいて、すぐに日本人だとわかるのだった。

最初は被害にあった人、亡くなった人や家族を亡くした人を思い、気の毒でたまらなかったが、次の段階は、世界から受けた同情にぐっと来た。 

イギリスの新聞の一面に出た 「がんばれ日本、がんばれ東北」という日本語はうれしかった。 ウィンブルドンの駅の近くの壁に大きな日の丸が 「落書き」されていて、その右下に英語で 「祈りをこめて」 と書いてあるのを見て、思わず涙をこぼしてしまい、花粉症のふりをして、ティッシュのお世話になった。

コロンビアの孤児院の子供たちがお見舞いの絵を描いて送った とか、バングラデッシュとパキスタンの留学生が避難所でカレーの炊き出しをしたとか、そんな記事を読むたびにホロッとなってしまい、毎日そんな事が続くうちに目の下の皮膚が涙でかぶれた (実話)。 もっとも、バングラデシュの本格的なカレーが東北の人の口にあったかどうかは少し心配だったが。

今回の募金はもしかすると生まれて初めて 「義理」 に基づいたものでなかったかもしれない。

バイオリニストの葉加瀬太郎氏は、ロンドンのあちこちでチャリティコンサートを開き、募金だけでなく、日の丸に寄せ書きを募っていた。 そんなコンサートのひとつに行ったら、イギリスの赤十字の人が 「コインでなくて、お札、お札を募金してくださいね」 と流暢な日本語で叫んでいた。 おかしかったが、確かに効率的である。


大口の寄付も気になった。 ユニクロの社長が10億円を出して、おおっと思ったら、ソフトバンクは100億円・・・日本の銀行の5千万円-1億円というのはケチ臭いな。 もう少し何とかならないの?

震災2週間後に一時帰国した。 実家に用事があって元々決まっていた日程だった。

ほとんど外出もせずに家でずっとテレビを見て過ごした。 避難所に物資を輸送したり芸能人が慰問(?)をしている様子の他に、原子力発電所や放射能について、専門家が出演していた。 原子力発電所の設計建築士、放射能の科学者、放射能による身体への影響を説明する医者、放射能が天気や風によりどの方向へどう流れるかを予測する天候の専門家・・・と日ごろ大学の象牙の塔で黙々と研究をしているような学者も含めて、テレビに出ていた。

政府が嘘をついている、実情を隠しているという非難があるが、政治家は学者ではないので、嘘をつくほどの頭脳や専門知識はないという気もする・・・。 

BBCの朝のニュースでロンドン勤務の日本人ビジネスマンが出ていて、「これから大変ですね」と聞かれたときに、「全力で立ち直ります。イギリスだってテロの後、ものすごくがんばったではないですか」 みたいな事を答えていて、思わず、 「そうだ、そうだ」 と同感したのだった。 そういえば、7月7日のロンドン地下鉄テロの後、 「こんな卑劣なテロに負けません!」と答えていたイギリス人が多かったなと思い出した。

がんばります、がんばって下さいという言葉は、深く考えずに挨拶がわりだが、この震災の後のがんばります、がんばって下さいというのは本来の意味で使われている気がする。

災害は愛国精神を高揚させるものだな。 自分でちょっと恥ずかしいけど。

投稿者 lib : 11:27 PM | コメント (2)

March 10, 2011

消えたゲート

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外国暮らしをしていても、というか、外国暮らしをしているからこそ、家に帰れば、ほっと一息つくものである。 クタクタになるまで働き帰宅する (私には無関係) あるいはほろ酔いで帰宅 (ま、ときどき・・・) しても、愛する我が家が見えてくれば、やれやれと安心するものだ。 

が、ある日のこと、会社から帰り、家の前に立ったとき、ふと違和感を覚えた。

何かが違う。 物の位置が移動しているか、色や形態が違うか、余計な物があるか、あるいはなくなっているか・・・・.

余計な物があったのは数年前のこと。 酔っ払って帰宅すると、前庭に For Sale (売り家) の看板が立っている。 一瞬、目を疑ったが、 (今、私は酔っ払っていて、精神状態はノーマルではない。幻覚を見ている可能性がある) とあえて、深く追求せずに家に入り、そのまま寝てしまった。 翌朝、そーっとドアを開けると・・・まだそこに看板はある。 なぜ? 持ち家なのに家主の私の知らぬ間になぜに家が売り出されているの? 

そのときは、不動産屋が同じ番地だが別の通りの家と間違えて看板を立てたことが発覚し、無事に看板は撤去されたのだった。

が、今回は、余計な物があるのではなく、なくなっていたのだ。 

はっ、ゲートはどこ??? ゲートがない!

ロンドン郊外に住んでいる。 いかにも私のような中級サラリーマン(サラリーウーマンだな)に身分相応な中古、中型、中流向き住宅である。 道路があり、歩道があり、前庭があって、家がある。 で、公の歩道と前庭を仕切るものが、 「ゲート」 そう、今朝までは門扉があったのだ。

腰までの高さ、幅も90センチくらいの小さな金属製のゲートである。 周りの家のゲートも似たようものだ。 昨日まで気にもしなかったが、なくなってみると、何だかスカスカと隙間風が吹いているようなわびしさがある。 公共の場と私的領域との境が取り去られたせいである。

誰かが開けたはずみに、はずれてしまい、その辺に置いてあるのかと前庭を捜すが・・・ない。 悪ガキにいたずらされたのなら、その辺に投げ捨ててあるはず。 で、近所をキョロキョロしながら見回った。 大きなゴミが積み上げてある所や、改装中の家の資材置き場等々にも・・・ない。

盗まれたようである。 ゲートなんかを盗んで、いったい何になるんだ?

友人に聞くと、古びたゲートでも、金属を重さで買い取ってくれる所へ持ち込めば、何がしかのお金になるらしい。  私の家のかわいそうなゲートは、かどわかされた上、今頃は他の金属と一緒に溶かされているのかもしれない。 

こんなことになるなら、もう少し気を使ってやればよかった。 帰宅時にはただいま、と声をかけるとか、休日にはほこりを払ってやる、 年に一度くらいはペンキを塗り替えるくらいのことはしてあげればよかったのにと深く反省する。 

溶かされるときにゲートは何を思っただろう? 冴えないゲート人生だったな。 今度生まれ変わるときには、公園の噴水の金具なんかがいいな。 犬が散歩に来たり、子供が駆け回るのを見たい。 それとも、ハードに決めて、刑務所の鉄格子なんかもいいかも・・・と未来の自分を夢みながら溶けていったのかもしれない。

しかし、セコイぞ、門扉泥棒とは。  罪を犯すなら、もっとドーンと大きなことをやらんかい! いや、犯罪を推奨しているわけではありませんが。

2週間が経ったが、どうやらゲートは戻ってこないようである。 で、これからどうしよう? 警察に届ける? 保険会社に連絡して、保険金をもらう? と、その前にガーデンセンターの折込チラシでゲートの値段を見てみたら、60ポンド程度であった。 ん、もう、面倒くさいなあ、60ポンドのために警察に通報だの、保険請求だのの手続きなんかするのは。 しかたない、諦めるか・・・。

ゲートちゃんの冥福を祈る。

投稿者 lib : 12:07 PM | コメント (0)

February 23, 2011

イタリアの憂鬱

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イタリアの政界が揺れている。 首相ベルルスコーニのスキャンダルである。

「ブンガ・ブンガ・パーティ」 が最近、イタリア語の新しい語彙に加わったらしい。 きれいどころのお姉さん達をたくさん自宅に招いて、乱痴気騒ぎした首相が、未成年のモロッコ出身の少女、カリマ・エル・マフルーグと関係を持ったという悪名高きパーティだ。

未成年の少女が問題になったというのも、イタリアの法律によると 「売春していいのは18歳以上」 で、当時の彼女は 17歳だったとのこと。 「売春していいのは・・・」 って、いいのか、売春?

17歳と数ヶ月だったのか? 法律上、あと数ヶ月足りなかったのか?

彼女はこれをチャンスにインタヴューだの、下着で広告モデルだので、大もうけしているとか。 で、 「私はダンサーで、モデルよ。 娼婦じゃないわ。 失礼ね。 名誉毀損よ」 と言っている。

パーティの後で高額のお小遣いをもらったり、窃盗で逮捕されたら、 「私はエジプト大統領の隠し子なの。 私を釈放しないと外交問題になるわよ」 とを首相に泣きついたとか、17歳には思えない、なかなか大したアマで、将来が期待できる。 貧しい国の少女が泣く泣く身を売り・・・という状況には見えない。

普通、未成年の少女と中年のおやじというと、

少女=被害者  おやじ=加害者 という式が成り立つが、

今回は おやじ=被害者  少女=大物 という図である。

海千山千のベルルスコーニをもって、 「悪い女にひっかかったな・・・」 と同情させるなんて、大したものだ。

ベルルスコーニ首相の前妻、(元妻はまた別にいる) は元女優という美人だが、夫の女癖の悪さに、とうとう離婚。 シングルとなったベルルスコーニは大金持ちだ。 パーティ参加のお姉さんたちは玉の輿に乗ろうと彼を誘惑するべく、がんばっていたらしい。 がんばり過ぎて、みんなで服を脱いでプールに入った模様。 

74歳には見えない若さはプチ整形と植毛手術のたまもの。 さすがは見た目を重要視するイタリア男だ。 イギリスの政治家も、もう少しルックスに気を使ってほしい。 ま、整形、植毛しろとは言わないが。

最近、イギリスのフットボール選手も、数人が娼婦スキャンダルで紙面を騒がせた。 素人さんは口が軽いけど、娼婦なら秘密は守られる、なんてことはなく、本来の仕事で収入を得た後、新聞にネタを売って、ダブルインカムを目指している様子である。  

フットボールチームの監督は 「新聞に出るなら、ゲームで活躍してスポーツ面を飾るように。 スキャンダルをすっぱ抜かれて一面に出るな!」 とカンカン。 

イタリア人は、首相のスキャンダルでイタリアが世界の笑いものになっている、と怒っているようだが、アラブ世界では独裁制に抗議して、死者まで出る騒ぎで戒厳令が敷かれているし、イギリスでは国家の債務をどうクリアするかと予算のカットで論争が起こっている。 

こんな殺伐としたご時勢に、「ブンガ・ブンガ」 で大騒ぎとは、さすがはアモーレの国、いいぞ、イタリア!(7月にローマに行きます。楽しみ!)`

投稿者 lib : 03:51 PM | コメント (0)

February 16, 2011

KISS コンサート

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KISSのコンサートに行った。(2010年5月)ウェンブリー・アリーナである。 

KISSというバンドを知る人は多いが、大ファンという人はあまり聞かない。 胸を張ってファンです、と言うにはちょっとノリが軽過ぎるということだろうか? 

最近のコンサートはZZ Top とかBad Company とかで、コットンシャツとジーンズという気合の入っていない地味なおやじに客層が偏っていたが、今回は観客ウォッチングも期待できる。

さすがはハデハデ歌舞伎メイク、悪のりコスチュームバンドのコンサートだ。 
グループで揃ってバンドメンバーをコピーしていたり、Tシャツ姿でも白塗りでKISSメイクをしていたり、とお祭りムードが満載だ。 素人メイクのため、途中から汗で、ドロドロになっていたのもご愛嬌。 コスチュームを決めてきた連中には他の観客が一緒に記念撮影をしたりして、楽しい雰囲気である。 ロックコンサートはこれでなくちゃね。

KISSは4人組だ。 
メークとコスチュームは宇宙人、スターマン、モンスター、と 猫。 え、猫? もう一度、並べよう。 宇宙人、スターマン、モンスター、と 猫。・・・猫。 そうだ、ドラムスは猫男だったな。 なんだか、テーマに一貫性がない気もするが。 初代のドラマーはクスリに溺れてクビになり、現在のドラマーは二代目とか。 が、もちろん、厚塗りメークのため、ドラマー要員が数人いても区別はつかない。 疲れたからと途中で交代しても気づかれないだろう。

さて、この日に向けていつもの 「コンサート前の課題」である BEST HITSを購入しての予習をした。 さすがにポップバンド 「ああ、知ってるこの曲、これも、これも」と馴染みのメロディが流れてくる。 恥ずかしいディスコ時期 (メイクを取って演奏していた)のラインもある。 

いやー、懐メロ・ポップソングだ。

チケットを取るときも価格と席に悩む必要はなし。 何せ、スタンディングも、二階席も、前の方も、後ろの方も、全席同一価格の45ポンド。 うれしいねえ、このファンへの心配り。 

隣の席は 「息子の誕生日でね。これは誕生日プレゼントなんだ」 というお父さんと小さな息子。 子供にかこつけて、父親のほうが来たかったのだと思うが。 父親はロックコンサートに慣れていないのか、腕の振り上げ方が中途半端。 のめりこむには恥ずかしいのか、肘が伸びきらずにオドオドした態度。 恥ずかしそうに歌詞を口の中でボソボソとつぶやいている。 ははは、ウブだなー。

途中バースディボーイの息子は眠たくなったらしく、お父さんの膝でウトウトし始めたので、後ろ髪を引かれる感じで退場していった。お父さん、残念だったね。

一緒に行った友人は10年前だか20年前だかにKISSを見たことがあるらしい。 当時、バンド名とロゴを書いたたれ幕 (たれ幕だって!)をステージに張っていたような、タネも仕掛けも工夫もない地味なコンサートがほとんどだった中で、花火は上がるわ、火の玉が空中浮遊するわ、ギターからロケット弾が飛ぶわ、で度肝を抜かれたらしい。

そうか、彼らも結構キャリアは長いんだ。 ストーンズのメンバーの顔のしわはグランドキャニオンくらいに深いし、その昔スレンダーな長髪青年だったらしいバドカンのメンバーもKFCのカーネルサンダースそっくりになっていたのを思い出す。

「ロックスター、当時、そして今」 みたいな写真集があると、かつての 「長髪」 「痩身」 青年 がすっかり 「ハゲか白髪、ビジネスマンカットかイガグリ頭」 「贅肉たっぷり、二重あご」 おやじになっている。 若い頃の削げた顔立ちはドラッグのやり過ぎを心配させたものだが、今の垂れた頬っぺたはコレステロール値の高さを心配させる、おやじロッカー達だ。 長髪スレンダー青年がカーネルサンダースになってしまうのだから、悲しい。 まだ、普通のサラリーマンのほうが外見上のギャップは少ないよね。

その点、KISSはいいよな。 昔のそのまんまだし。 20年後を考えてのメークだったのか?

ステージングが大掛かりなため、前座バンドの後、準備に少し時間がかかったが、大歓声を上回るド派手な開幕だ。エコロジーに反する大量のライティングがまぶしい。普通のコンサートなら1-2度スモークや花火があがるくらいだが、KISSの場合、毎曲ごとにこれでもかの大サービス。

大量の花火とスモーク、ギターから発射されるロケット弾、血を吐き、火を噴くジーン・シモンズ、ワイヤーで空中を飛び回るというお約束プレイが次々と披露される。 ジーン・シモンズが舌をベロベロするのは知っていたが、本当だ。 それも、たまにではなくて、2時間近く、ずーっとベロベロやっていた。舌が疲れて痙攣したりしないのかしらん。 ちょっと心配になった。

「わざわざチケットを買って、このコンサートに来てくれた君たちのために、うーんと長いコンサートにするぞ。アンコールなんて聞いたこともない位、何曲も演奏するからな。 覚悟はいいかな? いいかい、世界はいやな事や大惨事に溢れているんだ。せめてこのコンサートに来ている3時間だけは、つらい事を忘れて、たっぷり楽しんでくれ!」

ショービジネスプレーヤーの鏡だねえ。 

噂によるとベースのジーン・シモンズはロックミュージシャンには珍しくクスリをやらないそうだ。おまけに酒もタバコもしないとか。 が、グルーピーだけは例外で、来るもの拒まず。 で、笑ってしまうのが、ワンナイトスタンドの相手の写真を必ず撮るらしい。 で、写真のコレクションがあるという噂である。 
なぜ、写真を撮るのか? 何のためにきちんと収集するのか? 几帳面な性格なのか? 確か60に近い年齢のはずだが、いまだに継続しているのか? 昔はポラロイド写真を撮っていたそうだが、現在はデジカメと推測される。 写真は年代別になっているのか、国や都市で分けているのか、名前のアルファベット順か、気になるところだ。

そういえば、最近、シンプリーレッドのボーカルが 「売れていた頃、何も考えずに1000人ものグルーピーと寝た。 彼女たちに謝りたい」 とインタビューで話していたが、うーむ、あのご面相でそんなことをしていたのか? 赤毛の男はあまり異性に人気がないと聞いていたが、ショービジネスは侮れないものである。 もっとも、この発言は謝罪ではなく、自慢ではないかとも言われている。

ポールの約束とおり、コンサートは長時間で帰りの電車の時間が気になるほどだった。が、曲目が多いほど、お得感も高い。花火の回数も多かったしね。

ウェンブリーを出ると道端で売っているKISSの海賊版Tシャツを買った。 10ポンド。外で着るのは恥ずかしいので、パジャマにしている。

投稿者 lib : 12:34 PM | コメント (0)

February 07, 2011

2011年

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2011年も1ヶ月が過ぎた。 新年の誓いである「ダイエット」「禁煙」「不倫の解消」等々も破られつつある今日この頃ではないだろうか?

私の「ダイエット計画」は細々と続いている。細々と、というのは、まだ諦めてはいないが、胸を張って続けていますとも言えない、微妙なラインをウロウロしているという意味だ。

夏にローマに行くのだが、4スターホテルでアウトドアプールつきが安く予約できた。この時期に夏の予約をすれば、航空運賃もホテル代もバカ安ということで、友人がさっさと決めてしまったのだ。
 
「プールということは、水着姿を人前にさらすということですか・・・」とそれなりのプレッシャーがかかっている。友人とは、「じゃ、これを機会に、ゴージャスなビキニボディを目指しますか?」と新年のシャンパンにどっぷりと浸ったバブル頭でなければ、思いつかない無茶苦茶な目標を立てたのである。 

かの地ではおいしいイタリアンフードを食べるので、やせた分は旅行中に取り戻すことになるはずだ。

知り合いの2011年の幕開けがおもしろかったのでご紹介する。

毎年、ビッグベンが12時を告げ、1月1日となった瞬間にロンドンアイでドーンと花火が上がる。数年前まではたいした規模でなく、花火大国から来た日本人の目からすると、「新年のお祝いにしては、しょぼい」という印象を持ったものだが、最近はそれなりに金をかけ、大掛かりになってきた。知り合いの彼女およびその友人は数名で花火鑑賞に出かけたそうだ。

私も声をかけられたが、たかが15分の花火のために、場所取りに何時間も前から出かけ、寒い中を震えながら待ち、トイレの心配をしたり、混雑に巻き込まれたりする元気はない。暖かい家の中で、ガブガブとシャンパンを飲みながら、11時45分頃にテレビをつけて、各国の新年のお祝い中継を見た後でロンドンの花火を画面で楽しみ、そのままベッドにもぐりこんでしまう、というのがいい。
 
日本にいたときも、初詣は元旦を避け、混雑も収まった頃にゆっくりと出かけたものだ。「その場にいて、リアルタイムで見たい」というこだわりさえなければ、人間、いくらでも楽をして生きていくことができる。

さて、知り合いの話だ。

ロンドンアイはウォータールーの駅から徒歩5分だ。花火も終わって、大群衆は駅に向かって歩く。歩きたい、というか、歩くつもりはあるのだが、何せ、大群衆だ。グループ5人で、はぐれないようにソロソロと進むが、ほとんど身動きは取れない。 

ふと、気がつくと回り中は見渡す限り「外国人の男たち」だったらしい。肌の色が違い、外国語を話す男たちに取り囲まれている。新年を迎えて嬉しそうなのはいいのだが、その喜びを周りにいる「見知らぬ女性たち」と分かち合いたいと思っているようだった。

それも・・・痴漢行為によって。

新年の瞬間は、回りにいる人と抱き合ったり、頬にキスをしたり、と日ごろは許されない行動に出ることが多い。が、痴漢はないだろ、痴漢は。

あちこちから手が伸びて、胸は触られるは、お尻は撫でられるは、ひどいのになるとスカートの中に手はつっこまれるは、と「新年の喜び」を共有するには相応しくない状況だったらしい。 
カップルで来ていても女のほうは安全ではなく、ボーイフレンドが体を張って守らないといけなかったとか。 

キッと振り返り怒鳴りつけても「Happy New Year!」とニヤニヤして言うばかりで、今日だけは無礼講で、気にするほうがおかしいとでも言いたそうな、ずうずうしさだった態度。途中で警戒中の警察官に訴えても、「あー、はいはい。それはいけないね。殴ってやれば?」 と無責任なことを言うばかり。お巡りさんのほうはナイフで刺されただの、銃を持っている人がいるだのといった、「A級危険犯罪行為」以外には興味がないらしい。

小さい子を連れてきている人もいて、あまりの混雑に怪我をしてしまうのではないかと子供を抱きかかえながらも真っ青だったらしい。子連れはやめましょうね。

徒歩5分のロンドンアイから駅の構内にたどり着くまで1時間かかったらしい。分速20センチくらいの速度、かつ痴漢と戦いながらという、すがすがしくない新年だ。

さて、ホッとして電車に乗り込むと酔っ払いで満員。おまけに乗客の数人が「ドラッグでハイ」状態だったとか。話している内容も支離滅裂で、そばに寄ると危ないので、なるべく離れるようにしていたという。 
最近、政府系のテレビコマーシャルで「ドラッグを使用しながらの運転は、飲酒運転と同じです」というキャンペーンがあった。
「ドラッグと飲酒は同じレベルかい?」と不思議な気がしたのだが、このコマーシャルに出てくる「ドラッグ使用者」がまるで漫画の登場人物のように顔の4分の一を占めるまでの「極端に見開いた大きな目」をしているのだ。 で、警察は漫画目の運転者を見て怪しいと思い、その車を止めて、取り調べるという筋だった。
「テレビで見た、あの大きな目をしてたから、すぐにクスリをやってるってわかった」とのことである。政府系のコマーシャルも、実生活に役に立つことはあるのね。 

電車から降り、住宅地を歩いていると、とある家から数人が表に走り出てきた。 
なぜか全員が下着姿。しばらく口論が続いていたが、一人がクリケットのバットを持ち出してきて、中年男の頭を殴りつけ始めた。ゴム製のおもちゃかと思っていると、鈍くも重たい音がしている。 本物だ・・・。 

なぜ、下着姿なのか?なぜ、クリケットのバットがあるのか?なぜ、ボコボコに殴られているのか?はともかくとして、下手をすると死人が出かねない状況である。 

が、その横を通り抜けないと家に帰ることができない。さあ、どうする?

運のいいことに、男の人がふたり通りかかって、女の子が数人びびって立ち尽くしているのを見て、一緒に歩いてくれたそうだ。「なるべく、あっちを見ないで、知らん顔をするんだよ・・・」と囁かれたとか。 

家にたどり着いたら、全員、安心と疲れからぐったりとくずれおちたそうである。今年もよい年でありますように・・・。

投稿者 lib : 12:51 PM | コメント (0)

November 29, 2010

ギリシャ旅行 最終回

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インターネットにトラブルがあって、順番が狂ってしまいましたが、ギリシャ珍道中に話は戻ります。 

ギリシャといえばパルテノン神殿である。 が、 ギリシャ旅行を計画したとき、イギリス系の某旅行会社のパンフレットを入手したら、ロードス島、クレタ島、コス島、コアフ島、ミコノス島と行き先はいろいろあるものの、パルテノン神殿のあるアテネが見当たらない。 

この旅行会社は自前のホテルをいろいろな島に持っていて、プールつきのホテルのきれいな写真がいっぱい載っているのだが・・・。 どうやら、イギリス人にとってのギリシャ・ホリディは 「イギリス人でいっぱいのビーチ」 に行くために、「セルフサービスのイギリス料理」 を出す、 「イギリス人でいっぱいのホテル」 に泊まり、「ビールやアルコポップ等、イギリスの酒」 をがぶ飲みして終わる旅行を意味するらしい。 

で、アテネは? ・・・あまり行かないそうです。 何度もギリシャのビーチに行くイギリス人は多くても、アテネには行ったことがないとか、アテネ空港に着いてもすぐに島に移動するんだって。

ま、わたくしは知的好奇心の旺盛な日本人ざますから、パルテノン神殿詣では当然、アテネ素通りは言語道断ざます。 ビーチでダラダラと2週間を過ごすのはイギリス人にまかせておいて、遺跡をはじめ歴史的建物、博物館、美術館訪問ははずせません。

とはいえ、エーゲ海に行かないギリシャ旅行も、ネタなしのシャリだけの寿司、餡の入っていないお饅頭、熊にまたがらない金太郎、であろう。

とりあえず、エーゲ海の島も見たいよね。

アテネ発エーゲ海の一日クルーズは エギナ島、ポロス島、イドラ島を巡って100ユーロ位らしい。 合計6時間は船の中、上陸しても自由時間は少しだけ。 船内でのランチつきだが、あまりパッとしないランチという噂である。

結局、アテネから1時間ばかりのエギナ島だけに出かけることにした。 エギナっていうけど、これってエーゲのことじゃないの? アテネの港町、プレウスから船に乗る。フェリーと高速船で値段は違うが、片道10ユーロ程度である。

おおっ、青いぞ、青い。 日本の海と言えば、緑がかっている気がするのだが、エーゲの海の色、さすがの青さで空の色のようである。 船の周りを飛び交うかもめも、さすがはエーゲ海・・・いや、これは日本のかもめと同じか。 同じ船に乗り合わせた高校生の修学旅行生も、日本と同じくはしゃぎまくって大騒ぎ、どなり疲れた先生は椅子にぐったりと座り込んでいる。 ティーンエイジャーの引率は大変ですねえ。

さて、エギナ島に着いた。 まず、その時点で、帰りの船の時刻をチェック。 賢い私たちは先を読んだ行動をするのだ。 で、帰り道にその時刻表がまったく意味をなさないことを知るのだが・・・。 船着き場にデカデカと時刻表をかかげ、で、その時刻表に沿わない運行をする地中海の人達って、何を基準に生活しているのか? 

船からおり、何となく人の流れにつられて右へ行った。 レストラン、カフェ、みやげ物屋が並んでいる。 カフェのテーブルのすぐ横を車やバイクがバリバリ走っているのが気になるが、ま、ご愛嬌。 どの店でランチをするか物色しながら、横道に入った。 

みやげ物屋のすぐ裏は普通の住宅地だ。 南国らしい家のつくりで、強い日差しを避ける窓のスクリーンがついている。 イギリスの窓にさげるカーテンは冷たい外気の進入を避けるためだから、目的が違うねえ。 

オレンジの木があちこちにあり、大きな実が鈴なりになっていて・・・と、止める間もなく、友人がオレンジをもぎとった。  「おいしそー」 と皮をむくと私たちにも差し出す。 「食べる?」  おい、窃盗行為するなよ。 「うわ、にがい!」 と友人は吐き出した。 同じオレンジでも、食用と観賞用は違うらしい。 これで誰も道端のオレンジを盗らない理由がわかりましたな。

ギリシャの島の住人の日常生活を覗き見ながら、のんびりと歩く・・・つもりだったが、狭い道を20秒おきに、ノーヘルメットのバイクが走ってくるので、そのたびに壁に張りついてバイクを避けなければいけない。 気を抜くと大怪我をしそうである。

1時間近く目的もなく歩いていると 「港はこっち」 のサインがあった。 きっと地元の人の使う小さな船着場に違いないと思っていると・・・遠くに元の船着場が見えた。 いつの間にか島を1周したらしい。 白い砂浜があり、黒人だか、日焼けした白人だかわからないほど褐色肌になった観光客が寝そべっている。 水着を持ってくればよかったなあ。(旅行時 5月のはじめ)

と、レストランが数軒ある。 それも、船着場の右側にあったレストランのように道路に面していない。 「海の家」 みたいに板張りのバルコニーになっていて、テーブルの横はエーゲ海である。

小海老のから揚げ、たこの炭焼き、グリークサラダ、イカリング、串焼きの肉、ムサカ、オリーブペーストつきのパン。 ビールとアイスコーヒーである。 3人で50ユーロ。 真横にエーゲ海を見ながら地中海の日差しを浴びながらのランチ。 わざわざ灰色のロンドンからやってきたかいがあったね。 あの太陽、あの食事の安さが恋しい。 (まともなブログなら、ここで料理の写真が登場するはずだが、私はカメラを持って旅行しない、っていうか、カメラを持っていない。貧乏だから)

エギナ島でランチするなら、船着場から左へどうぞ。 レストランの数は少ないけどね。 それから、ギリシャではクレジットカードが使えない店が多い。 ATMで現金をおろして来てくれ、って言われるが、クレジットカードで現金を引き出すと高くつくんだよね?

アクロポリスもエーゲ海も堪能し、さて、明日はイギリスへ帰国・・・とテレビをつけると、ギリシャのゼネストのニュースだ。 空港もストで全便欠航って・・・仕事なんですけど。 アイスランドの火山灰騒動が収まったと思ったら、ゼネスト? ホテルのインターネットで次の飛行機を予約したが、一番早く乗れる飛行機は3日後・・・。

ホテルの近くがデモ隊のスタート地点のひとつだったらしい。 見物がてら、近くのカフェで朝食を取った。 何だよ、アイスコーヒーを手にニコニコしながらデモに参加しているじゃないの。 警官も何人か立っているが、やはりアイスコーヒーを飲みながら、のんびりと見ているだけ。 スト警戒中の警官が朝食を買いにカフェに入ってくるし。 こんな呑気なゼネストのために3日間もアテネで足止めを食らっている観光客の気持ちを考えてみてよ。

投稿者 lib : 10:38 AM | コメント (4)

November 15, 2010

ローマ法王

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ローマ法王がやってきた。 イギリスへ来るのは28年ぶりだそうだ。

友人にカソリックがいて、ローマ法王の訪問をワクワクして待っていた。 お気に入りのロックスターを待つ熱狂的ファンのようなノリである。

先代のローマ法王は温和な顔をしていたが、今のは目元がきつい感じで、ちょっと怖い。 知り合いの息子の高校時代の同級生がオックスフォードで神学を学び、現在、バチカンで研修中だそうだ。 で、その授業の科目には現ローマ法王が教壇に立つクラスもあるらしい。 なかなかアカデミックな法王だという話である。

ハイドパークでは8万人を前に演説、ではなくて、説教? 祝福? の予定であった。 各地のカソリック教会では、ハイドパーク式典の招待券が割り当てられ、くじびきの後、配られたそうである。 友人は残念ながら、 「はずれ」。 日ごろの信心が足らないと見た。

「ハイドパークに入れないなら、ロンドンの市内を通るのを見に行こうかな。 でも、たとえ見られてもほんの一瞬だろうし。 テレビの方が全部の式典が見られるけど、実物の法王を見るのも捨てがたいし。 ああ、どうしよう」 と、ウジウジ悩んでいる。

そんなに面白いものなら、私も見よう、とテレビをつけた。

教会内での式典が始まった。 テレビ中継されているのに、座席でウトウトしている神父もいる。 お年寄りだからねえ、しかたないか。 でも、教区の信徒もテレビは見ているはず。 「あ、ジョンソン神父が映ってる。 なんだよ、法王の前なのに居眠りなんかしちゃって、みっともない」とか言われているかも。

100人もの聖職者の入場。赤や白の長い法衣をまとっているのがほとんどだが、ボディガードらしい黒服の男たちも法王の周りを囲んでいる。なんだか、その軍団だけ雰囲気がトゲトゲしいねえ。 今ひとつ、天国からは遠い感じ。

カソリックの神父は妻帯を許されない。 で、非カソリック教徒の友人は 「80歳の童貞男に人生を説かれても、ピンとこないよね」 とのたまい、みんなの爆笑を誘ったのだった。

法王のすぐ横にふたりの従者がいるのだけれど、40歳くらいのこのふたり、 「生まれてこの方、女に縁のない人生」 というにぴったりの顔つきで、つい、友人のジョークを思い出して笑ってしまった。 階段の昇り降りには法王の裾を持ち上げ、式典中は被り物 (冠? 法王帽子?) を着けさせたり、はずしたり、と大活躍だったが、何度も 「中年の童貞男」の文字が頭に浮かび、不謹慎な笑いをこらえられなかった。 すみませんね、不真面目で。

今回の法王訪問は、あちこちの神父が少年達への性的虐待のスキャンダルを起こしていることもあり、賛否両論だった。 やっぱり、妻帯禁止っていうのがまずいんですかね? 
どこかの神父が信者の人妻と駆け落ちしたという話もあった。 プロフェッショナルな信仰を捨てさせるほど、色っぽい人妻だったのか? それとも、人妻の方が 「中年の童貞男」の純粋さにくらっと来たのか? 童貞男に妻を寝取られた夫の驚愕はいかに?  「姦淫はいけない」 って本当ですね。

テレビの式典は着々と進んだ。 バチカンから来たから、イタリア語でやっているのだろうな、と思っていたが、ラテン語なんだって。 ラテン語は死に絶えた言語と思ってたけど、バリバリに使われていた。 関係者以外は誰も理解できないのが、残念だが。(私はわかった。字幕が出てたから) 法王のスピーチはこの式典のキモだったかもしれないが、日ごろ、「イタリア語」で生活している 「ドイツ人」 の「英語のスピーチ」で聞き取りにくかったので、ここで私は休憩して洗濯物を干しに行った。

煙の出る金ぴか箱を振り回したり、パン(煎餅みたい)を食べたり、ワインを飲んだり、といろいろな儀式を見せてもらった。 パンは本来、神父さんから信徒の口に直接入れてもらうのだが、鳥インフルエンザが流行ってから、手に渡すことも増えたらしい。 (友人よりの情報) テレビでも手で受け取る人が結構いたし。

と、式典はつつがなく終わり、法王は教会を出て、「イギリスの若者達」 に挨拶。 カソリックのティーンエージャーの代表者は 「下町イーストエンドの黒人の青年」だ。 ここで、貴族階級の金髪碧眼の白人青年を出さないところが、いかにも計算づくの人選である。 その黒人青年がモデルなみにハンサムだったのはテレビ映りを考えてのことだろう。 外で待っていたのは 「そろいのTシャツ」 を着たティーンエイジャーが200人くらい。 法王にキャーキャーと歓声をあげ、「ベネディクス、チャチャチャ」みたいな掛け声までかかった。 さすがの鉄仮面ドイツ人法王も心から嬉しそうな顔をしている。 うまい! こんな演出をするのがイギリスのあざとさである。 それとも、ヘンリー8世がローマ教会に喧嘩を売って袂を分けたときの罪滅ぼしか?

なかなか金ぴかで仰々しい演出で楽しめた。 友人に 「カソリックにならない?」と誘われたが、私はとりあえず仏教でいいです。 実家には仏壇もあることだしね。 

投稿者 lib : 09:40 AM | コメント (4)

September 06, 2010

ギリシャ旅行 その4

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アテネの地下鉄に乗り込んだ。 オリンピックのときに建設されたようだが、何もここまでしなくてもという豪華絢爛さである。コベントガーデン程度の駅をヒースロー空港の発着ターミナル並みの大きさにしあげたような仰々しさ。 一時に1000人は移動ができそうな規模の階段を歩いているのは20人くらい、と優雅だ。

(国家破産の元凶はここか・・・)と、外国人の私にもわかる予算超過設備である。 もちろん、観光客には便利でいいのだけど。

でも、ギリシャ人は国家破産状態をあまり気にしていない様子だ。 考えてみれば、アクロポリスの建立もそうとうお金がかかったはず、でも2500年後の今も国家の誇りだし、観光収入を得ているし。 たぶん、地下鉄建設費も10年単位での清算は頭になくて、 「ま、500年位で元が取れれば、OK」 と長期間で辻褄を合わせるつもりかもしれない。 さすがは8000年の歴史年表のギリシャ、スケールが違う。 2000年文明の私たちには太刀打ちできません、って。

さて、ある朝、地下鉄は混雑していた。ドアが開くと後ろからドッと人が流れこみ、押し込まれるように中に入った。 と、親戚の子が 「バックが・・・」 と焦っている。 てっきり、バックがドアに挟まりそうになったのかと思い、「ハンドバック! ハンドバック!」と叫んだ。 (私はかなり声が大きい。 普通に話しても大きいので、叫ぶと相当である) と、あれほど込み合っていた入り口がさっと潮が引くようにガラガラになり、ぽつりと私たちだけが残されていた。

親戚の子は 「バックを引っ張られて、取られそうになった」 と呆然としている。 ふと見ると、私のバッグも開いている。 ラッキーなことに親戚の子の財布はかなり奥にあって無事。 私のバックはファスナーがたくさんついていて、開けられていたのは 「使用済みティッシュペーパーのセクション」だった。 ふふふ、「そこは、はずれ」だ。

まわりのギリシャ人乗客に 「大丈夫?」 と心配され、イギリス人の友人も慌てて駆け寄ってきた。 私が大声を出したせいで、数人の男たちがさっと電車から降りて逃げたらしい。 ふたりの日本人観光客という 「上物のカモ」 を5-6人で狙ったくせに空手で逃げたスリ団。 腕が悪いぜ、商売替えたほうがいいんじゃないの? (と、被害に逢わなかった途端に態度が大きくなる私である)

日本人は狙われやすいというのは本当だ。 皆さん、気をつけましょう。 敵の目をごまかすためには、私のようにファスナーがいっぱいついたショルダーバックを斜めがけにし、あちこちに 「使用済みティッシュペーパー」 を入れてスリを混乱させましょう。 いざ、買い物というときに、なかなか財布が出てこないという弱点はありますが。 また、干からびた蛙の入った偽財布を入れておく、とか、ファスナーに毒を塗っておく、とか、バックの中にネズミ捕りを仕掛けておく、といったスリ対策も効果的かも。

と、スリ団の魔の手を逃れた後、アクロポリスの他に2ヶ所の丘に登った。
ひとつはリカヴィトスで、ニューヨークならパークアヴェニュー、ロンドンならメイフェアといった雰囲気のアテネの高級住宅街コロナキの近くにある。 おしゃれな家々の間を抜け、急な階段を延々と登る。 アテネはスニーカー必須の街だ。 朝、黒のスニーカーを履いて出かけると、夕方には埃にまみれた真っ白いスニーカーでホテルに戻る毎日だった。 かなり上まで坂を上るとアリスティポーからフニクラ (登山電車?) に乗り、頂上へ。 フレンドリーなギリシャに珍しく無愛想なおばちゃんから、切符を買い、まるで遊園地の乗り物のように急勾配の電車に乗り込む。

リカヴィトスの頂上では観光写真を撮って売りつけようとするおじちゃんを軽くかわし、アギオス・ジョーギオス (発音不明) 教会へ。 真っ青な空に真っ白な丸屋根のギリシャ協会。 これよ、これ。これが私のイメージするギリシャ。 サングラスのせいで、色彩にブラウンがかかっているので、時々、サングラスをはずして青と白のコントラストを楽しんだ。 そういえばギリシャの国旗も青と白だし。いいなあ、ギリシャ。

白人に比べ、瞳の色が暗い日本人にサングラスは必要ないといつも思っていたけど、この日差しはサングラスなしでは目が開けていられない強さだ。 ついでに言えば、帽子なしで歩き回ったため、頭皮が日焼けした。 イギリスに帰ってから頭皮がむけ始め、巨大なフケ状の頭皮をビラビラさせながら会社に出て、ひんしゅくを買ったのである。 皆さん、ギリシャ旅行にはサングラスと帽子をお忘れなく。マジで。       

もう一ヶ所はフィロパポスの丘だ。 あまり有名でなく、ひと気も少なかったが、アクロポリスのすぐ隣の丘で同じくらいの高さなので、ここから見るパルテノン神殿の眺めは最高。 わさわさ観光客がいないので、のんびりできるものの、ほとんど人が歩いていないので、女の子ひとりで行くのは少し不安かもしれない。 グループでどうぞ。ふもとにはソクラテスが投獄されていたという洞穴の牢獄もあったりして、お勧めだ。 この日はホームレスのおじさんが真っ裸で水浴びをしていた。 のどかである・・・。

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August 24, 2010

ギリシャ旅行 その3

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さて、ギリシャ旅行のキモ、パルテノン神殿である。この一帯をアクロポリスというらしい。 少女像の柱に支えられたエレクティオンや円形の劇場がふたつ。 ギリシャ悲劇を上演したり、グラディエーターの戦いを鑑賞したのだろうか? 

埃っぽい坂道をゼイゼイ言いながら登ると、大理石の建物がいくつもドーンとりっぱな・・・柱だけ残って半分壊れた状態で建っている。 (ギリシャ未経験の皆様、パルテノンが崩れる前に行った方がいいですよ。 ちょっとヤバイかも) 屋根もほとんど崩れて建物の中は空間だけ。 しかし、真っ青な空に伸びる大理石の柱は堂々たるもので、うすピンクがかった大理石、真っ白な大理石、やや灰色がかった大理石、と多種である。 同じく大理石でも色合いが違うのは産地が違うらしい。 

ギリシャではうらびれたアパートでも玄関の階段は大理石だったりする。 大理石といえば日本では豪華な素材だが、このあたりでは安い石なのかもしれない。 いやー、その予算じゃ、大理石しか使えませんよ、みたいな。 しかし、ストーンヘンジを見に行ったときにも思ったのだが、どうやって石を運んだのだろう? パルテノン、力いっぱい山の上である。 

奴隷 (当時の運送手段) ご苦労さんである。 建造は紀元前5世紀頃。 なんせ、暑いギリシャだ。 1年の内、半年は暑過ぎて仕事にならなかったと思われる。 夏でなくても1日の内、朝の数時間と夜の数時間の涼しい時間だけ働いていたかもしれない。 みんなおっとりしてるから、時間に追われず、のんびりと建てた気もする。 奴隷といえど、オリーブをつまみに、ギリシャワインを飲んで、午後の労働の前に、木陰で少しお昼寝。 だから、200年かかったとしても、実働は正味50年だったかもしれない。

かどうかはともかく、数100年かかって建てても、その後、2500年経ってもで観光客が訪れているので、公共施設への投資としては優秀。 崩れなければ、まだ観光収入があるだろうし。

歴史と言えば、アテネの国立考古学博物館で見た年表は紀元前8000年前から始まっていてびっくり。 普通、歴史の0地点、キリストの誕生から始まるもの。 キリストが生まれる8000年も前からなんて、一味違う。 こんなものを見ると、西洋史2000年間なんて鼻先で笑われそうである。 200年しかないアメリカの歴史をイギリス人は馬鹿にするが、自分たちもギリシャに比べれば 「チッ、たかだか2000年の歴史しかないくせに」と言われそうだ。 ギリシャに行って以来、イギリスのテレビ番組で 「この城には300年の歴史が・・・」などと聞いても、「歴史? 新しいじゃん・・・」と苦笑いがもれるようになってしまった。 

・・・でも何で一万年もの文明を誇るギリシャが国家破産状態なんだろう? ってことは、現在世界2位の豊かさを誇る日本だって、滅びる可能性が・・・やめよう、縁起でもない。

新アクロポリス博物館に入った。
ガラスをふんだんに使ったモダンな建物は坂の上のパルテノン神殿同様に中身は空っぽ。遺跡の上に建てられていて、下の遺跡を見ながらガラスのフロアを歩くのだけど、(ギリシャの建築安全基準を信じてもいいのだろうか・・・) と不安をあおるようなガラスの床である。そして、広々とした空間は・・・スカスカである。 

館内ではパルテノンの歴史を放映していたが、「イギリス人の考古学者に重要な歴史の遺物をさんざん盗まれたため、ここにはほとんど展示物が残っていない。イギリスに抗議する返還運動に皆さんも協力してください」と言っている。 イギリス人の友人は 「そういえば、入館時に国籍を聞かれたが、イギリス人と言ったから入場料が高かったのかも・・・」と余計な勘繰りをしていた。

と、展示物の乏しい博物館であるが、ここのカフェ・レストランは一面のガラスウォールからアクロポリスを見上げるような構造で眺めは最高だ。 夜はライティングされてきれいだし。 ミュージアムカフェなのに料理もおいしい。安くはないがお勧めである。

さて、アテネの衛兵交代を見物するためにシンタグマ広場に向かう。
・・・しかし、衛兵というのは世界各国、奇妙な格好をしているものなのか? ギリシャの衛兵の靴はポンポンつきのフラットシューズである。 ハイソックスには房飾り。 で、きわめつけはスカート。 なぜ、兵隊がスカートを履くのか? あまり強そうに見えないのだけど、いいのかしらん? スカート姿でポンポンつきの靴にハイソックスで攻めてこられたら、腰砕けして戦意を失ってしまいそうである。あ、それが狙いか?

この衛兵隊は異常に背が高い。 南ヨーロッパ人の体型は比較的小柄で、ギリシャ人も大きくないが、衛兵はこの国の平均身長とはかけ離れている。 聞けば、背が高くて、ルックスのいい男だけを徴用しているらしい。 見栄えのいい衛兵隊にするためだろうけど、スカートにポンポンシューズじゃ男らしさには欠けるなあ。(ポンポンシューズはおみやげで売っています。 ルームシューズにいいかも)

投稿者 lib : 09:54 AM | コメント (0)

July 15, 2010

ケンブリッジ大学卒業式

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ギリシャの話の途中だが、ケンブリッジ大学の卒業式を見に行った。友人の息子M君の卒業式である。わざわざ誘ってくれたのだ。

さて、まずはドレスコードだ。昼間用フォーマルとのことで、膝丈ワンピースに帽子をかぶった。ロイヤルアスコットで学んだことだが、帽子は本当に便利。少しくらいドレスがしょぼくても、30ポンドの帽子でフォーマル率が30%アップというギャランティつきである。ちょっと、蒸し暑いのが難であるが・・・。

卒業式のスケジュールはこうだった。

11:30 - 13.15 
構内のカフェテリアとその前のガーデンで、ワインとサンドイッチ、フィンガービュフェの軽食。お、シャンペンがある。お祝いだし、いただきましょうかね。片手に皿、もう一方の手に飲み物。やたらと人に紹介されるのだが、両手ともふさがっていると、すぐには握手ができない。そのうち、片手で皿と飲み物を持つというアクロバティックな技を身につけた。指がストレッチして痛いが我慢。

13:15 - 14:00
構内のチャペルで卒業の・・・講話? 教授数名から卒業のお祝いのスピーチがあった。パイプオルガンに合わせて聖歌隊がコーラスを披露し、参加者全員 (卒業生とそのゲスト)も起立して賛美歌を斉唱。賛美歌なんてひさしぶり。賛美歌は単純な歌詞と単調なメロディなので、一緒にふにゃふにゃと口パクしているうちに、3番くらいになると一緒に歌っている気分になるから不思議。宗教色を排除したイベントが多いこの頃、この伝統的な式典はなかなかイギリスっぽい。
チャペルを出るときに、「寄付金の皿」を学生が持っている。ふと見ると、5ポンド、10ポンド札しか載っていない。ううむ、卒業式につけこんだ悪徳商法(商法じゃないか・・・)である。新しく免許を取った途端に献血の呼びかけをされ、免許所得の喜びに、ついふらふらと献血をしてしまうのと同じだ。仕方なく、5ポンドを寄付する。さっき、シャンペンも飲んだことであるし。

14:00 - 14:35
卒業生全員の写真撮影。このカレッジは150名くらいのようだ。M君も真ん中でにっこりしている。よかったね。
この後、彼らはガウン姿のまま、卒業証書を授与される Senate Houseまで街を歩く。このガウンはロンドンの「アイスバー」の防寒マントにそっくり。って、アイスバーのほうが真似たのか。でも、角帽はなし。角帽は教授だけのようだ。

15:20 - 15:50
Senate Houeseに移動して、授与式になった。ここで限られたゲストだけが招待券を見せて入場。ケンブリッジは30くらいカレッジがあるそうで、キャンパスはそれぞれ違うが、卒業式は全校この建物で行われるらしい。6月の数週間、カレッジ別に午前中に数校、午後に数校の卒業式がここで開かれる。プログラムには当日が卒業式のカレッジの名前と卒業生の名前と学部が載っていた。 

学長はサンタクロースみたいに白いふち取りのある赤いマントを着ている。この日は暑かったので、サウナのサンタだ。M君の額からも汗が吹きだしている。卒業生は4人ずつ呼ばれ、学長の前でひざまずき、証書を受け取るのが伝統・・・でも、ひざまずくのに抵抗がある場合は立ったままでOKだそうで、10人に1人くらいはお辞儀だけして立ったままでいた。

30分くらいで式は終わり、前庭で記念撮影と額縁の販売だ。A4くらいの卒業証書をカレッジ名の入った額に入れてもらうと・・・額縁が50ポンドだとー?学長の前でひざまずいたときの写真が20ポンド、庭で記念撮影をして、その写真と額縁そして送料・・・友人は200ポンドくらい払っていた。卒業につけこんだ悪徳商・・・。いや、一生に一度の記念ですからねえ。ここでケチってもしかたがないというか・・・。 

もてもてのM君は卒業生、在校生、女の「友人」に囲まれ、カフェテリアのディナーレディ(給仕係)のおばちゃん達の全員からも名残惜しそうな挨拶を受けていた。おまけに携帯には留学中にできた「友人」(もちろん女)からも国際電話が入っていたし・・・。がんばったのは勉強だけじゃなかったようである。

が、就職は決まっていない。ケンブリッジ卒業生でもこれである。「就職氷河期」なんだねえ。イギリス経済、まだまだ厳しいです・・・。

PS.M君のカレッジは設立されたのが最近のニューカレッジで、「一般の会社員」レベルの親を持つ公立学校出身者が多いらしい。伝統あるカレッジはプライベートスクール(年間学費1万ポンド)か、もっと古いカレッジはパブリックスクール(年間学費3万ポンド)の出身が多く、「ちょっと、飲みに行くか?」はニューカレッジではパブ(一夜20ポンド)オールドカレッジではシャンパンバー(一夜200ポンド)だそうである。カレッジ間の格差は学問ではないらしい。

投稿者 lib : 02:26 PM | コメント (0)

July 01, 2010

ギリシャ旅行 その2

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ホテルへの道すがら、公園にたむろする得体の知れない男たち・・・。日本から来ている親戚の子の顔には (治安は大丈夫なのか・・・?)という表情が浮かんでいる。 ロンドンでいえば、ハックニーかブリクストンの一部といった雰囲気で、夜ひとり歩きはしたくない感じである。

この公園の雰囲気に慣れるまでに少し時間がかかったが、どうやらギリシャの出稼ぎの人たちが 「公園に集まり、何をするでもなく、友達とウロウロする」のは社交のお約束のようである。 イギリスでもパブの中にはテーブルや椅子があるにもかかわらず、なぜ、わざわざ外で、しかも立って飲むのか? という疑問があるが、ギリシャも同じく 「社交の場とその集い方」 が公園ウロウロだと思われる。危険はないようだ。

公園といい、路上といい、露天商 (というほどのものか?)が多い。 アフリカ系は偽ブランドバックを地面に敷いたシーツの上に広げるか、サングラス(レーバンが中心、っていうか、レーバンのシールが張ってある)を折りたたみ式のテーブル(台になるダンボール箱は中国語のメーカー名入り)。 商品もシーツの大きさも同じため、 「のれん分けフランチャイズ方式」と思われる。 一度、夕方にいっせいに店じまいするのを見たため、思わず時計を見て、 (8時40分が閉店時間か?) と思ったが、警察のパトロールが来たらしい。 いちおう、非合法なわけね。 シーツなら並べてある商品をくるりと包めるし、折りたたみ式のテーブル上のサングラスはゴムで止めつけてあるため、あっという間に撤去が可能で、店開きも1分である。

アジア系はソックス、下着、台所用品と小物の商いだ。 このほかに子供の握りこぶしくらいの大きさでトマトや豚の形をしたゴムボールを売っている。 これを30センチ四方の合板の上に叩きつける。 と、ボールは生卵を割ったようにびょーんと広がる。 で、しばらくすると元の形にもどるというものだ。 私はこれが欲しくてたまらず、いつも横目で見ていたのだが、こんなものを・・・と思われるのがイヤで我慢していた。 ・・・最終日まではね。 結局、数個買って、イギリスで試したが、アテネと違って気温が低くボールが硬くなっているのか、叩きつけ技術が未熟なのか、イマイチうまく広がらない。 現在、練習中である。

みんな、偉いなあ。 こうやって、外国で働きながら(たぶん正式な労働許可証はなし)自国にいる家族に仕送りをしているんだろう。 家族には 「外国で自分の店舗を持ったビジネスマン」 と思われているはずだ。 同じく外国で働いてはいるが、いまだに親からのお小遣いを当てにしている誰か(注: 私)とは大違いである。

さて、一夜明け、観光の初日である。

やはり、ギリシャの目玉はパルテノン神殿でしょう、ということでアクロポリスに向かう。 予習活動のおかげで、アテネの名所旧跡の位置関係、地下鉄の路線と主要駅、遺跡や博物館の入場料等は頭に入っている。 現在、12ユーロ、4日間有効で、アクロポリス、ケラメイコ、アゴラ、ローマフォーラムと風の塔、ゼウス神殿に入場できる。

ほほほ、私は仕事ではボーッとしているけど、遊びになるとしっかりしてるのよー!

アクロポリス駅から、まずは逆方向のゼウスの神殿へ。 イギリス人の友人は 「ズース」と発音するが、いまひとつ、ギリシャ神話らしくないなあ。 日本人の親戚の子と 「ズースじゃなくて、ゼウスのほうが強そうだよね」とひそひそ相談する。 

「全能の神、ズース」 ほらね、いまいちでしょ?

そういえば、英語で 「まるでギリシャ語だ」という表現がある。 「わけがわからない」 「意味不明」 という意味らしい。 たしかに表示がギリシャ文字だとシグマだのベータだの、数学の時間を思い出す。 ホテルはビクトリア駅の近くだったのだが、英語表記の上のギリシャ文字は B (たぶんベータ)で始まっている。 日本人の苦手な V だが、「ヴィクトリア」 なら、V 始まりだろうと思うと大間違い。 英語圏の頭には大混乱であろう。あてね市、びくとりあ駅。

さて、ゼウス神殿。 デカイ! 柱しか残っていないのだが、天に届こうかという大きさだ。 ああ、アテネに来たんだな、と、しみじみと感じる光景である。1本の柱は横倒しになっていて、おでんの大根のように輪切り状態になっている。 そうか、倒れることもあるのか・・・。ここで地震が起こって、柱の下敷きになったりしたら、ヤバイ。ギリシャ神話は他の神話に比べて、天罰の下り率が高いし、危険である。 早く次に。

次はパルテノン神殿のあるアクロポリスの丘だ。 この日は第一日曜日で入場料は無料。 ユーロに対してポンドが弱い今、倹約できるものはしなくては。 さて、坂道を上がって、上がって、上がって・・・どこにあるんだ、パルテノン? できれば、矢印が欲しい。 名所は観光客の行く方向についていけば、いつの間にか到着しているものだが、観光客は不規則な動きを取り、一定の方向に進んでいない。 もしかして、道に迷ったかもと思い始めた頃、山の上に向かうような道が見えた。 ギリシャ政府にもう一度、言いたい。 わかりやすい矢印を立ててくれ。

続く

投稿者 lib : 04:34 PM | コメント (2)

June 24, 2010

義経千本桜 ロンドン公演

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ギリシャの話の途中だが、エビゾー(呼び捨て御免)ロンドン公演である。

ニナガワ(呼び捨て御免)のシェークスピア原作の歌舞伎公演のときは、バービカンで最後部の端っこ席だったため、イギリス人の友人は字幕を見ることができず、図らずも居眠りをさせてしまった。 今回は良い席を予約しようとの決意である。

場所はサドラーズ・ウェルズ。 馴染みのないホールなので、どのあたりが良い席なのか、今ひとつ不明である。 早めの予約を心がけたが、かなりの席がすでに埋まっている。2階席、つまりイギリス風には1階席の前の方を取った。

と、前日に行った知り合いから、
「上の階だったので、花道が見えず、がっかり」との情報を得た。
しまった、下の階がよかったのか! が時すでに遅し。 どうも、席運が悪いな。

公演が始まるまで、近くの公園で待機(駄洒落です)。
つぎつぎと日本人が劇場に到着。 着物姿の人もいて、いい雰囲気だ。 いいなあ、着物。 関係者? みたいな紋付(だよね?)一群もいて、期待は高まる。

実は双眼鏡を持っていった。 私たちの席から舞台全体はよく見えるものの、役者の表情まではわからない。 が、これがあれば例の 「目での演技」までよくわかる。 見得を切る場面になると友人に渡して、 「目、目!」と目演技チェックを強要。 歌舞伎鑑賞トレーニングを施したのだった。

双眼鏡のおかげで役者の鬘までしっかり見えた。 で、質問があるのだが、あの鬘は何でできているのだろうか? 女形のほうは髪の毛っぽかったが、男のほうの質感が ? で、材料は謎。 夜店で売っているお面のようなペコペコ感があったのだが・・・。 ご存知の方はご一報くださり賜れば、この身の幸せにござりまする。(偽、歌舞伎語)

私は歌舞伎に詳しくないので、友人への説明も適当だが、イギリス人向けのイヤホーンの内容はなかなか優れものだったらしい。 私自身は日本語でセリフを聞いていても、半分も理解できず、さらに歌になると、
「えー、&^#*X 静はぁ、あん、うぉー、 X!@ええッ#$%^&*」としか聞こえない。 (静御前が何かをしたか、したかったか、するつもりか、のどれかだろうな)程度を推測するのみである。 イヤホーンを聞いていた友人のほうが情況を把握していたかもしれない。

一幕目は派手な立ち回り、二幕目は舞踊中心、三幕目は早変わりと神出鬼没で客席を沸かせた。

歌舞伎の衣装は赤、紫、緑、金とド派手である。 隈取もグロくて、かっこいい。 わざわざ舞台を見るなら、やはり、ケバケバしいほうが楽しい。 しっとりとした弦楽四重奏ではなく、金管楽器がバリバリに入ったフルオーケストラ、オペラなら、トゥーランドットみたいなグランドオペラの華やかさだ。

「XX屋!」とかけ声をかける人もいる。 (風邪ひいてた? それとも、あれが地声?)
友人には先に説明をしておく。 つられてオペラみたいに 「ブラボー」なんて声を上げられたら恥をかく。 何せ、すべてがお約束の世界ですからね。 前列には5-6人のイギリス人が座っていて、掛け声がかかるたびに、何事だろうと、ギクッとふり返るのが可笑しかった。 日本人は当然のごとく受け止めて、動揺していないのを見て、そのうち、何となく、慣れてきたようだが、ときどき、
「・・・ジューイチダイメ・・・?」 とつぶやいていたのには受けた。 
十一代目だよーん。 エビソー(呼び捨て御免)は。

友人は女形という伝統は理解していた。 が、ミュージシャン(三味線と歌の人たちね)もほっそり体型なので、演奏がないときには、女形をやっているのかとの質問だ。 
「さっき出た人と顔が同じ気がする」
おい、あれだけの白塗りで顔の区別がつくのか?
「歌舞伎は伝統芸術でそれぞれの役回りに長い年月の練習と訓練を必要。 だから、掛け持ちは無理、無理」 と説明。 座長がモギリや照明係も兼ねる、ドサまわりの劇団じゃないんだからね。

エビゾー(呼び捨て御免)からはスペクタルなオーラが出ていた。 役者だねえ (そのまんまだ) おまけに3幕目はハードル走、平均台演技、連続ジャンプ、床運動に飛び込みの連続という みごとな 「お狐」 ぶりだ。 うっとりしましたぜ。

友人は 「見得を切る」のにすっかりはまってしまい、身体をカクンカクンと動かし、「よーぉ」などと言って嬉しがっていた。 楽しんでもらえて、連れて行ったかいがあった。 が、「目の演技」は無理。 20年早いわ。

投稿者 lib : 10:04 AM | コメント (3)

June 10, 2010

ギリシャ旅行 その1

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ギリシャに行ってきた。 5月の初め、4泊5日の旅である (はずだった)。

2月に飛行機の予約を取り、旅行サイトで評判のいいホテルも見つけた。 と、その後、ギリシャ経済危機でアテネのストライキの映像が流れ、ヤバイと思っていると、追い討ちをかけるようにアイスランドの火山灰が降り注いできた。 どうしよう?

・・・でも、自分から予約をキャンセルすると払い戻しはない。

3人で旅行予定だったのだが、1人はびびってしまい直前のキャンセル。 乗客の変更は可能というので、別の友人を誘った。 オンライン航空会社なので、オンラインで変更しなければならない。 サイトに入り、予約番号を打ち込み、乗客変更手続きをする。
えーと、この人を、こちらの人に変更したいっと、クリック。
「現在、変更できません。カスタマーサービスにご連絡ください」のメッセージ。 
そうか、では、しかたがない。 カスタマーサービスをクリックすると・・・ 
「現在、接続できません」 え? では一体どうすれば? 
「質問をメールでお送りください」 で、質問を送ると 
「現在、火山灰による混乱で回答に時間がかかります」

・・・困った。出発は3日後だ。

遅くなると明言しているメールの回答を待つ余裕はない。コールセンターに電話したら、 
「現在、火山灰による混乱で時間がかかります。ご了承ください」とテープが流れた。 覚悟の上で待つ。 待った。 待ったぞ。 待ちに待った。 コールセンターへつながるのを50分待ったのは生まれて初めてだ。 が、途中でトイレに行きたくなって、初回は挫折。 コールセンターに電話の前にはトイレをすましておかなければならないことを痛感した。今後の教訓とする。

再度のトライ。とにかく乗客を変更しなければ。

もう一度、コールセンターに電話。 「出発は2日以内ですか?」の質問に YES (本当は3日後なのだが) と、今度は15分でつながった。 
「というわけで、乗客の変更をお願いします」 
「追加料金が出ますがいいですか?」 とオペレーター。 コンピューターのキーを叩く音の後、「変更可能ですが、194ポンドになります」 
2月に予約したとき、ロンドンからアテネ行き、ひとりあたりの飛行機代が110ポンド(往復)だった。
「じゃ、194ポンドから110ポンドをひいたものが追加料金ね?」
「いいえ、194ポンドが追加料金です」
「はあー? 追加に194ポンドもするの?」
プツン、と電話が切れた。 ちょっ、ちょっと待ってよ。 切らないで! またつながるのにどれだけ時間が・・・。 また、つながるまでに延々と待たされる。
「追加料金は194ポンドです」
「はい、はい。結構です。変更してください」 
もうヤケだ。 好きなだけ追加料金を取ってくれ! 

規約によると乗客の変更は可能。 ただ、変更時の料金が予約時とは違うとき、下がっていたらその差額は返金しないが、上がっていたら、その差額を払えというものだ。 騙されているような気もするが、 「上記の規約に同意する」にクリックしているので、文句は言えない。 

オンライン航空会社は自由席なので、早いもの順に座る。 機内食はなく、サンドイッチやコーヒーが欲しければ別料金を払わなければならない。 いつもなら、 安いからしかたないわね、と思うが、今回は口が曲がっても安いとはいえない運賃だ。 だいたい、グループ内の乗客が別人となっても、人数に変わりはないのに、194ポンドも追加をぶったくるのだ?

さて、飛行機で3時間15分のアテネは快晴。 3.20ユーロを払い、空港からX95番のバスに乗り、市の中心へ。 乾いた土地にオリーブの木が並ぶ。 南国だねえ。 太陽の明るさなんてイギリスの12倍(当社比)はあるね。

実は空港から市内への交通を心配していた。 経済危機のせいで交通ストでもあるのではないかと思ったのだ (後に予感的中)
さて、シンタグマ広場に到着。 ここからは地下鉄だ。 15ユーロで1週間のパスを購入した。

ホテルは旅行サイトの人気投票第3位に輝くが値段はリーズナブル。 ホテルは清潔できれいだし、スタッフもフレンドリーとのコメントが続く。 ただ、まわりの環境はちょっと・・・だそうだ。 駅からホテルまで途中の公園には観光客風でもないが、ギリシャ人でもない 「出稼ぎ」風で得体の知れない感じの男たちが何をするでもなく、たむろっている。 何なんでしょう、この人たち?

続く

投稿者 lib : 03:36 PM | コメント (2)

May 27, 2010

バッドカンパニー・イン・ブライトン その2

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さて、ブライトンである。

フィッシュアンドチップスの他に、もうひとつミッションがあった。 それは、

「かもめの餌づけ」 というものである。

バッグに食パンを数枚忍ばせ、これをかもめにやるつもりだった。 数年前にブライトンに遊びに来たとき、誰かが餌を高く放り投げ、それをかもめが空中で次々とキャッチするシーンを見て以来、ぜひ、これをやってみたかったのだ。
晴天に恵まれ、混雑するビーチをかもめの群れを捜して彷徨。 いないな、かもめ。 どこだ? 空を飛んでいるのは見えるものの、餌を求めて地上をうろつくかもめは皆無。

「お腹すいてないんじゃないの?」 と友人。
そうだな、これだけ大量の観光客がボタボタ食べ物をこぼしながら歩いていれば、人に媚びなくても、メタボになるくらい食料は豊富だろう。 
「あ、いた!」 と空を舞うかもめにパンを高く・・・投げることができない。 かもめもわざわざ低空飛行する気はないらしく、パンは空しくポタリと地上に落ちる。 パンが軽すぎるのか、私に投球(投パン)能力が欠けるのか。 何度かトライしたが、すべて失敗。 しかたなく、そのあたりをポッポと歩いている鳩にパンを提供した。
「今度は冬に来ようよ。 観光客が少なくて、お腹すかしてるから、きっと、うまくいくよ」 と友人に慰められた。

かもめに無視された私は傷心を抱え、コンサートのあるブライトンセンターに到着。 小ぢんまりしたホールで、席は前から10番目くらいのいい感じ。 気を取り直す。

しかし、やっぱり、観客はおやじばかりだ。

ローリングストーンズやZZトップのときもそうだったが、観客の年齢層が高いな。 後姿はハゲと白髪ばかり。 ぽっちゃり体型の奥さん連れで来ている感じのカップルも多い。 友人に聞くと、バドカンのメンバーは60歳前後なので、ファン層もそれなりだろう。 「懐メロ大会」のようである。

前座はジョー・ペリー・プロジェクト。 ジョーのつるりとした顔は整形か、ボトックスか、それとも舞台メイク? アイシャドーの濃さがやけに目につく。 数歳しか違わないストーンズのメンバーがシワだらけなのに比べて、不自然なまでの滑らか肌である。 エアロスミスのわがままな 「歌姫」 スティーブンに傷つけられたエゴを慰めるべく作った趣味バンドがジョープロだ。 で、選んだメンバーはミュージシャンとしては優秀なものの、なんとも 「華のない」連中だ。 スターは自分だけでOK という選択だろう。 シンガーなんて、アマチュア学生バンドのボーカルみたい。 

さて、バドカンの登場だ。

と、後ろからバーっと人が流れてきて、ステージ前に殺到。 ああ、ヤバイ、と私も思わず前に走る。 別にファンじゃないけど、私の身長だと、前に大柄なイギリス人が立つと何も見えなくなるのよね。 で、気がつくと前から3番目という 「大ファンのポジション」 に立っていた。

近くにドレススーツ姿の東南アジア系の女性がいた。(50歳くらい) 無理やりダンナに連れてこられたのかな? と思っていたが、最前列に立って熱狂のダンシングだ。 まわりにはイギリス男(中年)が踊り狂い、わけのわからないことを叫びながら、ぴょんぴょん飛んでいて、怖い。 「前がよく見えないから」 ステージ前に来た私は完全に浮いている。 もう後戻りはできないし。 友人ともとっくにはぐれている。

「ヴォイス」 こと ポール・ロジャーズはその名に恥ない美声の持ち主。 (当然だが彼はボーカルだった) 「ボク達の青春時代のアイドル、ヴォイス」には後光が差している。 観客を見渡す視線は 「みんな、よく来てくれたね」 と慈愛に満ちた観音様のよう。 伝説の観音様を目の前にした最前列は、うっとりと忘我の境地である。 

バドカンの曲のひとつに「キミを思うとき、ボクが思うのは 『ラブ』 ああ、ダーリン、キミと愛しあいたい」 というのがある。 その曲になると聴かずに飛ばしていたのだが、大人気曲らしく、ホール全体での大合唱だ。 セックス・ドラッグ・アンド・ロックンロールな歌詞に慣れている私にしてみれば、「小さい秋見つけた」を浪々と歌われたような、顔から火が出る恥ずかしさで、身の置き所がなかった。

とはいえ、マイクスタンドを振り上げてくるくる回す (有名なステージアクトらしい)ポール・ロジャーズを目前にして、
「最前列で見るロックコンサートは最高」 と大満足。 

歌がうまいな、ポール・ロジャース (だから、「ヴォイス」なんだってば)

投稿者 lib : 12:11 PM | コメント (4)

May 20, 2010

バッド・カンパニー イン ブライトン その1

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バッド・カンパニー(以下、バドカン)のコンサートに行ってきた。

私が見たかったのは前座のジョー・ペリー・プロジェクト(以下、ジョープロ・・・なんか変)。 ジョーはエアロスミスのギタリストで、ジョープロは彼の 「趣味バンド」である。 去年の9月、エアロスミスのアメリカツアーを見るべく、わざわざNYに行き、ニュージャージーとNYのコンサートのチケットを1000ドル近くかけて購入したのに、ボーカルのスティーブン・タイラー (以下、ステ・・・もう、いいか)がステージから落ちる事故があって、残りのツアーはキャンセル。 もう飛行機はキャンセルできず、エンパイアステートビルの展望台から 「スティーブンのバカヤロー」と叫んだのだった。 

と、いうわけで、友人が 
「バドカンの前座にジョープロが来るよ。 行きたい?」
と同情の声をかけてくれたので、いそいそと出かけたのだった。 って、ジョーのファンではないのだが。 お目当てのロックミュージシャンに会えないので、その辺をウロウロしているローディとお話して喜ぶ、に近い安易な行動である。 

さて、ジョープロはともかく、バドカンは超有名バンドである、ようだ。というのも、名前は聞いたことがあるものの、曲を聴いた記憶がない。 アメリカのバンドかイギリスのバンドかも不明だったくらいの認識だ。 ポール・ロジャースの名前も聞いたことはあるが、ボーカルなのか、ギタリストなのかもはっきりしなかった。 
「ポール・ロジャースっていえば、 『ヴォイス』 『ヴォイス』といえば、ポール・ロジャース」
という友人の暗号のような言葉にも、首を傾げた。

前回、ZZトップのコンサートに行ったときの教訓がある。 
ZZトップは本来エアロスミスのアメリカツアーで前座を務めるはずだった。 が、私はこのバンドには馴染みがない。 ZZトップベストヒットみたいなものをiPadに入れてもらい、数週間、毎日のように聴き、コンサートまでには一通りの曲に馴染むように予習したのだ。 

ロックコンサートに行くにも、この準備周到ぶり。 日本人の真面目な国民性を自分に感じるね。 この真面目さが仕事に生かされないのが不思議だが。

さて、バドカンのベストヒットをiPadに入れてもらう。 ・・・うーむ、18曲中、聞き覚えがある曲は・・・ゼロ だ。 本当に有名なのか、このバンド? ZZトップのときもそうだったが、あまり、自分の好みでないバンドを聞き続けるには忍耐が必要だ。 「継続は力なり」 とつぶやきながら、ほぼ毎日聞き続けた。 

さて、コンサートの当日。

努力のかいあって、ブライトンに向かう途中、車内に流れるバドカンの曲・・・ちゃんと一緒に歌えるじゃないの。 ま、コーラス部分だけだが。

ブライトンに着いた。 いやー、いい天気。 イギリスで遠出して、いい天気に当たる、というのは1億分の1くらいの確率なので、出だしは快調といえる。

実はこの日、もうひとつのミッションがあった。 ランチに 「フィッシュ・アンド・チップス」 を食べるというものだ。 イギリスのファスト・フードといえば、 「ケバブ (トルコ料理というか、あのあたり) と 「カレー」 (インドじゃん、もちろん、というか、あのあたり)の今日この頃、あえて、 伝統的な「フィッシュ・アンド・チップス」である。
「海辺といえば、やはり、フィッシュ・アンド・チップスでしょう」 ということだ。 ま、魚もポテトも冷凍だと思うので、海辺でも街中でもあまり違わないかもしれない。
ハリーなんとかという、有名なフィッシュ・アンド・チップスの店に入り、計画通り・・・ではなく 「フィッシュケーキとサラダ」を注文した。 フィッシュは衣がしつこいし、ポテトは嫌いだったのを注文する瞬間に思い出したからだ。

久しぶりのブライトン。 何年ぶりかしらん。 ブライトンはゲイのメッカらしい。 イギリスだけでなく、ヨーロッパ中からゲイのお兄さんたちが集まってくるそうである。 たしかに、男 X 男の二人連れが多い。 ・・・ただのお友達の可能性もある。 ゲイのビーチであることを知らずに、ヘトロの男二人が遊びに来たりすると、どきまぎするのではないか。

その後、夕方から夜にかけて、派手な格好やユニフォームで闊歩する若いお姉さんたちのグループが出没。 結婚式前にハメをはずして飲みまくり騒ぐ 「ヘン・ナイト」らしい。 お揃いのTシャツに 「尻軽娘 ジェーン」 だの 「巨乳 ハンナ」だのといった、親が見たら泣きそうなネームを各自つけたグループ。 「ストリッパーのプロモーション?」みたいな半裸でミニスカートのグループ。 昔は 「嫁入り前に一度だけ、ハメを外す」のがヘン・ナイトだったのだろうが、いまどきの女は毎週、ハメをはずしているだろうから、何を今さら、って気もする。

続く

投稿者 lib : 05:44 PM | コメント (0)

May 13, 2010

グラマラスな総選挙

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イギリス総選挙である。

お調子者トニー・ブレア前首相に美味しいところを全部取られ、雲行きが怪しくなったあたりで首相の座を譲られた渋顔のゴードン・ブラウン。なった途端に地下鉄テロは起きるわ、総選挙前には経済危機は起こるわ、で本人は悪くないのに「次は間違いなく保守党に政権交代」と太鼓判を押されての選挙戦である。

年も若く、舞台化粧バリバリ、ボトックス注射でしわ取りをしてそうな保守党のデビッド・キャメロンに対抗して、慣れない笑顔を作るブラウンは見るのが痛々しいほどである。キャメロンの政治能力は不明だが、苦虫顔のブラウンに比べれば、フレッシュなイメージは有利。さっそうと自転車で国会通勤する姿も、ま、良いでしょう。自転車にはボディガードが乗った車が後ろからついてくるので、最初から、その車に乗ったほうが早い気もするが。

労働党、むすっと顔の中年男ブラウンと保守党、ボトックスつるりん顔の若造キャメロン(注:ボトックス使用の裏づけはありません)の一騎打ちと思われたこの選挙。思わぬ伏兵は自由民主主義党のニック・クレイグ。ボトックス必要なしの若さ。利権がない弱小党がゆえのスキャンダルフリーな新鮮さ。テレビ討論で、その議論テクのうまさを披露し、一気に人気に火がついた。クレイグは今まで「この人、誰?」というくらいに知られていなかったのに、急に祖父側は北イギリスの労働者、祖母側はロシア貴族という家系図まで新聞に登場し、ファンがついたようである。

今まで若さでちやほやされていたのに、新人OLの入社で中堅ところに追いやられた気分のキャメロンの恨みは、クレイグに対する攻撃で明らかである。「若造」の座をクレイグに奪われたキャメロンはベテランではないが、それほど若々しくもない中途半端な位置に置かれてしまった。注入するボトックスの量も増えたことであろう。って、ボトックスの証拠はありませんが。

さてキワモノ政党の代表はBNPだろう。移民排除がスローガンで、人種差別バリバリという時代錯誤のユニークさだ。ニュースダネになりやすいので、党首、ニック・グリフィンの飼い犬の名前が「アンネ」と「フランク」だとか、ゴシップが飛び交った。(本人は否定)人種差別発言をしている隠し映像をさんざん公表されているのに、「人種差別はしない。そんな事を言った覚えもない」とシラを切る態度もいかにも一筋縄ではいかない政治家らしくナイスだ。政党にありがちなチャットルームがないのは「党員は教養がない下層階級が多く、コメントは文法ミスとスペルミスばかりで恥ずかしいから」なんて噂もあるくらいだ。(真実味があるところが怖い)

このBNPの女性候補者はイスラム教徒をバカにするべく、ブルカ(あの黒ずくめですっぽり身体を覆うスタイル)にスリットを入れて、網タイツを履き、イスラム教では禁じられているアルコールを手にパーティを楽しんでいる写真をすっぱぬかれたお茶目な女だ。彼女が国会議員になったら、世も末だと思うのだが、BNPの正式な候補者であるらしく、この政党の懐の深さを感じさせる。

ブラウン夫人のサラはこの4年できれいになった。首相就任時に官邸前に並んだサラ夫人は、もっさりした体型にボーっと締りのないメイクとダサいスーツ姿で登場した。それが、元モデルで洗練されたフランス大統領のカーラ夫人と写真を撮られたりするものだから、「・・・イギリスの負け」を思い知らされた。が、チャリティイベントでナオミ・キャンベルとお友達顔で並んだりしていくうちに、体型もすっきり。山出しのおばさんだったのにねぇ・・・公の視線は女を磨くものですね。

キャメロン夫人は「良家のお嬢様」らしい。保守党というくらいだから、難民としてイギリスにやってきて、貧民街育ちで前科持ちから更正した女が妻というのではまずいだろう。親のコネで就職したようなキャリア志向のない、品のいい仕事をしているのも、奥様らしく好感が持てる。選挙中に妊娠までしてしまったのも、宣伝効果を狙ってのことか、それとも「事故」か、気になるところだ。

さて、選挙結果は不安定な連合政権。どの党も過半数が取れず、人気のわりに議席数を失ったクレイグの協力を求めて大騒ぎ。やっと政権は保守党に決まり、キャメロンが女王陛下にご挨拶に出かけた様子である。女王にとってみれば、12,13人目の首相であり、「はい、はい、ご苦労さん。じゃ、がんばってね。で、あなた、誰だっけ?いいわ、どうせ数年で変わるんでしょ?名前を覚えるまでもないわね」なんてものだろう。

地元の駅に候補者が立っているわ、家に政党のパンフレットが配られるわ、シティでは「支持政党のところから取ってください」とクリスプが並べられているわ、とお祭り騒ぎの日々だった。が、こーんなに税金を取られているのに外国人の私には選挙権がない。代わりに地方税を割引してほしい。でも、日本で何回選挙に行ったっけ?もし、ここで選挙権があって、私は投票に行く・・・かな?

投稿者 lib : 03:34 PM | コメント (0)

April 28, 2010

対岸の火山

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アイスランドの火山が噴火した。

日本人には珍しくもない火山。 阿蘇山、桜島、三原山・・・煙がモクモク上がる火口も絵はがきでおなじみだ。 が、アイスランドの火山のせいでイギリスの飛行機がすとんと止まってしまった。 それも全部。 しかも、6日間。 火山灰は上空1万数千メートルあたりを浮遊しているとかで、下界の私たちに見えるのはきれいな青空だけ。

親戚の子が日本から遊びに来ている。 ま、本人によると 「短期語学留学」だそうである。 週に100ポンドではろくな部屋も見つからないロンドンだが、私の家に寄宿中で、部屋代はもちろんタダ。 食費も必要なく、これもタダ。 というわけで、浮いたお金でヨーロッパの旅に出ていた。

飛行禁止令が出たのは水曜日の午後だった。 イギリスにもどるのは土曜日。 まだ数日の余裕があると思っていたが、土曜日にも禁止令は解かれないまま。 ・・・どうやってイギリスに帰るのか?

旅行先はスペインのバルセロナである。 いつ飛行解除になるかわからないので、長距離バスに乗るように指令。 が、土曜の朝にして、次のバスの予約が取れるのは3日後の火曜日の夜。 それも、バルセロナからロンドン行きはなく、パリが終点だ。 とりあえず、そのバスのチケットを購入させた。63ユーロ。

今度はパリからロンドンまでの乗り物をゲットしなければならない。 ユーロスターは片道が165ポンド。 えっ、165ポンド?! いつもなら、往復でホテル1泊つきで、69ポンドとかじゃないの? と驚いている内にチケットは295ポンドに跳ね上がり、売り切れた。

1、2日で収まると思っていた旅行客はだんだん焦ってくる。 バルセロナとロンドン間の乗客が1日で500人いるとして、2日で1000人、4日で2000人の乗客が飛行機に乗れずに待機しているのだ。 飛行禁止が解除されたとしても、それだけの人数が飛行機に乗れるまでにはどれだけの日数がかかるのか? 長距離バスでの移動は避けられなくなった。

パリとロンドン間のバスの情報を収集する。 が、ヨーロッパのバスは出発地からのみ、つまり、パリ発のバスはイギリスの会社からは予約できないらしい。 で、パリ発のバスの予約サイトに入る。 まず、言語を選ぶ。 さて、英語・・・っと。端っこのほうは英語だが、予約部分は、

・・・なんで、フランス語なんだ?

もう一度、英語を選ぶ。 さて・・・やっぱりフランス語じゃないかー! 言語を選ぶ意味があるのかー?

出発地、到着地、がフランス語で書いてある。しかたなく、そのままフランス語で半分、内容を推測しながら、予約手続きを進むと・・・ラインが切れる。 もういちど、・・・フリーズする。 フランスのバス会社のXXXX! 

・・・切れそうだったのは、私の頭だ。

親戚の子の携帯電話の電源もクレジットも切れる寸前、私はテキストを送った。

「策は尽くしたが、予約は取れない。 パリでなんとかしなさい。 成功を祈る・・・」

とりあえず、パリからカレーの港までたどり着ければ、フェリーでイギリスに帰国できるとの情報も伝えた。 南フランスではこんな非常事態なのに鉄道スト決行中である。 さすがはフランス人・・・。 

このあたりになると、イギリスも海軍の船を出すの出さないのという騒ぎだ。 海軍の船で帰国というのも思い出に残りそうだが、いつになるのかは不明。 待ってはいられない。 イギリスでのサバイバルで一番重要なのは、イギリス人を頼らないということである。信じられるのは自分だけ。 (フランス人はさらに当てにならないが)

ヨーロッパは地続きなのがありがたい。 親戚の子は、バルセロナからバスで15時間かけてパリへ。 次のバスは4日後と聞かされたが、直前でキャンセルが出て、その日の内にロンドンまで、さらに7時間のバスの旅、50ユーロ。 ロンドンまで Xキロの表示が見えたとき、守護霊の姿が浮かび、思わず泣いたらしい。

無事に帰国となったのである。めでたし、めでたし。 さて、・・・これから旅行保険の請求をしなくっちゃ。

投稿者 lib : 11:33 AM | コメント (0)

April 14, 2010

ストーンヘンジ

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ストーンヘンジに行ってきた。

在英10数年をして初めてのストーンヘンジ訪問である。 一度、行ってみたいと思っていたもののチャンスがなかったのだ。

日本にいたときには、外人の友達に頼まれて、くりかえし浅草や金閣寺に連れて行った。 イギリスでは、日本からの友人、親戚、うちの会社にロンドン出張してくるビジネスマンを連れ、ロンドン塔、ロンドン・アイ、マダムタッソーのわら人形館、じゃなくて、ろう人形館でした、に何度も案内させられている。 

ストーンヘンジも希望訪問地として人気が高いが、何せ交通の便が悪い。 公共交通機関で行けなくもないとはいえ、乗換えが面倒だ。 旅行社主催の観光バスも勧めたが、イギリスに無料ガイド(注:私のことだ)がいると、わざわざ、お金を払って観光バスに乗る気にはならないらしい。

車で行くのが一番だが、私は運転ができない。 いや、免許はあるのだが、運転能力の著しい欠如が誰の目にも明らかなため、危険な行為として自戒している。 

今回、また日本の親戚が来て、ストーンヘンジに行きたいという。 と、話の流れで友人から「連れてってあげるよ」 とのお言葉。 やったー。じゃ、私も一緒に。

イースター休暇にドライブという交通渋滞必至の無謀な計画だが、イギリス中、天気が悪いという予報で、遊びに行くのを控えた人が多かったのだろう。 道路はガラガラだ。 ロンドンから2時間足らずという近郊にありながら、初めてのストーンヘンジにわくわくする。 

親戚の子はイギリスの田園風景に興奮している。
「わー、丘だ、草原だ、馬もいる。 あ、羊だ、羊がいる。羊だよー」
そういえば、私もイギリスに来て間もない頃、草原に羊が草をはむのを見て、 (羊だ、珍しー)と思ってたな。 草原に羊や馬がいるって、日本ではそう見られない風景だもんね。

「そうだ、明日はラムのローストディナーよ」と言ったら、いやな顔をしていたが。

さて、着いた。 ストーンヘンジと初めてのご対面だ。

横殴りの雨の中、広々とした草原にそそり立つ神聖なるストーンヘンジは、

・・・思ったより、小さい。

もっとドーンと大規模なものを期待していたのだが。 でも、最大の石は45トンもあり、トラックもクレーンもなかった時代に、これだけの大きさの石をウェールズから運び込み、積みあげている。やっとの思いで、これを建造し、そのあげくに、
「えー、思ったほど、大きくないじゃん」なんて言われたくないだろうな。

解説をしてくれるオーディオテープを借りた。 

「なぜ、何100年もかけて、建設したのでしょうか? そして、何度も改修工事を行ったのでしょうか?」
わかる、わかる。 イギリスでは何を修理するにも、建設するにも異常に時間がかかり、無計画に何度もやり直すのよね。 2000年のミレニアム記念にロンドン・アイを作ったときも、元旦に間に合わなかったという、みっともない例もあるし。 ストーンヘンジ建設に数100年かかったのは、イギリスでは伝統的に工事が遅いという歴史的証明だ。 ロンドン・オリンピックのスタジアムも間に合うのか疑問である。

「どうやって、石を運んだのでしょうか? 謎です」
「建設の目的は何だったのでしょうか? 謎です」
「なぜ、建設を中止したのでしょうか? 謎です」

すべてが謎で終わるミステリアスな説明テープであった。

ま、人間の行動なんて説明がつかないものだ。 だって、ロンドンから2時間もかけ、たかが石を見るために、6ポンド90の入場料まで払っている私たちの行動だって、いったい何の意味があるのか? ただの石だよ、石。 ちょっと大きいけど。 (ついでに日本語のガイドブックも買いました。 こちらは4ポンド99)

天文台としての役目とか、宗教行事の祭壇というのが有力な説らしいが、
「作りたかっただけ。 だって、かっこいいと思ったから」 なんて、簡単な理由かもしれない。 当初は目的があったかもしれないが、100年たち、工事人も世代交代をしている内に、「何のために作っているのかはわからないけど、昔からこの地域の公共工事だから続けている。予算もずっと計上されてるし・・・」なんてね。

投稿者 lib : 10:54 AM | コメント (4)

March 29, 2010

映画 「秋日和」

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「秋日和」 という映画を見に行った (連れて行かれた)。 監督は小津安二郎。 主演は原節子と司葉子。 

映画に興味のない私だが、監督の名前は聞いたことがあるし、原節子といえば・・・原節子といえば、・・・よく考えると、彼女の映画を見るのも初めてだ。 だいたい、映画が始まってから、15分近くたってから、どの人が原節子かわかったくらいである。

郊外の小さな映画館で席は70席 (思わず、数えた)ポップコーンマシーンのない映画館なんて、珍しい。 コーヒーショップのお兄さんまで、
「いやー、小津はいいですよ。 あのカメラワーク、本当にすごいです」
と、映画評論家のようなことを言う。 聞く私のほうに素養がないのが残念だが。

日本人らしき顔が数人見えた以外は、すべてイギリス人。 それも 「文化人と呼んでいただいて、結構ですよ。 こんな外国映画の良さがわかるには、それなりにインテリジェンスが必要ですからね」というタイプである。 

日本映画ということだけで誘ってくれた友人に 「映画の内容知ってる?」と聞かれ、
「えーと、有名な監督による、有名な女優が出る映画。 ストーリーは知らないけど、たぶん大きなイベントはなくて、淡々とした日常の話と思う」 と答え、
「ラブストーリーなの?」 の質問には
「さあ・・・。でも、きっとラブシーンはないと思う」
と、後で考えると、まとはずれでもない予測だった。

適当な席に腰を落ち着けると、前の列に背の高い男が座り、彼の頭でちょうど字幕の部分が隠れてしまった。

・・・ふふふ、いいのよ。 だって、私には字幕は必要ないのよー。

日本に一時帰国すると、会話に看板に新聞に広告、のすべてが100%理解できることに新鮮な気分になるものだ。 (注:女子高校生の会話を除く)

「あら、おじさまったら、意地悪をおっしゃるのね。 わたくし、もう、知りませんことよ」 なんて、日常生活にありえないほど不自然なセリフが棒読みされたりするが、それでも100%わかる。日本映画っていいねえ。 

さて、昭和35年、芸術祭参加作品というタイトルが出た。 何十年前の映画だ? 原節子って、まだ生きていたっけ? 俳優の名前が流れると、意外にも、あちこち俳優の名前に見覚えがある。 が、この映画ではずいぶん若い頃で判別できなかった。

うわー、昭和35年って、こんな感じだったんだ。 オフィスやその応接室、銀座のバー街、「青年たちによるハイキング」のシーンなんて、あまりの 「爽やかさ」 にめまいがしたくらいだ。 映画そっちのけで、昭和ノスタルジーにひたってしまった。 が、寿司屋だけは店の作りもメニューも同じだな。

これが原節子か・・・。 実はあまり美人とは思えなかった。 この映画ではお母さん役だったから、年もそれほど若くはないのだろう。 しかし、優雅。 身のこなしが流れるようにエレガント。 それでいて、かもし出される色気。 日本の堅気の女の色気の最高峰を見せてもらった。

セクシーといえば、最近は肌と体の線をバンバン出して、ストリッパーみたいな振り付けのシンガーが多いが、少し原節子を見習ってみなさい。 (無理か・・・)

男同士の友情、母と娘の愛情というのがテーマだったが、死んだ夫に操を立てる、などと、理解のできない項目もあった。 とりあえず、昭和の風景と原節子の優雅さにうっとりとしているうちに映画は終わった。

ロビーで友人を待っていると、 「文化人風の」男がふたり、つまり、自由業で、金に不自由がなく、商業主義はダサいと思っている感じのイギリス人が話している。 

「日本人の友達が欲しいんだ。誰か知り合いはいないかな?」
「今はいないね。 東京の友人はみんなシンガポールに移動しちゃったからな (マネーマーケットの人たちらしい)」
「日本人の女性と話してみたいな」

私はそーっと、その場を離れた。 「あ、ところであなたは日本人ですか?」なんて、声をかけられたら大変だ。 原節子を見て日本人女性のイメージを浮かべた後で、私と話すのは、お互いに不幸だと思ったからである。

投稿者 lib : 09:19 AM | コメント (0)

March 09, 2010

税金対策

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税金を払うのはイヤだ。 

が、堅気の勤めをしている以上、しかたがない。ペイスリップ(給料明細)では、グロスとネット、税金にNHSの欄があるが、 「手取り額」しか見ないようにしている。 だって、気分が悪くなるもん。

さて、シティの超大型ボーナス風潮が、この経済危機の一因として、さんざん非難の上、来月より15万ポンド以上の所得には50%の所得税が徴収されるとのことである。

・・・しっかり徴収してくれ。 と、今回は珍しく税務署に声援を送りたい。

シティ勤務と言えば、みんな高給取りのようなイメージがあるが、大間違いである。 私をはじめとして、安月給のへなちょこ勤め人だって山ほどいる。 で、もちろん、高給を取る鬼畜のような人非人・・・いや、成功したビジネスマンも多いが。

所得税の最高は40%だ。 その昔、イギリスの所得税は70とか80%だったと聞いたことがある。 ま、収入の80%を税金で取られたら、働く気はなくなるだろうな。 が、安月給の身としては、数ミリオンも稼ぐ人なら、60%くらい税金で取られたって、生活に困ることもないだろうと冷たく思う。

というわけで、この50%所得税、大賛成である。 50%所得税の火の粉が降りかからない位置に、というか、かけ離れた位置に、というより銀河系の彼方にいる私にはフランス革命の市民のような気分だ。ぜひ、貴族にはギロチン台にあがっていただきたい。

シティではこの税金に大反対だ。 シティの 「貴族側」の声だが。 
「税金を上げると有能な人材が流出する」
「イギリスを出て、他の国にオフィスを設置する会社が増える」
「マネーマーケットとしてのシティの魅力が半減する」

さて、シティの 「市民側」にいる私は、
「行け、行け、どんどん他へ行けー。行けるものなら、行けー。 でも、今まで他に行かなかったのは理由があるんじゃないのか?」
「他の国に行きたいなら、行けー。 本当に行きたいんだな?」
「シティは魅力的だぞ、あんたたちがいても、いなくても」
と言いたい。

確かにマネーマーケットにも伝説的なスーパースターは存在する。 が、シティで働くスタープレーヤーのほとんどは、ちょっと勘のきくサラリーマンではないだろうか? 才能の流出といっても、3オクターブの声域があるとか、 100メートルを8秒で走るとか、東京から博多までの駅名を全部言えるとかの特殊な才能でなければ、替えの人材はいくらでもいるわい。 

スイスはロンドンの会社が逃避しようと考える国のひとつらしい。 

スイスは風光明媚な国だ。 チーズもチョコレートもおいしい。 でも、田舎だ。 山と雪と羊に恵まれた田舎だ。 「ホールレイヒー」と歌うホリディには最高だが、罪深い都会の楽しみには欠ける。 

シティのトレーダーは貯金に励むタイプとは思えない。 稼いだ金を湯水のように使うのが好きらしい。 でなければ、同僚数人で、ちょいとメイフェアの店に行き、シャンペンを文字通り浴びるように飲んで、一晩で数万ポンドも使うものか? ロンドン以外のどこで、ここまでの下品かつ、楽しい金の使い方ができるだろうか? 

エセックスから遠征してくる人工日焼け、超ミニスカートのゴールドディガー(玉の輿 狙い女)にチヤホヤされることもなくなる。 スイスの女の子はどんなにかわいくても、脱毛処理をしないので、イギリス人の男は腰が引けるだろう。 ノースリーブの夏は特に・・・。

おまけに、ここはロンドンよりもさらに物価が高い。 ロンドンで買える7ミリオンポンド位の家が、スイスでは9ミリオンポンドするらしい。 2ミリオンポンド高いわけね。 2ミリオン・・・。

新聞によると、25万ポンドの年俸で75万ポンドのボーナスを貰う人は、約10万ポンド手取りが減るそうである。 が、10万ポンドを節約するために、同じ大きさで2ミリオンポンド高い家に引っ越すのは足し算、引き算のできない人である。

50%所得税で、シティは何を失うでしょうか? 

投稿者 lib : 12:27 AM | コメント (3)

February 23, 2010

アイス・バー

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アイス・バーに行った。 店から招待された友人の招待だ。 (つまり、おまけ)

開店したのは何年も前だから、既にトレンディなバーとは呼べないかもしれないが。

リージェントストリートから奥へ入った一角で、零下5度に保たれた氷の部屋に40分ごとのセッションで入れ替え制。 バーで出されるのは、ウォッカ、またはウォッカ、あるいはウォッカである。 焼き鳥、枝豆、冷奴などのおつまみはなし。

土曜日の8時前。 フレンドリーなお兄さんが予約客名簿を持って、バーの前に立っている。 友人が名前を告げると、もともと良い愛想が1000倍になった。

「あーら、いらっしゃい。お待ちしてたのよ」
(ぜったい、ゲイだな)と確信する。
ヘッドホーンにくっついた口の前のマイク(電話のオペレーターがつけているようなアレ)に話しかける。
「お見えになったわよ。 ええ、いいわ。 今、中にお連れするわね」
(案内役の人の日本語の訳が 「女言葉」 なのには特に意味はありません・・・って、あるかな。 だって、そんな感じに聞こえたし)

「さ、こちらへどーぞ」
とロープで区切られた場所に案内される。 

・・・これって、もしかして、VIP待遇ってやつ?

順番待ちの数十人を飛び越して、列の一番前にある椅子で待つ。 貧乏性の私は、
「ふふっ、私たちって一般の客じゃないのよね・・・VIPだしー」
という気分にはならず、
「ええっと、申し訳ございませんね。 いや、お待ちの皆さんに失礼するつもりは全くございませんです。 ちょっと知りあいなので、ちょっくら、お先に。 いや、ご迷惑はおかけしませんので、お気になさらぬよう・・・」
と心の中で謝りまくったのだった。 ま、自分が列に並んでいて、誰かがエラソーに一番前に案内されたら、
「何だー、こいつら」 と思うだろうし。

さて、8時になった。
傍観マント、ではなく、防寒マントを頭からバアサッと被せられる。 ミトンの手袋つきだ。 フードもついていて、それをかぶると三角形のフェイクファーから、顔が飛び出る仕掛けだ。

いざ、アイス・バーへ。

天井と床は鉄板だが、壁、テーブル、カウンター、椅子(の上にはクッション)はすべて氷である。 おおー、さっむー。何で、わざわざ冬にこんな所へ連れてくるんだ?

「とりあえず、ウォッカね」 といっても、ウォッカしかないのだが。
ストロベリー、レモン、ラズベリーと色々なフレーバーのウォッカが、氷でできたグラスにサーブされる。 バーテンダーがマドラーで混ぜると、あーら、不思議、蛍光色に光るではないか。 何が光るんだろうと調べているうちに、それが鼻について、赤鼻のトナカイならず、蛍光鼻の日本人、になってしまった。

このバーは飲み会のスタート地点として大人気だそうだ。 これから飲みに行くぞーという、やる気満々のお姉さんたちがたくさん来ていた。 防寒マントの下は、ノースリーブのトップに、超ミニスカート、そして、ヒール15センチのスティレトゥといういでたちだ。

友人もポーカーンとお姉さんたちに見とれている。 マントの横はすっかり開いているので、膝上30センチのスカートから伸びた足(たぶん素足)が丸見え状態。
「いやー、薄着だから風邪をひかないかと心配で・・・」
そうかい、心配で見てるのかい?
「寒いよー。 しっかり着込んで、底の厚い靴を履いておいで」 という言葉を信じて、冬山登山のような格好で来た私は、パーティドレスのお姉さんたちの横に突っ立って、バカ丸出しである。 おまけに鼻は蛍光色に光っているし。
しかたなく、飲み放題のウォッカをガバガバと数杯飲んだ。 

40分が過ぎて、入れ替えだ。 外に出てほっとする。 が、零下5度のバーから出ても、外もほぼ零度。 あんまり、変わらないじゃん。

PS. 厚底の靴を履いていたのに、しも焼けになった。 あの、素足にスティレトゥのお姉さんたちは無事だっただろうか? ああ、足がかゆい・・・。

投稿者 lib : 04:02 PM | コメント (5)

February 16, 2010

ケンブリッジ大学 就職戦争

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友人の息子、M君は今年ケンブリッジ大学を卒業である。(あくまでも予定)

Sixth Form (日本の高校のようなところ、ただし2年)を終え、大学合格を手にした後、「ギャップイヤー」を選んだM君。 アメリカの親戚の家での長期滞在も含めて、1年間 フラフラと遊びまくっ・・・、いや、見聞を広めた。(イギリスに帰国しても電話をかけてくるアメリカン・ガールあり。 「友人」だそうである)

ケンブリッジ大学、某カレッジに籍を置き、2年間。 3年目は南米で1年間フラフラと遊びまくっ・・・いや、真剣な語学研修に専念した。 M君はスペイン語が専攻なので、スペイン語圏での1年間の生活が単位取得のために義務づけられているそうだ。(イギリスに帰国しても、南米から電話をかけてくるセニョリータあり。 「友人」だそうである) 

この語学研修は税金でまかなわれているのかと思っていたが、旅費も生活費も親もち。 滞在地での受け入れ大学はケンブリッジ大学が手配をしてくれるそうだが。

「スペインに行ってくれればいいのに・・・」と愚痴る友人。
「スペインなら、旅費も安いし、ちょっとイギリスに帰国するのも楽なのに、なんでわざわざ、南米なんかに行くんだろう? 親不孝もいいとこ」

M君は最初、語学研修にキューバを選んだ。 
なんで、キューバ? と聞いたら、カストロによる 「鎖国状態」もそろそろ終わりに近づいていて、 「開国」寸前。 開国すれば、大きく変貌するから、企業がビジネスチャンスを狙うはず。その前にコネを作っておきたいと思ったらしい。

「社会主義国のキューバなら、クレジットカードが使えないから、無駄遣いはしないだろう」 と、大金をキャッシュで持たせたものの、M君は数週間でキューバに失望。

「キューバではコーラを手に入れるのだって、大変なんだよ」とM君。 
「不自由はなかったわよ」 とキューバに観光旅行に行ったイギリス人の女友達は言っていたが、考えてみれば、彼女が過ごしたのは外国人専用リゾートだった。 

始めはキューバ留学をまっとうするように説得していた友人だが、かの地には台風がバンバン上陸することを発見。 M君がキューバにいる間、友人はインターネットで台風の進路をチェックしまくったらしい。 
「明日、上陸するハリケーンは大きそうなんだよね」 とソワソワしてたっけ。 結局、息子の安全を心配した友人はM君が他国に移ることを承認。

コーラも飲めず、耐乏キューバ生活 (数週間だが) の反動からか、M君は南米の別の国で親のクレジットカードを使いまくり、友人は毎月の請求書におびえる1年を送ったのだった。 

と、金食い息子に捧げた数年間。 やっと、晴れて卒業、就職という明かりがトンネルの向こうに見えてきた。
 
去年の秋頃から、そうそうたる大企業がケンブリッジ大学生にアプローチしてきた。 銀行、証券会社、リテール、メーカー、もちろん政府機関も。 
「軽く食事でも?」とリクルートが次々と訪れる。
食事をしながら、会社概要や仕事を説明し、興味があれば、履歴書を送るようにと名刺が渡される。青田買いですね。 

「僕、この業種には興味がないんだよね・・・」と最初は選びに選んでいたM君だが、現実は甘くなかった。 バブルがはじけて不景気なイギリス。 ケンブリッジ大学生も例外ではない。在学中の数年間は、ちょっとしたパーティに行けば、
「君、ケンブリッジ大学生なの? 今度、会社に遊びにおいでよ」 と声をかけられることが多かったというのに、そんなお誘いもなくなった。

企業も簡単には採用しない。1次試験、2次試験、3次試験と、情け容赦なくふるい落とされる。 高飛車だったM君の態度も少しずつ変わり、弱気な発言も出てきた。
「あの銀行から連絡がないんだ・・・。落ちたのかな?」
もし、いい就職先がなければ、大学院に進もうかという話も出てきた。

「まだ、この先も学費を払うのか・・・」とため息をつく、友人。
「でも、無職でフラフラされるよりは、マシかも」

ケンブリッジ卒でも就職難の今日この頃、楽じゃない世の中だ。

PS.来週、某企業の1泊2日研修があるそうだ。 この研修中に採用が決まるのか?  ドキドキしているらしい。 がんばれ、M君。

投稿者 lib : 07:52 PM | コメント (0)

February 03, 2010

依頼退職

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相変わらずの不景気である。

知り合いの A氏が 「リダンダンシー」 を食らった。 「依頼退職」 簡単に言えば 「クビ」 である。 彼の働く業種は比較的安定したものだが、籍を置くセクションの利益率はここ数年、あまりパッとしないとは聞いていた。 

リダンダンシーにも波があり、別の友人の会社でも数ヶ月に一度くらいの頻度で、「きのう、3人、切られた・・・」 と 「辻斬り」 にでも遭ったような嘆きが聞かれる。

マネージャーから 「ちょっと、来て」と呼び出しを受ける。 「君はよくやってくれているんだが、何せ、業績がね・・・」といった言い訳がされ、 「4週間ほど、ゆっくりしてくれ」と 「ガーデン・リーブ」の宣託が降ろされる。

「ガーデン・リーブ」 こと 「庭いじり休暇」 というのは、 「クビ」の美しき別称である。 「しばし、骨休めでもすれば? その間、給料は払うから」 とはいうものの、4週間後に給料はストップ。 実際には庭いじりなんかする暇はなく、求職活動に走り回るはめになる。

「そうだな、働きづめだったから、次の仕事を探す前に旅行でもするか」 とのんびり数週間の旅行や数ヶ月かけて家の改装をする人もいる。 が、下手に間を空けてしまうと次の仕事が見つからず、 そのまま、残りの人生を 「庭いじりをする、金に不自由なご隠居」として過ごすハメになることもあるらしい。

クビにはなるものの、悪いことをしたわけではなく、会社都合での退職だから、それなりに退職金は出る。 勤務1年につき、1週間分の給料が法律で決まっている。ある程度の年齢以上だと、50%増し。 会社によるが、法律よりは多めの退職金が支払われることが多いらしい。 思わぬ大金を手にして、つい、散財してしまうのも無理はないが、それもその先に就職の可能性があればの事である。

さて、A氏、実は数年前にもクビになりかけた。 
そのときは真っ青になり、将来を心配していたものだ。 成人した子供が2人、共稼ぎながらも、かなりの額の住宅ローン、そして、なんとクレジットカードとローンの負債が・・・。
「クレジットカード? ローン? いくら?」
額を教えてもらえるとは思わなかったが、ポツリと、
「2万ポンド」 と答える。
借金が2万ポンド。それに加えて、住宅ローンはいくらあるんだろう? 
いつも休暇にはカナダでスキー、カリブ海で日光浴、家にもお金をかけ、皆で出かければパッとおごり・・・と派手な生活をする人だなとは思っていたが、全部、借金だったのね。

数年前のその時には、A氏はクビにはならず、他人事ながらホッとしたものだが、ついに今回は運が尽きたらしい。 この数年間で住宅ローンを減らし、クレジットカードとローンの負債をクリアしていればいいのだが・・・。心配はしているが、恐ろしくて電話して状況を聞くことができない。 
えー、久しくお目にかかっていませんが、いかがお過ごしでしょうか・・・? 

B氏はここ数年、羨ましいほどの稼ぎぶりだった。 
稼ぎに比例するように華やかな接待が続き、私も彼のクライアントの接待のおこぼれ (ぎりぎりにキャンセルがあったときの、駆けつけ代理出席)にあずかったものだ。 
そうでもなければ、私のような安月給ではランチ前からピンクシャンペンなどを飲む機会はなかなかないものだ。

「この不景気で売り上げ、がた落ち」とB氏は言う。 
「でも、会社から申し渡されるターゲットはぜったいに下がらない」そうである。
先日も彼のセクション全員がマネージャーに呼ばれ、訓辞があったそうだが、
「先月、 XX君と XXさんには辞めてもらいました。 皆さんはがんばってください。 売り上げが達成できない人は・・・」 とドアを指差し、「出口はあちらです」

この脅し、いや、 「叱咤激励」の直後、全員が 「床に崩れ落ちた」そうである。 ま、精神的にという意味だろうけど。 ガタイの大きなイギリス人の男たちが20人も床に倒れて重なっている図を想像すると怖いものがある。

ほんの数年前、南フランスのホテルを借り切った豪華なパーティ会場で社長自らの
「我が社の利益は皆さんのおかげです」などというスピーチを聞いた耳が、こんな厳しい言葉にさらされるとは思わなかったそうである。

とりあえず、私も住宅ローンの残額は今のうちに減らしておこうと思う、今日この頃である。

投稿者 lib : 10:24 AM | コメント (2)

January 20, 2010

暴行事件

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友人の息子、N君 (15歳)が裁判に出廷したそうである。

といっても、被告や原告ではなくて、証人だったとのこと。

去年のことだ。 夕方7時ごろ、N君は道でクラスメイト A君とバッタリ出くわした。 何となく世間話をしていたところ、同年代のティーンエイジャーが数人フラフラとやってきて、そのひとりが A君のiPodをひったくろうとした。 当然、A君は自分のiPodを守ろうと引っぱる。 

と、突然、A君は殴られて道に倒れた。 友人の息子N君も顔にパンチを受ける。 道路に横たわったA君は足蹴にされ、意識を失う。 N君や一緒にいた数人も鼻血を流して、大パニック、という事件があったのだ。

すぐに警察、救急車がやってきた。 N君達はともかく、A君は意識不明。 一時は危篤状態で、警察では 「殺人未遂」 から 「殺人事件」 に切り替えるところだったらしい。

病人に駆けつけた友人は、顔がはれ上がって倍の大きさ (笑ってはいけないが、つい、想像した)になった、わが息子の姿に絶句。 一方、A君は危篤状態で 「今晩が山場」との情報に親は真っ青だったという。

A君は数日で危篤状態からは脱出。 数ヶ月間に何度かの手術を受け、入院と通院を繰り返し、1年近く、休学だったようだ。

さて、その犯人だが、ひったくったオイスターカード(プリペイドの定期券)を使って帰宅したために、オイスターカードの記録とバスのCCTV(防犯カメラ)から、あっさり足がついた。 地元では警察によく知られた顔ぶれだったらしい。 N君とA君が住むエリアは高級住宅街だが、犯人達はバスで20分ばかりのラフなエリアからやってきて、あちこちの店で騒ぎを起こし、すでに警察に連絡が行っていたところ、この暴行事件が起こったらしい。

20人ばかりのグループで街を徘徊していたが、実際にこの暴行事件に関係したのは3人。後日、警察は主犯の家からA君のiPodを発見。 おまけに血のついたシャツが近くに脱ぎ捨ててあって、そこから、A君と主犯のDNAが出た。 犯人は妹や友人にも 「人を殺したかもしれない」とわざわざテキストを送っていて、その記録も残っていた。 裁判では 「その場にいなかった」と言ったそうだが。

事件後の経過は・・・信じられないほど時間がかかっている。 事件は去年の4月。 N君が警察に呼ばれて、証言をビデオ収録したのが、7月。 11月頃にもう一度調査があり、裁判が今年の1月・・・って9ヵ月後じゃん。 事件の詳細を忘れないか? 犯人グループは全員が黒人だったそうだが、もし、私だったら、パニック状態でほんの数分見ただけの黒人ティーンエイジャーの顔を9ヵ月後に覚えているかというと・・・自信ないな。

保護者として友人も Old Baileyに付添った。 最初の日は事務手続きに費やされ、証言の機会はなし。 翌日に行ったときは証人のひとりが裁判所の証言台に立つのをいやがり、別室でビデオ撮影での証言となったのだが・・・ビデオの接続がうまくいかず、裁判官が 「私の10歳の息子だって、ビデオぐらい、つなぐことはできるぞ!」と裁判所のスタッフを怒鳴りつけるという一幕もあったらしい。 で、この日も証言の機会はなかった。

3日目、ついに証言台に立った (未成年なので衝立で囲まれ、姿を隠されたそうだが)N君は犯人の弁護士の 「事件からずいぶん時間が経っているが きちんと覚えているのか?」との質問にもしっかりと答えたそうだ。 (記憶力の悪い私でなくてよかった。私を事件に巻き込まないで下さい。 証人として役に立ちません)

N君は 「疲れちゃった。 でも、裁判の間、学校に行かなくてもよかったので、ラッキー」と言っていた。 「証言台では、ちょっとドキドキした」そうである。 

警察からのアドバイスは、 犯人の仲間からの報復を避けるため、Face Book の個人情報を消せ、というもの。 それで、Face Book は残したものの、生年月日や住所を変更したという。

私がここから学んだ教訓は、 「殴られても、道に倒れるな」 だ。 横になると内臓を蹴られたり、頭を踏みつけられたりして、命に関わるそうである。

うー、恐ろしい。 ヤバそうな連中がこっちに向かってきたら、絡まれる前に逃げることですな。 

投稿者 lib : 11:35 AM | コメント (2)

January 11, 2010

大雪で大騒ぎ

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イギリスに大寒波がやってきた。

激しく降り続ける雪が見る間にうず高く積もっていく。 電車は止まり、高速道路は混乱というのはいつもの冬の光景である・・・スコットランドあたりでは。

なんでロンドンまで、こんなことに。

「週の半ばから寒くなるんだって」
「へえ、そうなの」
と、お気楽な会話をしていたところ、ある朝、目覚めると、雪のせいで交通網がめちゃくちゃになっていた。 BBCの朝のニュースではお天気お姉さんが、北イギリスではなく、ロンドン郊外の雪模様を話している。カーテンを開ければ窓の外には確かに積雪が。 ゲゲ、電車はどうなる?

1. とりあえず早めに家を出て、駅に向かう。
2. 電車情報を確認してから、家を出る。
3. 良い機会なので、これを理由に会社を休み、できればセールに出かけて服を買う。

上記 3つの選択がある。 選択肢 3番 は特に魅力的ではあるが、とりあえず、ぐっと堪えて 2番 にすべく、出勤の用意をしながら、情報確認をすることにした。 というのも、以前、大雪が降ったとき、路面のものすごいコンディションに必死の形相で、なんとか駅までたどり着いたところ、全部の電車がキャンセルとなっていることを発見したことがあるからだ。 

線路は美しくも深い雪で覆われ、ひと筋の乱れもない白雪の様子で、前夜から電車は通っていないことは明白。 珍しい風景に携帯で写真を撮っている通勤客がたくさんいたが、私は腰から下の力が抜ける空しさに、その場で泣き崩れそうになったくらいだ。 本来10分もかからない駅から家までが、シベリアの大平原のように感じられた。

今回はあんなミスはしない。 電車が動いていることを確認してから駅に向かうんだ。確実なのは電車情報のオペレーターである。しかし、こんな日には大量の問い合わせがあり、繋がりにくいだろう。 ホームページもあるが、これは曲者。 「時間通り」なんて表示されていても、 「時間(は、その場の状況次第の)通り」だったりして、 「別にタイムテーブルの時間通りって言ってないじゃん」だったりする。

そこで間を取って、電話での録音情報にかけてみる。 これは音声で反応してくれるもので、ホームページよりは情報が新しい気がするからだ (気がするだけだが)
「どこの駅から出発ですか?」 「いつの日ですか?」 「行き先はどこですか?」 といった質問に答えると、 「ビクトリア駅ですね」 とか 「今日の9時ですね」と確認がある。 もちろん、全部録音された声だ。
 
時々音声の認識がうまくいかず、
「パディントン駅」
「エディンバラ駅ですね。 正しいと Yes 違うと Noと言ってください」
「No」
「どこの駅ですか?」
「パディントン駅」
「マンチェスター駅ですね。 正しいと Yes 違うと Noと言ってください」
という会話が延々と続き、機械を相手に真剣に話しかけ、腹を立てる自分の人生って、いったい・・・と、生きていく自信を失いそうになってくる。

この日は何度電話しても、 「テクニカルエラー」か 「次の電車」を聞いているのに 「翌日の朝一番の電車」を答えるために、結局あきらめてしまった。 ごく一部の電車は動いていたようだが、 「どうしても重要な用事がない場合にはなるべく外出を控えてください」とのテレビでの呼びかけに、「出勤」が 「重要な用事」であるかどうかという大きな疑問にぶち当たった。 だが、そこで 「出勤」の後には 「帰宅」がセットでやってくる事実を重視。 この日は 「自宅待機」とした。

飛行機はキャンセルされるわ、ユーロスターは止まるわ、動かなくなった車は道路わきに乗り捨てられるわ、と大騒ぎである。

といっても積雪はせいぜい2-30センチ。 大雪に慣れているヨーロッパ大陸の人から見れば、 「あれくらいの雪ですべてがストップするイギリスって・・・」と笑われているのではないだろうか。 すみませんねえ。 でも、さぼって遊びに行ったわけではない。 セールに行きたくても交通手段がなく、家にこもって、わずかな食料で一日を食いつなぐはめになったし。

この後は路面が凍って、滑る人が続出だろうなあ。 その一人になりたくないと心から願っている。 すでに足首をひねった、腰を打った、あざになった等の報告が入っている。 危ない、危ない。 雪慣れしていないから怖いよね。

投稿者 lib : 11:47 AM | コメント (2)

December 16, 2009

マリリン・マンソン コンサート

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マリリン・マンソンのコンサートに行ってきた。 CDショップなら 「メタル」のカテゴリーに入っているロックバンドだ。マリリンといっても女ではない。

顔を真っ白に塗りたくり、鮫の瞳のような銀色カラーコンタクトレンズと真っ赤なリップステックという 「死化粧」メイクで、長い間 「聞かず嫌い」をしていたのだが、友人のお勧めで聞いてみると気に入った。 バーレスクのスター、ディタ・ヴォン・ティーズとしばらく結婚していたのも有名。 美女と野獣の組み合わせだ。あの馬顔で彼女と結婚できたのはロックミュージシャンの役得だよね。

さて、コンサートはブリクストン・アカデミー。有名な会場だが、 「ブリクストン」に出かけるのは勇気がいる。 
その昔、ロンドンに来てすぐの頃、
「ブリクストンとハックニーは避けろ」と言われた記憶がある。
「あの辺の店はウィンドウを金網で保護してる」とか 夜行くのはやだなあ。 

日頃、ブリクストンやハックニーには縁がないので、こわごわと出かけた。 ・・・が、ハイストリートは荒れ果てている様子もない。 金網もないし。 最近のロンドン不動産価格の沸騰で、このあたりもお洒落に変貌したのか? 

駅ではいつものように「チケット、あるよ」 「チケット、買うよ」のダフ屋のおじさんたちから声がかかる。

このバンドのファン層 「黒皮のロングコート」 「死神風の厚化粧」 「真っ黒に染めた不自然な髪 (根元が金髪の逆プリン)」 「スタッド・ブーツ」 という 「ゴス」の群れを楽しみにしてきたのだが。 えーと、それっぽい観客の姿が見えないんですけど・・・。なんだか、Tシャツとジーンズというカジュアルな人たちばかりである。 つまんないの。 髪をトサカにしたお兄さんがひとりいたが、 「メタル」 と 「パンク」じゃ違うだろ。お兄さん、浮いてますよ。

ヨーロッパから来た連中(なぜか、見分けがつく)もキョロキョロしながら会場に向かっている。 
友人が巻きタバコを作っていると、そんなカップルが来て、
「あのー、この辺にパブはありませんか?」と、なまりのある英語で聞く。 「そこにあるよ」と教えてあげたのだが、パブは目の前で捜すまでもなく、なんだか不自然。

友人が作っていた「合法的な巻きタバコ」を 「非合法のイケナイ巻きタバコ」と勘違いして 「パブはどこ・・・」と話かけ、「イケナイ巻きタバコ」を売ってもらおうしたのではないかという説が有力になった。 友人は「ヤクの売人」に間違われたらしい。

ブリクストン・アカデミーはアリーナが3000人、二階が1000人のキャパらしい。 「アリーナで大丈夫? 椅子はなくて、立ちっぱなしだよ」と心配された。「平気、平気」と答えながらも、内心ちょっと不安はあった。 ステージのすぐ前は危ないから避けてね、とさんざん脅かされる。 私は性格こそ攻撃的だが、身体は小柄。殴り合いになるとやや不利である、ってプロレスの乱闘かよ。 

4000人の観客のうち、期待通りの黒づくめ 「ドレスアップ」をしていたのは2-30人という寂しさである。 ま、私たちも地味な格好だったのだが。 日本でのコンサートのほうが気合の入った服装で出かける観客が多いのでは。

前座バンドが終わり、カーテンが下げられる。 しばらくすると、スモークが湧き出てきた。 期待に興奮する観客。 さらに湧き出るスモーク、またまた湧き出るスモークが、その上さらに湧き出る・・・ あのー、火事じゃないでしょうね。半端な量のスモークじゃないんですけど。そして、さらなるスモークが・・・。

というわけで、マリリン・マンソンがステージに登場してからも最初の3曲は会場中が霧の中で真っ白。5メートル先が見えない状態である。 
「マリリン・マンソンを出せー、金を出してスモークを見に来たんじゃないぞー」と叫びたくなった。 

ミキサーの後ろに陣取り、ステージはよく見えたのだが、スモークがすごくて、ボーカルが少しでも後ろに下がると霧の中に消えてしまう。 よく見えないじゃん。 が、隣にいた地味目なティーンエイジャーの女の子は、気にする様子もなく大ノリで、手を振り上げ、腰をグルグルと激しく回し続けていた。 すごい勢いだ。 骨盤体操で体のゆがみを矯正するつもりなのか?

この調子ならステージ前に行ってもいいかも、と思い始めた瞬間に乱闘騒ぎが見えた。 誰かが大男に1、2発殴られているようである。 で、予定を変更してこの場にとどまることにする。 青あざを作るほどマリリン・マンソンのファンではないし。 

帰宅途中、ずーっと耳の奥でセミがミンミン鳴いていた。 冬なのに。 

投稿者 lib : 09:37 AM | コメント (6)

November 12, 2009

ニューヨーク旅行 その5

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久しぶりのニューヨークだ。 何度も来たことがあるので、ひととおりの観光スポットには行っている。 友人もニューヨークに来たことはあるものの、ビジネストリップだったり、親戚に挨拶に寄ったりで、観光経験は皆無、 「見るぞー」 とバリバリに張り切っている。

「エンパイアステートビルと自由の女神。 ワールド・トレード・センターの跡地にも行って、犠牲者の冥福を祈りたい。 セント・パトリック・チャーチで礼拝に参加 (友人はカソリックだ)。 それと、もちろんショッピング!」 結果的には 「ショッピング」にはたいへん時間を費やしていたといえる。 私は旅行中あまり買い物をしないので、友人が血眼になって買い物をしている間、ボーッと待っていることも多かった。

友人との旅行は、見たいもの、やりたいことが違っていたりすることに現地で気づき、ケンカになることもあると聞く。 が、私は以前に来たことがあり、 「ま、もう一度見てもいいか、見なくてもいいし」と気持ちに余裕がある。 友人の行きたい所はハイハイと反対せずに全部つきあい、場所によっては集合時間を決めて別行動。 友人が見物している間、カフェに座って、街行く人を眺めたり、ガイドブックを読んで次の予定を立てたりした。 友人のほうは懐に余裕がある人なので、 「いいよ、いいよ。払っておくから」と気前良く奢ってくれる。 ケンカもせずに楽しい旅となった。

私がシティで道に迷うのはあの法則なき道路網のせいだが、 ニューヨークは1番街、2番街、3番街と並び、横方向は1丁目、2丁目、3丁目と記してある。これでは迷子になりようがない。 地下鉄も線名はアルファベット、北方面はアップタウン、南方面ダウンタウン。 楽勝じゃん。

が、標識はずいぶん不親切。 ビルの前にある普通の階段が駅の入り口だったりする。 そんなにさりげなく存在してどうする? 遠くからでもわかる目印つけようなんて配慮はないのか? ロンドン交通の青丸に赤の横一文字のマークが懐かしい。 地下鉄マップを見て 「よし、よし、51丁目でアップタウン行きに乗換えね」 と思って電車を降りると、なぜかアップタウン行きのプラットフォームがない。 駅員に聞くと
「改札を抜けて、階段を上がって、地上に出てから、道路を渡った反対側にアップタウン行きのプラットフォームがあるから」・・・って、どこかに書いとけよ! 

よくロンドンの駅でウロウロしている観光客に (なーに、モタモタしてるんだ)と思ったものだが、深く反省する。 ニューヨークの人にとっては51丁目で道路を渡っての乗り換えは当たり前でしょ、なんてものだろう。 あるいは、あそこは乗換えが不便だから、と別の駅で乗り換えるのが常識、なのかも。

観光ではニューヨークパス7日間を買って回った。安上がりでもあるのだが、チケットを買う行列に並ばずにさっさと入り口まで行けるのが超便利。 自由の女神もNBCテレビ局ツアーもマジソンスクエアガーデン(MSG)のオールアクセスツアーもマンハッタン一周クルーズもすべてが含まれていた。MSGでは 「ここでエアロスミスを見るはずだったのに、こんなにいい席だったのに・・・」 と、泣きそうだったが。

全泊ニュージャージーじゃ、ちょっとね、とマンハッタンのホテルにも3泊した。豪華ホテルの必要はない(というか余裕はない)けど、安全、便利、清潔を目標のホテル探し。 最初は場所と値段だけ見ていたが、それぞれのホテルでの宿泊者のコメントがあるサイトを見つけた。 これはホテル選びに参考になるね。

「安かったが、ロビーには商売女、麻薬の売人、その他、怪しげな連中が昼夜たむろっている。怖かった」
「シーツは換えていないし、カーペットのあまりの汚さに靴が脱げなかった」
「スタッフが少なくて、慣れていない。チェックアウトするのに2時間近くかかった」
だのと、恐怖のコメントが載っている。
その中でも目をひいたのは 「ベットにダニがいた」というもの。
ダニがいた、というのは結構いろいろなホテルのコメントで見かけた。3つ星以上のホテルでも数軒。 発展途上国の安ホテルじゃあるまいし、勘弁してよ。 これ以降、もっとも重要なポイントは 「ダニがいないホテル」となった。

国連本部に近い 「ダニのいないホテル」 の1泊の額面は175ドルだが、ニューヨーク州税、ニューヨーク市税、ホテル税が加算され支払額は205ドルとなる。 これでシャワーとトイレは共同。 バスルームつきの部屋は300ドル以上だ。 この頃、ポンドはドルに対して弱いし、ここで妥協した。
ここ何年かで初めて、 「ロンドンもそれほど物価は高くない」と思ったね。

ちなみに、ニューヨークの人がロンドンに来ると、 「めちゃくちゃ深いところに地下鉄が通っている。 プラットフォームにたどり着くまでに、すごい長さのエスカレーターに乗るのにびっくり」という感想を持つそうです。 あー、そういえば、そうだ。 住んでいると忘れちゃうね。           

日本にホリディに行ってきます。

投稿者 lib : 09:46 AM | コメント (6)

November 04, 2009

ZZ Top

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ZZ Top のコンサートに行った (連れて行かれた)。

アメリカでエアロスミスの前座となるはずだったバンドだ。 ツアーのキャンセルで見られなくなってしまったのだが、友人はエアロスミスよりも ZZ Top のほうが残念だったらしい。

「一緒に行こうね」
え? 私も? 別に私はZZ Topは・・・。
「ロンドンに来るんだ。 もうチケットも買ったから」
・・・友情にひびを入れるわけにはいかんな。

ウェンブリー・アリーナといえばロックコンサートがたくさん開かれているが、私の家からは不便な位置にある。 エアロスミスならアメリカまで見に行くのに躊躇はない。 でも、 ZZ Top だと北ロンドンは遠いな。

さて、ZZ Top 鑑賞にふさわしい服装は? 昔はコンサートには気合を入れて出かけたものだが、この頃はそんな気力は無い。 それほど好みでもないバンドだし、おまけに平日で会社帰りだ。 じゃ、適当に皮ジャケットにTシャツとブーツでいいか、と会社のトイレで着替える。

地下鉄ウェンブリー・パーク駅。 ウェンブリー・アリーナとウェンブリー・スタジアムが別々の会場だとはじめて知った。 巨大なスティール・アーチがあるほうがスタジアムらしい。 この日はフットボールの試合はなく、会場に向かうのは ZZ Topの観客だけだ。

・・・予想はしていたが、おやじばかりだ。

シティでもおやじに囲まれて働いているが、シティのおやじはピンストライプのビジネススーツを着ていて、70年代のロックバンドのTシャツとジーンズのおやじとはカテゴリーが違う。 とはいえ、この日のおやじ達は、ヘルズ・エンジェルズみたいにハードコア乱暴者系ではなく、のんびりまったりしたガテン系という雰囲気で安心できる。

友人が取ってくれたのは2階席で、ステージもアリーナもよく見渡せる。
さて、アリーナを埋め尽くすのは・・・おやじ、おやじ、おやじ、おやじ、オヤジ、オヤジ、オヤジ、オヤジ、親父、親父、親父、親父・・・うーん、今までに、ここまでおやじ度の高いコンサートに来たことがあっただろうか? 

数千人のおやじがぐびぐびとビールを飲むとどうなるか? 男子トイレは長蛇の列。 せっぱつまって女子トイレに駆け込むおやじまでいる始末である。

最初は97%が男だと思ったが、よく見ると残り3%のうち2%はヒッピーおやじで、長髪のせいで女だと勘違いしていた。 それも髪は長いが、てっぺんはハゲていて、月代を切った落ち武者スタイルである。 統計を訂正すると会場の99%が男、ほとんどが40歳以上(50かも)である。 男二人組も結構いたが、飲み友達とか仕事仲間とかで、オペラで見かける男同士カップルのしっとりと粘り気のある関係にはなさそうだ。

女は少数派。 「若くて細っこい娘っ子」は皆無で、 ロックTシャツを着て、どすんとりっぱなお尻にジーンズを履いている。 サラダなんか鳥のえさ、オーガニックフードなんてインテリの気取った食い物はお断り、アタシは毎日Tボーンステーキがランチさ、てな感じのサイズ16プラス、肉食系白人中年女の存在感に圧倒される。

さらに99.99%が白人だ。 アメリカ人率も超高し。 日本人どころかオリエンタルは私だけだったかも。メトロポリタンなロンドンはいずこ?

「テキサスしてるねえ」と友人。
「テキサスだねえ。 ここまで地下鉄ジュブリーラインで来たのが不思議」
気分はアメリカ南部のレッドネックバーである。

前座はスティール・パンサー。ボン・ジョビとバン・ヘーレンとジャーニーを混ぜたようなカリフォルニアンバンドだ。 ZZ Topのファンとは趣向が違う。 パチパチとお義理で拍手はしているが、 (早く ZZ Top を出せー)というプレッシャーが会場を流れた。

さて、お待ちかねの ZZ Top 登場。 サングラスに30センチのあごひげがトレードマークのベテランハードロック/ブルースバンド(たぶん)だ。 ひげおやじルックスを何十年もキープしている貫禄はさすが。 一体感があるなあ、ステージと観客。 

期待よりもうんと楽しかった。 でも、できれば、エアロスミスの前座としてニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンで見たかった。 北ロンドンじゃなくて。

投稿者 lib : 10:34 AM | コメント (3)

October 21, 2009

ニューヨーク旅行 その4

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ホリディで何が嬉しいって、寝坊ができることと通勤電車に乗らなくてもいい事だ。 が、朝の5時には目が覚めてしまう。 イギリスと東海岸の5時間の時差のため、しかたがないが、何だか損をしている気分だ。さて、それでは、なぜ通勤電車に乗らなくてはいけないのか? 

・・・マンハッタンのホテルに泊まっていないからだ。

ロンドン中心のホテルは高いため、ウィンブルドンあたりに宿を取り、毎朝、郊外電車に乗って観光に行くという感じだ。そう、通勤電車に乗って。

というわけで、通勤の皆様と共にニュージャージーからマンハッタンに向かう。他の乗客が書類を見ながら携帯で仕事の打ち合わせなどをしている中、私たちはのんびりとガイドブックを広げ、 「今日はどこへ行こうか」と相談する。

しかし、この電車って・・・異常に広いんですけど。

日本からアメリカに行くと、 「何でもデカイ」という感想を持つが、東海岸の都市は道も狭ければ、ホテルの部屋も小さいし、食事の量だって山盛りではないことが多い。 が、電車はしっかりでかいな。イギリスの郊外電車の約3割り増しの横幅と見た。そのせいか、なんだか平べったい感じで、違和感がある。

旅行先の日常風景は旅行者には非日常のシュールな光景である。

イギリスの通勤電車で山ほど見るインド系(とその周辺)の人とアラブ系はいなくて、南米ヒスパニックの乗客がどっさりと。異国情緒よね、聞こえてくるのは英語ではなくて、スペイン語ばかりだし・・・。

そういえば、イギリスに住み始めたとき、
(インドの人がずいぶんいるなあ。やっぱり、元植民地の関係かしらん。うわ、頭の先から足まで黒の布で覆っている女の人がリムジンから何人も降りてきた。一夫多妻のイスラムの夫婦、夫(1)婦(4)とはこのことか!) といちいち歩く人にびっくりしていたのを思い出した。
(この人スペイン語を話しているのに、メキシコ人じゃないみたい。 いったい、どこの人かしら?) - スペイン人でした。 なんてこともあった。

場所によって違う人種が集まっているのは当然だが、たまに日本に帰り、時差ぼけでボーとして、頭が働かない状態で空港に降り立つと、
(わー、東洋人がいっぱいいる。全員が髪の毛黒いし。おっと、前のグループは日本語を話してる。日本人観光客かしら)とふと思い、次の瞬間、自分の馬鹿さ加減に気がつくということがよくある。(毎回だが)

さて、車窓から見える風景は・・・さすがニュージャージーというしょぼさ、でした。中途半端な工場地帯というか。高級住宅地もあるそうだけど、電車からは見えない。

近くには、これからニューヨーク観光というグループがいる。私のお尻の4倍はあろうかというアメリカンサイズのおばちゃん4人組だ。(だから、私のお尻の16倍ね)
「アタシの町には鉄道は通ってないのよ。でもね、一日に何度かバスは来るわよ」などと話している。 ゲゲ、すごい田舎町から来ている。 大都市ニューヨークの摩天楼を見て失神するかもしれないな、おばちゃん、要注意ね。

さて、ニューヨークはペンステーションことペンシルバニアステーションに着いた。 ごちゃごちゃごちゃごちゃ、している。何がどこにあるのだかわからない構造だ。ロンドンの主要駅のすっきりさが懐かしい。すっかりイギリス愛国主義に陥った私たちはさんざん、「ぜったいイギリスのほうがきちんとしているよね」 と旅行中言い続けたものだ。 (ロンドンに帰るとロンドンの悪口にもどったが)

おまけに駅員が無愛想なこと。
「NJトランジットはどこですか?」
「上! はい、次の人!」 てな感じだ。
だから、上の階に行くにはどうしたらいいのか、聞いてるんだってば。

友人はイギリス人のくせに、というか、イギリス人だからか、
「えーっと、何て言われたか、よくわからない・・・」 ことが多く、非英語圏の出身である私のほうが、
「待ってて。 聞いてくるから。 ここから動かないでよ」
とあれこれ情報を集める役目になってしまった。 

ああ、アメリカで鍛えられた、ずうずうし・・、ではなくて、アクティブな血の巡りを思い出したわ。 
続く

投稿者 lib : 09:14 AM | コメント (0)

October 12, 2009

ニューヨーク旅行 その3

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ニュージャージー空港近くのホテルに1泊した。 
国際空港とその周辺というのはどこの国でもそっくりだ。 どこでもモーターウェイと無機質な建物だけの地域。 とはいえ、ホテルのお迎えミニバスはもちろん道路の右側を走る。ああ、そうだ。 アメリカって通行が逆だったね。
一度、日本、アメリカ、イギリス、アメリカ、日本と数ヶ月の内に移動することがあった。 横断歩道を渡るのに、いったいどっち側を見ればいいのか混乱して、よく車にひかれそうになったものだ。

さて、ホテルに着いた。 ・・・が、しまった! 小銭がない! バスの運転手にあげるチップがない! まさか、20ドル札をあげるわけにもいかないし。

「えっと、今はドルがないから、明日ね、明日」と口ごもりながらミニバスを降りる。 
「いいですよ」と答えた運転手はあきらかに悲しそうな顔をした。
何だか無賃乗車をした気分だ。 低賃金労働者を搾取する非情なキャピタリスト観光客と思ったに違いない。すまんな、気がきかなくて。

ロンドンでも、それなりのレストランで食事をするとか、キャブに乗れば、(で、サービスがよければ)チップをあげるが、それ以外はチップの習慣はない。 でも、アメリカは何をしても、すべてチップを期待される。っていうか、この人たちはチップ収入も上乗せされた税金を取られているという話だ。

クレジットカード以外に小銭の用意も大切です。

ニューヨークのお隣のニュージャージーといえば、ロンドンならエセックス、東京なら XX県(あえて、どの県かは言わない)という扱いをされる。
「何だかこの食器ダサイね」
「だって、ニュージャージー製だもの」
「やっぱりね、ダサいと思った」
という使い方をする。
(エセックス在住の人、ごめんなさい。私の意見ではありません。エセックスっていい所ですよね、本当に・・・)

しかし、マンハッタンのホテルのあまりの高さにめげた私たちは、ニュージャージー5泊、マンハッタン3泊という妥協案を取り、しばらくこのホテルからマンハッタン観光に通うことにしたのだ。

さて、翌朝、ブレックファストはホテルで取った。 
ブレックファストはコーンフレーク、ペストリー、トースト、ベーグルにジュースやコーヒー、フルーツのバイキングスタイルだ。 「ベーコン、ソーセージに卵料理あるかな?」と期待したが、ここはリッツでもサボイでもフォーシーズンでもない中級ホテルである。 たいへん甘い考えだった。 卵料理と言えば固ゆで卵だけはあったが。 

カップをレバーに押し当てるとジュースが出てくる装置を想像して欲しい。 そんな感じで、レバーをひくと、コーンフレークがザザーと出てくる仕組みになっている。 そう、ザザーッと、ザザー・・・カウンターがコーンフレークだらけになってしまった。 友人がササッとかき集めると、何食わぬ顔で装置のふたを開けて中に戻した。 誰も見てないよね? すまんな、いつも尻拭いをさせて・・・。

さて、いざマンハッタンへ。

駅に行き
「ニューヨークのペン・ステーションまでリターンチケットを2枚ね」と頼むと、駅員が一瞬変な顔をして、
「・・・ラウンドトリップを2枚ね?」と聞く。
「ああ、それ、それ。それを2枚」と私。

アメリカ英語は久しぶりだ。
その昔、アメリカからイギリスに引っ越したときには、
「ラウンドトリップ・チケットを1枚」と頼み、ブリティッシュ・レイルのおじさんに
「ここではリターンチケットと言うんですよ、お嬢さん」
と皮肉っぽく言われたっけ。 面倒な奴らだわい。

別の日には
「シングルチケットを2枚ね」と頼み、
「え? 一枚? それとも2枚?」
「2枚。シングルチケットを2枚」
「シングルなのに、2枚? もしかして、ワンウェイチケットを2枚欲しいの?」
「ああ、それ、それ。それを2枚」
という会話もあった。 本当に面倒な奴らだ。
続く

投稿者 lib : 10:52 AM | コメント (0)

October 07, 2009

ニューヨーク旅行 その2

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エアロスミスの全米ツアーはキャンセルされてしまい、ステージから姿を見初められて、アフターコンサートパーティにグルーピーとして招待され、スティーブンからチヤホヤされるという野望はみじんに砕かれた。
が、ニューヨーク行きの航空券は残っている。 というか、キャンセルできなかったのだ。

というわけでしかたなくのニューヨークツアーである。

昔アメリカに住んでいたので、ニューヨークは何度も行ったことがある。どのくらい前かというと、まだワールドトレードセンターがバーンと元気に建っていた頃だ。
「わーい、高い、高い」と喜んでいたものだ。展望階にはガラスで下界が透けて見える床があり、高いところは得意な私も足がすくんだ覚えがある。 あのビルはもうないのね、しみじみ・・・。

最近、更新したパスポートを渡米前に登録する。 何でパスポート写真ってこんなに不細工なんだろう、と思うが、友人に言わせると 「写真は何ひとつ洩らさず、加えず、その顔のまま」だそうである。 ってことは、私はこの写真並みにXXXということか・・・。

航空機はバージン航空だ。チェックインは機械にパスポートを差し込むだけで、予約している便名が表示、名前が確認される。 「予約席を他の場所に替えますか?」などと親切な質問もある。文明の進歩ってすごいな。
バージン航空に初めて乗ったときも、ロンドン、ニューヨーク間だった。当時のバージン航空はできたばかりで、飛行機が一機しかなかったため、 「まだ、ニューヨークから飛行機が戻っていないので、しばらくお待ちください」とアナウンスがあったっけ。

そう言えば、ニューヨークから某中近東系航空に乗ったこともある。JFK空港の航空会社のカウンターの 「その他のメジャーでない航空会社、もろもろ」のところに並び、乗客が怪しい雰囲気の奴らばっかしに見えたのは気のせいか? 学生で貧乏旅行をしていた私も含めてだが。
機内のエンタテーメントビデオは、エィミー・ワインハウスのような、どぎついアイメイクをした歌姫のバックで、頭にテーブルクロスを載せて、輪っかで押さえたような例のアラブスタイルのおやじが数人でダンスを踊るという、異国情緒にあふれたものだったが、到着先はロンドンではなく、砂漠の国だったらどうしようという不安を覚えた記憶がある。

さて、今回はニューヨークの隣の州、ニュージャージーのニューアーク・リバティ・エアポート着だ。わざわざ、この空港を選んだのも、最初のエアロスミスのコンサートがニュージャージーの予定だったからである。 

・・・スティーブンのバカ。頭をパックリと割って、肩を骨折するなんて。せっかくロンドンからはるばるやって来たのに。

ニューアーク・エアポートは大きな空港に変わっていた。 
「おお、お前も出世したものよのう・・・」と感慨にひたったが、考えてみれば、このエアポートを使ったのはほんの数回だけで、それほど馴染みがあるわけではない。

入国審査では、右手の親指以外をまず4本、それから親指。そして、同じく左手、と機械に当てる。次は瞳、とチェックが入る。
「アメリカは初めて?」
「XX年ぶりよ」
「そりゃ、久しぶりだ。観光?」
「観光だけど、実はね・・・」
パスポートコントロールのおじさんにエアロスミスへの恨みつらみをぶちまけそうになったところを友人が止めた。時間がかかると思ったのだろう。

「アメリカへようこそ」と入国審査の人。
えっ? 今 「アメリカへようこそ」 って言った?
いいな、これ。ヒースロー空港でも言えばいいのに。
「イギリスへようこそ」
・・・言わないだろうな。 イギリスのパスポートコントロールでは、ろくな思い出がないぞ。もう少しでケンカしそうになったことも多いし。感じ悪いぞ、ヒースローの入国審査官!


というわけで、この日は空港の近くのホテルに泊まる。明日はマンハッタンだ。

続く

投稿者 lib : 10:04 AM | コメント (2)

September 28, 2009

ニューヨーク旅行 その1

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ニューヨークに行ってきた。休暇である。

数ヶ月前、友人がエアロスミスというロックバンドのコンサートに誘ってくれた。 
「アメリカに行って、エアロスミスのコンサートを見て、ついでに観光してくる」話に乗った。 チケット、航空券、ホテルといった予約は友人が全部やってくれて、私は時々 「こっちがいい、それはイヤ」などと承認と拒否を与える行為だけを担当。

こまめに動いてくれる友人は財産である。

「田舎町の何ヶ所かでコンサートを見よう。田舎町のホールだと小さいだろうから、ステージも近いはずだし」という計画も立てた。 「移動はレンタカーで、アメリカのハイウェイをバリバリぶっ飛ばそう」 ただし、運転は友人、私は助手席だが。

運転のうまい友人は財産である。 

田舎町ならコンサート会場にやってくるのも、ピックアップトラックとか、トラクター(まさか)かもね。 数少ない娯楽を求めての田舎者に混じっての熱狂のコンサートとなるか!

が、天下のマジソンスクエアガーデン (以下MSG) でのコンサートが発表された。 「ロックコンサートを見るなら、MSG でしょ、やっぱり」ということで、その数日前に行われるニュージャージー (以下NJ) での野外コンサートと合わせて、MSGのコンサートのチケットを入手することにする。

2年前にハイドパークで行われた「ロンドンコーリング」のロックフェスティバルではエアロスミスがメインだった。が、ステージがあまりに遠く 「蝶のように舞い踊る」 というより、 「蟻のようにチョロチョロ動く」 スティーブン・タイラーだった。 今回、わざわざアメリカまで行くのなら、それなりに良い席で見たい。

ステージは目の前、おまけにコンサート前のパーティでバンドのメンバーとお話したり、写真を撮ったり、なんてVIPチケットもある。うーん、1370ドルか・・・・。 「ファンの集い」 みたいなパーティもこっぱ恥ずかしいよな。この手のパーティではメンバーはほんの5分間くらいしか顔を出さないみたいだし。

ということで、NJでは前から15列目で400ドルのチケットをゲット。って、結構高いな。外側の芝生にある自由席ですら、50ドルだ。それも数万人入るのだから、やっぱりロックミュージックはビッグビジネスなのね。

しかし、全米ツアーが始まると、バンドが次々と不幸に見舞われるようになった。

まず、サイドギターのブラッドが怪我をしてコンサートを休む。 ただし、怪我の理由は 「自分の 『フェラーリ』のドアに頭をぶつけた」そうである。 さすがはロックミュージシャンだ。ぶつけたのが 「壁」 「妻のファミリーカー」 「缶詰の入った箱」とかではなくて、フェラーリだものね。しばらく他のギタリストが代理を務めたらしい。 ま、バンドはボーカルとリードギターが 「顔」 であることがほとんどで、サイドギターがいないのを気にしたファンはほとんどいないと思う。

この後はボーカルのスティーブンが足の肉離れで、数回のコンサートが延期、ベーシストが小さな手術をする、と 「次はいったい何が起こる?」とハラハラするニュースが続出。 と、8月のはじめにスティーブンがステージから足を滑らせて落ち、頭を20針縫い、肩を骨折という大惨事が発生した。その事故の後、残りのツアーがすべてキャンセルとの発表があったのだった。

・・・そんなぁ。苦労して手に入れた2回分のコンサートチケットと払い戻しの利かない航空券をどうしてくれるの?

YouTube で見ると、つるりんと足を滑らせ、ステージの下へ消えるスティーブンがいろいろな角度から撮られている。 慌てて駆け寄るセキュリティガード。観客はしばらくの間 「コンサートの余興のひとつ」と思っていたらしいが。

おまけに私は 「どの曲が演奏されても、きっちりと一緒に歌う」と心に誓って、歌詞カードを手にこの数ヶ月間練習を重ねるというオタッキーな行為を続けていたのだ。 「私の青春を返して」と叫びたい。 おかげでしばらくの間しょぼんとしていたのだ。

考えてみると予約を取る苦労をしたのは友人だ。ハイドパークのコンサートが私のおごりだったため、「お誕生日祝い」として全額払ってくれていたのだ。 

財産のある友人は財産である。

ちなみに私の誕生日は夏ではない、が、まあ、それは些細なことである。  続く

投稿者 lib : 11:04 PM | コメント (0)

September 02, 2009

アスコット

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忘れた頃に最後のアスコットである。
ホリディの予定を立てていたら、大変なことが (本人にとっては)起こったので、しょげていたのだ。

さて、どこまで言ったっけ? そう、期待のランチだ。 プライベートロッジでのランチというのは何だ? 競馬場の中のレストランではなく、真向かいにある建物らしい。 ここは誰かの邸宅という感じ。 もしかすると競馬の期間中だけ貸し出しているのかもしれない。 二階は住居になっているのかしらん? 

外から見ても大きな家だが、玄関ホールが私の家の半分近くあった (比べる対象が貧弱だったか?) 両側にウエイター、ウエイトレスがずらっと、そう、ずらっと並んでいる。 もし、これが私の家の玄関なら、ウエイターがずらっとは並べない。ず、くらいだ。 (だから、比べる対象が貧弱だってば)

「トップハットをお預かりしましょう」と友人の帽子が取られた。 そういえば、トップハットを脱げるのはプライベートクラブ内だけとか書いてあったな。 誰のかわからなくなるので (どうせ貸衣装なので) 帽子に名刺をつけて並べられる。
で、私の帽子は・・・脱いではいけないのだった。 女性は食事中もかぶったまま。頭が蒸れそう。

玄関ホールを進むとテラスでその先は庭園というよりは、ゴルフ場と呼んだほうが近い。「いいお庭ですこと・・・」 というよりは、 「すばらしい景観ですね!」 という規模だ。 しかもテラスからは急な坂になっていて、これにシャンペンを加えるとドレスを着たまま転げ落ちる日本人ができる・・・と大変なので、 

1. あまり飲まない
2. テラスの端に行かない

上記を注意しなければならない。

60人ばかりのランチで某企業の招待客だ。 私もね。 まあ、私は余ったチケットの補欠人員だが。 10人ずつの丸テーブルが6つ、私は友人とテラス席のひとつに座った。 やったー、いいテーブルと思ったが、なかなか曲者のメンバーだった。
10人のうち、ゲイのカップルが2組。 キャメロン・ディアスそっくりのロシア人ガールフレンドをつれた男、帽子はかぶっているものの 「潮干狩り用」のような帽子をかぶった妻をつれた男。 で、私は唯一の日本人。 キワモノが揃っている。 私の友人はたいへん女心がわかった男で、競馬場でも 「あれはジミー・チュー、あれはマロノ・ブラーニク」 とファッションに詳しいところを披露しており、 (もしかして、ゲ・・・?) と日頃から疑っていた。ここでもまた (もしかして・・・) と思った次第である。

10人中、競馬の経験者は私だけというすごい状況。 「競馬は初めて」 「どの馬がいいんだろうね」 「この表のマークはどうやって見ればいいの?」 という会話である。 
やはり、ここは
「あら、フレッドおじ様の馬が出るのね」
「ジョージアナが婚約祝いに買ってもらった馬はいつレースに出るのかしら?」
などと、アスコットなんて通い慣れてます、とイギリス貴族風にやってみたいもんだが、企業の招待客(と余りチケット招待客)はこの程度のレベルであった。

ゲイのカップルは2組ともアメリカ人だった。 アメリカ人と話すのはひさしぶり。 いやー、この超軽いノリが懐かしい。 私がジョークを言うと、イギリス人ならクスッと笑うくらいだが、こいつら笑うのなんのって・・・。ジョークが受けるのは嬉しいが (そんなにおもしろい事言ったっけ?) と、こちらがとまどうような激しい反応だ。

潮干狩りおばちゃんは 「帽子ならいいんでしょ?」と、麦わら帽子に近いものをかぶっている。 シュリンプカクテルにレモンのタネが入らないようにかぶせてあるガーゼをわざわざはずしたり、とんでもない順番のナイフとフォークを使ったりして、とまどっているようだった。 自分だけ接待を受けている人は時々奥さんも食事に連れ出して、場慣れさせてあげたほうがいいかもしれない。見ていてかわいそうだった。

ランチは盛り上がった。 が、盛り上がって2時を過ぎてしまい、女王陛下の馬車による来場を見逃してしまった。 ふと気がつくともう女王は場内で観客に手を振っている。 しまった! ロイヤルアスコットのキモである女王の実物を見ないなんて、何たる失態。 競馬場の真向かいにいて、テレビで女王を拝むなんてバカみたいだ。

女王は機嫌が悪そうな顔をしていた。 きっと (庶民が貴族の趣味に押しかけやがって、まーったく。馬も知らないくせに) とか思っていたのだろう。

この日、スタート直後に騎手を振り落とした馬は1着でゴールし、そのまま制止もきかずに、2周ばかり気持ちよくコースを走り、観客の拍手喝さいをあびたのだった。
        アスコットの巻          完

投稿者 lib : 09:53 AM | コメント (0)

August 03, 2009

ロイヤルアスコット その3

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さらなるアスコットである。


ロイヤル・クロージャーが 天上、別格、超、特別、貴賓席でないことには、少しというか、相当がっくりしたが、それはそれ。 曇り気味の空を気にしながらも、久しぶりのアスコットで群集を見物。


「力いっぱい着飾ってきました。 あたしの晴れ姿を見てー」 という淑女の面々だ。 この日はレディス・ディではないかったので、ゲゲ・・・よく家族が止めなかったね、と言うキワモノはなかったが、とりあえず全員が帽子をかぶっている。 ずいぶん高そうな帽子も見かけた。来年も同じ帽子というわけにもいかないだろうに、どうするんでしょ? (いかにも貧乏人の発想)


ドレスコードぎりぎりのスカート丈やネックラインもいたが、 「アスコット競馬、服装規定検定委員会」 から、お目こぼしに預かったらしい。 目がチカチカする艶やかさだ。 60-70歳と思える女性もかなりの数がフューシャピンク(ショッキングピンク?)のドレスとお花畑のような帽子で決めている。たぶん私の一生で一番多くのフューシャピンクの服と帽子を見た日と考えて間違いない。


「クリスチャン・ラボーティンだよ、あれ。700ポンドはするね」と友人。 

あ、本当だ。 10センチもあるようなスティレトゥヒールを芝生にずぼずぼと埋めながら、女が歩いている。 そう言えば、みんな気張ってすごいヒールを履いている。


ふふふ、バカ女たち。


ここは競馬場。クラブではないのだ。 レースの日に歩く距離を考えていないだろう。


まず、パドックに行き、次のレースの馬を見る。 で、勝ち馬に目星をつけたら、馬券を買う。 観覧席に戻る。 レースを見る。 とことん負ける。 悔し紛れに馬券を千切る。 それから、また、パドックに行き、次のレースの馬を見る。 で、勝ち馬に目星をつけたら、馬券を買う。 観覧席に戻る。 レースを見る。 とことん負ける。 悔し紛れに馬券を千切る。・・・と、また、パドックに・・・。


これをレースの数だけ繰り返すのだ。 おまけに競馬場は広い。 一日に歩く距離は数キロを軽く越える。10センチのスティレトゥヒールなんか履いている場合ではない。


さて、男は全員がモーニングスーツでトップハットだ。 たぶん、99%が貸衣装で、おまけに生まれて初めて着たのだろうけど、さすがはイギリス人、結構、 似合うね。 日本人の男が一生に一度だけ、紋付羽織はかまを結婚式で着ても、あっさり着こなせてしまうのと同じだろうね。


中学生くらいの男の子たちもモーニング、トップハット姿だが、これはあまりにしっくりいっていないので笑えた。 仮装行列みたい。


最高のフロックで着飾り、いかにも伝統的な貴族のお遊びという感じだが、違うのは大多数が 「大枚払って一生の記念にやって来た一般人」だったことだ。 私も含めて。 あ、私は払ってないか。 私は 「タダ券貰ってやって来た一般人」でした。


ごくたまに年季の入ったモーニングスーツ(自前、しかも最低30年くらいは着てそう)を着たお爺さんがいる。 こんなお爺さんは

(チッ、下層階級の小娘、小僧っ子がウロウロして、アスコットも品が落ちたね。 ああ、昔が懐かしいよ)とか思ってるんだろうな。 


ランチのときに 「ボクはどんなに苦労をして、幾ら払って、このモーニングスーツとトップハットを貸衣装屋から借りてきたか」 の話で盛り上がった。 

「このトップハットしか残っていなかった。サイズが大きすぎるので、お店の人のアドバイスで新聞紙を詰めてかぶっている」人もいたし。


ちなみにスローンスクエアで借りた人は100ポンド強。 郊外の店で借りた人は60ポンドだったとか。 「でも、ちょっと袖が短い・・・」そうである。


こちらは帽子選びで苦労したが、男の人も大変だったようである。


友人と私の身長差は30センチ。 で、トップハットが加わるとさらに30センチ。 巨人と小人のような二人組であった。


まだまだ続く。 面白かったので。

投稿者 lib : 04:24 PM | コメント (0)

July 12, 2009

ロイヤルアスコット その2

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さて、ロイヤル・アスコット競馬である。

厳しいドレスコード(服装規定)に沿ったドレスと帽子を用意する期間はたったの2日。

外国の方は正式な民族衣装も歓迎です。 ――と書いてある。 そうか、その手があったか。 着物姿で華やかに登場すれば、テレビに映るチャンスもあるのでは? が、私は自分では着つけができない。 盆踊りじゃあるまいし、アスコット競馬に浴衣とゲタ姿ではひんしゅくを買うだろう。

ということはワンピースかドレススーツだな。 おパンツ見えそうなミニスカートとか腹丸出しプルプルでなければ、ドレスコードはクリアとしよう。

困ったのは帽子だ。 あんな場所にかぶっていけるような帽子は持っていない。 といってもマイフェアレディみたいな大げさな帽子もアウト。 小柄な私があんなものをかぶったら、 「歩く 毒きのこ」状態になってしまう。

しかたない、買うか。 二度とかぶることはない帽子に大金を払うのもなあ。 が、せっかくのロイヤル・エンクロージャーでの観戦。 ここで帽子代をケチって入場拒否なんかされたら、一生の不覚。 さて、帽子ってどこで売ってったっけ?

とりあえず、シティの駅の構内にあるアクセサリーショップをのぞくと・・・あるはあるは、壁一面にそろっている。 どうも帽子は 「季節モノ」らしい。 アスコット競馬か、それとも結婚式への参列か、女の人が群がっている。 値段も25ポンドから40ポンド程度と、会社員にも優しい価格だ。 

えーと、どれにしよう。どんなタイプが自分に似合うのかと帽子になじみのない私のような客がウロウロ、キョロキョロと途方に暮れた顔で店内を歩き回っている。

ヘアバンド式のものも多い。 つけた瞬間インスタントに頭が鳥のトサカになったり、円盤が乗っかる感じ。でも、ヘアバンドってサイズが合わないと頭痛がするのよね。一日中つけるのはきついかも。

じゃ、帽子にするか。

さすがに30ポンドの帽子では六尺玉花火のようなスペクタルな効果は望めない。 派手な羽飾りやリボンにも心惹かれるが、「歩く ジャポニカ・テングダケ」 になる危険もあり、初心者としてはおとなしめを選んでおくほうが無難だろう。

帽子選びに時間がかかってしまった。ああ、女って面倒、と思ったが、男の人はもっと大変だったらしい。

「レーシング・ポスト」という競馬新聞を買って、馬の研究をし、勝負予想を立てる予定だったが、そんな暇もなく、当日に突入。

いやー、久しぶりのアスコット・・・って全然見覚えがない施設になっている。 で、全員がトップハットに帽子姿だし。 以前に行ったのは、どうやらロイヤルでないアスコットだったらしい。 今の建物になる前のことなので施設はもっと小さかった。

一般席
メンバーズ・エンクロージャー
ロイヤル・エンクロージャー

の3種類があって、メンバーズ・エンクロージャーに行ったのだ。 

最初は会社の接待で現地集合。 よくわけがわからなかった私はまず一般席に行き、
「マダム、あなたの席はあちら。もっといい席ですよ」と言われ、
その次にロイヤル・エンクロージャーに行き、
「マダム、ここはロイヤルの席なので、残念ながら、あちらです」と追い払われた。 が、ここのおじさんは親切でメンバーズ・エンクロージャーの入り口まで私を連れて行ってくれた。 そのときのロイヤル・エンクロージャーは広い広い競馬場のほんの一角にきらびやかに存在する雲の上の場所だったのだ。

その記憶があって、ロイヤル・エンクロージャー = 王族、貴族専用席 の刷り込みがされたらしい。 で、今回は友人と一緒に
「キャー、女王のそばの席だったらどうしよう? 声かける? どうする? サインとかしてくれるかな?」と騒いでいたのだ。 (友人もよく状況の理解ができていなかった)

が、この日、ここにもあそこにもロイヤル・エンクロージャーの人々が。 いったい何人のキャパシティ? 千人以上か? 全然特別じゃないじゃん!

結論、今回のロイヤル・エンクロージャーはただの 「やや高価な一般席」でした。

続く

投稿者 lib : 11:46 PM | コメント (0)

July 06, 2009

ロイヤル・アスコット その1

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ロイヤル・アスコット競馬に行ってきた。

アスコットには2回ほど行ったことがある。現在のモダンな建物になる前のことだ。そのときはメンバーズ・エンクロージャーでの観戦だったが、今度はロイヤル・エンクロージャー! ロイヤル・エンクロージャーといえば、王室、皇族のやんごとなきお方と席をご一緒するのかしらん? (ものすごく間違っていたことは後でわかった)

「私はロイヤル・エンクロージャーに招待されたのよー」と声を大にして触れ回りたかったが、実際にやってしまうと、バカ丸出しなので、ウキウキする気持ちを抑えた。(実はたいしたことはないと後でわかった)

ロイヤル・アスコットの5日間、木曜日はレディス・ディで、奇抜さを競う帽子の日だ。 ランチタイムにインターネットでアホ帽子の数々を見ていると友人からメールが入った。
「超急ぎ。 土曜日空いてる? 空いていればロイヤル・アスコットのロイヤル・エンクロージャーに招待するけど」

ロイヤル・エンクロージャーの文字がネオンのようにピカピカと光ったね。 (錯覚だったことは後でわかった)

ロンドン広しといえど、私ほど、「困ったときの穴埋め補欠選手。最後の最後にコールしても、気持ちよく駆けつけます」として重宝されている女もいないことだろう。
私は 「出不精」(デブ症ではない。・・・ちょっとあるかな?)の上に 「つきあいのいい人間」なので、自分ではめったに週末の予定を立てない。が、遊びの誘いを断らないのでも有名。

おかげさまで 「明日、チェルシーの試合をボックスルームで」とか 「あさって、ロイヤル・アスコットをロイヤル・エンクロージャーで」だの 「週末ローリングストーンズ見たい?」なんて、おいしい話が転がり込んでくるのだ。 「枯れ木も山のにぎわい」でパーティ要員としてかり出されることもある。 招待だと財布にも優しいしね。

「即決。行きます」の返答は当然だろう。 (ま、確かに他の用もなかった)

「じゃ、ドレスコード(服装規定)と予定表、読んで」とメールが送られてきた。

ご婦人の方々に: 昼用のフォーマルドレスと帽子をお召しください。肩がむき出しになっているとか、胸元が顕わなもの、スパゲティシェイプの肩ストラップや、肩ストラップが2.5センチより細いドレス、またミニスカートは、アスコットにはふさわしくないとお考え下さい。おなかは出さずにきちんと服で覆ってください。パンツスーツは足元までの長さのものを。服地の材質や色合いが揃うようになさってください。

意味: まーったくこの頃の客は下品でしかたがないのよね。肩だの胸だのバリバリ見せるわ、おパンツ見えそうなミニスカートは履いてくるわ。腹の脂肪をプルプルさせちゃって。エセックスの場末にあるクラブじゃないんですからね。 安物のペラペラドレスなんか着てこないでよ。ここはスノッブが売りの貴族の遊び場なの、いいわね?

ご紳士の方々に: 黒かグレーのモーニングスーツ(あのペンギンスーツね)でお越しください。ウエストコートとトップハット(マジシャンがウサギを出す、あの帽子)も必要です。トップハットはいつもかぶっておられるようにお願いいたします。お脱ぎになってもいいのは、レストランでの食事、プライベートクラブ内、等一部のみです。

意味: どうせ、持ってないだろうから、早く貸衣装屋に行ったほうがいいよ。天気が良すぎると暑いだろうけど、我慢、我慢。女王だって暑いのにずっと帽子をかぶってるんだから。ほとんど毎日だよ、女王の場合。何せ一日中かぶりっぱなしだから、サイズに注意。翌日も額に帽子の跡の横筋が入っている人を見たら、 「お、アスコットにお出かけでしたか?」と聞いてあげるように。

当日のスケジュールはプライベートロッジで
11時 シャンペン、ワイン、ピムズとカナッペのレセプション
12時 5コースのランチ (私はダイエット中なのだが・・・)
2時  女王陛下をレース場でお迎え (馬車で登場!)
2時半 最初のレース
3時半 アフタヌーン・ティはサンドイッチ、ケーキ、ストロベリーとクリーム、そしてピンクシャンペン 
5時半 最後のレース
6時 伝統のバンド演奏に合わせ、みんなで大合唱 (カラオケみたいなもんだ)

いやでも、期待は高まる。 
続く

投稿者 lib : 12:49 PM | コメント (1)

June 17, 2009

涙のカラオケ大会

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某金融機関に勤める友人が会社のカラオケ大会に参加したそうだ。

「カラオケ好きなの?」
「いや、社内のネットワーキング」
だそうである。大きな会社なので、時々こうやって社内のイベントに参加し、マネージメントの人とおしゃべりをして、ゴマをすったり、情報を仕入れたり、あわよくば他の部署で良いポジションに移ろうという魂胆らしい。

・・・イギリス人のサラリーマンもそれなりに苦労しているのね。

さて、この会社、かつてのパーティでは数百人を集め、豪華なホテルを借り切り、シャンパンを浴びるほど飲ませ、とバブリーなコーポレートワールド絵巻を繰り広げていたのだが・・・。

「どこで開かれたの?」
「会社の会議室」
「え?」
「おまけに会費制」
「ええ?」

確か自社の株価が四分の一になってしまったと泣いていたが、ついにそこまで・・・。

大きな会議室を開放し、飲み物と軽食が用意されたという。
イギリスの会社ではなく、本国では政府の資金注入もあったらしい。そんな時節柄、会社の金で派手なイベントを組んでいると思われたくなかったのか? でも、時には社内交流会も必要で、というわけで、会議室で会費制のカラオケ大会・・・苦労がしのばれる。
まあ、会費が10ポンドというのは形だけの徴収で、飲食物の費用の大半は会社がまかなったのだとは思うが。

ちなみにこの会社は数ヶ月前に全従業員の10%がクビ、来月にはさらに7%が人員カットとなるらしい。
友人も 「もし、今クビになったら」と退職金を計算している。かなりの額(友人試算による)は貰えるようだが、無税なのは3万数千ポンドまで、それ以上は40%の所得税がかかるらしいので、
「3万数千ポンドは現金で貰い、残りは税金のかからないように年金に組み込んでもらう」そうである。

3万数千ポンドなんてイギリスの物価の高さを考えるとアッと言う間に消える額だ。残りは年金にするなんて、ずいぶん余裕があるなあ。

さて、そのカラオケ大会で挨拶をして回っていると、何人か馴染みの顔に会ったという。

ある女性同僚の夫はミリオン単位(数億円)という稼ぎがあるが、忙しくて結婚生活には不満がいっぱい、という話だったが、この不況で収入は激減。さて、今は?

・・・離婚訴訟中だそうである。   

さて、もう一人の女性同僚。去年までマネーマーケットで巨額のボーナスを稼ぐダンナがいたが、彼は今失業中で、

・・・離婚訴訟中だそうである。

男の同僚は業績が落ちて不眠症になり、家族にやつあたりしていたが、

・・・離婚訴訟中だそうである。

そのカラオケ大会の話を知り合いの家庭問題専門の弁護士にしたら、

・・・たいへん忙しいそうである。

金の切れ目が縁の切れ目というのは万国共通である。

投稿者 lib : 09:51 AM | コメント (0)

June 03, 2009

私をフットボールに連れてって その3

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チェルシー・スタジアムのゲスト席の入り口はホテルのチェックインのような感じだ。
「いいゲームになるといいですね。楽しんでくださいねー」
と、スタッフがフレンドリー、それも不自然なまでの愛想の良さである。ゲストパスを機械に通しリフトに乗り込んだ。着いた階もゲストルームが並んだホテルのよう。

各ドアを見るとそれぞれに有名企業の名前が張ってある。銀行・金融関連、広告業界、通信業、このご時世にまだ接待費が使えるなんて、けっこう景気いいのね・・・。

私が招待された接待用の部屋は20人くらいまでのキャパである。ここにも商業用スマイル満面の黒人のおねえさんがふたり。
「ハーイ、私はジェニファー、彼女はミッシェル。このお部屋の担当です。まずお飲み物を用意しますね」
テーブルにはサラダ、コールドミート、キッシュのようなものが並び、ホットミールはラムチョップ、ローストベジタブルが用意された。どれもおいしかったが、ワインは小売価格10ポンド程度のものと思われる。(産地、銘柄に詳しくなくても小売価格の推測は得意)

この部屋のスタジアム側のドアを開けると、ベランダのようなプライベート観客席に出ることができる。一般席より一段高く、フェンスで区切られているので、皆が総立ちになっても、ゲームを見るのに困らなかった。背の低い私はラッキーである。が、ここはお行儀の良さが要求されるらしく、この席での食事は禁止、飲み物の持ち込みもダメ、で、何とフットボールシャツの着用も許されない。
「一般席のほうがゲーム鑑賞の雰囲気はいいよ」と言っていたのはこのことらしい。

さて、グランドでは100人近くが準備に余念がない。  
ゴールキーパーは軽くディフェンスを、選手たちはレギュラー、補欠、準補欠(たぶん)に分かれて、ランニング、ストレッチ、手足を大きく振り上げての「筋肉質の大柄な男たちによる、幼稚園お遊戯風、巨大スキップ」と足のつけ根からグルリと回しながらの 「ひょっとこ踊り」と ジグザグ歩行は「裸足でのアチチチ火渡り風」 である。結構マヌケな動きなのだが、この人たちは年間数億円も稼ぐ選手たちなので、金のかかったダンスステップには違いない。

ヘッディングでぶつかって脳しんとうをおこしたらしい選手を心配すると、
「彼は1週間あたり13万ポンド稼ぐんだ」と聞き、同情する気がなくなった。
13万ポンドもらえるなら、毎週、脳しんとう起こしたって構わないよね。

選手たちの足さばきは複雑、かつ鮮やかで、どんなに緻密な仕事もこなせそうである。
ウォーミングアップ中も、レース編み(かぎ針)、みじん切り(文化包丁を使ったもの)、設計図の書き込み(住宅に限る)等も、軽い足技でさばいていた。 (嘘)

が、何といっても目を惹いたのが、審判3人組の動き。
黒のシャツに黒のショーツ(って言うんだよね?)に黒のハイソックス。襟だけは目にもまぶしい白だ。
まず、フィールドを軽くランニング、で、選手と同じく巨大スキップ、ひょっとこ踊り、裸足で火渡りの後、彼らが特に力を入れていたのが、 「後ろ走り」である。ゲーム中も注意してみていると、確かに審判は後ろ走りが多い。 重要なポイントであるらしい。そういえばタタタタッとすばやく後ろに走るのはむずかしい。(注:試してみようという人は転んで後頭部を打たないようにしてください)

プログラムを貰った。チェルシーの選手が写っている。
「あ、この人知ってる。ガールズ・アラウドのシンガー、シェリル・コールの旦那だよね。去年、ヘアドレッサーと浮気して離婚寸前までいったけど、よりを戻したっけ。へえ、チェルシーの選手だったんだ? この真ん中の人、最近スペイン人のモデルと別れて、新人女優とつき合い始めた、あの彼だね。名前は知らないけど」
とバリバリにフットボール業界に詳しいところを披露した。

友人が肩を落としながら、
「・・・この右の選手、知ってる?」と指さす。
「さあ? ゴシップ欄に出てこない人はちょっと・・・」と知識に偏りがあることを認めざるを得なかった。 ある選手は彼の母親が 「万引き」して捕まったニュースで顔に見覚えがあった。息子は何億と稼いでいるのに、何故? という事件である。ちなみにこの人はチェルシーのキャプテンだそうである。

この発言から友人は私を招待したのは 「猫に小判」だったと思ったらしいが、すでに時遅しである。 ふふ、今度から人選には注意ね。他の招待客には 「猫にかつぶし」だったけど。

フットボールの試合を見に行った、とオペラ友達に言うと、
「あなたがフットボール? チェルシーの試合にあなたが?」とまるでアラスカでフラダンス研修でもしたように驚かれた。
彼女にプログラムを見せたら、
「あ、シェリル・コールの旦那が表紙だ。この人フットボール選手?」と言った。

PS ちなみにこの試合は3-1でチェルシーの勝ち。リーグだかなんかの順位がなんとかで(よくわかっていない)重要な試合だったそうです。提供は 「猫に小判」でした。

投稿者 lib : 09:46 AM | コメント (0)

May 26, 2009

私をフットボールに連れてって その2

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フットボールの試合を見に行った。

一度は見てみたいと思ってはいたものの、チケット入手は難しく、しかも100ポンドもするとか。ファンでもないのに興味本位で行くには手間ひまがかかるし高すぎる。

・・・と友人が 「フットボールゲームのチケットがあるんだけど、明日の土曜日ひま?」 と電話をしてきた。翌日の予定は 「庭仕事」だけだ。 ガーデニングは来週に延期しよう。芝には悪いが、もう1週間は勝手に伸びてもらうことにする。

「チェルシーのホームゲームで相手はフラムだよ」
チェルシーといえば、有名なチーム、のはず。相方はフラム(フルハム?)両方ともロンドンの地元チームだそうだ。どうせ行くなら有名チームが見たいと思っていたのでよかった。3丁目かもめ商店街チームなんてよりは、チェルシーとか、マンチェスター・ユナイテッドとか、アースナルとか、えーと、他にもあったっけ? ニューヨーク・ヤンキース? 

さて、重要な質問だ。

「何を着ていけばいいの?」
「何でもいいよ」

ほーら、出た。 「何でもいいよ」って、何でもいいわけないじゃない。
スポーツイベントでも、アスコット競馬とウィンブルドンテニスと着ていくものは違うし、アスコットだって、メンバーズクロージャーなら、一般席とは違うでしょうに。

「で、他のメンバーは?」
それがわかれば、なんとなく着ていくものが決まる。 
「えーとね、ロンドンのクラブのオーナーとファッションハウスの人だよ」
・・・何でそんな派手な商売の人たちと私を一緒の席にするの?
どうしよう、何を着ていこう? 

(うわー、去年のシーズンの服を着てる、この女)とか 
(15センチ以下のヒールとストッキング履いた女なんか、久しぶりに見た。ダッセー。僕のクラブに足を踏み入れて欲しくないね)とか思われたらどうしよう? 
すみませんねえ、ウエストエンドのトレンディでファッショナブルな皆様に比べて、シティの勤め人なんて、スーツに中ヒールとかが定番なんですけど。 

と、心配したが、結局はオーナーの親戚の男の子、とファッションハウスの経理担当の人が来るらしい。よかった。

1時にフルハム・ブロードウェイの駅で待ち合わせる。
他の人たちも思ったよりは地味で胸をなでおろした。「経理担当」の人はいかにも 「経理担当です」という真面目そうな感じで、職業上のキャラは万国共通かも。チェルシーファンという男の子は19歳 「チェルシーが勝つといいな」と興奮している。

駅を出てスタジアムに向かう。ほんの2,3分の距離だ。
選手の名前と背番号のシャツを着てワクワクした顔の少年が父親に手を引かれている。
XX選手が彼のヒーローか。 坊や、将来はフットボール選手ね、とお母さんに言われているんだろうな、と、ほほえましい感じだが。
腹の出た中年男がチームシャツでなく、選手のシャツを着てウキウキしているのは
XX選手が彼のヒーローか。 あんた、フットボールもいい加減してよ、と奥さんに言われているんだろうなあ、と見ているほうが困った気持ちになってしまう。

「・・・チケットあるよ」
「メイト (おにいさん、という感じの呼びかけ)チケット余ってたら買うよ・・・」
とダフ屋のささやき声があちこちからかかる。
なんだか武道館のロックコンサートに向かっている気分である。

「チケット買わない?」というのと、
「お兄さん、遊んでいかない?」というのは、その気のない通行人にとってはドギマギさせられるものだ。(後者は言われたことはないが・・・)

「いくら位で売ってるものなの」と聞くと、
「40-50ポンドで買いとって、80-150ポンドで転売かな。席によるけど」ということらしい。高いのね、フットボールって。オペラより高いなんて。

と、この日はゲストルームへのご招待だ。
15-16人用の部屋代は1ゲームが4000ポンド。年間でホームゲームは約20試合だそうだから、シーズンで8万ポンド? ゲストルームもシーズン契約だそうだ。この階には16部屋ある(つい、数えてしまった)。上の2フロアもゲストルームがあり、スタジアム向かい側にも同じようにあるようだ(これも数えた)。42000人入れるスタジアムで、もし1席を50ポンドとすると・・・(貧乏人はこうやって必ず掛け算したり、日割り計算したりする。私のように)

ビジネスモデルとしてのフットボールはすごい・・・。完全にオペラの負けだ。

投稿者 lib : 04:09 PM | コメント (0)

May 05, 2009

シティの熱い戦い その2

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デモ隊が見えない。時おり、デモの参加者らしき人たちが警官にデモの集合場所を聞いているような姿が見える。なんだかねえ、もっと激しい動きを期待してたんだけど・・・。

台風の接近に備え、窓を補強し、食糧備蓄、ろうそくやマッチを買いそろえ・・・てたのに、台風の進路が逸れてしまった様な失望感が広がる。

日本のクライアントと電話で話していると、窓の外を見ていた同僚が声を上げた。
「あ、来たかも」
ううっ、タイミングが悪い。
受話器を持ったまま、背伸びをするが外の様子がわからない。相手の話も上の空で聞いているような状態だ。
なんとか話を早めに切り上げて、窓のそばに直行。・・・いないじゃないの。

「違ったかも」
ええい、人を惑わせるんじゃない。

社内中が窓際でウロウロしていたが、いっこうに動きがないので、だんだん興味を失ってきた。しばらくして、ふと外を見ると・・・いる。集まっている。しかし、集まっているだけだ。それだけ。

オフィスから見えるのはデモ隊の 「しっぽ」の部分。道を通行止めにして最後尾には黄色い蛍光色のベストを来た警官が並ぶ。・・・が、並んでいるだけだ。

デモ隊は集まっているだけ。
警官は並んでいるだけ。

・・・なんて芸のない奴らなんだろう。

インターネットでニュースのライブ中継をつけた (はい。この日、仕事はしませんでした。でも、私だけではありません、念のため)
と、そこには警官隊ともみあうデモ隊が。どうもシティの中でも数ヶ所でデモ行動があり、うちのオフィスのそばのデモは 「比較的地味なデモ行動」のようであった。

「この近くのデモは 『はずれ』だね」と同僚。私もそう思う。
というわけで、ランチタイムには私は同僚と一緒に 「デモ隊の見学」に出かけた。まあ、めったに見れるものではないので、一応、ライブで見ておきたい。

道をはさんだ向こう側はデモ隊と端っこには警官、道のこちらはシティの勤め人が携帯で 「記念写真」を撮っている。ほとんど「見世物」状態である。夕食時の話題にするのかしらん。
ライブ感を求めてデモ隊に近寄って写真を撮っていた人がバスにひかれそうになっていた。こちらの道は交通規制はしていないらしい。デモよりバスが危険であった。

と何事もなく一日が終わった。 (揉め事があったと知ったのは後日テレビのニュース)一部の暴徒が資金注入を受けた銀行の窓から押し入ったが、
「税金を注入した銀行だから、実質、僕らの銀行だし、自分の持ち物を壊すのは・・・」ということで後に続く人もなし。

何年も前にも 「反資本主義」のデモがあった。そのときはオフィスの下を通ったので窓からよく見えた。
「社会革命を! 世の中をひっくり返そう」なんて叫んでいたので、
「そうだ、そうだ。現在のポジションを逆にして、お前らが働け! 私たちが家でダラダラ暮らす」と眺めていたものだ。あの時は結構あちこちが破壊されたっけ。

今回はオフィスの窓から20ポンド札をデモ隊にヒラヒラさせて、
「えーい、貧乏人め。これが欲しいか? 取りに来い!」
挑発する勤め人もいたらしい (うちの会社ではありません)

カジュアルウエアで目立たないように出勤。ターゲットにされないようになんて、メールが飛び交っていたのに、たいした態度じゃないの。

夕暮れ、パブに集うイギリス人。パイントを傾けるデモの帰りのカジュアルウエアのグループの横には 「変装したシティのビジネスマン」がやはりカジュアルウエアでビールを飲んでいる。違いはデモ参加者は遠出しているのでリュックサックが足元にあり、シティの勤め人はそれがないということだけ。
ただし、レデンホールのパブでは酔っ払ったシティの勤め人が、デモ参加者にビール瓶を投げつけたとの情報も。フットボールフリガンか、あんたたちは?

まったく仕事にならなかったけど、なかなかスパイシーな一日でした。
でも、また来てね、とは言わない。

投稿者 lib : 12:03 PM | コメント (2)

April 21, 2009

シティの熱い戦い

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サミットG20がロンドンにやってきた。 来なきゃいいのに・・・。

「デモ隊の皆さん、いらっしゃーい!」と招かんばかりのロケーションではないか。 
ポリネシアあたりの小島 (民間便は飛んでいない) に20人が集まり、ひっそりと会議を開いてくれれば、どんなに安上がりだっただろう。

おかげさまで、警備に7ミリオンポンドの経費をかけ、警察総動員だったらしい。 誰の税金だと思っているんだ。

おまけに4月1日はシティにデモ隊が大集合。「経済恐慌の元凶、シティのビジネスマンを街灯につるせ!」などと船頭、ではなくて、扇動する奴らも出てきた。

「なるべくシティに来ない」
「ミーティングは延期する」
「カジュアルな服装にドレスダウンする」

等々の勧告が各社のメールに流れたのだった。

「どうしよう。休もうかな・・・。怖いし」という心配性。
「とりあえず、ドレスダウンして、早めに出勤。デモがある間は外出をやめよう」という、常識派。
「チッ、いつものサンドイッチショップは休みだろうな。お弁当を持ってこよっと」とランチのことしか考えていない現実派 (私はここに属する)

しかし、一部には
「ピンストライプ・スーツに、赤いソックス、赤いサスペンダー、赤いハンカチーフを胸ポケットにつっこんで、シティに来てやる。学生時代はラグビーで鍛えている身体だ。かかってこい!」 という勇ましいのもいた。

そう、シティのビジネスマンは伝統的に競争心が強くて闘争的なのよね。これは年が多いほど、その傾向が強いようだ。若者は軟弱でいかん。

前日まで、ボスや同僚とデモの日の対応を相談。この不安と期待感。何かに似てるな・・・そうだ、台風の接近だ!

知り合いの人は心配した奥さんからシティに行くのをやめてくれと言われたのを断ったら、
「じゃ、もしものために、銀行のキャッシュカードを置いていって」と頼まれたそうだ。

・・・もしもっていうのは、どんな状況を想定していたのでしょうかね? 暴徒に襲われてボコボコにされるとか?

さて、4月1日の朝、シティはやや人が少ないという感じ。休んだのか、早めに出勤したのか? そして、7割がドレスダウンをしていて、ビジネス街には見えない雰囲気だ。 

私の住む郊外からの電車でも、いつも見かけるビジネスマンが数人カジュアルウエアになっていた。 「敵 (攻撃的なデモ参加者)の目をくらます」 ためのドレスダウンでも、いかにも、 
「私は日ごろはスーツ着用のビジネスマンですが、会社の規定に従い、今日はドレスダウンです。どうです、とてもビジネスマンには見えないでしょう?」というのが、あまりにミエミエの姿。 朝の8時半のシティで、 ラルフローレン、ハケット、バーバリーのシャツにアイロンのピシッときいたチノパンで歩く男を見て、

1. カジュアルな服装で働く労働者
2. 変装したシティのビジネスマン
3. 覆面プロレスラー

のどれだと思うだろうか?

私? 私はいつもの時間に、いつもの服装で出勤した。だって、面倒なんだもん。 暴動の可能性くらいでは、このなまぐさな性格は矯正はできないね、って威張ってどうする? 電車が止まることを考えて、靴だけはヒールのないものにしたけど。

11時頃からシティの各駅にデモ隊は集合するとか、ん、もう、みんな仕事になりやしない。
「来た? 見える?」
「いや、まだみたい。来ないなー。何をやってんだろう。早く来ればいいのに」
「遅いなー。どこだろう? お巡りさんしか見えないよ」
「エイプリル・フールで嘘なんてことはないよね?」

まだか、まだかと窓から外を見ることしきり。

12時にバンク・オブ・イングランドの前で抗議行動とか、いやでも、期待は高まる。

続く

投稿者 lib : 09:45 AM | コメント (0)

April 01, 2009

ニナガワ歌舞伎

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ニナガワ(と呼び捨て)演出の歌舞伎を見に行った。作品はシェイクスピアの十二夜が原作だ。

場所はバービカンセンターである。この複合施設は迷宮のようで、ちゃんと会場へ行き着けるのか、終電に間に合うように家に帰れるのかといつも余計な心配をさせられる。おまけに今回いっしょに行く友人は 「シティはあまり慣れてなくて」という人。 バービカンをシティと見るかどうかはともかく、 「バービカンもよく知らない」とのこと。 私がこの邪悪な迷宮の案内役?  やだなあ。

そのため、 「じゃ、バービカンで待ち合わせね」というわけにもいかず。 近くの駅のマクドナルドに集合。 ちぇっ、プリ・シアター・ミールはマクドナルドか・・・。
と思ったが、気の効く友人は幕間につまめるスナックを準備してきていた。 
えらいっ! このこまめさ!

ニナガワ(と呼び捨て)といえば、イギリスでの評価も高く、観客も演劇人が多く知名度が高い。今回は歌舞伎ということで外人率もすごく高い。が、席も、ぐっと高い・・・位置にあった。

これを予約したのは2週間ばかり前で、その時点ですでに数席しか残っていなかった。席を選べるような状態ではなかったのだ。
最後尾の端っこの席では英語の字幕も見えない。わたしはともかくイギリス人の友人は3時間の間、一言のセリフも理解できずに観劇した。ごめんね。

そう、210分あったのだ。ワーグナーほどではないが、オペラなみの長さと言える。
のんびりとお弁当でも食べながら一日がかりの歌舞伎鑑賞なら優雅でも、仕事帰りの勤め人には途中で居眠りしたらどうしようという長丁場である。実際、字幕が読めなかった友人はときどきウトウトしていたようである。
いびきをかくか、見せ場になったら起こすね、と約束したが、字幕なしの3時間はきつかったかも。

いやー、豪華絢爛な舞台だった。

出だしから大きな船がどーんとせり出してくる。荒れ狂う波は巨大な布で表現。さすがは 「匠の国の伝統芸能」だわ。シェイクスピアをグローブ座で見たことがあるけど、こんなスペシャルエフェクトはなかったもんね。 グローブ座破れたり、松竹歌舞伎の勝ちですわ! おほほほ、かかってらっしゃい! (私は部外者だが)

目も覚めるようにあでやかな衣装だし、お姫様のキラキラとしたゴージャスな髪飾りはライトを反射して、外人の憧れる歌舞伎町のネオンサインのよう。歌舞伎町ってネーミングはこの髪飾りから来たらしい。 って嘘だけど。

ひさびさに聞いた歌舞伎チックなセリフの数々。

「主善之助殿、かたじけのうござる」とか
「わらわの気持ちをわかってたもれ」だの

いいなあ、 「たもれ」だって。今度使ってみようかしらん。
「そこのホッチキスを取ってたもれ」なんてね。
電車で席を譲られたら、
「かたじけのうござる」とか。あ、これは男言葉か。

私は一緒にいる人の言葉使いがうつってしまうことがある。 大阪弁の人と話していると、ついイントネーションが同じようになって、
「あれ? 大阪出身でしたっけ?」なんて言われることもしばしばだ。 (いいえ、違います)

英語のほうはラッキーだ。ボスは良家出のボンボン(と言っても60歳を過ぎているが)なので、きれいな英語を話す。おかげで私にもいい影響があるようだ。
「ポッシュな発音の・・・・英語を話すね」と言われる。
(・・・の部分はたぶん英文法についてのネガティブな意見だと思う)

女形独特の頭のてっぺんから出るような声にもしびれるなあ。

家に帰って、こっそりと女形風に発声してみた。 
「わらわはワインを飲みとうござりまするー」
・・・ウケル。
なんかの機会に使ってみたいが、日本人には苦笑され、イギリス人には気味悪がられるだろうな。人前でやるのはやめておこう。

また、ロンドンに来てね、ニナガワ (と呼び捨て)

投稿者 lib : 07:56 PM | コメント (2)

March 16, 2009

ベン座の女

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家を買って10年以上経つ。
私の安いサラリーで選べたのは 「郊外」「中古」「小さめ」な物件だ。それでも当時は住宅市場がほぼ底値という状態だったので、環境もサイズも悪くない家を手に入れることができた。

が、古い。イギリスの家は煉瓦建てなので建物は頑丈にできているが、内装は古びている。で、見た目だけはなんとかしようと、ペンキをぺたぺたと塗りまくった。実は日本にいるときからペンキ塗りは得意である。ただ、根気がないのと大ざっぱな性格のため 「下準備をして丁寧に仕上げる」みたいなことは不得意で、壁紙とかは無理。

さて、この中古の家、なんといってもバスルームが破滅状態にあった。時代遅れのデザインの浴槽、シンクとトイレ。剥げかかったダサい壁紙 (イギリスでは、なぜ、バスルームに壁紙を貼るのか?) パイプの横には隙間があり、 「ねずみが出てきて、こんにちは」状態である。

長い一日を終え、お風呂に入ってゆっくりとリラックス。
ふー、と息をつき壁やパイプに目をやるとみごとなまでの崩れっぷりだ。リラックスしていた筋肉に緊張が走る。慌てて目を閉じて、何も見なかったことにする・・・こと10年間。

しかし、ついに見て見ぬ振りをするにも限界がきた。

・・・床が崩れ始めたのだ。

私のバスルームはイギリスの家には珍しく一階(グランドフロア)にある。
数ヶ月前、浴槽の栓を抜いて水を流すとジャーという派手な音がした。・・・はて? パイプ内を流れる水音ではない。庭にホースで水撒きをするように 「水が直接、地面に叩きつけられる音」である。

浴槽の横にあるパネルをはずしてみたら、確かに 「水は大地へと流れ落ちていた」パイプがはずれ、浴槽の水はそのまま床下へざあざあとあふれている。
うわー、どうしよう? で、必要は発明の母、スーパーのビニール袋を使い、はずれているパイプをつないで応急処置をする。

この 「スーパーのビニール袋作戦」は数週間ごとに 「ジャー」という水音で修復を余儀なくされる。

そして、ある日、トイレの便座に座っていると・・・。

便座の下から隙間風が感じられた。 あ・・・地面が見える。

パイプからの水漏れは浴槽からだけではなかったらしい。あちこちの水漏れは床下を伝ってトイレを支える支柱まで腐らせていた。便座は前かがみの微妙な角度のまま、やっとのことで床上に残っている。

こうして数週間、トイレは 「使用中に地面に落ちるかもしれない」という恐怖の時間と化した。 ここで怪我なんかして、救急車を呼ぶことになると、かなり恥ずかしい状況だ。

「ロンドン在住の日本人女性。自宅で怪我。床が抜け、便座ごと地面に転がり落ちた模様。さすがの救急隊員も青ざめる凄惨さ。応急処置のスーパーの袋で自業自得か?」
残りの人生、 「便座の女」 とか 「ころびトイレ女」 とか呼ばれる運命となるのだろうか?

しかたなく、イギリスの某大手業者(オレンジ色のロゴでバーベキューみたいな名前のあの店ね)に見積もりを頼んだ。

と、ものすごく高い。明細書を見ると 「浴槽の取り外し費用 XXXポンド」と古い浴槽を運び出すだけでも日本円で数万円もする。 蛇口ひとつで数万円。 「総ひのき」 のお風呂の値段かと思ったね。

おまけに 「工事に取り掛かるのは3ヵ月後」とか。それまでにはトイレは地面に落ちてると思う。 下手すると私と一緒に・・・。

またまた他の業者を探していると、知り合いの人が紹介してくれた。今度は見積もりが半分近い。しかもすぐに取り掛かってくれるとか。

工事中は友人宅に泊めてもらった。約束通り2週間後にはピカピカのバスルームが完成し、やっとバスタイムがリラックスタイムになった。
ああ、落ちなくて良かった・・・。

投稿者 lib : 11:56 PM | コメント (0)

February 22, 2009

ダブル不倫 その3

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社内恋愛ダブル不倫も7年目になっていた。 その間にA男とB子それぞれはさらに一児をもうけ、家庭生活もそれなりに安定していると見た。

が、その二人もついに破局を迎えたのか?

その事情はA男の友人C太郎に聞こう。えーっと、この人もイギリス人なので当然 「太郎」なんて名前ではないのですが。

「B子に新しい彼ができたんだよ。それでA男はふられちゃったんだ」とC太郎。

・・・夫の元に戻ったのではないわけね。

「A男はがっかりしてるんだ。ちょっと彼女を恨んでいるのも仕方ないね」
「でも、つき合う前から彼女は人妻だし、彼だって妻子持ちじゃないの。ふられて恨むような立場にはないと思うけど」
「男って、そんなもんじゃないんだよ」

・・・じゃ、どんなもんなんだ? 

「B子は少し・・・浮気性なのかもしれないね」
「そりゃ、浮気性でしょうよ。だって、現にA男と不倫してるじゃないの」
「いや、実は・・・」
とC太郎が告白したのはなんと彼女からフラート(誘惑)を受けたというのだ。
ええー!?

C太郎は同僚ではない。他の会社で働く人だが、A男と仲良しなので、よくパブで一緒になる。彼はすごーーーーーーーーくハンサムなので、初めて彼を見たとき、私なんぞはうっとりとしてしまったものだ。

「きゃー、C太郎ってカッコいい」と私が騒いでいるとA男はすっと寄ってきて、
「誘ってみれば? 彼の家庭は冷え切っていて、奥さんとはほとんど口もきかないみたいだし・・・」と囁く。お前が斡旋してどうする?

チッ、妻子持ちか。 「絵に描いた餅」というのは彼のような男のことを言うんですね。

「きっとチャンスがあると思うよ。仲を取り持ってあげようか?」
「いいえ、結構です。妻子持ちと聞いて、すっかり熱が醒めました」と私。

さて、C太郎によるとA男、B子、C太郎と三人で飲んでいて、A男がトイレに立った際、B子にはっきりした誘いを受けたというのだ。

「友人の彼を好きになってしまいました。気のせいか彼も私に興味を持っているような感じです。私はどうしたらいいのでしょうか? 告白するべきでしょうか?」
「友情にひびを入れるようなことは止めましょう。彼のことはすっきりと諦め、スポーツに打ち込むなどして、気をそらしましょう」

と、よく日本の女子中学生が相談しているが、三児の母親で社内ダブル不倫をしているB子にも浮気相手の友人を口説いたりせずに、 「スポーツに打ち込むなどして」もらいたいものだ。夫の元に戻るという選択も、是非、お勧めしたい。

そういえば、何年も前の話になるが、私の当時の彼と彼のイタリア人の友人、その彼女というメンバーでミュージカルを観にいったことがある。ダブルデートというやつですね。

で、彼女、彼の友人、私、当時の彼という並び方で観劇中、彼の友人の膝が私の太ももに擦り寄ってくる。 (席がくっつきすぎているのかな?)と少し足を離したのだが、また、しばらくするとスリスリと膝が動く。

(うーむ・・・、自分の彼女が隣に座っているのに友人のガールフレンドに誘いをかけるとは、さすがはイタリア人。あっぱれだ)と思った。
・・・思ったが、休憩で席をかわってもらい、イタリア人の野望は敗れた。

友人のパートナーに恋心を抱くというプロットは日本の小説でもあるが、そこでは 「熱い思いを隠したまま、誰にも話さずに悶々とする」というのが小説のキモとなっている。

西洋人はあっさりと行動に移すようだ。 参りました! でも、日本人である私はこのままポリシーは変えないことにしておこう。
だって・・・面倒だもん。

投稿者 lib : 11:26 PM | コメント (0)

February 16, 2009

ダブル不倫 その2

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日本の会社で社員同士の不倫がバレたら、どうなるだろう?

厳しい会社なら、 女はクビ、あるいは自分から辞めた形で会社から追い出される。 男は左遷、しかも本州まで手漕ぎボートで10時間、なんて離島に飛ばされるかもしれない。

あまり社員の色恋沙汰にゴタゴタ言わない会社でも、何となく居心地のわるーい雰囲気がかもしだされるのではないだろうか?

さて、うちの会社では・・・。

なんと、あっさりと 「公認カップル」として認可されてしまった。
あのー、いいのでしょうか? 昔なら 「不義」だの 「密通」などと糾弾されるのでは?(時代劇の見過ぎ)

会社の飲み会ならふたりでニコニコと参加。 クライアントの接待も当たり前のように一緒。クリスマスパーティの正式な着席式のディナーでも隣同士で食事。

「結婚」 のモラルはいずこに?

明るいダブル不倫のふたりだったが、A男と話す機会があったとき、
「実はふたりとも真剣なんだ。離婚して一緒になろうかという相談もしたんだけど、子供たちのことを考えると踏み切れなかった」
と、真面目に言っていた。

・・・だのに、A男の奥さんが妊娠した。あれ?

「妻との間は冷え切っている。寝室も別々だ」くらいのことを言って口説いただろうに。 
やっぱり、既婚者の男の言うことと行動は一致しないというゴールデンルールを証明しましたね。

と、数ヶ月もしない間にB子が妊娠。
さすがにみんなは動揺した。いったい父親は誰? 

が、どうやら子供の父親は夫らしい。 これって、既婚者の女の言うことと行動も一致しないという事実の発見であった。

(男と女の関係は謎だらけ。特に既婚者同士の男女関係は理解不能)と小娘の私はしみじみと思いました。

それぞれ三児の親となったA男とB子。さすがに関係を見直すのかと思いきや、そのまま 「社内ダブル不倫公認カップル」としてお天道様の当たる道を何ひとつ問題なく歩いてきた、と思っていたら・・・。

ある日の飲み会でふたりは別々のグループに入っている。 で、お互いを何となく避けているような微妙な空気が流れている。そのときはケンカでもしたのかな、と思っていたのだが、その次のパーティでもふたりはバラバラに行動。

いったいふたりに何が起こったのか?

「B子と一緒じゃないの? どうしたの?」とA男に声をかけた。すると、
「B子? あんな女の名前なんか聞きたくないね」 というとペッと唾を吐き捨てるようなジェスチャーをする。
おまけに彼女を充分に意識しながら、当てつけるように、
「ねえ、それより、素敵なレストランを見つけたんだ。一緒に行かない?」と誘いをかけてくる。

あのねえ、社内恋愛、不倫、なんてことだけでも充分に避けたいのに、 何が悲しくて「社内恋愛でダブル不倫をしているふたり」と 「三角関係」なんて、面倒事のフルコースに巻き込まれなくちゃいけないんだ?


続く

投稿者 lib : 11:22 AM | コメント (2)

February 04, 2009

ダブル不倫

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面倒ごとはなるべく避けたいと思っている。

いつもという訳にはいかないが、充分な注意を払ってさえいれば、余計な苦労を背負い込まずにすむというものだ。
が、世の中にはわざわざ面倒なことに首を突っ込んでいく人々がいる。

例えば、不倫、社内恋愛、ピースの数が多いジクソーパズルに取り組むとか・・・。

うちの会社の A男とB子がそうだ。えーっと、イギリス人なので名前に 「男」とか 「子」とかはついてはいないが。ま、仮名ということで。

A男はバツ歴ありの再婚者、息子が2人。 B子も娘が2人いる人妻である。何となくつり合わない感じなのは、A男は40代半ばで平凡な風貌。B子は20代後半の美人というところか。あ、そうでした。 つりあう云々の以前に二人とも既婚者でしたね。

実はこの二人がくっつく以前に私もA男から口説かれたことがある。 仕事がらみのパーティの帰り、会社持ちのタクシーで一緒になった。 「同じ方面に帰る社員が数人で利用」というものだが、なぜか彼と私しか乗っていなかった。

酔っ払ってフニャフニャになっていたA男は 「いつも君のことが気になっていた」だの、 「本当にきれいだよ」といった戯言を言い始めた。 ブラックキャブの中、当然、ドライバーもいるわけで恥ずかしいことこの上ない。

「貴様、いったい誰に向かってボケたことをぬかしているんだ。目を覚まさんかい!」 とビンタのひとつも張ってやりたかったのだが、ま、そこは私も大人。

「まあ、ご冗談を。ところで息子さんはお元気ですか?」と質問。
面白いもので、酔っ払って他の女を口説いていても、家族の話題、しかも子供の話題になると急にシラフになるらしく、
「いや、先週、学芸会があったんだ。僕の息子は羊の役。いや、かわいいのなんのって」と父親の顔になる。

が、しばらくすると、また酒が頭を侵食してくるようで、「手を握っていい?」などと、(ナイフで手首を切り落としたろか?)と思わせる発言。
が、そこは冷静さを失わず、
「下の息子さんが初めてカレー食べたって言ってたよね?」 と、すかさず家族ネタをふる。
「そうなんだ。最初は顔をしかめてたけど、そのうち、カレーが気に入ったらしくてね」と、また父親の顔に戻る。

相手がモヤモヤしてくると、あれこれと家族ネタで気を逸らせ、やっとのことで口説き落とされず、手を握られもせず、無事に家にたどりついたのであった。

翌日は殊勝な顔をして、「ゆうべは、からんで申し訳ございませんでした。二度といたしません」と、きっちり侘びが入ったので、
「まあ、まあ、酒の上でのことで、こちらも気にはしておりません。たくさん水を飲んで二日酔いをお直しくださいませ」と、こちらも鷹揚なところを見せたのだった。

が、その後まもなくA男は同僚のB子とできてしまった。

・・・浮気がしたくてたまらず、誰でも良かったのだろうか? 調べてみると私のほかにも口説かれた女が社内にいるかもしれないな。

しかし、結構美人なB子。 なぜ、それほど取り柄があるとも思えないA男とつき合う気になったのか? 

バースディドリンクでその謎が解けた。 B子のダンナというのも来ていたのだが、つまり、その、あまり、パッとしない感じの男だった。 
おまけにB子が彼と結婚したのは18歳のときだとか。世間知らずのまま、手近なボーイフレンドと一緒になったものの、同じ男と10年も生活していれば飽きも来る。どうやら、彼女のほうにも浮気願望があったらしい。

彼女のほうも誰でも良かったのかもしれない・・・。

しかし、二人の仲が公になった後、私が驚いたのは会社の対応だった。

続く

投稿者 lib : 12:31 PM | コメント (1)

January 26, 2009

大使館でパーティ

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日本大使館のパーティに行った。

以前出かけたときには 「地味で質素な雰囲気」と悪口・・・ではなくて、虚無僧が似合いそうなまでの控えめなたたずまいを描写したのだが、最近はいかに?

ここ数年のイギリスのバブリーなパーティシーンはすごかった。 大使館に近いメイフェアあたりのクラブでも夜毎に狂乱騒ぎが行われていたはずだ。
さすがに質実剛健な日本大使館も昨今のイギリスの風潮に感化されて、華美になっているのではないか?

・・・もちろん、私は間違っていた。

地味なビジネススーツ姿のイギリス男と薄化粧の日本人の女性が中心。
ちょっと見目には 「パーティ」というよりは 「小学校の保護者会」のような集まりだ。 数人だけ着物姿の人もいて花を添えていたが。

まずは、飲み食いに集中することにした。 が、レッドワインは (たくさん飲むと悪酔いするかも・・・)というシロモノであった。意外とXXXワインをお飲みになっているのね、おほほ。 これなら貧乏な私のほうがもっとXXXなワインを飲んでいるわよ。日本大使館に勝ったわ! (注:勝ち負けに意味はありません)

さて、歌い文句には某日本食料品店がパーティフードを用意ということで期待していた。
フライドチキンがトレィで回ってくる。 ジンジャーがキリリときいたチキンはおいしい・・・が、冷えている。
(揚げ物は熱くないとねえ・・・)と友人とボソボソ言いながら食べる。
「今度のは熱いかも」とトレィが回ってくるたびに繰り返し食べた。が、どれも冷えていて、パーティの終わりには冷えたフライドチキンでお腹がいっぱいという、満腹ながらも精神的にはやや不満の残る状態であった。
大使館には電子レンジがないのかもしれない。

寿司はさすがの人気で、テーブルに置かれるとトラファルガー広場でパンくずに群がる鳩の勢いでむさぼり食われていた。
一緒にいったイギリス人の友達が、紅しょうがをそのままごっそり摘み上げたのには驚いた。
(ちょっとお行儀悪いんじゃない?)と思ったので、「そんなに生姜が好きなの?」と聞くと、「え? 生姜なの? これ?」と動揺している。
バラの形に模った寿司の一種だと思ったらしい。 口に入れなくてよかったね。

日本食に慣れた人は増えたものの、まだまだギョッとする行動に出る人は多い。
クライアントをジャパニーズレストランに連れていくと、わさびをそのまま食べてしまい目を白黒させているので、慌てて水を飲ませたりとか、
「えーっと、このガイジンさんが大根おろしをお味噌汁に入れちゃったので、すみませんが取り替えてください」なんて頼むこともあった。

さて、お腹が落ち着いたところでまわりを見回すと、なかなかユニークな人たちが来ている。かぐや姫のような髪をしている人とか、昔のヒッピー風な「サイケデリックメイク」をしている人とか。
長年外国に住むと日本人離れしてくると言う。が、イギリス人的な風貌になるわけでもなく、何かこう国籍不明、謎の東洋人という存在感に圧倒される。

あ、コスプレみたいな若い子もいた。長手袋をしているのだが、そのまま手づかみで寿司を食べていた。
ご飯粒、のり、刺身、ごま、しょうゆ、といった諸々のアイテムが次々と手袋についていくのだが、平気な顔をしている。私のような小心者には洗濯が気になってとてもそんな豪気な行動は取れない。

「どくだみ小町」という女性二人組が飴細工の実演をやっていた。 イルカ、うさぎ、と熱々の飴がきれいに形作られていく。それをひとりが三味線を弾きながらはやし立てる。頼んだらかわいい天使の羽根を生やしたキティちゃんを作ってくれた。

横に座っていた上品な老婦人に感想を聞くと、
「あれは沖縄の音楽ですね。本来なら蛇味線でしょうね。ヘビ皮でないのはきっとワシントン条約にひっかかって、イギリスに持込ができなかったのでしょう」と専門的な答えが返ってきた。

ただの日本好きなおばあちゃんではなく、東洋アフリカ研究所の教授かなんかだったのかしらん?

投稿者 lib : 09:45 PM | コメント (0)

January 06, 2009

ポルチーニの会

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ポルチーニの食事会のお誘いを受けた。(2008年秋)

去年は白トリュフの会を開いてくれた A嬢である。 
あの時はディナー帰りなのに 「小腹が空いた」などと言って、インドネシア料理店に寄り道し、ガドガドサラダやヌードルを食した。 あれがバレれば只事ではすまないと思っていたが、どうやらA嬢の耳に入らなかったらしく、今年も無事に 「秋本番、きのこの会」に招待してもらえた。

ポルチーニがどういうものかはよく知らなかった。
ただ、以前に読んだ 「負け犬の遠吠え」の中に、 「生のポルチーニと乾燥ポルチーニの味わいの違いを話す三十女とアニメの美少女に 『萌えー』としているおたく君との組み合わせは無理」という記述があったことを覚えている。

なるほど、生のポルチーニと乾燥ポルチーニは味わいが違うのか・・・。

さて、私はポルチーニというものを今までに食べたことがあるだろうか?

例えば、ポッシュなレストランに行く。 
で、マネージャーが出てきてニコニコしながら、
「本日のお勧めディッシュは XXXのXXX風でございます。このXXXは今がシーズンで、XXXな風味をお楽しみいただけます。 XXXと言えば、昔々、お爺さんは山に芝刈りに、お婆さんは川に洗濯に行ったとき、XXXがXXXであり、またXXXに対する・・・(以下省略) これに合ったワインはXXXをご用意させていただいております。このワインというのはXXXな香りで舌の上でころがしていただきますと、XXXがXXXということを納得いただけるはずです・・・(以下省略)」

フランス語なまりの英語で得々と料理を説明するマネージャーに微笑みながら耳を傾けるが、これを実際に理解できる人はどのくらいいるのだろう? なぜ、その料理をお勧めするのだろう? 頭に浮かぶのは以下である。

1. 本当においしい。
2. メニューの中で一番高い。
3. 昨日の材料の残りを早く処分してしまいたい。

「あら、おいしそうね。じゃ、それをいただくわ」と適当に注文する。
で、出てきた料理に
(あ、野菜スープだったのね・・・)とがっかりすることもある。

ポルチーニもどこかで食べたことあるかもしれない。自分でも知らない間に・・・。

ま、とりあえず一杯、と適当なワインのボトルを頼む。 まずくはなかったが、特においしくも思えないワイン。グラスが半分からになったあたりで、レストランの人が
「今日は特別なワインをご用意しました」と挨拶。ちっ、少し待てばよかった。

当日のメニューは

トマトのプルスケッタ 
サボイキャベツで包んだホタテとポルチーニ (ボタンエビとキャビア添え)
ポルチーニの香り、バターナッツスクオッシュスープ
野生のイノシシとポルチーニのプレゼ
ドライポルチーニの入った半生チョコレートケーキ

というものであった。

トマトのプルスケッタというのはトーストしたバケットにトマトをのせたカナッペみたいなものだった。これが一人に一切れ(4 X  5センチ四方)出た。
これが小さかったので、(今年も帰り道で別のレストランに寄るはめになるかも・・・)と不安がよぎった。

ちなみに私はグルメ(美食家)ではなくて、グルマン(大食家)である。

小量なのを心配していたが、他のディッシュはたっぷり出て、充分にお腹がいっぱいになった。やはり、去年別の店に寄ったのがバレてたのか?

さて、この日、私は生のポルチーニと乾燥ポルチーニの違いがわかったでしょうか?

答えは・・・・です。(・・・内に正解を入れよ。制限時間は30秒)

投稿者 lib : 10:05 AM | コメント (0)

November 10, 2008

バブルの崩壊 その2

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シティだけではなく、巷にも不況風が吹く今日この頃である。

私が住んでいるのは 「中流住宅地」だが、数年前から、ところどころにポルシェだのフェラーリが駐車してあるのを見るようになった。成金サラリーマンがボーナスで買ったのだろうか。大きな家の車庫にあるのではなく、「貸家」という風情の家の前に停めてあるのを見ると、景気のいいボーナスやお手軽ローンで高い車は買えるが、さすがに家は高すぎて手が出ないというアンバランスな世情そのまま。

ずいぶん違和感があったが、いつのまにかそんなスポーツカーも消えてしまった。いったい、どこに行ったんでしょうねえ? 

と思っていたら、ポルシェの中古車がずいぶん安値でマーケットに出回っているそうである。
ローン返済ができず泣き泣き手放された車だったりすると、なんとなく世間への恨みの怨念が車に漂い残っていて、運が悪そうな感じがする。お払いのひとつもして、交通安全のお守りをつけてから乗ったほうがいいかもしれない。

ポルシェの車内に交通安全のお守りがユラユラ揺れているのを想像すると楽しいねえ。

「何でポルシェにお守りなんかぶら下げてるの?」
「前のオーナーが某投資銀行のディーラーだったんだって。ちょっと気になって・・・」
「なるほどね。で、ブレーキの横にある白い粉は何?」
「お清めの盛り塩。 投資銀行みたいにブレーキが利かなくて暴走すると困るからね」

友人は米系の金融会社に勤めているのだが、数週間前に 「今年のクリスマスパーティは中止」のアナウンスがあったそうである。毎年、500人以上が集まり、会場も豪華で家が遠い人にはホテルの部屋も用意されるというバブリーなパーティである。

友人は 「スレた勤め人」なので、今さらクリスマスパーティが嬉しいお年頃でない。
しかし、新入社員はがっかりしているそうだ。会社の金で飲み食いできるのはもちろんのこと、目をつけていた 「受付嬢」だの 「ハンサムな総務課のニューフェイス」に話しかけるチャンス。少々大げさにドレスアップしても、
「仮装行列?」と糾弾されることもなく、 「勝負服なのね。がんばれ」と励ましてもらえる。

この日ばかりは酒で勢いをつけ、同僚にダンスを申し込んでも許される雰囲気。何ヶ月も胸に秘めた思いを打ち明ける・・・はずだったのに。

さて、しばらくすると彼の会社はかなりの割合の従業員に対して 「依頼退職」の発表をした。クリスマスパーティの廃止で経費節減はもちろんだが、クビにした人たちをパーティに出席させるわけにもいかず・・・との考慮だったと思われる。

憧れの彼女にパーティで声をかける機会も仕事も失い・・・という人たちも多かったのでは。 (涙)

セレブなシェフの店がつぎつぎ倒産。お手軽な食事として外食のかわりにピザの宅配便が売り上げを伸ばしているそうだ。

イギリスといえばまずい食事でお馴染み。
離乳食のようにグニャグニャに茹でられたパスタだの、小麦粉をのばしただけみたいにとぼけた味のソースだの、つい最近まで野山を自由に駆け回ってましたーという牛の筋肉ガチガチのステーキだのがレストランで出されていたのは昔の話。
金のあるところに腕のいいシェフは集まる。レベルも上がったが、メニューの金額も上がった。

さらにワインも・・・。

「4人の同僚(これはB銀行のトレーダーらしい)がゴードン・ラムジーの店でランチをした。その勘定は5万ポンド」 というのは有名な話。そのうち食べ物は 「たったの数百ポンド」 (充分高いけど・・・)で、 残りの請求額はワインだったらしい。

ワインに情熱を傾けるソムリエも、(ワインの味もわからないくせに、がぶ飲みする成金の小僧ども)と思いながらサーブしていたのでは?

噂によるとこの4人は請求書をそのまま会社に回して首になったとか。山ほど稼いでいるんだから、ひとり1万ポンドくらい自分達で払ってしまえばよかったのに。

お金の流れを読み違えたということで、トレーダーとして失格ですね。 

投稿者 lib : 12:50 AM | コメント (0)

October 28, 2008

バブルの崩壊 その1

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リーマンブラザーズとメリルリンチとAIGの経営危機。

経済に興味のない人には馴染みのない名前で、 「マンチェスター・ユナイテッド・フットボールチームのスポンサー、AIGという会社がヤバイ」という新聞記事もあった。そういえば、赤いユニフォームにデカデカとAIGの文字。あれをそのまま、 「マンチェスターユナイテッドが身売り」と受け取ったフットボールファンも多いのでは。

リーマンは「買収の話が流れた」のニュースの後、あっという間に 「イギリス国内で従業員5000人が解雇(自宅待機?)」である。

新聞には私物を入れたダンボール箱を持った社員がカナリーウォーフのオフィスから出てくる写真が載った。アメリカ映画でよく見かける、首になったり、ボスと喧嘩して辞表を叩きつけた主人公がデスクまわりを片づけて、ダンボール箱を抱えて憤然と会社を去る、あのシーンだ。

さて、最初に思ったのは・・・。

(あのダンボール箱は会社の支給品だろうか?)ということだ。

全員解雇の前夜の重役会議で悲痛な表情のひとりが、
「・・・というわけで全員解雇は避けることができません。決定です。・・・さて、次の議題です。私物入れのダンボール箱の注文ですが、5000個でよろしいでしょうか?」
「いや、休暇や病欠の社員もいるから、4500個でいいだろう。非常事態だから、たとえダンボール箱の費用といえど、無駄使いはできないし」

と、一括注文されたのだろうか? そのわりには持っている箱の種類はバラバラだったような・・・。しかし、あの人数の箱がオフィスにころがっているとは思えない。

目端の利く連中がさっさとダンボール箱を集めると、一番高値をつけた同僚に売りつける、という 「転んでもディーラー」 の意地を見せる状況だったのだろうか? 買い付けた同僚もそれを転売し、サヤを抜く・・・みたいな?

実情をご存知の方は一報ください。たいへん気になっているので。

もちろん、シティではリーマンの話で何日間も盛り上がった。

「人の不幸は蜜の味」とはいうものの、不幸にもカテゴリーがある。 「白血病の少女」の話をニコニコと聞く人はないし、「安い輸入品に押され、おもちゃ工場が閉鎖。60人が全員解雇」なんてニュースなら、「養う家族もあるだろうに、再就職は大丈夫だろうか・・・」と心配するのが人情だろう。

正直なところ、シティの勤め人の間でもそれほど同情されていない。(リーマンの皆さん、ごめんね) せいぜい 「うちの猫が子猫をたくさん産んだ。困った。引き取り手いないかな」という話を聞かされて 「あら、大変そう。いい人に貰われるといいわね。でも、誰も欲しくなかったらどうするの?」と言うレベルである。

そのうち、日本の某社がリーマンを買収して従業員をキープなんてニュースが流れると、 「ちっ、余計なことを。助けるなよ」と言う人も現れたくらいだ。

株価が急降下するとの予想は当然だから、Short Sellingに走るだろうな、と思ったら、FSAがそれを禁止。で、せっかくのチャンスを奪われたヘッジファンドがFSAを訴えるとか。 さすが、怖いものなしのヘッジファンドだ。日本なら金融庁にたてつく会社なんかないけどね。いいぞー、もっと、やれー。

ううむ、なんだかドラマを見ているようだ。ソープオペラでは短期間にカップルがくっついたり、離れたり、相手が変わったり、結婚したり、と話が急展開するものだが、この数週間は 「今日はどの銀行を誰と誰が欲しがって、最終的にどこに買収されるかしら?」と新聞を見るのが楽しみであった。

クレジット・クランチのニュースが最初に公になったのは、去年の夏。その前から株価や不動産の値段が高騰していたのを日本人の私たちは 「そろそろかな? いつ頃だろう? 懐かしいなあ、あの頃を思い出すねえ」と来るべきものが来るのを待っていたものだ。

あの頃の日本のバブルの崩壊のことなんて、イギリスやアメリカの誰もおぼえてなかったのかしらん?

続く


投稿者 lib : 11:57 PM | コメント (0)

October 01, 2008

ボイラーの修理 その2

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イギリスのエンジニア(修理工)は1時間当たり50ポンドから200ポンドをチャージするそうである。転職しようかな・・・。

「それでは来週の火曜日にエンジニアを送ります」とガス会社。
火曜日って、今日は木曜日なんですけど・・・。5日後?

「需要の少ない夏にボイラーの点検を」というキャンペーンを張っていたわりに、ずいぶん時間がかかるじゃないの。これでは 「需要の多い冬」にエンジニアを頼むとどのくらい待たされるのだろうか? 数週間?

――イギリス在住の皆さんへ、ボイラーの点検はお早めに

本当にちゃんと来るだろうかとドキドキしていたが、火曜日にエンジニアはやってきたので、ホッとした。 噂によると予約を入れておいても 「来たり、来なかったり」だそうである。電話を入れて文句を言うと、 「そんな予約は知らない」と言われ、 「頭が怒りのボイラー」になるらしい。

エンジニアのおにいさんはさっさと仕事に取りかかった。 が、ボイラーのパネルがなかなかはずれないらしく、ブツブツ言っている。

(苦しめ、苦しめ、苦しめばいいのじゃー)と思いながらこっそりと見ていた。 
210ポンドも払うのに、エンジニアが簡単にパネルをはずして、
「あ、これが緩んでましたね」
と、あっさりネジを締めて5分で退場なんて許せないではないか。

が、20分も経つとおにいさんの口調が変わってきた。
「何だよ、これ。一体どうなってるんだ。何ではずれないんだよ・・・」
そのうち、SXXX だの FXXX だのといった言葉まで混じってくる。
・・・まずいかも。 直らなかったらどうしよう?

さっきまでの態度を改めた私は神様にお願いする。
(神様、お願いです。どうか、私のボイラーを直してください)
と、祈りが通じたのか、ボイラーのパネルがはずれた。

やっぱり、神頼みは効く。 特に 「病気の回復」や 「恋の成就」に 「受験合格」といったお願いは多くて順番待ちが長いが 「ボイラー修理」のお願いの数は少ないだろうから、処理が早かったらしい。

パネルがなかなかはずれなかったのは、数年前に頼んだ配管工のおやじの仕事が雑で金属部分が妙な角度で曲げられていたらしい。 あのおやじめ、1300ポンドもチャージしておきながら、いい加減な取り付けをしてくれたな・・・。

パネルははずれたものの内部を点検したエンジニアはあっさり言った。
「部品が壊れているので、それを持って明日来ます」
・・・持ってないの?
「大丈夫。明日ちゃんと来ますから」

私は働いているので、 「明日」なんて日はそう簡単には来ない。 「また明日」という日は 「またまた有給休暇の申請とそれに対する許可」というプロセスの後にやっと来るんですけど。

私はシクシクと泣きながら、
「ぜったい、ぜったいに明日も来てね。私のこと、忘れないで」と捨てられそうな女が恋人にすがるような態度でエンジニアのおにいさんに頼んだのであった。

翌日、また貴重な有給休暇を使い、やっとボイラーの修理は完了した。

それから数週間後、ゴゴゴ、ガガガガーという音と共にボイラーは停止。驚いてスイッチを切り、しばらくしてから恐る恐るスタートさせてみると、何もなかったように動き始めた。

・・・どうしたらいいんだろう? もう一度エンジニアを呼んだら、また210ポンド取られるのか? それとも、ちゃんと保証期間があるのだろうか?

でも、また確実に有給休暇を使って、エンジニアを待つんだよな・・・。

PS.その後、もっと安い 「ボイラー保険」の宣伝が新聞に載っていた。 が、この保険に入っていても、エンジニアを呼ぶと一回50ポンドチャージされると小さい文字で書いてあった。恐るべし、イギリスの修理費。

投稿者 lib : 08:24 PM | コメント (0)

September 07, 2008

ボイラーの修理

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ボイラーが壊れた。暖房とお湯が我が家から消えた。

もうこの時点で、イギリス在住の方は同情心から目が涙でウルウルしていることであろう。 のんびりと日本にいる人なら、こう言うだろう 「ボイラーが壊れた? 修理すればいいじゃない」 それはもう、「パンがないなら、お菓子をお食べ」という発言にも等しい。この国での庶民の苦労を知らないのだ。

とりあえず先進国と称されるイギリスである。サミットなんかにも堂々と参加しちゃう国だ。飲み水の確保に数キロ先の井戸まで歩かなければならない土地ではないのだ。それなのに、物の修理に関しては国の格付け ZZZ- (S&P) である。

ボイラーはタイマーで作動する。それによって、セントラルヒーティングが入ったり、タンクの水が温められてお湯が使えるというのが私の家の、そしてほとんどのイギリスの家庭のシステムである。ついでに言うと、タンクの湯は日本人なら一回のお風呂で使い切る。で、次に風呂に入る人は1時間くらい待たされる。

ここ数ヶ月、ときどき時間になってもボイラーに点火しないことがあった。しかし、翌日には大丈夫だったりする。 うまく作動しなくなったので、数年前にこのボイラーを設置した配管工のおじさんに電話を入れ、修理に来てもらった。 と、なぜかそのときに限ってボイラーは問題なく動いている。

「ちゃんと作動してるじゃない。修理できないよ」
「今は動いてるけど、調子が悪いから見てくれる?」
おじさんは形だけボイラーのカバーのねじに工具を当てたが、面倒くさいと思ったらしく、
「壊れてないものを直せないよ」と主張。 結局、 ボイラーの外回りをちょっと眺めただけで「訪問検査費」として70ポンドふんだくって、そのまま帰ってしまった。

納得いかないが反論できないまま、数週間が経った。と、今度は完璧に作動しなくなった。
(今度はやる気のないおやじに頼むのはやめよう)と、大手のガス会社に電話を入れる。

イギリスの会社のコールセンターはインドか北イギリスあたりと相場が決まっている。
日頃、 「ガスボイラーの機械的不調」などという 「特殊な状況」を 「英語で説明する」ことは少ない。 おまけに電話の向こうは 「強烈なインドなまりの英語でマニュアルを読むインド人」 か 「強烈な北なまり英語を話す不親切なイギリス人」である。
さすがの私の頭の中にも 「躊躇」という言葉が浮かんだ。 が、ボイラー不調のままで冬を迎えるわけにはいかない。
「夏の間にボイラー点検」などとお気軽な宣伝を新聞でしているが、果たして私の役に立ってくれるのか?

「ボイラーの修理のためにエンジニアを寄こしてくれ」という簡単なメッセージを伝える前に 「ボイラー故障のための保険」の説明を延々と聞かされる。 なんとかそれを振り切った。 で、ハウマッチ?
「エンジニアの訪問は一回で192ポンドです。税金を入れると210ポンド」

脳内の為替機構が一瞬にして、 1ポンド200円として4万2000円という数字をたたき出した。 ボイラーの修理に4万2000円だとー?
「・・・そんなにするの? 新しくボイラーをつけたほうがいいかしら?」
「新しいボイラーは2000ポンド以上しますよ」

2000ポンド = 40万円以上? それで家庭用かい? 
いっそのことボイラー修理を頼まずに自分で見てみようと思った。しかし、
「イギリス在住の日本人女性、ガス爆発死。修理代をケチったため」なんて、新聞の見出しが目に浮かぶ。

「新しいボイラーは必要ありません。ともかくエンジニアを・・・」
と、ここでまたオペレーターが 「ボイラー故障のための保険」の売込みを始めた。
「エンジニアが直した後は12ヶ月の保証期間があるけど、また、壊れたときには210ポンドかかります。保険に入っていたほうがいいですよ」
「ボイラー修理から12ヶ月以降ね?」
「いいえ、12ヶ月以内でも、210ポンドかかりますよ」
「・・・? 12ヶ月の保証期間はあるのよね?」
「はい」
「でも、12ヶ月以内でもエンジニアを頼むと210ポンドかかるの?」
「はい」
―――それでは保証期間とは呼べないのでは?
「保険はいくらですか?」
「1ヶ月39ポンドです」 
                            続く

投稿者 lib : 06:15 PM | コメント (2)

July 09, 2008

イギリスのバブル その4

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(前々回の「イギリスのバブル その3」から続く)

新聞記事ひとつにしても、人間のサガというものを思い知らされることがある。

「女の子は若くてきれいでなくては値打ちがありません。仕事の能力? そんなことには期待してません」みたいなことをおじさんが言うらしい。 (ありがたいことに私の目の前で言った人はいない。なぜかというと・・・なぜだろう?)

で、内心は (ま、男の場合は違うけどね。男は仕事で決まる。顔や若さは関係ないもんね。どんな権力を握るか、どれだけ稼ぐか、がポイントさ)なんて思っているのだろう。

しかし、今回のC氏の記事で目からウロコが落ちた。

なーんだ、結局、ビジネスマンの男も 「顔と若さ」が重要じゃん、という事実である。

「自分のビジネスを設立するために160ミリオンポンドのボーナスを蹴って退職」というネタだけにしては、顔写真が大きすぎる。しかも、私服で歩いているところをパパラッチされた感じだし。

「セレブ・ヘアドレッサーによるスタイル」 だの、「住んでいるのはリラックスしたXXX」だのと同じ無料新聞でも 「ロンドンペーパー」か 「ライト」の芸能人ゴシップ欄のようなノリだ。

「鶏ガラのような爺さん会長」 「脂ぎったオヤジ社長」 「若い凄腕経営者、顔に難ありなのが残念」なんてビジネスマンとは違う。この人たちだと25ビリオンポンドなんてビジネスディールでも、証明写真程度の大きさしか顔が出ない扱いだ。

C氏は数週間後にも新聞に登場した。
彼の辞職によってXXXファンドから投資家が逃げ出し、株価が落ちているという記事だ。 で 「彼は130ミリオンポンドのボーナスを蹴って・・・」とある。

あれ? 160ミリオンじゃなかったっけ?

よく読んでみるとこのボーナスは会社の株でもらえる予定だったとか。だから株価が下がった今、その額も減ったのだろうか。30ミリオンの違いってすごいよね。 本人は蹴ったくらいだから気にしないだろうけど。

「おいしかったね。お勘定は割り勘にしようね。いくら? 30ポンドくらいかな? え? 60ポンド? マネージャーを呼べ!」
なんて30ポンドくらいで頭に血が上る私たちとは別世界の人だ。

私の周りにも自社株が目減りして、がっかりしている人は多い。もちろん、30ミリオンポンドも下がったという友人はいませんが。

さて、ここで謎々です。

「株価が下がってニコニコするのは誰でしょう?」 また 「人員整理の時期にニコニコするのは誰でしょう?」 はたまた 「家庭不和で離婚が増えてニコニコ・・・(以下省略)」

答えは 「弁護士」

イギリスのバブル期に 「ゴールドディガー」こと、 「これっぽっちも道徳心なし、バリバリに金目当て、必殺必中、玉の輿めざし女」の手中に落ちた男たちは、もうすぐ 「金の切れ目が縁の切れ目」という透かし文字が浮き出た便箋を弁護士事務所から受け取ることになる。

利益の追求に純粋なゴールドディガーは、シティ勤めの夫の資産が目減りする前にと弁護士事務所に駆け込んでいるとか。下手なファンドマネージャーより相場の動きには敏感だったりするし。

離婚の理由は 「性格の不一致」 とかになっているんでしょうねえ。まさか 「エマージング・マーケットの株価下落に加え、プライベート・プレースメントの収益減収とプロパティのポートフォリオ悪化のため」 なんて家庭裁判所に提出できないって。

クレジット・クランチでもゴールドディガーは元気いっぱいです。

投稿者 lib : 11:22 PM | コメント (0)

July 03, 2008

オペラ座の夜

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久しぶりにオペラに出かけた。

まずその前に、夏の恒例行事、ロイヤル・アカデミーでのサマーエクスビションに寄る。
今年はトレイシー・エミンが出展していて、一日キュレーターなんかもしたらしい。

いいなあ、トレイシー・エミン。顔がピカソしてるとこも好きだ。(すごい失礼)

さて、ずいぶんオペラに行っていなかった。というのも、オペラ友達の一人はド田舎に引っ越してしまい、もうひとりはボーイフレンドができて、私を誘う代わりに彼と出かけるようになったからである。

彼女は 「コベントガーデン 友の会」のメンバーで、シーズンが始まる前に演目のご案内があり、一般客よりも前に予約が取れるという特典を持っている。めぼしいのを選んで私に声をかけてくれていたのだが、最近は彼をお供にしていている。

ま、結構なことである。友達としては喜んであげたい。ただし、彼はあまり嬉しそうではないらしい。長いしね、オペラ。

今回のプリ・シアター・ミールはなんとカレー屋だ。今までもよく、安中華、安イタめし等を食べてから出かけていったが、10ポンドというセットメニューであった。
後で大変なことになるとも知らずに・・・。

久しぶりのロイヤル・オペラ・ハウス。もちろん上の方の安い席だ。
このあたりの席でも37ポンド。なんだか値上がりしてるなあ。原油価格のせいかしらん。

見回すとゲイのカップルがものすごく多い。
女の二人連れは 「ただの友達」という感じだが、男の二人連れは 「いかにも」のカップルだ。
幕が開くまで 「どちらが男役で、どちらが女役か。また、そう思った理由を述べよ」というゲームをして過ごした。

裕福そうなおじさんとサロンのマダムのような奥方が隣に座った。
「この人たち、常連さんよ。よく見かけるもん」と友達。

奥方はとても素人さんには見えない格好である。凝った雰囲気のドレス、どでかい指輪はパコンと蓋が開くような造りで、かのメディチ家秘伝の毒薬が仕込んであるような感じ。鉱山から掘り出したばかりの原石のようなネックレスは総重量が3キロはありそう。極めつけは直径7センチばかりの 「額飾り」

「額飾り」なんか着けて外を出歩いている人、生まれて初めて見た。

肩の凝り、指の凝り、額の凝り、が心配になるような着飾り方である。

「画廊の女主人」「宝石デザイナー」「ダンススクールの経営者」といった芸術方面のお仕事と見受けられる。 「税理士」「パン屋」「なまず養殖業」といった雰囲気ではない。

「ドン・カルロ」が始まった。スペインの王子と父王の後妻となった女の悲劇・・・に集中できない。というのも、脳天を打つような強烈な香水が漂うせいだ。その元は隣のマダム。なんだかデパートの化粧品売り場で深呼吸をしているような気分。

・・・が、そういう私もカレー屋経由でオペラハウスに来た身。
(隣の東洋人の女、滅茶苦茶、カレー臭いしー)とマダムも思っているかもしれない。

香水 vs カレー。 迷惑度としては同等か?

さて、3幕目のこと。胃が鳴った。
しかも、 「クー、グルルー、キュルルルー」という、いかにも 「胃が鳴ってます」という音なら良かったのだが、カレーのせいか、
「バフッ、ボッスーン、パスー」といった、まるで XXX のような音だ。

隣の香水マダムが身を硬くするのがわかった。まずい。もしかして、私が XXX をしたと思っているのでは?
(この東洋人の女。カレー臭いだけでは飽き足らず、XXX まで・・・)

違う、違うのよ! 私は XXX なんかしていません! 舞台の上のソプラノのように叫びたい気分だった。が、誤解を解こうにもオペラ中に私語は禁止。

濡れ衣を晴らせぬわが身の不幸に嘆き悲しむ、オペラ座の夜であった。無念。

投稿者 lib : 12:34 PM | コメント (0)

June 28, 2008

イギリスのバブルその3

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シティはビジネスの街。だから不景気風が吹くと精彩を欠く。
まるで曇り空で小雨のぱらつくハワイとか、暖冬で地面が露出しているスキーリゾートといった冴えない風情である。

やっぱり、ハワイなら抜けるような青空に熱い南の風。スキーリゾートなら豊かな積雪の上に降り注ぐパウダースノー。ビジネス街なら札束が下品に飛びかってほしいものだ。

日本でビジネスがいまいちの時はオフィスの細々したものから消えていくそうである。

例えば、リースの植木、自由に飲めていたミネラルウォーターのボトル、新聞とか。
いつものように会社の新聞を読もうとして、それがなくなったことで会社の経営状態に気づいたサラリーマンの心情を思うと涙がこぼれそうである。(嘘)

イギリスでは経費節減なら、人件費と接待費だろうね。

肩で風を切って歩き、1000ポンドものワインを自分たち用に頼んでいた連中も地味でせこい食事風景となるのだろうか?
「あ、スターターはなしでいいや。メインコースだけにするよ。一番安いのはどれかな? 飲み物? いらないよ。近くのオフライセンス (酒屋) でワインを買って持ち込んだから。グラスだけくれる? サービス料払いたくないなあ。ね、料理ができたら呼んでくれる? キッチンまで自分たちで取りに行くよ。だから、チップ置かなくてもいいだろ?」

こんな時期にはシティを離れたらどうするか、と同僚と話すことになる。
「田舎に引っ越して、家庭菜園で野菜を作り自給自足の生活をする」
「それがいい。それがいい。太陽の下で農作業なんて健康的だね」

・・・と思ったのだが、週末に芝生を刈り、庭仕事(の手伝い)を2時間したら、筋肉痛で歩行困難になり、階段の昇り降りですら苦労した。
これでは農業への転職は無理だな。

さて、転職と言えば、最近、気になる男がいる・・・。

ファイナンシャルタイムス風のミニ無料新聞 「シティAM」にヘッジファンドのスターの記事が載っていた。

「160ミリオンポンドのボーナスを蹴って、自分のファンド設立!」というのはC氏だ。彼の所属するXXXファンドと言えば、確か去年共同経営者のボーナスが400ミリオンポンドずつ、という記事を見た。生涯給金ではなくて、去年だけのボーナスだって・・・。

400ミリオンポンドって、イメージが湧かないなあ。 1、2ミリオンくらいだと、 「イギリスで買えるちょっと大きな家」って感じがする。(チェルシーとかケンジントンといった高級住宅地は除く。スペインのマルベラの別荘地も無理ね)

と思っていたら、400ミリオンポンドの豪華客船の記事が出ていた。
ふーん、ボーナスで客船が一艘もらえるのと同じか。

「まいどー、宅急便です。会社からボーナスのお届けです。家に入らないのでここに置いておきます。受け取りのハンコお願いします」
で、家の前には豪華客船が横付けされている。
「今年は豪華客船か。去年はジャンボジェット機だったねえ。景気がいいみたいだね、隣のご主人の仕事」なんて近所の人が噂したりする・・・わけないが。

C氏も経営者が400ミリオンポンドなのに、社員の自分はたった160ミリオンじゃ、嫌だ、と思って (当然だな) 転職することにしたらしい。

さーて、こんな話ならシティにはゴロゴロしているはず。が、なぜにこのC氏は特別なのか?

それは・・・彼がグッドルッキングだからである。おまけに若い!

見出しも大きかったが、顔写真もでかかった。
「おっ・・・」と思ったのはそのせいだ。 もっとも、その後に 「既婚、二児の父」と書いてあってがっかりしたのだが (何か、期待していたか、私?)

続く

投稿者 lib : 03:28 PM | コメント (0)

May 26, 2008

イギリスのバブル その2

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シティの夕暮れ。

お下劣なまでに長い長い車体の白いリムジンが停車する。
と、中から人工的なブロンドをなびかせた巨大な女たちが降りてきた。

雲を突くような巨人に見えたのは高下駄のようなプラットフォームブーツのせいだ。胸を半分以上はみださせたトップにへそ下3センチ(嘘)くらいしかないミニスカートを履いている。幅3ミリもあろうかという太いアイラインは黒々と目を隈取り、テカテカと光るリップグロスはまるで焼肉を食べた直後の油ぎった唇のよう。

あっけにとられているシティの勤め人の中に散らばると、ブロンドのジャイアント女たちはチラシを配り始めた。
その中のひとりと目が合ったのだが、軽く無視された。女にはチラシをくれないらしい。

どうやら、アダルトエンタテーメントのPR。 ポールダンスのクラブだろう。テーブル(ステージ?)の上に消防署にあるような鉄棒が設えてあって、その棒につかまりながらセクシーなダンスをするアレだ。

男たちは興味なさそうな顔をしているものの、 「レストラン新装開店」のチラシと違って、シカトもせずに受け取って、さりげなくポケットに入れている。 
――後でこっそりと見るつもりだな。

ポールダンスクラブは後学のために(何の後学?)一度くらいは行ってみないといけないと思っていたのだが、なかなか機会がない。

誘われたことはあるのだが、そいつは評判の悪い男だったので断った。なんせ、ポールダンスクラブに連れて行った女をヘロヘロに酔っぱらわせたため、その女はテーブルの上に上がり自分も服を脱いで踊ったそうである。(実話。ふたりとも私の同僚)
えーっと、評判が悪いのはその男だったっけ? その女の方だっけ?

「で、殿方たちが好んでお出かけになるポールダンスクラブというのは、どのような場所ざますの?」と男の友人に聞いてみた。
「僕は別に興味はないけど、後輩が見てみたいというので」と前置きをしながら、とある場末のポールダンスクラブに出かけたときの話をしてくれた。

時間は平日の午後(おい、仕事しろよ、仕事)、某会員制のクラブらしい。といっても 「厳密に」は会員制でないようだ。ま、場末の店で会員制って言われたってねえ。

若くてきれいなおねえさんが順番に出てきて一曲ずつ音楽に合わせて「たいへん小さな衣装を身に着けて踊る」のを飲みながら「横目で見る」 一曲ごとにビールのパイントグラスが回ってきて、そこにチップとしてひとりが1ポンドずつ入れることになっている。次のおねえさんが出てくるとまた新しいグラスが回ってくる。
一曲3分として、半時間もいれば10ポンドばかり使う勘定だ。

20-100ポンド(店の格による)も出せば、ご指名のおねえさんが個室で 「あなただけのために」ダンスを踊ってくれるらしい。 「踊り子さんに触れてはいけない」かどうかは、これまた 「店の格」によるとのことである。

朝の4時にダンナがご帰宅。
ポケットにはポールダンスクラブのカード、で夫婦げんかもよくあるらしい。
「接待だったんだー。僕は嫌だったけど、クライアントのお供をしないと首にするってボスに言われたんだよー。本当だってばー」などと言い訳をする姿が見えるようだ。

もっとも、請求書は 「スィートキャットクラブ」なんて店の名前ではなく、「有限会社ジョーンズ・アンド・サンズ」みたいな会社名で出してくれるらしい。

さて、湯水のように使えた接待費にもさようなら。
アダルトエンターティメントでの接待も禁止にした会社も多いらしい。
バブルがはじけた今、ブロンドジャイアント女のおねえさんたちの将来はいかに? 

そういえば、日本のバブルでも 「XXXXしゃぶしゃぶ」なんてありませんでしたっけ?
接待にかこつけて、そっち方面に走る男の心理は万国共通。バブルでの行動も万国共通ってことですね。

PS. ポールダンスはセクシーなエクソサイズの一種として、女性向けのクラスが開かれている。サイズ16のおねえさんに脂肪をプルプルさせながら目の前で踊られると、見ている方が食欲をなくして痩せてしまいそうだ。

投稿者 lib : 04:58 PM | コメント (1)

May 06, 2008

イギリスのバブル その1

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「バブル? ああ、シャンパンの泡のことね。ワインを選ぶ前にグラスでいただきましょうか。 グラスで一杯20ポンド? 構うことはありませんわ。 何せ、これは接待。支払いは会社持ちですもの。 おーほほほほほ!」

・・・なんて時代はついに終わってしまった。

「イギリスのバブルはじける」 のニュースが続いている。新聞によると

Northern rock          2000
Citigroup             1000
UBS                 900
Bear Stearns            800
Merrill Lynch            400
Royal Bank of Scotland       300
Dresdner Kleinwort        300
Goldman Sachs           300
Bank of America          200
Credit Suisse            200
Morgan Stanley           200

お馴染みの会社名に続くこれらの数字は解雇の予想人数だ。

ヒュー、ヒュルルルー・・・・ (不況の風がシティを吹きぬける音)

シティでは約35万人が働いているそうだ。 
で、もしかすると2万人から4万人、つまり10%もの人員整理があるかもしれないと言われている。

もちろん、その他の経費も削減される。

某銀行の内部メモによると、

 タクシーではなく、普段は地下鉄で移動する。
 交通ストのときでもタクシーが経費で落とせるのは事前に許可を得たときだけ。
 2時間以内の電車での移動は二等車のみ。
 早朝に空港に着いたときもホテルの利用は禁止。

笑ってしまうのが次だ。

 ランチはひとり52ポンドまで。それ以上は事前に許可を得ること。
 アダルト・エンタテーメントの接待はいっさい禁止。

52ポンドのランチ?
シャンパンのグラス一杯が20ポンド。ミネラルウォーターがボトルで10ポンド。サービス料が17%取られるレストランが多いから、注文できるのはピーナッツかオリーブの皿くらいか? レストランからパンが無料で配られるのを期待したい。

あるいは数人でボトルを一本だけ頼む。この場合、水や食べ物はなし。誰がどのくらい飲むかで、殴りあいに進展する可能性もあるので注意が必要。

ほんの数ヶ月前までは某証券会社では
「ワインを注文するときはボトルが500ポンド以下のものを心がける」なんてルールがあったくらいだ。しかも、ボトルの数については上限なし。

あっぱれ、バブルな時代だったよなー。

日本でも 「金箔入りの酒」なんて流行りませんでした? 今でもあるのかな?

私の会社は接待の席ですら、30ポンドくらいのワインを選んでいるようだ。
て、ことは小売価格が10-15ポンドのレベルのワインだな。マネーマーケットでなければ、シティでもこんなもんだよ。

レストランで 「金に糸目はつけないぜ」 って感じの連中が派手にやっているのを見て、よく私のボスは

「ふん、下品な若造どもだ。あー、やだ、やだ。成金のガキめ。あいつらのナイフとフォークの持ち方を見てみろよ。お里が知れるね」

と毒ついていたが・・・ねえ、もしかして、それって、彼らの収入に対する嫉妬じゃない?                       続く

投稿者 lib : 11:21 AM | コメント (0)

April 17, 2008

私をフットボールにつれてって その2

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一度、フットボールの試合を観に行きたいと思っているのだが、なかなかチャンスがない。

フットボールファンではないし、それほど、スポーツ観戦には興味がないのだが、スポーツニュースでよく見る大観衆の興奮ぶりを目の当たりにしてみたい。

やったことがないことはやってみたい。見たことがないものは見てみたい。

もちろん、 「F1レースでルイス・ハミルトンと競り合う」 だの 「プライベートジェットで世界一周、シャンパンとキャビアつき」とかは、不可能だし、
「黒魔術用、生け贄のヤギ、解体実践講座」 とか 「ヤXザの組員の皆様と覚せい剤でトリップ体験」なんてのは、チャンスがあってもお断りするが。

とはいえ、興味本位の観戦だ。
寒い中を震えながら数時間も観戦するほどの熱意はない。血の気の多い連中に囲まれ、乱闘に巻き込まれないように、大柄でボディガート代わりになる男の友人のエスコートも必要。
どうせ行くなら有名なチームの試合がいいな。あまり名前の知られてない、しょぼいチームの試合はイヤ。

というわけで、友人が 
「マンチェスターユナイテッド対アースナルの試合をボックス席で観たい?」という話を持ってきたときには飛びついた。

マンチェスターユナイテッドといえば、その名の通りマンチェスターの勇。
そして、アースナルといえば・・・えーと、確かこれも有名なチームだ (・・・どこのチームだか、よく知りません。どこかにアースナル市というのがあるのか?)

なんてったって、 「ボックス席」というのがいいねえ。

・・・ところで、ボックス席というのは何ですか?

と聞いたところ、観客席の中ほどに設えてあるガラス張りのルームだそうだ。

フットボールの観客は 「シーズンチケット」を持つ会員が中心になる。これが9割とかを占めるので、 「一見さん」なんかの手に入るのは微々たる席数。 

ボックス席も企業が年間契約で借りるらしい。誘ってくれた友人は接待するはずのクライアントがキャンセルしてきたとかで私に声をかけてくれたのだ。
年間契約金を払うのに、そこで観戦するには、ゲームごとにさらに金がかかるという。
フットボール選手に大金が払えるのは、こういう仕組みか。

彼の会社の持つボックス席は20-30人収容でき、ゲームの30分前からホットビュッフェとドリンクがサービスされる。試合が始まるとその外にあるテラスで観戦。外に出なくてもルームの中には大きなスクリーンもある。

スーツ着用の必要はないが、フットボールシャツとスニーカーは禁止というドレスコードだそうだ。 「一般の観客とは違うのよね、僕たち」というスノッブ感覚と思われる。 ふん・・・労働者階級のスポーツのくせに。

一人につき250ポンド、しかも飲み物は別料金というゴージャスな席だ。
試合後1時間までは使えるので、スタジアムを出る観客の混雑が収まってから席を立つ、なんて優雅なこともできる。

ん、まー、素敵。と思ったのだが、前日になってキャンセルしたはずのクライアントがキャンセルをキャンセルするという事態が発生し、残念ながら、今回の試合観戦のチャンスははかなくも消えた。

「今度、連れて行ってあげるよ」とは言ってくれたものの、有名なチームの試合はチケットがなかなか手に入らない上、一番安い席でも50ポンド以上という。汗臭い男たちがボールを蹴りあうのを見るのに50ポンドも払うのか? オペラにだって、もっと安い席はあるぞ。

250ポンドのボックス席でタダ見ができそうだったことを考えるとちょっとがっかり。

まあ、スタジアムの臨場感を正式に味わうのは 「外野席」 (野球と混乱している私)が一番なんでしょうけどね。

というわけで、フットボール観戦は未経験ざます。一体、いつになったら行けるのか?

投稿者 lib : 09:41 AM | コメント (1)

April 09, 2008

恐怖の税務署

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今年の初夢は 「古タオルを干すもう一人の私」 (1月9日のブログ)。洗濯物を干す私。では、それを見ている私は誰? と、それを象徴するような出来事があった。

この時期、税務署から税金関連の書類が送られてくる。そこには 「内容を確認して、もし、間違いがあれば連絡するように」と書いてある。

日本では、 「税務署」 「銀行」 「保険会社」 「役所」からの書類をわざわざ確認することはしない。店で受け取るお釣りやATMから出てくる紙幣だって数えなおさなかった。

が、ここはイギリス。

なーんたって、ミスが多いのだ。自分の身は自分で守らなければ。

えーっと、住所、氏名、生年月日・・・で、所得が違うじゃないの。
なぜか、 (あー、これだけあればいいわね)という額が書いてある。これだけくれるのならともかく、これをベースに追加の税金なんか取られてはたまらない。

書いてある番号に電話したら、珍しく、すんなりとつながった。

「書類を受け取ったのですが、間違いがあるので電話しました」
「それでは、本人かどうかの確認をします。まず、名前からお願いします」
と、オペレーターの質問に次々を答えていくと・・・

「こちらにあるデータと一致しませんね。これ以上、進めることはできません。もう一度、かけなおしてください」と言う。
何か、言い間違えたっけ?

しかたなく、もう一度、かけなおした。今度はしばらく待たされた。
今度も本人確認のため、同じ質問がされた。
で、「データと違います。ここで終了します」とオペレーター。
ちょっと、待ってよー。
「私、間違ったことを言ったかしら? どこが違います?」
「それは申し上げることができません」
ま、それはそうだよね、本人を騙った他人に個人情報を渡すことになるもんね。

でも・・・本人が本人の情報を答えているんですけど。

「えーっと、どこが間違っているのかわかりません。貰った書類の内容を訂正したいんだけど、どうしたらいいのかしら?」
「もう一度、かけなおしてください」
「でも、同じ質問をされても、同じ答えしかできないし。本人なので正しい情報を答えているんですけど」
「でも、こちらで記録されている情報と一致しません」

だから、そっちが持っているデータが間違っているんだよー。私が本人なんだよー。信じてー。

しかたなく、もう一度、かけなおす。今度はもっと待たされた。
で、また同じことの繰り返し。
「かけなおしてください」
「何度、かけなおしても同じです。どうしたら、自分自身の情報にアクセスして間違いを訂正できるの?」
「・・・かけなおしてください」

―――この不条理はカフカの世界か、それとも筒井康隆か・・・。

こんなとき、受話器をたたきつけてはいけない。そんなことをしていては、イギリスでは電話をいくつ持っていても足りないからだ。
それにオペレーターはマニュアル通りに話しているだけだろうし。

私はため息をつきながら、給料明細書やその他の書類を一式コピーし、学生時代にやったように蛍光マーカーペンであちこちに線を引き、ところどころに赤ペンで説明をつけ、税務署に送った。こっそり書類の片隅に 「バカタレ」と日本語で書いてやろうかと思ったくらいだ。

日本で働いているときには年末に経理の人がさっさと調整してくれていた記憶がある。私は自営業の経験はないので、税金関係の書類なんか、いつも人まかせだった。

なんで、こんなことまでやらされるのか、イギリスで働く会社員! ついでに言わせて貰うが、高いぞ、税金!

投稿者 lib : 11:25 PM | コメント (0)

March 12, 2008

催眠療法 その3

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さて、この催眠術CDのメッセージの内容だが、健康的な食べ物を食べましょう。お腹が空いたときだけ食べましょう。お腹がいっぱいになったら、食べるのをやめましょう。適度な運動をしましょう。といったごく一般的なものだ。
痩せた自分をイメージしてみましょう。大好きな人の目に映る自分の姿はどうありたいですか? というのもあった。

何度か聴いたが、全部を通して一気に聞いた覚えがないので、たぶん25分のうちの数分は 「寝ている」のだと思う。そのため、10分くらいの長さに思える。

トリックとしては、ときどき、右側と左側のヘッドフォーンに別のメッセージが出ていることである。同時に話すので、ぼんやりしているとどちらも聞き取れない。
気をつけて聞いてみると、
「これから4週間は体重を量らないこと」なんて、秘密の指示が隠されていた。

・・・って、確か、 「聞き流せ」って言ってたよね?

でも、無理。

なぜって、中学・高校と英語のリスニングで、
「一語ずつ、きっちり聞き取り、意味を理解する」練習をしてきたではないか。

「リピート・アフター・ミー」なんて、懐かしいフレーズを思い出した。
ピー、なんて音がして、その後、しばらく無音状態。で、そこで前のセンテンスを復唱する、ってやりませんでした?
「ピーターは羊飼いの少年です。ピー・・・・」
「メアリーはゾンビの少女です。ピー・・・・」

メッセージの中に知らない英単語が出てきたりすると、
「えっ? えっ? 今の単語の意味、何だったっけ?」とあせったりするのだ。
前回、聞き取れなかった部分が明確に理解できたりすると、うれしかったりもする。
そういえば、300から逆に数えるのはどうなったっけ? と、時々思いだすが。

(これは英語の聞き取りテストではないんだから・・・)と、いくら自分に言い聞かせても、中学・高校で叩き込まれた習慣を簡単に変えることはできない。

なるほど、イギリスの催眠術の大家でも、日本の英語教育の厚い壁の前には無力なのだな・・・って、ダメじゃん、せっかくのダイエットなのに。

しかし、この25分というのが、つらい。

寝る前にCDを聞いてみたら、最後に、
「それではカウントダウンをします。これを聞いたら、目が覚めます。5,4,3・・・。さあ、うーんと伸びをして・・・」
という終わり方なので、目が覚めてしまい、また寝つくまでに時間がかかることがわかった。

朝、まだベッドにいる間に聞くと、目覚めようとする脳と眠らせようとする催眠術で相殺効果が働き、なんだか 「効かない」感じがするし。

一番いいのは、夕方。

しかし、仕事から帰って、夕食の準備をして食事をすませ、お風呂に入って・・・などと寝るまでの貴重な数時間のうち、半時間も取られるのは、正直、つらい。
なんとか短縮できないもとかと工夫をしてみたが、催眠状態にもっていくのに最低それだけの時間は必要なのだろう。

CDを効き始めて2週間、これをくれた友人とご飯を食べた。

「どうだった? CD聞いてる? ダイエットはどう?」
「なんだか、食欲が抑えられてきた気がするんだよね。あ、アタシ、デザートはテラミツね。ところで、禁煙はどう?」
「・・・今は吸ってる。でも、また禁煙するつもり。簡単だよ、あのCDを聞けば、すぐにでも禁煙できるからね。全然、心配してないんだ」
「そうだよね。あのCDで、私もダイエットできる。心配ないよね」

―――まったく心配していないふたりなのであった。

というわけで、このCDはダイエットに効くのか効かないのか、よくわかりません。

ホリディに行くので2週間お休みしますね。

投稿者 lib : 08:29 PM | コメント (0)

March 05, 2008

催眠療法 その2

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大丈夫だろうか、催眠術。

素人の催眠術はかけるまではいいものの、解くことができず、危ないという噂だ。プロの監修なしに家で聴いていて、そのまま 「眠り姫」になってしまったら?

催眠術をかけられて、自制心が効かず、いらない事をペラペラ話してしまうかと不安だ。

泉鏡花の 「外科室」ではないが、
「私は恋人に誠実な女です」などと言いながら、催眠状態で無防備になり、
「なーんて、実は上司と長年の不倫関係にあり。彼氏の親友を誘惑して浮気しちゃったし。シングルバーでときどき遊んだりもしてるわー」と暴露してしまうのではないか。(例です。私ではありません)

それに、 「催眠術ショー」などで、 「はい、あなたはウサギです」と言われ、ピョンピョンと跳ね回ったり、 「今度はヘビさん」と言われて、ニョロニョロしているではないか。

「この音楽を聞いたら、ヘビさんになります」 「このサインを見たら、ウサギさん」という暗示のトリガーが設定されるのも見た。

横断歩道で 「歩行者」サインを見て暗示のトリガーが入り、ピョンピョンしたり、 「通りゃんせ」を聞いて、ニョロニョロしたりすると恥ずかしいではないか。

うーむ、いやだ。ピョンピョンとか、ニョロニョロとか。

そして、言葉の問題もある。日本人の私が英語で催眠術にかかるものだろうか? 

もちろん、これがヒンズー語とか、ルーマニア語だと暗示にかかりようがないことはわかる。
たとえ、その道の権威者に
「%#*」(&^? ^^^@!) *!*!*!」と誘導されても、
「?(?){?}(?)」としか頭に浮かばないだろう。

で、無意識の領域において、母国語ではないが理解はできる英語の暗示がどれだけ働くことができるのだろうか?

いやいやCDを手に取った。うう、25分もある。長いな。
忍耐力がない上に、人の言うことを聞くのが嫌いな私が、25分もじっとして、他人の命令に耳を傾けなければいけないのか。

ベッドに横たわり、CDをかけて、ヘッドフォーンをつける。

本の表紙の男の人は自信ありげ、かつ優しそうな顔だ。バリトンで、いかにも 「私にまかせなさい」といった渋い声。

「リラックスできる場所を選んでください。これを聞きながら運転したり、機械の操作をしてはいけません」 
(と、いうことは、やっぱり途中で眠ってしまうのか?)

「ステレオで聴いている人はこっちを右耳に、こっちを左耳にしてください」
慌てて、ヘッドフォーンの左右を入れ替える。

――右脳にこのメッセージ、左脳にこのメッセージとか、あるのかな?

やがて、環境音楽のような曲が流れてくる。

導入部分では、
「さあ、300から逆に数えていきましょう。300、299、298、297・・・」

まず、ここから悩んでしまう。
日本人の私にとって、300から、逆に 「英語」で数えていくというのは、それなりに集中力を必要とする作業だ。催眠術の最中に 「集中」してはいけない気がする。
で、途中から、 「にひゃく、はちじゅー、きゅー」と日本語に替えたのだが、それも、また、英語での催眠術にしっくりこないようでもある。どうしたらいいのだろう?

こうして、数を数えていると、彼はいろいろなことを話している。ああ、数なんか数えている場合ではない。メッセージを聞かなくっちゃ。でも、数えるのをやめろ、とは言わなかったし。ええっと、幾つまで数えたっけ?

CDの声に身をまかせるどころか、どう判断したものかという混乱が脳の中をグルグルと回っているのがわかる。・・・いいのだろうか、これで?

さらに続く。

投稿者 lib : 07:34 PM | コメント (2)

February 28, 2008

催眠療法 その1

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人を呪わば、穴ふたつ。デブを笑わば・・・。というわけで、日頃、イギリス女のデブぶりをあざ笑っている私だが、その悪口がわが身にはね返ってきている。

「サイズ10のスカートを履くくらいなら、死んだほうがマシ」と言い切ってきたが、つい誘惑に負けて手を出してしまった。もっとも、 「死んだほうがマシ」ってのを見せてもらいましょうかね、と迫られたら困るので、周囲にバレないように、固く口を閉ざしているが。

ふりかえれば、2ヶ月前、クリスマスの頃だ。

イギリス人の男、数人と食事をしていた。
「なんだか太っちゃって。ダイエットしなきゃいけないのよね。あ、アタシ、デザートはチーズケーキをお願いね」
と、いつもの 「言行不一致の美学」を披露していると、その中のひとりが、
「君はいつも体重を気にしてるから、これ、買ってきたんだ。クリスマスプレゼントだよ」と本をくれた。

見れば、
Paul McKenna著 「I Can Make You THIN」という本だ。
「私はあなたを痩せさせることができる!」というタイトル。

正直なところ、 (うっ・・・)と思わなかったと言えば、嘘になる。
この本をくれたのは、 (ゲイじゃないのか?)と疑うほど、女心を理解している男で、まったく悪気はなかったはずだ。

そのとき、他の男3人は心なしか青ざめていた。
(お前、何てことを・・・。女性に向かってダイエット本を薦めるなんて、 「デブをなんとかしろよ」って言ってるのと同じだろ。殺されるぞ、殺される)
デブを指摘された私がヒステリーを起こして彼に飛びかかり、腹わたを食いちぎる光景が脳裏によぎったに違いない。

「痩せなくっちゃ」
「いや、全然太ってないよ」
と、イギリス紳士なら当然のお約束の会話がついに破られたのだ。

が、瞬間のショックを自制すると、好奇心がわいてきた。
「流行のダイエットなの?」
「いいや、この人は催眠術で有名なんだ。いろいろとシリーズがあってね。ダイエット、自信をつける、禁煙とかね。僕も彼のおかげで禁煙できたんだ」

彼の話によると、本を読む必要はない。CDが付いているので、それをリラックスした気分で聞くようにということである。そのCDも、「しっかり注意を払って聴く」のではなく、 「聞き流す」ほうがいいらしい。

ほー、ほー、なるほどね、とありがたく貰って帰った。

しかし、いくつか問題がある。

いまどきの女なら、ダイエットのメソードの5つや6つは空でスラスラ述べることができる。が、どうしたら実行できるか、を知っている人は少ない。
ダイエットの知識は増えるが、体重も増えるという 「ダイエット理論-正比例の法則」があるのだ。これ以上、新しいダイエット法を聞いても・・・。

それに私は人の命令を聞くのが嫌いだ。 「やれ」 と命令されると、反発してしまう。
日本では軍隊式のダイエットが流行っていたらしいが、私には不向き。
ああ、職業軍人でなくて本当によかった。上官の命令にことごとく逆らって、指令系統をメチャメチャにし、部隊ごと全滅させてしまうタイプだと思う。

それに、催眠術って、なんだか、怖くない? 目が覚めなくなったりして。

というわけで、しばらく家に放っておいた。が、気のいい友人は、
「あのCD聴いてみた? 試してみた?」
と顔を合わせるたびに訊ねる。

しかたなく、私も腹をくくってやってみることにした。
せっかくの友情にヒビを入れたくない。たとえ、目が覚めなくなったって、それがどうしたというのだ? (すごく、困るけど・・・)

まあ、普通の書店で売っていて、おまけにベストセラーということだから、そんなに危ないものではない、はずだ。   [続く]

投稿者 lib : 10:17 AM | コメント (0)

February 20, 2008

八丈島に島流し その2

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BTは月曜日、2日後に修理に来てくれるとのことである。

もちろん、信じてなどいなかった。 「月曜日に修理に来ます」と聞いて、約束した日に人が来るなんて思うのは、イギリス生活の素人さんである。

「月曜日って、7週目の月曜だったのね」みたいなことは当たり前。
「月曜日といっても、今年の月曜日とは言わなかったしー」くらいの言い訳を聞かされるのは覚悟しなければならない。

ま、とりあえず、修理は頼んだから、とテレビを見ていると、ピンポーンとドアベルが鳴った。
―――誰?
で、ドアを開けると、BTのエンジニアが立っている。

「BTです。電話線が切れたんだって?」
「あわわわわ・・・」とパジャマ姿の私。
―――目の前で起こっていることに対応できなくて、パニックっている。
「ちょうど、近くで修理してたら、連絡が入ったんだよね」
「あわ、あわわわわ」
「あんた、大丈夫?」
「あわ、あわ、あわ」

玄関のドアを開けたら、テクノザウルスが立っていて、丁寧におじきをしながら日本語で挨拶したくらい驚いた。

イギリスに何年も住んでみればわかる。BTに電話をして、30分後にエンジニアが来たら、たとえ 「あわわわわ」 でなくても、誰でも 「うきききき」 だの、 「むぐぐぐぐ」だのと、パニック反応を起こしてしまうだろう。

おまけにこのBTのおじさん、コメディアンのハリー・エンフィールドにそっくりだ。

きつねかなんかに、騙されているのかしらん、私?

「ちょっと、中に入っていい? 家の中に電話線のボックスがあるはずなんだ」
「え? あわわわわ」
この、 「あわわわわ」は別の意味である。

私は週日は働いている。1週間分のゴタゴタが堆積して最高潮に達している土曜日の朝、しかも、他人が来ることを予想していないときに、
「あ、はい。どーぞ」と家の中を見せることに躊躇しないでいられる女がいれば、尊敬するね。

で、私は尊敬に値しない女なので、
「あわわわわ」とあせったのである。
「えーっと、30秒だけ、待ってくれる?」
本当は30分くらいは欲しかったのだが、せっかく来てくれたBTのエンジニアを逃したくなかったので、30秒で家の中を整理した。

このハリーおじさんは、
「あ、しまった。前の工事の場所にはしごを忘れちゃった。はしご、ある? 貸してくれる?」などとボケをかましながらも、半時間ほどで電話線を修理してくれた。

お世話になったので、5ポンドくらいチップとしてあげようかと思ったが、意外とこの手の仕事は稼ぎがいい。私よりも、おじさんのほうが収入が多いかもしれない可能性を考え、買い置きのチョコレートの箱をお礼として進呈した。

「BTに電話したら、30分でエンジニアが来たよ」と言っても、誰も信じない。
「まーた、嘘ばっかり。そんなにすぐ、来るわけないじゃん。ここ、イギリスだよ」

月曜日、私の携帯電話にメッセージが入った。
「こちらはBTです。今日、エンジニアを修理に送る予定です。不自由をおかけして、申し訳ございません」

・・・BTの内部連絡の質って・・・・。

「八丈島に島流し」寸前に 「将軍の恩赦」を受けた気分である。もちろん、助けてくれたのは 「将軍様」ではなくて、 「ハリーおじさん」 だったが。 

・・・ところで、BTに2ヶ月ほど前からブロードバンドを頼んでいるんですが、一体いつエンジニアが来るんですか?

投稿者 lib : 06:39 PM | コメント (2)

February 14, 2008

八丈島に島流し その1

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電話線が切れた。

数週間、ザラザラした音がときどき電話に混じるのには気づいていた。しかし、毎回ではなかったので、そのままにしておく。実は、最初に頭に浮かんだのは 「ねずみの害」である。

家の中にある数ヶ所の電話のひとつが使えなくなったのはずいぶん前のことだ。ねずみキラーのおじさんが来て、床下を見たときに、
「ねずみがかじって、電話線が切れてるよ」と言ったのを思い出す。
(BT-ブリティッシュ・テレコムに連絡しなくっちゃ・・・。でも、面倒だな。他の部屋の電話は大丈夫だし。ま、いいか・・・)

と放っておいたのだ。

で、ある日、突然、他の部屋の電話もプツッと切れた。
・・・・しかし、面倒なことは考えたくなかったので、
「何もなかったことにしよう。明日はきっといい事あるさ」と、その日は寝てしまった。
すると、神のご加護か、翌朝、電話はつながっている。
(日頃の行いがいいからよね)と、自分の都合のいいように信じることにした。
数時間切れる、復活する。半日切れる、復活する。という状態がしばらく続いた。
が、ついに神のご加護を失ったらしく、数日たっても復活することはなかったのである。

「電話線が切れちゃった」と会社で話したら、みんな痛ましそうな顔をした。
「憧れてた人にあっさりふられちゃったのよねー」と言っても、
「あー、またなの。よく、ふられるね。あなたって、性格悪いもんね」などと、相手にされないが、今回は死ぬほど同情された。
「ボイラーが壊れた」 「トイレが水漏れする」 「電気の接触が悪い」など、何か修理が必要なときは、

「よって、八丈島に島流し」という宣告を受けたのと同じ。

これから、辛く、不便で、気が狂いそうなほど長い、長い、長い、日々を覚悟しなければならない。イギリスに住む日本人なら、この気持ちがわかるだろう。

まるで、「部族間の抗争により、村落ごと焼きうちに遭った。家が元通りになるのは一体いつになるやら」というくらいの深刻な出来事であり、遠い目をして自分の不幸に向き合わなければならない。

まず、床にがっくりと膝をつき、 「なぜ、なぜなの? どうして私がこんな目に・・・」と嘆き、涙をこぼしながら、イエローページをめくった。
「電話線が切れたら」の項を読む。まず、 「BTのせいで切れていたら、ただで直すけど、わざわざ修理に行ったのに、お宅の電話のせいだったら、お金をもらうからね」という脅し文句が書いてある。 「それがいやなら、まずチェック」という項目をひとつずつ確認していく。 「プラグがはずれていませんか? バッテリーが切れていませんか? 等々」「どれをやってもダメだったら、BTに電話ください」というところまでたどり着いた。

―――さて、電話線が切れているのに、どうやってBTに電話をすればいいのか?

で、携帯電話の登場だ。だが、ちょっと待てよ。
プレペイドの残金をチェックすると9ポンドしかない。
「あ、BTさん? 電話線が切れたんですが、修理に来てもらえますか? 住所はね・・・」と簡単にいくわけがない。
「ただいま、混み合っております。オペレーターにおつなぎするまで、少々お待ちください」というメッセージが延々と続くだろう。 「グリーンスリーブス」を500回くらい聞かされ、耳のタコがゴルフボールの大きさになるだろう。
オペレーターが出る前に、残金がなくなり、携帯電話の会社からも見放されて、突然、プツッと切れるのは明白だ。

そこで、友人に助けを求めることにする。商談をまとめるのが得意な友人で、ソフトなアプローチながらも、自分のゴールに誘導していくのが上手だ。
私のためにBTと交渉するために生まれてきたような人じゃないの!
「ああ、いいよ」と親切にも引き受けてくれた。
「後で連絡するから」と言うので、1時間ほど待った。
「いやー、オペレーターにつながるのに20分かかったよ」と友人。
―――やっぱりね。
「今日は土曜日だから無理だけど、来週の月曜に修理の人を寄こすって」
ま、そんなもんでしょ。でも、本当に来るのかな?
「たぶん、外の線の問題だから、家で待ってなくてもいいらしいよ」
それなら、いい。会社を休んで、エンジニアを待った挙句、すっぽかされたくない。

しかし、事態は意外な展開を見せた。(大げさだが、次週に続く! 乞う、ご期待!)

投稿者 lib : 08:03 PM | コメント (2)

February 07, 2008

1月の風物詩 その3

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電話線が切れたせいで、1月の風物詩が2月にずれこんでしまった。
ま、旧暦と思っていただきたい。

さて、その他、1月にやってくる Dがつく日というのは、
Debt (借金)のD と Depression (憂鬱)のD。

イギリスのバブルは日本より何年か遅れてやってきた。

不動産の価格が日々上昇し、株価も右肩上がり。
テレビでは 「今を楽しまなくてどうする!」 と堅実な暮らしをする人をバカにするようなクレジットカード会社のコマーシャルがガンガン流れた。

私やイギリスに住む日本人の友人たちが、
「この道は、いつか来たみちー。ああー、そうだよー。お母様の国で見たよねー」 
と、思わず北原白秋先生の歌を口ずさんだほど、そっくりさん。

質実剛健、古きを尊び、伝統を愛し、成金を侮蔑・・・していたはずのイギリス人は一体いずこへー? 

そう言えば、シティで若い女の子がデザイナーブランドのバッグを持っているのをポツポツ見かけるようになった頃が、イギリスバブルの始まりかも。

その昔、イギリス人の女の子はずいぶん地味だと感じたが、この頃は金のかかった、けっこう派手な格好をしている。 (ファッションセンスは、また別問題)
さて、これら流行アイテムはどうやって揃えているんでしょう?

―――そう、悪名高き、ストアカードである。

服を一枚買うたびに、
「ストアカード、いかがですかあ?」と聞かれる、アレだ。
「いいえ、けっこうです」と断っても、
「今日のお買い物が10%引きになりますよ」と、しつこい。

一度、相手があんまり熱心なので、面倒になって申し込んだら、ブティックの店員は目の前でクレジット会社に電話を入れ、他の客にも聞こえるような声で、私の個人情報 (住所とか電話番号とかね)を話し始めたので、思わずカウンターを乗り越えて、店員の首を絞めに行った。

買い物をするたびに、
「ストアカード、いかがですかあ?」で現金を払うこともなく、商品がどんどん手に入る。が、このストアカード、翌月に一括払いをしないと、利息がサラ金のようにつく恐ろしさ。

よく日本のドキュメンタリーでコンピューター処理されたモザイク顔と変換された音声で、「買い物依存症で借金が嵩み、今は風俗で働いてます」とインタビューに答えていたのを思い出す。

―――イギリスでは 「風俗に身を落とす」というのはあまり聞かないが、借金で首が回らなくなった女の子はどうしているのか? 

さて、シティはボーナスシーズンである。
男に人気なのはポルシェを始めとして、ハイパフォーマンスカー。
女は 「豊胸術」が最近の人気らしく、 「ボーナス貰って、 『ジョーダン』になろう!」が合言葉。 (*ジョーダンは人工バカデカバストのCリストタレントです)

が、そう言って、羽振りよくブイブイいわせていた連中も戦々恐々の状態だと聞いた。
アメリカのサブプライムローン問題でシティも揺れているからだ。

嵐の吹きすさぶ今年、シティグループは400人首切りした。そうでなくても、ボーナスに 「ドーナッツ」 を貰ったトレーダーも少なくないとか。
――ドーナッツとは真ん中が丸、つまりゼロ。

ドーナッツを食らったトレーダーなんて、 「旱魃の年の農夫」 「シケで海に出られない漁師」 「外反母趾でハイヒールがはけないダンサー」みたいなもの。
札束が飛び交わないシティに金融街としての意味があるんだろうか? 
(ま、私はもともと安い給料なので、関係ありませんが。)

さーて、今日はどこへも寄らず、家で安いワインでも飲むか・・・って、暗いぜ。

投稿者 lib : 09:55 PM | コメント (0)

January 30, 2008

1月の風物詩 その2

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先週は 「電話線が切れて、ブログ 1回やすみ」というスゴロクの目が出た。
この話はまた今度。

さてさて、1月には非公式に Dの字がつくスペシャルディがいくつかあるらしい。

D Day その1は Divorce (離婚)の頭文字を取った Dだそうだ。
日本なら、 ㋷ の日。 離婚の 「り」の字をとった、「丸り」の日、といったところか。

クリスマスが終わり、新年 (元旦のみ。シャンパンつきだが、田作りや数の子はなし)が明けると、弁護士事務所に駆け込んで、離婚の手続きに入る。
おめでたいはずの新春に不吉な離婚を決意するカップルが毎年山のようにいるというから、怖いじゃありませんか。

それを家庭問題専門の弁護士事務所が 「へえ、いらっしゃい!」ともみ手をしながら待っている。 「春のいちご農家」とか、「冬の温泉宿」と一緒で弁護士事務所の稼ぎ時、繁忙期である。

12月に盛んに行われたオフィスパーティでの浮気行為。クリスマスに招待した気の染まない親戚との会話。また、休暇で長時間いっしょに過ごした結果、相手のアラが目に付いた夫婦がお互いにうんざりし、離婚を決意するピークに達するそうである。

オフィスパーティでの男女間の乱れようは私も目の当たりにした。
面倒事に巻き込まれないよう、酒でみんなの道徳観や羞恥心が吹っ飛ぶ前、10時半ころにさっさとパーティを抜けて帰宅するようにしているのはそのためである。

12月、シティの某ワインバー。
ワインバーの一角をプライベートに占領して飲んでいるグループを見かけた。どこかの会社の飲み会らしい。なーんとなく、不気味な空気が流れているスポットがあったので目をやると、男と女がいちゃついている。
が、そのカップル、女のほうは40代の後半、男は20代の半ば。

―――なんだか、見てはならないものを見てしまったような・・・

まわりの同僚らしき連中も途方に暮れた顔で彼らの 「禁断の痴態」 を見て見ぬふりをしている。

「お似合いのカップル」ではなくて、 「不似合いのカップル」だったなあ、あれ。
ふたりとも酒でどこかが切れちゃった感じ。
(翌日、死ぬほど後悔するんだろうなー)と思った。
で、どちらかが既婚者だったりすると、即席の不倫カップルのできあがり (しかも、微妙に不釣合いだし)。

イギリス人の女友達によると、
「オフィスパーティで日頃は気にもしてない同僚についフラート。で、翌日、ボスや同僚から 『見たぞー』って、笑いものにされるし、その彼も気まずそうに目をそらすから、マジでイヤ。罪悪感からボーイフレンドとの関係もギクシャク」ということらしい。

―――ははは、自業自得だと思います。

クリスマス休暇にダメになるカップルというのは、
1. お互いの親戚 (義理の母親とかだろうね)に我慢ができないためとか、
2. 長い時間を一緒に過ごして、相手が鼻についてくるため、だそうです。

親戚に不満があるというのは日本でもよく聞く話だ。が、日本人は相手の親戚をなるべく立てて、自分は我慢をするほうを選ぶことが多いのに比べて、イギリス人は自我を通してしまうのをよく見る。
で、大喧嘩になっちゃうんだろうね。
「何よ、あなたのお母さんたら、私に嫌味ばかり」
「君のせいだよ。君のお母さんには香水を贈ったのに、僕の母には安いハンドクリームなんて、差別じゃないか」みたいな会話になるんだろうか。

――― 意地っ張りなイギリス人との口論は不毛です。

また、夫婦水入らずのホリディシーズンは離婚への近道らしい。

日本では口もきかないまま何年も過ごす 「家庭内離婚」もいるそうだ。憎悪を含んだ沈黙の日々の中で、家の内壁がドローと淀んでくると思われる。
自分の気持ちに正直に生きるイギリス人がスパスパ離婚するのと、どっちがいいんだろうね? 

投稿者 lib : 11:23 PM | コメント (4)

January 20, 2008

1月の風物詩 その1

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毎朝、同じ時間の通勤電車には、いつもの顔ぶれが、いつもの冬コートを着て、いつものマフラーをして乗り込んでくる。座る位置もほぼ一緒。まるで壁紙のようである。
それが一年に一度、模様替えされるのがクリスマスの後だ。

まず、マフラーや手袋など、小物が変わるのがクリスマス直後。
クリスマスプレゼントに貰ったらしい新顔の小物を身につけて登場する。そのまま、去年と同じ壁紙状態で通勤する人は、友達がいないとか、 「99ペンスのハンカチセット」しかくれないケチな人に囲まれているのかな、と思われる。

コートやハンドバック、ブーツみたいに値の張るものは新年に変わる。
これらは自力で手に入れたアフタークリスマスセールの勝利品らしい。

日本の衣替えは6月1日だが、イギリスのそれは1月1日と見受けられる。

バーゲンの日、朝早くから行列して開店を待ち、ドアが開くと同時になだれ込む群衆をテレビで映しているが、あの必死の形相って、怖いよね。中で待ち構える店員も、今年は誰がドアを開けるかで、もめたりするのではないだろうか。

「うわー、怖いよー。何で、たかが洋服を買うのに朝の4時から並んでるんだよ?」
「お前、開けろよ」
「いやだよ。最前列の奴らは目が血走ってるぜ。ドアを開けた瞬間が恐ろしいよ」
「俺もいやだ。去年は突き飛ばされて、転んだし。労災事故だよな、これ」
なんて、お互いに押し付けあっているかもしれない。

彼らはバーゲンで手に入れた新しいアイテムを着て、意気揚々と通勤。
が、ファッションセンスは去年のままなので、大金をはたいたわりに、変り映えしなかったりする・・・。

ある新聞で、スーパーモデルのケイト・モスがデザインしたシリーズの服を 「読者のみなさん」が試着してみる、という企画があった。

白いプレーンなTシャツ、サンドベージュのベスト、黒いショートパンツを着こなしたケイト・モスは 「クールでリラックスした大人のカジュアル」というスタイル。
が、 「読者のみなさん」は白のシャツとサンドベージュのベストで上半身が膨張して見える。しかも 「サイズ16の平均的イギリス女性」のムチムチな足がショートパンツからぼよーんと出ている様は 「潮干狩りに出かける中年太り婦人」のよう。
ゴム草履と貝掘りセットをバケツつきでお勧めしたくなるほどだ。

なんとも、むごい現実・・・。

というわけで、ローストターキー、ローストポテト、クリスマスプディングと大量のポートワインで変形した身体はスポーツジムに向かうのだった。

来るなー、と思う。ジムの常連は毎年、そう思う。
金の無駄使いだぞー、やめろー、やめておけー。

1月から2月にかけて、スポーツジムは異常に混む。自転車も、ランニングマシーンも、すごい行列。おまけに新入りは機械の使い方に慣れていないため、ますます時間がかかる。せっかくジムに行っても延々と待たされたんじゃ、出だしからつまづく。

そう言えば、日本の電車は4月の始めに特別混むよね。
新入生や社会人の卵はラッシュアワーに慣れていない。で、モタモタする連中が邪魔になって、全体が混乱する。ま、5月連休の頃までには新人さん達も 「電車乗り込み道」を習得し、いつもの秩序が戻ってくるのだが。

スポーツジムの場合は、みんなが 「慣れてくる」のではなく、新メンバーのほとんどが2ヶ月以内に「ドロップアウト」する。また、1月に大量導入されたデブメンバーを見かけなくなるのは、デブが治ったのではなく、来なくなっただけだ。

スポーツジムはメンバー登録をすると、最初の1年は解約できないところが多い。キャンペーンを張って、新メンバーを勧誘するが、全員が継続してジム通いをすれば、施設は目一杯で混雑する。ジムも 「落伍者率 9割5分」を知っているんだろうな。
「よっしゃー、今年こそは!」と決意も新たなメンバーもあっというまに脱落し、残り10ヶ月の会費はつつがなく回収されて、ジムはホクホク。現存メンバーも混雑が解消されて、ほっと一息つくのだった。

今月の教訓 - 新年の抱負に 「今年こそはジムの会員になり、運動する」という目標を立てるのは大きな間違いである。

―――家で縄跳びでもしなさい。安上がりだし。春になってから、おいで。

投稿者 lib : 05:34 PM | コメント (4)

January 09, 2008

初夢

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今年の初夢は、家のサンルームに洗濯ロープがたくさん張られ、古びたタオルや普段着の洗濯物を 「私」が干している。で、それを 「私」が風呂場の窓から眺めているというものであった。

ハッとして目覚める。

いかん、いかん、いかーん!!!

年に一度しかめぐってこない初夢。その年の運勢を左右するかもしれない初夢。
そんな大切な夢で古タオルなんか干している場合ではない。

幸運なことにまだ夜中だった。なんとか仕切りなおしたい。

心を落ち着かせ、 「純金の富士山」を背景に 「プラチナ製の鷹」が 「ダイアモンドでできたナスビ」をくわえて飛んでいるイメージを浮かべ、もう一度、眠りに落ちる。

数年前まで、私の夢の見方はすごく単純だった。
前日に蝶が飛ぶのを見れば、昆虫の夢を見る。前夜のテレビでアフリカの動物のドキュメンタリーを見れば、象の夢を見た。 
「夢を見る」というよりは、 「前日の出来事のおさらい」みたいなもの。

しかし、脳のほうも 「いくらなんでも、芸がなさすぎる」と反省したのか、最近はドラマ性に富んだものが多くなった。
「探偵が犯人を暴くためトリックをしかける」とか 「人妻が愛人と秘密の旅行を計画する」みたいな2時間枠のサスペンス劇場のような筋立てである。

――― せっかく睡眠をとって、 「休もう」としているのに、何のためにわざわざ脳がフルで活動しドラマを作っているのか、疑問ではあるが。

さて、初夢である。
せっかくの努力も空しく、その後は夢を見ることもなく目覚めてしまった。
こんな貧乏臭い初夢でいいのだろうか、2008年・・・。

うーむ、これはひとつ 「夢買い」をしてみようか。

北条政子が妹の 「吉夢」を買って、みごと将軍の奥方におさまったという話を聞いたことがある。妹を騙して運を横取りする根性は汚いが、この際だ、 「洗濯物を干す初夢」よりはマシだろう。

さて、誰から買おうか?

イギリス人に 「初夢」のコンセプトはないから、こっそりと良い夢を聞き出し、ビールのパイントかなんかをパブで奢って、夢を買ってしまおう。
数字が書かれた色とりどりのボールがグルグルと回って、はっきりした数字が6つ見える、なんて夢なら100ポンドくらいあげたっていいし。

「ねえ、ねえ。今年になって、何かいい夢見た?」と同僚に聞いてみる。
「面白い夢を見たよ。カフェでサンドイッチを食べていると、バイキングの一群に襲撃されて、まわりがみんな殺されるという夢」
ダメだ、ダメだ。そんな血なまぐさい夢。新春から縁起でもない。
「それでね、いつの間にか手にマシンガンを持っていて、敵をバシバシやっつけるんだ」
「・・・もしかして、クリスマス休暇に鼻血が出るほどゲームした?」
「そう。よくわかったね」
これはパス。

「最高の夢を見たよ」とニヤつく別の同僚。
「モーリシャスあたりかな? プライベートビーチに寝転んでいるんだ。クラッシュドアイスに注がれたダイキリかなんかを飲みながら」
よし、こいつはいいぞ。で、その続きは?
「でね、ビキニ姿のピチピチギャルがたくさんいて、僕に群がってくるんだよ」

・・・そうか、ピチピチギャルか。ピチピチギャルに用はない。 「ロケーション」は最高だし、 「夢の質」も悪くはないが、これは 「男性用」だな。

と、言ううちに新年も過ぎてしまい、私の初夢も公式に決定してしまったようだ。

その名も 「2008年 洗濯物を干すドッベルゲンガー」である。

かのフロイト大先生やユング先生。はたまたエドガー・ケイシー医師に分析してもらうと、一体どんな意味があるんでしょうね?

投稿者 lib : 07:13 PM | コメント (0)

December 19, 2007

ロンドン案内 その3

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初めてのヨーロッパという友人に楽しんでもらおうと張り切っていた私。しかし、仕事もあるので四六時中いっしょに行動はできない。

最初の週末を使って、交通機関の利用法をしっかり教え込む。トラベルカードが安くなる時間なんかを知らせておくのは当然だが、

「電車が止まったら、こうする」
「つり銭の間違いを防ぐために、ああする」

と、細かく指示している内に、
「あなたって、そんなに念には念を入れた性格だったっけ?」と不思議がられた。

いや、念を入れるつもりはないんですけどね。日本では考えられないようなトラブルがしょっちゅう起こるので、常に 「傾向と対策」を模索するくせが・・・。

逆に日本のホテルの受付で、
「明日、朝の6時に起こしてください」なんて、モーニングコールを頼むと、
「はい、かしこまりました」とあっさり言われ、
(え? こんなに簡単な手続きで大丈夫なんだろうか?)と不安になる。
イギリス暮らしのせいで、「口頭のみで書面にしない」 「一人だけに頼む」 「再確認しない」なんてことができない身体になっているのだ。

「長く住んでいるうちに用意周到になったわね」なんて言われて、
「大ざっぱで先のことなんか考えない、ノホホンとした私を返してー!」と叫びたいくらいだ。

友人をチャイナタウンの 「ウォンxx」に連れて行った。
これは 「シンプソンズ」でローストビーフをおごってくれた友人へのささやかなお礼。 ・・・確かに80ポンドのランチに対して、掛け値なしに 「ささやか」である。
ここは 「うまい」「安い」「早い」に加えて、 「店員の態度がガサツ」という四拍子そろった店だ。

「xxの歩き方」なんかを片手に貧乏旅行をする学生に人気のチャイニーズレストランだが、 「ルールズ」をご指名するような私の友人なら、まず、縁のない店だ。

しかし、私のように、たった一人で見知らぬ外国人の男と相席になりながら、3ポンド80ペンスのヌードルを食べるのがぜーんぜん平気、という女には便利な店だ。
コベントガーデンのオペラハウスに近いので、仕事帰りにオペラに行くとき、時間がかからないここを利用することがある。ま、服装的には浮いてしまうが。

この店で食べる作法は次のようである。

まず、窓に張ってあるメニューで注文するものを決める。
伝票はテーブルに来ないので、値段も覚えておく。席に着いてから、 「メニュー見せて」などと、まどろっこしいことを言わないためだ。これは立ち食いそば屋で 「お品書き見せて」と頼むようなものだ。

ドアを開けると、人数を指で示しながら入店する。
一人なら、入り口に近いエリアで他の人と 「相席」。二人以上なら、店の奥、二階、地下のどれかを指示され、そこでやはり他の客と 「相席」する。

席に着くと、おはしと急須、湯のみが投げ出されるように置かれ、
「何になさいますか?」ではなくて、
「何が欲しいんだよ?」と聞かれるので、あらかじめ決めておいた品を注文する。
二人以上の場合、別々のものを頼むと、一人が食べ終わってからもう一人の注文した料理が来たりするので注意が必要。

ここでは、ワインリストなんかは頼まないほうが賢明だ。(あるのか? この店に?)

実を言うと、私はこの店の 「異国情緒にあふれた場末感」が好き。特に 「ひとり食い」エリアにいる様々な国籍の人 (私も含むが)のしょぼい雰囲気がイカしている。
ちょっと冴えない服装のおじさんなんかと相席になると、
(旅行者にしては貧乏くさいな。出稼ぎかな? 正式な労働許可証なんか持ってない感じだよな)と勝手に決めつけたりする。

友人も 「おいしいわ」とは言わなかったものの、結構めずらしがってくれた。
「いかにも外国に来たって感じね。香港旅行を思い出さない?」
そうそう、そう言えば彼女と一緒に香港に行ったっけ。私だけが腹を下して・・・。

ここは 「香港なロンドン」だが、他にも 「アラブなロンドン」とか 「パキスタンなロンドン」もあるよ。

投稿者 lib : 10:52 PM | コメント (0)

December 13, 2007

ロンドン案内 その2

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日本から遊びに来た友人をミュージカルに連れて行くことになった。

レスタースクエアにある 「当日券 半額チケット売り場」で、彼女が選んだのはサヴォイホテル横のサヴォイシアターで「屋根の上のバイオリン弾き」だった。
55ポンドのチケットが手数料込みで30ポンド。

ふたりとも題名は知っているが、ストーリーは知らない。

「えーと、ロシアの話だよね?」と友人。
「ユダヤ人一家の話じゃなかったっけ?」と私。

――― ロシアに住むユダヤ人一家の話でした。

登場人物は多いのだが、ほとんど 「一人舞台」という感じで主人公がどんどん話を進めていく。主演の俳優は本当にチャーミング。日本でも有名な老俳優がロングランで演じていた覚えがある。

次は紅茶だ。

紅茶にまったく興味がなく、イギリスに住んでいながら、紅茶を飲むのは年にほんの数回という私と違い、友人は大の紅茶好き。

まず、紅茶の殿堂(?)フォートナム・メーソンに連れて行く。
彼女に 「特大サイズ」缶の 「ブレックファストティ」をおみやげにしたことがある。当時、深緑色だった缶のデザインは変わり、あのデカサイズはなくなってしまっていた。

ここでお土産用に10個も20個も、いや30個も40個も買っていく日本人は多い。
そんな客にお土産用に小分けする小さい袋を渡すのを拒否するのを見たことがある。
「ケチ」 「老舗のくせに不親切」 「袋なしでみやげを渡せって言うのかい」と思った。
私だったら、 「あ、そう」と10個なら、1個ずつ10回に分けて買い、そのたびに小袋を貰う、という、いやがらせで対抗してしまいそうだ。
最近はどうなのだろう? 顧客サービスが向上しただろうか? それとも、 「ほーらね、資源を大切にしましょう」と袋をくれないままなのか? ご存知の方はご一報ください。

このあと、コベント・ガーデンの 「ティーハウス」が続いた。
ここでも、私は彼女に 「キワモノ紅茶」を何度かおみやげにしている。
「キャラメルティ」とか、 「サマー・プディング」とかね。でも、紅茶好きには、キワモノより、伝統的なフレーバーのほうがいいらしい。
ま、そうだろうね。コーヒーが好きな私も 「ブルーマウンテン-猿の腰かけ風味」なんか貰ってもうれしくないだろうし。

彼女はこのほかにも普通のスーパーで、「イギリス庶民が飲む日常の紅茶」も数箱お求めになった。

紅茶が好きな人は 「粉モノの乾きモノ」も好きらしい。つまり、小麦粉でできた 「パン」「ケーキ」「ビスケット」。これまた、私には興味がない食物群だ。

友人は「スコーンが食べたい」と言う。はずかしながら、イギリスに10年以上も暮らしながら、スコーンを買ったことがない。
昔、どこかのカフェで一度だけスコーンを食べたが、あまりの 「粉くささ」に口の中がパサパサになって、喉がつまりそうになり、パニックを起こしそうになって以来、
「嫌いな食べ物」のカテゴリーに入れていたのだ。

しかし、遠来の客のために、一肌、脱がなければならない(大げさ)。

(プレーンに、チーズ入り、ドライフルーツのもあるな・・・)と生まれて初めてスコーンの棚の前に立ち、悩むこと数分。
――― 悩んだら、とりあえず、基本、という法則でプレーンを買って渡した。

スコーンと 「クロテッドクリーム」による、 「クリーム・ティ」と体験してもらうために、友人をコッツウォルズに送り込むことにする。

友人の 「イギリスで食べたいもの-リクエスト特集」を聞いていると、 「紅茶に興味なし」 「粉モノの乾きモノを食べない」 「ローストビーフより韓国焼肉を好む」私がなぜイギリスに住んでいるのか、という疑問が湧いてくる。・・・・なぜかしらん?


PS. 全然関係ない話。 マリー・アントワネットの真珠の首飾りが落札最低希望価格に届かず、競売が成立しなかったそうだ。ギロチンにかかって死んだ女性の 「首」飾りなんて、これ以上縁起が悪いものも考えられない。私なら、お金もらっても所有したくないね。

投稿者 lib : 06:23 PM | コメント (0)

December 07, 2007

ロンドン案内 その1

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日本から友達が遊びに来た。
ロンドンで何が見たい、何がしたいというのは、人によって違うので、それに合わせて色々なところへ連れて行くことにしている。

「リバティプリントの小物が欲しい」とか、
「ハロッズのショッピングバッグが買いたい」というのは楽勝だが、
「ロンドン橋が跳ね上がるのを見たい」とか言われると困る。
タワーブリッジとの勘違いは指摘できるとしても、橋が開くのは特別大きな船が通るときに限られている。ロンドンっ子でもめったに見られない瞬間だ。
いくら納税者でも、一市民にすぎない私の一存では・・・。

「ロンドンアイに乗って、矢井田瞳の歌が歌いたい」というのもあった。
「え? 『焼いた瞳』?」
「ヤイコってシンガーなの」と親戚の子。
(焼いた瞳か・・・。「全日本 眼科医 レーザー治療研究会 今月の議題」みたいな名前だな)としばらく思っていた。

さて、友人はロンドンの観光名所を一通り見てから、田舎に行き、B&Bに泊まりたいと言う。

「それから、ローストビーフとヨークシャープディングが食べたい。『ルールズ』がいいな。おごるわよ」とのことである。
「御意 (ぎょい)」と承ったが、生憎、希望日に席が空いていない。
「二番手として、 『シンプソンズ・イン・ストランド』はいかがざましょ?」と聞いたところ、
「よきにはからえ」との答えである。
店に電話をすると、 「Tシャツやジーパンで来ないでくださいね」と言われた。
アメリカ人観光客じゃないから、大丈夫よー。

シンプソンズに私が予約を入れ、彼女が支払いをするという絶妙のコンビネーション。

これは学生のとき、クラスで寿司屋に行き、隣に座った子から、
「あたし、ウニ、イクラ、トロは苦手なの。代わりに食べてね」と言われ、盆と正月がいっぺんに来たような気分になって以来のことである。

ローストビーフは以前、サヴォイでも食べたことがある。
目の前で切り分けてくれるので、カッコいいのだが、私としては心ひそかに
(韓国の焼肉のほうがおいしい・・・)という感想を持った。
料理自慢の友人のもてなしも受けたが、肉質が硬かったり、焼きすぎだったりで、あまりおいしいのにめぐり合ったことはない。

シンプソンズのローストビーフはおいしかった。 (でも、やはりカルビのほうが好き)
焼き加減は無難なところでミディアムを頼む。ミディアムといっても、レストランによって、レアに近いミディアムだったり、ウェルダンのようなミディアムだったりと、ずいぶん違う。 「xxでよろしく」と言っても、どんな状態でサーブされるかはギャンブルみたいなものだ。

「ミディアムなのに、中心がピンク色じゃないね」とシェフの前で堂々と言い合う。
こんなとき、日本語って便利よね。何を言ってるかわからないだろうし。
グレービーはサラサラした液状で、ちょっと新鮮に見えたのは、日頃、安価な 「インスタント」グレービーのトロリとした感じに慣れているせいだろう。

肉にはホースラディッシュ。付け合わせにローストポテトとキャベツがついてきた。
どうせ食べきれないだろうと、スターターはなし。
酒を飲まない彼女はミネラルウォーター。私はグラスワインを頼む。しっかりしたレッドでおいしかった。

お腹はいっぱいだったが、ここまで来て、デザートなしというのも悔しい。
「ギャル曽根、させてもらうわ」と気合を入れる友人。よし、私も受けて立とう。
カスタードソースのかかったハニースポンジケーキを一つだけとって、二人で分ける。
これもおいしかったけど、すごく甘い。
「喉がひりひりするんだけど、これって甘さのせい?」
「やっぱり? 私も喉が痛い」と囁きあう私たち。
ひりつく喉をさすりながら談笑するふたりは 「いやー、満足、満足」と言っているように見えただろう。

ローストビーフは一人前が23ポンド。ワインはグラスで7ポンド。ミネラルウォーター、デザート、コーヒー、紅茶の全部で80ポンドくらいだったと思う。

次のお言葉は、
「ミュージカルが見たい。おごるから」とのことであった。
「御意」と申しつかって、次回に続く。

投稿者 lib : 12:17 AM | コメント (2)

November 14, 2007

オフィスラブ 独身編 その2

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同僚のT嬢はイギリス人で30代のはじめである。 「彼氏いない歴」がもう2年に近い。昔のボーイフレンドは煮え切らない態度にうんざりした彼女のほうからふったのだが、最近、その彼に新しい彼女ができたと聞き、内心おだやかではないらしい。

以前にスピードデート (2006年3月9日のブログ)に同伴したのだが、つきそった私のほうが盛り上がって大騒ぎしてしまい、彼女に恥ずかしい思いをさせた過去がある。あのときはごめんね。

さて、T嬢はかわいい顔をしているので、男の同僚の中にも彼女が気になっているのが数名いるようだ。

O氏は30代の半ば。 「仕事ができる奴」とみんなから評価されている。
「妻とうまくいっていない」と言い張る彼はT嬢に色目を使う。
「彼って、ちょっとセクシーだと思うのよね」と告白するT嬢。
・・・え? そうなの? 

O氏は強引で男っぽく、性格こそ抜け目のないビジネスマンという感じだが、
「りんごのほっぺ」というか 「赤ら顔」というか、「白人特有の広範囲に渡るピンク色のほほ」をしている。金髪白人女のT嬢の目に映る 「セクシーな男」は日本人の私には 「日に焼けた田舎のおじさん」に見える。
ビジネススーツを着てシティで働くよりは、古びたセーターとウールのジャケット姿で羊を追ったり、牛の出産に立会いそうなほっぺたの色だ。

スイスの山並みを背景に立たせたら、 「アルプスの少女 ハイジ」と手に手を取って、頭のてっぺんから出る甲高い声で「ホールレイッヒー」と歌い始めるかもしれない。

どちらにしろ、彼は既婚者なのでT嬢はお誘いにのる気はないらしい。


P氏は40前。がっしりとして、背がすごく高く、 「濃い顔」をしているので、ちょっと 「ジョージ・クルーニ風」だ。
そうです。ジョージ・クルーニ。もう一度、言いましょうか? ジョージ・クルーニ。
「彼ってハンサムだと思わない?」とT嬢。
確かにルックスは悪くないと思う。ゆったりとした話し方も、知らない人にはおっとりと渋い雰囲気を与えるかもしれない。

しかし、彼の話はポイントにたどりつくのに延々と時間がかかり、イライラする。
「あー」とか「うー」と、もたついたり、話の途中でも、しばしば数秒間の沈黙がある。
新しい酸素を含んだ血が頭の中にゆっくりと流れ込んでくるのを待っているような悠長な話し方に、 「起きろー」と肩をつかんで揺さぶりたい衝動にかられる。

それで、つい、
「うどの大木」という言葉を思い出したり、
「大男、総身に知恵が回りかね」なんてフレーズが頭に浮かんだりする。

デートで割り勘、なんて場面を想定してみよう。お勘定が40ポンドなら問題ない。しかし、ふたりで35ポンドだと、彼に計算でき・・・(以下、省略)。


Q氏も30代の後半だ。バツイチの彼はT嬢への思いをはっきりと態度で示している。
パブで私が飲み物を頼んでも忘れてしまうが、T嬢のためなら、すぐにお替りを取りに行く。差別するなよー。
Q氏は彼女の席の横を通る度にうっとりとした視線を投げかけるそうだ。
彼からは何度もデートに誘われているらしいが、T嬢はうんと言わない。
なぜなら・・・、
T嬢は170センチで、いつも7センチくらいのヒールを履いている。つまり、180センチに近い身長だ。一方、Q氏はうーんと小柄。
ま、身長差はさておいても、彼の場合、

―――顔が 「ガマガエル」に似ている。

「彼に見つめられると全身に寒気が走るの」とT嬢。
「無理ないよ。あれだけ、ブxxxだと」と本当のことは言えないので、
「相性が悪いのかしらねえ・・・」と言葉をにごすことにしている。

最近、T嬢は社内恋愛をあきらめて、インターネットでの恋人さがしを始めた。


PS. 日本から友人が遊びに来るので、ブログを数週間お休みします。彼女はヨーロッパに来るのは初めて。一緒に遊びまくる予定です。

投稿者 lib : 10:08 PM | コメント (0)

November 07, 2007

オフィスラブ 独身編 その1

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オフィスラブはイギリスでも盛んなようである。

月曜日から金曜日まで、毎日、顔をつきあわせ、さらに、勤務時間外も一緒に過ごしたいというのは見上げた根性だ。飽きないのかね?

うちの会社でも社内恋愛は楽しいゴシップだ。
これらの情報交換は男の同僚や上司も出入りする給湯室ではなく、レディスを中心に行われる。情報もれを防ぐため、個室のドアを次々と蹴りあけ、人が潜んでいないことがまず確認される。

「営業部の彼と秘書課のあの子が 『C&B』で一緒に飲んでいた」とか。
ここで問題になるのが、 「どこで」飲んでいたか、だ。
私もボスや同僚、男友達と一緒に 「男と女のふたりきり」で飲むことはある。
が、それがシティのパブやワインバーなら、誰に見られても構わないような 「怪しくない仲」か、 「公認の正式なカップル」だと思われる。
シティから少し離れた場所だと、もしかすると 「人目を忍ぶ仲」かもしれない。

「あの二人じゃ、ミスマッチよね」
「もって3ヶ月かな?」
「いや、もっと短いかも・・・」
と、ダメになるまでの期間の予測も同時に行われる。

同僚のA君は30代の前半。涼やかな目元で顔立ちも整い、背も高いグッドルッキングな好青年だ。 「そろそろ結婚して、子供が欲しい」と周囲に洩らしており、妻となるべき女性を社内の同僚から物色しているようである。

B嬢とは数回のデートをした。彼のほうはもう少し深いおつきあいを、と考えたらしいが、20歳になったばかりのB嬢はその気がなかったとか。彼より、かなり年下だしね。
その後は二人の業務連絡に気まずい雰囲気が漂う。

C嬢とはオフィスパーティのあったワインバーの隅の暗がりで 「たいへん親密そうな雰囲気」にあったことが報告されている。が、翌日、すっかり酔いが醒めてしまうと、C嬢に対する気持ちに変化があったらしく、 「やる気まんまん」なC嬢からの再三のデートのお誘いをのらりくらりとかわした挙句、メールで 「現在は忙しいので、ちょっと・・・」と返事を送った。腹を立てたC嬢がわざわざ彼のデスクにやって来て、 
「面と向かってきちんと言えないなんて。あんたなんか、ゲスよ」という趣旨の発言があったらしい。当然ながら、二人の間の空気もとげとげしい。

彼は最近、D嬢を気に入っているようだが、彼女とデートをしたことがあるかどうかは不明。ただし、D嬢は言葉の端々や服装から 「相当な金持ちで、良家の令嬢」であることは明白で、庶民的なA君からのアプローチを 「家柄がつりあわないから」と断るのではないかとの観測が流れている。

E嬢はかわいくて愛想のいい、職場の花的存在だ。
A君は彼女のことも悪く思っていないようだが、彼女はF君と時々ランチをする仲らしい。みんなでパブに行ったとき、F君が彼女を店の外に連れ出して、しばらく二人きりの時間を過ごしたのを私は目撃している。

というわけで、A君の 「花嫁探し」の道は険しいようである。
なんだか 「職場の女、誰でも手当たり次第」のようにも見えるのだが、彼としては真摯な態度で相手を探しているんでしょうねえ。たぶん。

A君はハンサムだが、前頭部の頭髪の毛根が 「溌剌としていない」ことに気づく。
数年以内に 「額部分の面積の拡大」が予想されるため、老婆心ながら、婚約の早期実現を祈るものである。

私のセクションはボスを始めとして年齢層が高い。そのため、色恋沙汰は、
「娘が来年あたりに結婚するかもしれない」とか、 
「息子のガールフレンドは気立ての良い娘さんだ」などと、 「次世代ネタ」だ。

たまに、 「新しい受付嬢はかわいい」 「いや、経理の子の方が」などと意見の交換がされているが、純粋に 「観賞用」のようで、 「実践対象」ではないようだ。
本人たちの 「恋愛能力」はすっかり枯れ切っている空気が濃厚。
もっとも、「若い頃はずいぶん女を泣かせたもんだぜ」みたいな華やかな過去にも、まったく縁がなかったと思われるメンバーなので、何をいまさら、って気もするが。

「いやー、昨日、ワインバーでxx君と**さんがキスしているのを見ちゃったよ。あの二人がつきあっているなんて、知らなかった」
とボスが興奮して話しているのを聞いたことがある。
初めてラブシーンを見た中学生の少年のようで、少し情けなかった。

投稿者 lib : 09:52 PM | コメント (2)

October 31, 2007

ケンブリッジ大学 学生寮

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紅葉の美しいケンブリッジに行った。友人の息子のM君が大学生活を送っているのだ。

シティという 「ビジネスマンのおやじの巣窟」で働く私には、賢そうな若者が青春しているケンブリッジ訪問はいい気分転換になる。

いいねえ、若い人は生き生きとしていて・・・(私のコメントのほうが余程おやじ臭い)

どのレストランも大学生とその親、というグループで一杯。
「ホホホホ、宅の子はデキが良くて、ケンブリッジ大学に行っておりますの。その辺を歩いているアホガキとは違うざます」と日頃は自慢していても、ここでは石を投げればケンブリッジの学生に当たるという土地柄だ。(注:本当に石を投げてはいけません)

M君のカレッジは創立されてから30年足らず。ケンブリッジのカレッジはどこも数百年もの歴史があると思い込んでいたけど。大金持ちがポーンと10ミリオンポンド (現在ではたいした金額ではないけど)を寄付して、このカレッジが誕生。
建物の雰囲気が何かに似ていると思ったら、バービカンセンターだ。なんだか、人を迷子にさせよう、という悪意が感じられる迷路チックな構造だ。同じ建築家の設計ではないだろうな。

さて、M君の学生寮に案内された。ベッドとデスクが置かれたシングルルームで、クロゼットがあり、コンパクトなバスルームがついている。日本なら、1泊1万円 (税込み)の中級ビジネスホテル、みたいな雰囲気だ。寮費は月に300ポンドだって。

しかし・・・さすがは男の大学生の部屋。想像を絶する汚さだ。ちょうど彼の友人ふたりが来ていて、サンドイッチとベークドポテトを食べている最中だったが、よく、食べられるわ、こんなゴミ溜め・・・いや、混乱した部屋で。
足の踏み場もないとはこのことだ。ベッドの上になぜかフライパンがあり、中にはひからびたチーズと変色したケチャップ、煙草の吸殻が。服は床に散乱し、椅子には不気味なシミのついたバスタオルがかかっている。

「その辺に座ってください。遠慮なく」って・・・ごめん、遠慮してもいい?
友人は頭から湯気をたてて、部屋の汚さを罵った。

大学の学生寮を見るのはこれで3ヶ所だと思う。
MITこと、マサチューセッツ工科大学に知り合いが通っていて、中を見せてもらったことがある。ふたり部屋だったが、広々としてきれいなので驚いた。さすがは高い授業料で有名なアメリカの大学。こうやって、資本主義のイロハを学生に叩きこむのね。

一方、私の大学の女子寮はしょぼかった。夏期講習で泊まってぞっとした。
数名の寮母さんも住み込みで、まるっきり男っ気なしの 「女の園」。
同じ「女の園」でも、 「宝塚」と違って、スパンコールや羽飾り、金ラメや舞台メイクがないので華やかさには無縁。古い木造の建物と寮母さんの油っけのないパサついた感じがなんともマッチしていて、いかにもくすんだ場所だった。
「親元を離れた。これで門限もなし。監視もない。よっしゃー、遊ぶぞー」と意気盛んだった私が断固として寮に入ることを拒否したのは当然だ。

部屋の汚さを怒られるのにうんざりしたM君は話題を変える。
「グラマースクールで一緒だったD君ね。休学して療養中なんだよ」
すごい教育ママだったD君の母親を友人は覚えていた。当時、まだ11歳の息子の将来を細かく計画していて、GCSEではどの科目、Aレベルではどの科目を履修し、オックスブリッジ (オックスフォード大とケンブリッジ大のこと)に進学し、弁護士になった後、家業を継ぐ、と、のんびりした友人を圧倒する 「猛烈ママ」だったらしい。
残念ながら、D君はオックスブリッジに合格できず、別の大学に入った。その大学も一流校だったが、親はがっかり。そんな親に罪悪感を持ったのか、それとも親から離れてタガがはずれたのか、D君はドラッグに走って身体をこわし、強制入院。

げに、恐ろしや、親のプレッシャー。

「ふーん、D君、大変そうだね」と友人は言ったものの、また部屋を整頓しろとガミガミ文句を言い出した。
「大学生が部屋の片付けなんか考えないよ。頭の中にはパーティとか、パブとか、ガールフレンドしかないって。それに、あまり叱りつけるとD君みたいになっちゃうよ」とからかった。
「うちの息子に限っては、そんなことはない」と言い切る友人。
なんで、と聞くと、
「ドラッグは金がかかる。ドラッグ漬になるには、さらに金がかかる。金持ちのD君の家と違い、サラリーマンのうちの家庭では、ギリギリの生活費しか息子に仕送りしていないから」とのことであった。

貧乏な学生生活のため、麻薬ジャンキーにならなくてすむM君。親の愛をとくと感じて欲しい。

投稿者 lib : 08:03 PM | コメント (0)

October 24, 2007

白トリュフ

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白トリュフというものを生まれて初めて食べた。

「普通のトリュフ」なら、何度か食べたことはある。
「こちらがトリュフでございます」と、うやうやしくサーブされた皿の上には、顕微鏡がないと見えないくらいの大きさのトリュフがのっている。

「味わう」なんてものではなくて、 「歯の間に、はさまって」おしまいだ。
(ん? あの貴重なトリュフは一体どこに行っちゃったんでしょう? 口の中のどこかにあるはずなんだけど・・・)と行方不明になってしまう。

今回の食事会の主催者はA嬢である。
わざわざイタリアのアルバという所へ白トリュフを買出しに行き、それをリージェントストリートの裏にある某日本食レストランで調理してもらい、みんなで食べよう、という企画だ。
「食べたい。ぜったい食べてみたい。食べさせてー」と食い意地の張った私は、即、参加を希望。

友人と出かけた。レストランの地下は貸切で、日本人を中心として30人(?)ばかりが集まっている。(がっちり、食べさせてもらいます)と熱気にあふれている。

「これが、トリュフと白トリュフ」とA嬢がみんなに見せて回る。
トリュフは黒くて、ライチーを思わせるボコボコした表面でゴルフボールくらいの大きさだ。白トリュフはピンポン玉くらい、やや灰色がかった紙粘土をこねたような感じ。
強烈な香りがする。その大きさの物ひとつの現地価格が60ポンド(ユーロ?)だとか。

「豚を使って捜すんだよね?」と聞いたら、白トリュフは土の中のかなり深いところにあり、訓練された犬が掘り当てたらしい。

そういえば、子供の頃、何度か松茸狩りに行ったのを思い出す。
祖父母の土地に 「マツタケ山」つまり、赤松の林がある山があり、 「晩御飯のおかず」を採りに行った。親戚のおじさんや従兄弟が次々と見つけるのに、私は一本も探せない。見かねたおじさんから、
「はい、右に1歩、前に3歩、進んでごらん。手を前に伸ばして、そこでしゃがむ」
といった指示があり、やっと手にする事ができたのだった。

――私はキノコ採集能力に関しては 「豚」以下で 「犬」以下です。

このディナー。スターターは卵とサラダ(温泉卵だってさ)。 その皿の中へスタッフが白トリュフをスライスしてくれた。待望の白トリュフ、1.5センチ四方の薄いスライスが2枚きた。

さて、そのお味は? 

・・・味はない。香りはすばらしいが、何の味もない。歯ざわりは生のマッシュルームという感じ。

「香りが重要なのだから、いけない非合法の粉薬みたいに、片方の鼻の穴を押さえて、深く息を吸ってみたらどうだろう?」 「食べずに鼻の下にセロテープで貼り付けておくのは?」と意見を出したが、無視された。(当たり前)

メインコースはリゾットとビーフのフィレステーキ。デザートはアイスクリームとポテトのパンケーキ。それぞれにトリュフのスライスが添えられている。
メインコースからレッドワインにして、珍味を堪能。
トリュフ代と食事、ワインでひとり50ポンドくらいを払った。

A嬢にお礼を言って店を出たのが11時前。
「おいしかったけど、量が少なかった」
「ちょっと、お腹すいてる」
「日本なら、ラーメン屋にくりだすところだね」
と酔っ払ったサラリーマンのおやじのような私たち3人の会話。

「あ、あんなところにインドネシアン・レストランが!」

ごめんなさい、A嬢。告白します。
私たちはここで、 「ナシ・ゴーレン」と 「ガドガドサラダ」と 「ラクサ」を食べてしまいました。
「最高級の白トリュフディナーの後でガドガドサラダを食べただとー! あなたたちに白トリュフを食べる資格はない!」とA嬢に怒られるかな? 心配なんですけど。

どうか、粗野な私たちを許して・・・。また、呼んでね。

投稿者 lib : 07:53 PM | コメント (0)

October 18, 2007

ナンパの女王 その2

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ナンパには「甲種」と「乙種」があるのではないか。

「甲種」というのは、美人で清楚な女性が、若くハンサムで性格もよく、お金持ちの男性に一目惚れされる。いわゆる 「見初められる」というやつだ。これは意地悪な親戚筋の横ヤリがなければ、「玉の輿婚」へと進むことになる。
これは「大吉」のナンパだ。

一方、「乙種」は素性のわからないボケ野郎に道端ですれ違いざま声をかけられるもの。運悪くそこに通りかかったために、「浮遊霊」に肩に乗られちゃったような「縁起の悪い」ナンパである。なぜか、私はこれによくひっかかる。

現在までのところ、一番、最低だったのはたぶん、これ。
「あ、君。これ、あげるよ」
と道端で差し出されたのは、何とパック入りの「ゴム製品」だ。
「あ、どうも・・・」と納得いかないままにも冷静に受け取って、その場を去った。
もしかすると、そのにいちゃんは
「キャー、いやーん」と騒ぎながら、走り去る女が見たかったのかもしれない。
新装開店の美容院の宣伝ティッシュペーパーでも受け取るような淡々とした態度の私には不満だったかも。

ま、「ナンパ男」というよりは「変態男」のカテゴリーだな。

「君の足首に魅せられた。どうです、お茶でも」と話しかけてきたおじさんがいた。
足首・・・。足首ねえ。
高級そうなビジネススーツを着たおやじである。ちゃんとした企業でそれなりの役職にも就いていそうな風貌だ。妻子がいて、息子は受験生、みたいな年代だ。

それでいて、「足首フェチ」なのか? しかも、それをうれしそうに堂々と・・・。

「いい足首してるねえ」
「あら、自慢の足首なのよ。うれしいわ。お茶でも飲みましょ」
なんて、展開になる可能性は100億分の1、くらいに思えるが。

ロンドンの道端でのナンパは私的統計で中近東男がダントツに多い。
「いま、何時ですか?」「バス乗り場はどこでしょう?」と話しかけて足を止めさせ、そのまま「お茶でも」と誘うものだ。

先日は少し手の込んだナンパ野郎に出会った。

「あ、君。xxで働いていなかった?」 (xxは会社名ではなくて、業界名)
「ええ、以前、**で働いていたけど・・・」 (**は会社名を入れてしまった。ボケた私)
「僕も**で働いていたんだよ。いやー、懐かしいな。どうだい、その辺でお茶でも」
「ええっと・・・。あなたはどこのセクションで働いていたの?」
「ああ・・・、あちこちね。いろいろ・・・」

ここで、やっと私の頭の中のブザーが鳴った。社内の「あちこち」で働く奴がどこにいる? IT部門なら、 「あちこち」のコンピューターを修理したり、アップデートしたりするかもしれないが、それなら、ITチームと答えるはずだ。

考えてみれば、シティで働くスーツを着た日本人なら業界は限られる。
象の飼育係とか、常磐津の師匠、かまぼこ製造業、なんてのはいないはずで、金融関連の2、3の業種に必ず当てはまるはずだ。
xxと言ったのは、確率が一番高いからだろう。

「ねえ、携帯の番号か、メールアドレスを教えてよ」
さすがに 「携帯もコンピューターも持ってない」とは言えないよな、いまどき。
「家にはガスも電気も来ていません。水は井戸から」みたいに聞こえるし。

――日本だったら、こんなときには「リカちゃん電話」の番号を渡すことになっていた。ナンパ男が貰った電話番号にかけると「わたし、リカちゃん」と小学校5年生の少女が電話に出るという仕掛けだ。おまけに彼女には「ワタル君」というボーイフレンドがすでに存在する。

赤の他人に対しても「八方美人」でいたい私は「いやです」と言うのが嫌いだ。で、
「ちょうど、番号を変えたばかりで覚えてないの。あなたの番号をちょうだい。こちらからかけるから」と言うことが多い。

みんな、どうやって断ってます? しかし、「乙種」につけこまれる私に問題があるな。不徳のいたすところである。

投稿者 lib : 03:26 PM | コメント (0)

October 11, 2007

クリカラモンモン -刺青観察記

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秋になり、道行く人も長袖姿が増えてきた。やれやれ、おかげで見苦しいものをいろいろ見なくてもすむ。

私は刺青が苦手。

古風な日本人としては、刺青には何となく、 「あの系列の人たち」のイメージがつきまとう。

(痛くないのか、不衛生な針から 「肝炎」に伝染することはないのか)と、他人事ながら心配。街中にある 「タトゥーショップ」もオドロオドロしい感じがする。
ヘルズエンジェルズみたいな男が 「昔の男の名前」を右腕に彫っている 「情婦」の左腕に、新しく「自分の名前」を彫らせる、みたいな場末感が満載だ。

若い女の子がときどき 「ワンポイント刺青」をしているのを見かける。肩甲骨のあたりとか、ジーンズとシャツの隙間になるお尻の上、足首とかに3センチ四方くらいの花とかキャラが彫られている。軽いファッション感覚なんだろうね。

電車に乗っているとき、隣に座っているイギリス人の女の丸々とした二の腕に刺青があるのが気になった。何となく、馴染みのあるキャラクターだが、判別できない。
筋金入りの労働者階級の強面のおねえさんという雰囲気で、この手の人を見つめるのは、その筋の人にガンをつけるのと一緒。ジロジロ見るのはご法度だ。

しかし、気になる。

「なーに、見てんだよ。あんた」などと言われないように、そーっと横目でしばらく眺めた結果、刺青はミッキーマウスと飛行機だった。
と、いうか、変形した 「元 ミッキーマウス」と 「元 飛行機」だ。

ティーンエイジャーの頃、粋がって、刺青を入れたのはいいが、当時はサイズ10のほっそりした少女だったのでは? 現在はサイズ24という、どすこい体型。
腕の膨張と共に横にびよーんと引っぱられ、図柄が平べったくなっているので、パッと見た目には何なのかわからなかったのだ。刺青するなら、体重のキープに気をつけたい。

―――彫るなら、太るな。太るなら、彫るな。

と思った。怖そうなおねえさんなので、もちろん口には出さなかったが。

友人が会社の研修で二泊三日でスペインに出かけたという。(いい会社だな)
研修が午後に終わると自由時間となり、ホテルのプールで泳ぐという毎日だったとか。
が、上司のひとりはプールサイドで浮かない顔をしたまま、見ているだけ。すごい暑さなのに長袖のシャツを着たままだ。
「泳げばいいのに」と言うと、
「いや、実は・・・」とシャツをこっそりとめくってみせる。

と、あーら、びっくり。広範囲にびっしりと刺青。 「ワンポイント・ファッション刺青」ではなくて、本格的な刺青だ。日頃のビジネススーツの下にはこんなものが・・・。

「どうしよう・・・。泳ぎたいんだけど、みんな、気にするかな?」
彼はその部門ではヨーロッパ全体の統括者で、お偉いさんだ。
「・・・やめといたほうが、いいんじゃない」と友人はアドバイスしたという。
「そうだよな・・・」と悲しそうにあきらめたらしい。

やっぱり、エリートビジネスマンとしてはまずいよな、全身の倶利伽羅紋紋。

一度、同僚のひとりと一緒に日本へ出張をした。彼は海軍の出身者によくいるように、刺青を入れている。本人は自慢らしく、よく会社で袖をめくって見せていた。
他の同僚の反応は 「刺青なんか見せびらかして、子供っぽい」と冷ややかだったが。
日本に行くことが決まったとき、
「日本では刺青を嫌う人もいるので、いつも長袖を着て、クライアントの目に触れさせないように」と厳重注意をしておいた。
が、あるミーティングで彼が書類を取ろうと手を伸ばしたときに、袖口から刺青がチラリ。私は思わず身体を投げ出して、彼の腕に覆いかぶさり、クライアントに気づかれないようにしたのだった。冷や汗が流れたわい。

彼は何年も前に辞めていったのだが、現在は漁師をしているらしい。(実話)
海の男なら、刺青もいいかもね。

投稿者 lib : 01:38 AM | コメント (2)

October 04, 2007

ナンパの女王 その1

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私は 「ナンパの女王」である。
と、いっても、知らない男にやたらと声をかけるとか、もてて、もてて、ナンパをされまくっているという意味ではない。

「変な奴」にナンパをされる、また、 「変なナンパ」をされることが多い。
「変なナンパ専門、の女王」略して、 「ヘナンパ女王」といえる。 「カメハメハ大王」みたいだが。

何の因果で出会い頭に 「結婚していますか?」と色々な国籍の男から聞かれるのか?

その1 日本人編
中学生のとき、クラスメートに誘われて教会に行ってみた。好奇心旺盛なお年頃だ。
牧師さんだか、神父さんの説教を聞き、賛美歌を歌ったり、お祈り (のまね)をした。
その後、グループに分かれた 「日曜学校」では聖書研究とキリスト教の勉強会。
大学生が数人と私たち中学生が同数くらいで始まった。

と、初対面の大学生のお兄さんのひとりが私に向かって、突然、
「ねえ、君。もう結婚してるの?」と聞く。
「え? いいえ」と私。
――― 源氏物語ではあるまいし、現代の日本では13歳で結婚することは法律に触れます。
「あ、そう。じゃ、大学生なんだね」とひとりで納得。
あまりに唐突な言動に私も友人たちも 「まだ中学生です」と言えなかった。

後日、その大学生が私に会いたがっていると聞いたが、非常識なロリコン男はパスさせてもらう。キリスト教徒に対して、大きな疑問を持たせた出来事だった。

その2 中近東系
半年ばかり、ロンドンの東の郊外に住んでいたことがある。あのあたりは中近東系の住人が多く、独特のナンパスタイルがあるようだ。
中近東出身の男は押しが強いというか、しつこい気がする。しかも、以前に日本のドラマが放映されていたらしく、日本人の女に対する憧れが強いと聞いた。
そのせいか、バスの中や道端でも何度もむちゃくちゃなナンパをされた。

「一緒に食事でもしない? 君の好きなものを何でもおごってあげるよ。次の停留所で降りて、マクドナルドに行かないか?」と誘われたこともある。 
―――なぜ、マクドナルド? ゴードン・ラムジーの店なら成功率も高いと思うが。

ある中近東男からは、バスの隣席に座った途端に手を握られ、
「君は結婚してるの?」と聞かれた。
「はい、はい、結婚してます。さんざん、結婚してますよ。何せ、やまほど結婚しているんですからね」(あー、うるさい。あっちに行け)と答えておく。 
「そう・・・。でも、君は幸福な結婚をしているの?」
(余計なお世話じゃー)と、思わず胸ぐらをつかみそうになった。

「警告! 中近東男は近づかないで下さい。つまらないナンパに腹をたてて、相手を噛むことがあります」と書いたTシャツを着ようかと本気で考えたほどだ。

どうも中近東男のナンパスタイルは好かんわい。アラブの金持ちに求婚された日本人の知り合いがいるが彼女も断ったという。やはり、マクドナルドに誘われたのか?

さて、非常識な日本人、強引な中近東男と続いた後は

その3 イギリス人
パリからロンドンに向かう飛行機の中。隣の席は赤毛のイギリス男。
第一声は 「イギリスに住んでるの?」だったが、数秒後の次の質問は、
「君、結婚してるの?」だった。・・・またですか。それともパスポートコントロール?

この赤毛の男は20代の前半のようだった。
年上の、しかも既婚の女が好きで 「僕のミセス・ロビンソン」を捜しているのかも。
携帯の番号を聞かれた。 「あんたみたいなガキに」と拒否するのも非社交的なので、 
「うっかりして、ほんの少し間違えちゃった」番号を渡しておいた。

しかし、こいつらはいったい何を考えているのだろう。
まず、あたりさわりのない世間話から始まって、それとなく、ボーイフレンドの有無を聞きだし、自分に好意を持っているかどうかをさりげなくさぐる、というのが通常のコースではないだろうか? これでは、まるで消費者アンケートだ。 
「まず最初に、既婚、未婚の欄に丸をつけてください」 みたいな。

まだまだ、修行が足らんわ。顔を洗って出直すように。

投稿者 lib : 10:19 AM | コメント (2)

September 26, 2007

ブログ100回記念

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私のブログもついに100回を迎えました!
これを記念して、在英の方には日本への里帰り便の航空券、また日本にお住まいの方にはロンドンへの往復航空券を 「応募者全員」にお送りします。
私からのささやかなプレゼントです。

ご希望の方は住所、氏名、電話番号を明記の上、お一人あたり、日本円なら120万円、ポンドなら5000ポンドを添えてお申し込みください。経由便エコノミークラスの航空券をもれなく差し上げます、って、詐欺だな、これじゃ。

――― 仕切りなおして、もう一度

国際電話の恐怖

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うちのクライアントは英語に不自由しない人が多い。
ロンドンやニューヨークの元駐在員だったとか、日本語のほうが苦手という帰国子女とか、留学経験があり、ずっと外資系企業で働いているとかだ。文書も95%が英語。

しかし、ごくまれに、英語はダメという人もいる。
先日、私の直通番号にかかってきた電話に同僚が出て 「英語」で答えたら、相手が息を呑むのがわかったらしい。向こうが私の名前を言ったので、同僚は 「英語」で、
「今、席を立っているので、後ほど、こちらからかけさせます」と言ったが、

―――全然、通じない。

「デスクにいません」 「トイレに行っています」 「ここに見当たりません」 「働きもせず、一体、どこにいるんでしょうね」とありとあらゆる言い回しをしてみたが、

―――やはり、通じない。

相手がパニック状態なので、電話を切ることもできず、同僚も汗をかきながら、必死で説明している内にやっと私が帰ってきたのだ。
「あー、助かった」と泣き声のクライアント。
(同僚は 「もしもし」 と 「お元気ですか?」しか言えない無教養な男だ)

以前、日本から電話が入った。この人もあまり英語に自信がなかったらしい。
(ロンドンに電話しろ、って、どうしよう)と悩んだ挙句、話すべきことを全部、紙に書いて準備しておいたようだ。
「こちらはxx会社の東京本社です。そちらに出張中の当社の者が伺っていますでしょうか? 電話をつないでいただきたいのですが。もし、そこにいない場合は部長まで折り返し電話をするようにお伝えください」といった内容だったと思う。
英語だったが日本からの電話だとわかったので、私は日本語に切り替えて、 「もしもし」と話しかけた。が、彼女はそのまま一心不乱に英語の原稿を読み続ける。
「もしもし、もーしもし、もーしもしー!」と叫ぶ私。
と、最後まで読み終えたのか、ふっと小さなため息が聞こえた。で、もう一度、
「・・・もしもし?」と話しかけると、
「ああー、日本人だったんですかー?」とびっくりされた。

―――すみませんね、日本人で。せっかく原稿を書いて用意したのがすっかり無駄になりましたね。

彼女も部長かなんかに、
「鈴木さん。ロンドンに出張中の吉田君に電話をしてみてよ」とか言われ、
「えー、部長、私は英語なんか話せませんよ」
「なーに、言ってるの。毎週、英語のレッスンに行ってるじゃない。じゃ、よろしく」と無理やり頼まれたのだろう。かわいそうに。

―――緊張が伝わってきて、私もドキドキしましたが。

たまにフランスに電話をかけろと頼まれると基本的には断ることにしている。
だって、フランス人の英語なんて電話で聞き取れないもん。それに、フランス人のオペレーターも英語だとわかるとオタオタしてしどろもどろになるから始末が悪い。
「なんで、アシスタントがいるのに、僕がかけるんだ」とぶつぶつ言いながら、ボスが直接電話する。
「まー、フランス語おじょうず、おじょうず」と誉めてあげることにしている。
(ボスはフランス語が話せる。上手かどうかはフランス語の知識がないので判断不能)

これは友人の話だが、電話でスペルの確認をするときに、
「ニューヨークのN、スペインのS、メキシコのM」と言っていたら、相手が 「ちょっと待ってくださいね」とやたらと時間がかかる。で、不思議に思っていたら、N,S,M と書かずに、 「ニューヨークのエヌ、スペインのエス・・・」と聞くままに全部を書きとっていたらしい。

みんな国際電話では苦労をしている。料金は安くなったけどね。

投稿者 lib : 10:13 PM | コメント (0)

September 19, 2007

結婚生活の不満 金持ち妻編

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某金融機関のパーティで恐ろしい話を聞いた。友人が勤めている米系の会社だ。

「ほら、あそこ」と友人が指さすのを見ると、イギリス人女性が談笑している。
「ふたりとも夫はマネーマーケットでバリバリのやり手。特にミセスBのダンナ、去年は20ミリオンポンドのボーナスだったらしいよ」と友人。

20ミリオンポンドって、1ポンドを240円として、よ、よんじゅう、48億円かい?

ということは、あそこにいらっしゃるのは (急に敬語になる私)48億円をお稼ぎになる人の奥方様なのか。天文学的な額の金を稼ぐ人たちがいることは私も知っている。
が、そんな人 (の妻)を目の前で見るのは初めてだ。

と、じろじろ見ていると向こうがこちらの視線に気がつき、友人に向かって手招きをする。いや、別にガンをつけてたわけではなくて、たんにびっくりしていただけですけどね。貧乏人なのでお金持ちが珍しかっただけなんですよ (と、卑屈になる)。

簡単に紹介してもらう。ふたりともディレクター、といっても、中間管理職というあたりか。課長さんとか副部長さんといった役付きと見た。感じのいい人たちで社交的だ。
さて、48億円の妻というのはどんな服をお召しになっているのか?
目利きの友人なら、 「スーツはアルマーニ、バッグはプラダの新作、ただし、フェラガモの靴は去年のスタイルね」と一瞬で値踏み。ファッション雑誌のエディターか、質屋のおやじか、という能力を示す。が、うすらぼんやりした私には、スーツは高級そう、バッグの色は黒、靴は皮製である、ことしかわからない。

今思うと何がきっかけだったのかわからないが、ミセスAが急に、
「夫はまだ子供が欲しくないっていうのよ。間に合わなくなるわ」と言い出した。
女性としての体内時計がカチカチと鳴り、妊娠の可能性の残り時間を告げているのだ。
イギリス人の同僚たちもよく話している。まず 「相手を見つける」というミッションがあり、次に 「結婚を申し込ませる」という策略があり、 「なんとか40歳までに妊娠にこぎつける」というゴールがある。
そのために、日々、涙ぐましい努力を・・・しているようには見えないが。
(同僚の皆さんへ、努力が足りません。もっとがんばりましょう)
ミセスAのダンナは40歳近くで、高給を手にしているのに、 「まだ」子供が欲しくないというのは、モラトリアムな男なのか?

話がまずい方向に進んでいると思ったら、友人が 「あ、ちょっと知り合いが・・・。すぐに戻るね」と逃げた。
私ひとりを置いて逃げるなー。行くなら私も連れていけー。

と、ミセスBが身を乗り出し、実は・・・と話し始める。
「夫ったら、忙しくて、忙しくて。帰りは毎日11時」
「ん、まー、何てことでしょ」とミセスA。
(5時に終わるような仕事で48億円も稼げるほうがおかしい)と思う私。

48億円稼いでくれるなら、私なんぞは夫の顔を3年や4年見なくったって、気にならないと思う。いや、前言撤回、10年くらいでもOK、・・・と本人には言えないので、顔では同情してみせる。

「土曜日は昼過ぎまで寝てるの」
「ひどいわね」
(疲れているんだから、寝かせてやれよ。いいじゃないの、48億円も稼いでるんだから)と私は思う。

「日曜日は翌週の仕事の準備とかで忙しくて、家事も手伝ってくれないの」
「信じられないわね」
(48億円も稼いでいるのに、家事までやらせる気なのか?)と考える。

その後、ますますアルコールが入ったふたりは18歳未満お断りの内容にまで進み、さすがの私ですら、いたたまれない思いにさせられた。

露骨過ぎるぞー、イギリス女。

私を見捨てていった友人が向こうのほうから手招きをしたので、やっとその場を離れたが、このふたりはそのまま延々と結婚生活の不満を話し続けていたようだ。

よく考えると、毎日帰りは11時、土曜日は朝寝ぼう、日曜日は接待ゴルフとかって、典型的日本のサラリーマンのお父さんの生活ではないか。
―――― 言うまでもありませんが、お父さんたちのボーナスは48億円もありません。

結論、48億円も稼がないのに、いつも忙しくて家族サービスをしない夫に文句を言わない日本の妻は偉大だ、ということである。日本のお父さんは妻を大切にしましょう。

投稿者 lib : 08:55 PM | コメント (5)

September 12, 2007

日本で英語教師

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ミセス Wは私の英語の先生だった。
50代後半のイギリス人で「外国人に英語を教える」のが専門、日本人の友人と一緒に文法や作文の家庭教師をしてもらっていたのだ。

何年も英語圏に住んでいれば、とりあえず生活には困らない程度の英語はあやつれるようになる。
主婦なら主婦英語、「買い物」とか、子供の学校の先生との 「教育」に関する会話、近所の奥さんと 「ゴシップに興じる」ときに有効なボキャブラリーが増えるはずだ。
働いていれば、「うちの会社は業界でもたいへんに良い評判をいただいています」みたいな 「つくり話」、あるいは同業者をこきおろす 「中傷」などを中心とした英語力が伸びる。
友人は 「商談で取引先をめちゃくちゃに叩きのめして、有利な立場にたつ」英語がとっても得意である。・・・ま、英語というよりは性格なのかもしれないが。

このミセス Wから数年ぶりに電話が入った。
お嬢さん (オックスフォード大学卒業)が日本に行き、1年間英語の先生をすることになったという。それで、簡単な日本語のフレーズや生活習慣や文化について教えて欲しいとのこと。

というわけで、ミセス Wは一人娘のEちゃんを連れてやってきた。

話には聞いていたが背がすごく高い。183cmって、イギリス人の男でも長身といえる。日本の家のあちこちの鴨居に頭をゴンゴンぶつける姿が目に浮かぶようだ。
しばらく前にイギリス人の英語教師の女性が、プライベートレッスンという言葉につられて男の家に行き、殺された事件があり、犯人の男はまだ逃走中なのを思い出す。
「気をつけてね」と言っておいたが、いくらかわいい顔をしていても183cmの彼女をターゲットにする日本人の男はいないかもしれない・・・。口には出さなかったが。

「私はアイゴの先生です」とEちゃん。
アイゴ? 動物愛護?
「あ、それはね、 『エイゴ』 英語の先生」
Eちゃんはペンを取り出し、持参した 「日本語の基礎」の例文にさらさらと書き込む。アルファベットで書いてはあるが、日本語のローマ字表記では実際の発音がわからないらしい。
「イギリス人って日本語でどう言うの?」
日本語流にイギリスじん、と発音してみせると、 「リ」の部分をDiと書いていた。

そうか、そうきたか。日本人は R や V が苦手なように、英語圏の人に 「らりるれろ」を発音させると何かおかしい。 (試してみて。おもしろいから)
この 「ら行」って、 L と R と D が混ざったような音なんだよね。 

さーて、生活習慣と文化の紹介だ。私はこれが大好き。
ずいぶんと楽しい思いをさせてもらっている。外国暮らしの楽しみのひとつといってもいいくらいだ。

日本について誤情報を持っている人は多い。どうせなら、と、さらなるガセネタを提供。
アメリカのすごーい田舎の人 (まず、日本に行く機会はないはず)に
「CDプレーヤーになってから、誰もウォークマンを聞かない。で、駅前では消費者金融が宣伝のティッシュと一緒にウォークマンを配っているが、みんなティッシュだけもらって、ウォークマンはゴミ箱に捨てている」とかね。
すんなり信じたのでウケたが、消費者金融の説明に苦労したのを覚えている。

ああ、ホラ話とガセネタをつかませる絶好の機会。口がウズウズするー。

「麻薬の所持が見つかると死刑になります。でも、銃殺されるときに目隠しするかどうかは本人が選べますよ」みたいなのが言いたい。すごく言いたい。
が、相手は 「恩師の令嬢」だ。そうもいくまい。

「何か質問は?」とウズウズする心を抑えて聞いてみる。
いろいろな質問を用意してきていたが、
「神道の神社と仏教の寺院の相違点を400字以内で簡潔に述べよ。制限時間は2分」みたいなことをいくつか聞かれた。うーむ、オックスフォード卒なのを忘れていたな。

「これだけはやっちゃダメっていうものは?」と聞かれて、
「人の家に土足で上がらないこと。それくらいかな」と言っておいた。
「なにかまずいことをしても、 『ごめーん、私は外国人だから、知らなかったー』と言っておけば、まず許してもらえるよ」とアドバイスした。

これは私がいつもイギリスで使う言い訳である。 (相手の口封じに、たいへん、よく効く)

投稿者 lib : 10:35 PM | コメント (0)

September 05, 2007

警察ざた (その2)

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ボスと話していると経理のAが私たちの様子をうかがっている。ふたりが、

1. 談笑している (半分は下ネタ)
2. 仕事の話をしている (半分は悪だくみ)
3. 議論している (半分は罵りあい)

の内の何をしているかが知りたかったようだ。3の場合、同僚は誰も近づかない。別にケンカしているのではないのだが、ボスも私も声が大きく、ボキャブラリーに放送禁止用語がひんぱんに登場するのでびびるらしい。遠慮しなくてもいいのにー。

私たちはそのとき、珍しく普通に仕事の話をしていたので、彼は話を切り出した。
「えーと、実はね、このクライアントのことを聞きたいんだ」
差し出されたのは 鈴木花子 (仮名)宛のうちの会社の小切手。額面は小さい。

うちはメイルオーダーサービスみたいに不特定多数を相手にしているのではないから、クライアントの数なんかしれている。取引先は名の知れた会社か、個人客ならほぼ全員の顔を知っていて、ロンドンか東京で食事くらいはしたことがある仲だ。

「知らなーい」と私。
「聞いたことがないな」とボス。
でも、この署名はボスのだ。
「小切手にサインしてるじゃない。忘れたの?」
「覚えがないね。知らないよ、こんな人」
このチャンスにボスの老人ボケを笑ってやろうと思ったら、Aが、
「やっぱりね」と言う。

メインバンクの担当者がうちの会社から振り出された (はずの)この小切手を見て、何かひっかかるものを感じて、確認の電話をしてきたらしい。
このクライアントが口座を持つ日本の銀行の支店もわかっている。
「ちょっと、この銀行に電話してみてくれない?」とA

イギリスから電話をしていることを告げ、簡単に状況を説明して、担当者 (何の担当の人と話せばいいのか、私にもわからなかったが)に代わってもらうように頼んだ。

しばらく待たされてから、若い男の人が出た。で、開口一番、
「当支店では責任が持てません。弁償はできませんからね」と言う。
先制攻撃というのがあるが、 「先制防御」である。
弁償してもらわなくても、うちの会社は 「被害」に遭っていない。詐欺に巻き込まれそうになったが、こちらの銀行の機転で逃れている。電話をしたのは情報をシェアしておこうと思っただけだ。
「いや、そういうことではなくて、この口座の人はトラブルがありそうなのをお知らせしておこうと・・・」
「とにかく、当支店には関係ありません。関係ありません。関係ありません」
「まだ、送金していないんです。別に・・・」
「警察に連絡してくださいよ、警察に。当支店のせいではありません」

だから、おたくを責めてないじゃないのー! 私の話を聞いてー!

何を言っても聞く耳を持たず、 「こちらに責任はありません」の一点張りなので、私もあきらめ、
「わかりました。警察に届けておきます」と電話を切った。

なりふり構わず自分の銀行を守ろうという態度はあっぱれだが、私の話をちゃんと聞いていれば、別に 「守る必要もない」ことに気づいただろうが・・・。

当然、うちの会社は警察に連絡した。このあたりの警察って シティポリスなんだって。ちょっとカッコいいと思った。ま、シティにある警察がシティポリスなのは当たり前なんですけどね。新宿なら新宿警察、八つ墓村なら八つ墓村警察だろうし。

後日、Aから聞いたところによると、小切手が入っている (とあたりをつけた)郵便物を盗み、署名を偽造して振りこませる詐欺だったらしい。額面が大きいと会社も気をつけるので、少額にしてあるという。

これに気づいたうちの会社のメインバンクの担当者もりっぱ。それから、身体をはって責任を否定した日本側の銀行員もりっぱだった・・・と言っておこう。

まだ、犯人は捕まっていない。たぶん、捕まらないだろう。少額だったし、警察も本腰を入れて捜査するとは思えない。

しかし、 鈴木花子 (仮名)って何者なんだろう? ちょっと気になる私だ。

投稿者 lib : 10:55 PM | コメント (2)

August 30, 2007

LIB サマー・エキシビション

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「イギリスの夏の文化行事」のひとつ、ロイヤル・アカデミー・オブ・アートでのサマー・エキシビション。去年は行かなかったので、今年は押さえておこうと出かけた。押さえておこうといっても、ただ、鑑賞するだけだけど。

ロイヤル・アカデミーの中庭には金属でできた巨大な怪獣の像、しかも、おもちゃみたいなやつ、がデーンと立っている。こんこんと水なんかも湧いちゃって、なかなか楽しい。こんな非日常を経験させてくれるので美術展は好きだ。

チケットは7ポンド。売り場に並んでいると、イギリス系白人中年婦人がにこやかにアプローチしてきた。
(来た、来た、来た!)と思っていると、やっぱり、
「ねえ、あなた、会員になりませんこと? 年会費さえ払えば何度も美術展に来るのに、とってもお得ですのよ」の口上である。
ナショナルトラストのマナーハウスや庭園で、必ず声をかけてくるのが、これ。

この人たち、 「世界で一番、お品のいいセールスレディ」ではないだろうか?

「年にほんの数10ポンドで、文化遺産の保護者、文化施設のパトロンになれますのよ。会員はあたくしのように上品な有閑マダムが中心ですわ。いかが?」
(後半は私だけに聞こえる声なき声だ)

粗野な外国人の私はいつも、 
「ちょっと考えさせてくださいね」と断るのだが、
「帰りにでもよろしいのよ。今日のチケットから有効になりますしね」
と、これまた、あっさり離れていく。
思わず後姿に、
「奥様、ごきげんよろしゅう」という声をかけたくなるくらいだ。

やれやれ、最初の難関は突破したわい。

さーて、会場だ。
どう移動すれば効率よく、かつ、展示物を見逃さずにすむのか、といつも頭を悩ませる。
博物館や美術館は 「順路」というものをあまり重要視していないらしいな。
大きな部屋の横に小部屋がある。まず、大きな部屋の中を見て、それから小部屋に行き、そこを見てから大部屋に戻り、そのまま素通りして次の大部屋に行くのか。
それとも、まず小部屋を制覇してから、大部屋をゆっくり見て、それから次の大部屋に行くのか?
部屋が混んでいたりして、後にしようと思って進んでいき、そのまま、その部屋のことを忘れて会場を出てしまい、後悔したり・・・。

みなさん、どうしてます?
(それとも、こんなことで悩んでいるのは私だけかい?)

チケットと共に渡された文庫本大のカタログには作品の番号、作者名と値段が書いてある。ちょっと気に入った作品があると、つい、プライスチェックしたくなるのは人情というものだろう。
(ふーん、小さいのにけっこう高いな)とか (これだけ大きな絵なら、このくらいの値段はするだろうな)とか、考える。
金じゃないのだから、大きさで価格が決まるわけではないのだが。

壁面にぎっしりと小さ目の絵が並んでいて、異常に混雑している部屋がある。どうやら、「買えそうな価格の絵」がたくさんあるらしい。
「美術愛好家」なのか、 「投機熱に浮かされた人たち」なのか?

私が気に入ったのは2メートル x 5メートルくらいの大きな絵だ。
2万ポンドという値がついている。絵画として高いのか安いのか見当もつかないが、
(3年くらい所有していると、アーティストがブレークして、10倍も価値が上がったりして・・・)という想像をしてみる。20万ポンドか、・・・いいねえ。

が、値段もともかく、この大きさの絵を家の中に運び込めるか? 置くだけの空間が家にあるのか? という問題がある。もちろん、答えは 「否」だ。
と、金持ち風のカップル (まだ若い)が来て、 「これ、いいね」みたいなことを言っている。かるーく、クレジットカードでも取り出しそうな雰囲気だ。
(私が先に目をつけたのよー)とは思ったものの、貧乏人の私はすごすごと引き下がるしかない。

絵画のかわりに向かいのフォートナムメイソンでケーキを買って帰った。あのアーティストがブレークしないことを祈るばかりだ。

投稿者 lib : 12:40 AM | コメント (0)

August 22, 2007

LIB Thorpe Park

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ソープパークという遊園地に行ってきた。・・・というか、連れて行かれた。

「日程は来週の土曜日。雨天決行」と友人からのお達しだ。
(晴れるといいな。でも天気がいいと混むし・・・)と思いながら、待望の (でもないけど)土曜日。朝の雨が上がり、やや暗めの曇り空が広がっている。

「さー、乗るぞー」と盛り上がる友人。
「ローラーコースター、好きだって言ってたよね?」と確認される。
「ローラーコースターの上で生活してもいいくらいに好き!」と豪語していたからだ。

しかし、どこかのアメリカ人が、ローラーコースターに乗ったまま17日間寝泊りして、ギネス世界記録を達成したというニュースを聞いて、そのくだらなさぶりに腰が抜けた。・・・今後は口を慎むことにする。

ちなみにギネスで記録を立てるためには、トイレ、食事、睡眠の時間やその取り方に細かい規定があり、それを順守しなければ正式認定されないそうだ。
ギネス社よ、そんなルールを作っている暇があったら・・・。

「この遊園地ね、絶叫マシーンで有名なんだよ」
絶叫マシーン? 懐かしい響きがする。・・・って最後にローラーコースターに乗ったのはいつだっけ? もしかして、20世紀末だったかも。

私はやっと、自分の無鉄砲さに気づいた。それで他の友達から 「年寄りの冷や水」とか言われていたのか・・・。

駐車場からは、まっすぐ真上に上がり、そのまま真下に降下する釣り針のような形のマシーン、Stealth が見えてきた。
「うわー、ワクワクするねー」と友人。
「うーん、そうねえ・・・。あまり、ワクワクしないなあ。なんだか・・・」と煮え切らない態度に変わった私。

入場料は大人が32ポンド。さらに7ポンドとか9ポンド払えば、待ち時間は短縮。
高い金を払って、長い列に並び、わざわざ恐怖を経験する。人間ってバカだ。

いや、バカなのは何も考えずにここまで来た私かも。

入場券売り場では家族づれもいたが、 「カバお嬢さんのサファリ」だの、 「ミスターモンキーのバナナ乗り」 といったお子様向けのエリアと絶叫マシーンのエリアは別々だ。

「ここまで来て、いまさら怖いなんて言う 『素人さん』はいないよね」と不敵な表情の人々が並んでいる Colossus。
「振りまわされて、めちゃくちゃにされたいの、私」みたいなティーンエイジャーで一杯の Nemesis Inferno。
それぞれの絶叫マシーンには不気味な 「テーマソング」があり、恐怖と興奮をかき立てる。

「まだ引き返せる」という気持ちと 「ここで引き下がったら、 『負け犬』の烙印を押される」との思いに引き裂かれる。

「オーホホホホ。私にはね、怖いものなんて、なーんにもないざますよ!」と、いつもハッタリをかましている私には、
「いやーん、アタシ、こわーい」などと小娘のようなことは口が裂けても言えないし。

(あの直線が3秒、上に登るのが4秒。落下するのが2秒。で、怖い思いは終わる)
と、なんとか気を静めようと分析モードに入るが、
(命綱である安全ベルトが壊れてしまったら、どうしよう? イギリス人に比べて、お尻の小さい私だ。ベルトがあっても座席からすべり落ちてしまうかもしれない)
妄想が妄想を呼ぶ。そして、ふと気がつくと一番前の座席に座らされている・・・。

絶叫マシーンといっても、絶叫の仕方はいろいろだ。
Stealth は出発の瞬間にキャーという叫び声が上がっていたが、2秒以内に時速125kmに達する速さのせいだ。 は、速いのなんのって・・・。で、62.5mの高さまで登るとひねりが入っての急降下。さすがに心臓がバクバクした。
変わっているのが、 Detonatorで、30mの高さから椅子に座ったままで真下にストンと落ちるもの。行列から眺めていても、誰ひとり叫ばないので不思議だったが、5Gで落ちるせいか声が出ない。みんなポカーンとした顔で地上に降りてくる。私もアホ面になっていたはずだ。

その日は5種類ばかりの絶叫マシーンを堪能。でも、もう当分、遊園地はいいや。(結構こわかった、ってことだ) アドレナリンが枯渇したわい。ふう・・・。

投稿者 lib : 11:43 PM | コメント (0)

August 16, 2007

LIB 私をフットボールに連れていって その1

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フットボールの試合に行ってみようと考えている。スポーツ観戦にはさほど興味はないが、せっかくイギリスにいるのだから、 「国技」のひとつを一度くらい見ておきたい。

そこで、予習だ。 「オペラファン」ならともかく、 「フットボールファン」と自分の間に 「共通項」は見つからないので、それなりの準備をしてから臨みたい。
この 「準備本能」は日本人の血のなせる業か?

イギリス人の友人に 「フットボール観戦の正式作法」を聞いてみた。
彼は週末に男4人でバーミンガムまで出かけたという。ロンドンでの試合ではなく、わざわざバーミンガムまで出かけるのは、 「近所の寺でお参りするよりも、遠くの寺まで巡礼に出かけるほうが信心深い」 みたいなノリと思われる。

以下は当日のスケジュールだ。

土曜日の朝10時、ユーストン駅に集合。
ロンドンからバーミンガムまでは鉄道会社が2社あるのだが、1社はトラブルのために運休。そこで乗客は全員バージントレインに詰め込まれる。
「不確実な鉄道の旅」と、いかにもイギリスらしいスタートだ。

ギュウギュウ詰めの電車の通路に立つこと3時間。いつもなら2時間のところ、運休した電車の代わりにあちこちで停車して、余計に時間がかかったらしい。
この間、ビールを飲みながら仲間と談笑。・・・ってことは、いつも混んだパブで立ちっぱなしで飲んでおしゃべりしているイギリス男には、パブが電車になっただけ。

1時過ぎにバーミンガムに到着。
試合は5時からだ。当然、その前にパブで一杯。
この 「XXをする前に、まず、一杯」というのはシティでもよく聞く。

「長距離ドライブの前に、まず、ガソリン」

みたいな感じなのだろうか? 酒が弱い人だとそのまま寝てしまうと思うのだが。

さて、スタジアムで他のパブ経由で来たと思われる観客と合流する。

何かの本に 「フットボールファンとは、妻やガールフレンドを捨ておいて、赤の他人の男たちがボールを追いかけるのを必死の形相で応援して、一緒に怒鳴ったり、泣いたり、笑ったりする男たち」という定義が書いてあった。
喜ぶのはいいとして、泣くのはなぜだ? 
ファン心理というよりは酒のせいなのかもしれないな。泣き上戸ってやつ?

友人は狂乱の試合観戦を終え、ロンドン行きの電車に乗りこんだ。
さすがに疲れていたので、10ポンドを上乗せして、ファーストクラスのチケットを買ったらしい。 ところが、イギリス人は金も払わずにファーストクラスにちゃっかり入ることがある。検札が来れば移動。そうでなければそのまま座ってしまう。 (私も時々やるが、必ず検札が来てお金を取られる。検札運の悪い私) 途中で検札の人が中を覗き込んだのだが、車内の状況に恐れをなして、そのまま行ってしまったとか。
ま、フットボール帰りの酔っ払いに検札を要求するのは、猛獣の檻に指をつっこんでみるのと同じ。びびるのも無理ない。

勝利に盛り上がっているファンはビールをケースごと持ち込み、さらに酒盛り。そして、チームソングを歌って大騒ぎ。
イギリス人とカラオケをしたことがある人は知っているだろうが、彼らはものすごーく音痴である。日頃はシャイなので人前で歌うことはないが、酒と興奮でそんな羞恥心はすっかり山の向こうに行ってしまっている。
ああ、その場にいなくてよかった。耳が腐る。

敵チームのファンと一緒になると乱闘になりかねないが、同じチームのサポーターだと、即、擬似友情が発生する。見知らぬ男たちが肩を組み合い、 「歌うフットボール列車」と化したバージントレインはロンドンへと走った。

「で、ビールをどれくらい飲んだの?」と聞いたら、
「6パイントまでは数えたが、その後はもうわからない」
「その6パイントを数えたのは何時?」
「たぶん、3時ごろ。そうだな、全部で10パイントは飲んだかな?」

フットボールを楽しく観るには6リットルものビールを消費する必要があるのか・・・。

フットボール観戦への道は遠い。

投稿者 lib : 12:33 AM | コメント (0)

August 09, 2007

イエローキャブ

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日本の雑誌を読んでいたら、イエローキャブの記事があった。
「海外旅行でハメをはずす日本女性は 『イエローキャブ』として、『世界中』に知られ、下げずまれている」というものである。

そこでイギリス人(8名)に 「イエローキャブとは何でしょう?」と聞いたところ、 「アメリカのタクシー」という答えであった。 「蔑称としてのイエローキャブは?」と、さらなる質問には 「知らない」という回答である。
「世界中」って、どこの国のこと?

「旅の恥は掛け捨て」はイギリス人も同様だ。

イビサ島は 「暴飲暴食」と 「不特定多数の異性向け、求愛ダンス」で有名な若者向けリゾートだ。
テレビでここが映されると、地鳴りがしそうなほどの大群集が、なぜか 「両手を挙げたポーズ」で踊り狂っている。数百人の体臭と汗がテレビ画面から匂ってきそうな恐怖に思わずチャンネルを替えてしまう。
また、 「予期しなかった妊娠率の増加」や 「身に覚えがある疾病罹患率の増加」または 「アルコールによる肝障害の増加」などが記録されているようである。

会社の同僚の女の子がふたり、イビサで週末を過ごすと聞いた。
「おや、おや、 『酒池肉林ツアー』ですか。ヒューヒュー(口笛の音)」とからかうと、
「入場料の高い大人向けのクラブに行って、ならず者のようなティーンエイジャーとは別行動をする」と言っていた。が、
「飛行機が死ぬほど遅れて、ロンドンに着いたのが日曜の午前3時」だったらしく、月曜日はヨレヨレ状態で出社。
「は、話しかけないでね。頭が割れそう・・・」

「肉林」はともかくとして、 「酒池」にどっぷりと浸かっていたのは疑問の余地なしである。

ジャマイカに出かける中高年イギリス女性の姿にも 「痛い」ものがある。
彼女たちは現地に住む若くハンサムな黒人青年 (種馬機能つき)と 「恋に落ちる」のである。ホリディの期間中は彼らの衣食住の費用を引き受ける保護者ぶりを発揮。
現地黒人青年 (種馬機能つき)に寄り添うイギリス中年女の背中には、日焼けによるシミとそばかすが浮いている。プッシュアップブラで作った胸の谷間にはそのまわりの皮膚の 「ちりめんじわ」が谷に流れ込む小川を形成している。が、心は恋する乙女。
「人生最後の恋」はホリディで終わらずに相手をイギリスに招待。
愛人に走り彼女を捨てた前夫に
「彼が新しいボーイフレンドなの」と現地黒人青年 (種馬機能つき)を紹介し、溜飲を下げる、ということもままあるらしい。

ここまでくると、 「ろうそくは消える直前に最後のきらめきを見せる」という言葉を思い出す。
(がんばれ、おばちゃん。恋が実るといいね)と無責任な声援を送りたくなる。

上記に比べればイエローキャブのイエローぶりは、せいぜい 「ひよこの黄色」だ。

ま、暴走族と一緒でいずれは 「卒業」する。その後、改心して結婚出産などを経て、半世紀もすれば、かわいいおばあちゃんとして養老院で余生を過ごすかもしれない。
「あたしは若い頃、ロサンジェルスでたっぷり遊んだものよ」
「え、なに? よし子さん」 (耳が遠い)
「みんなに 『イエローキャブ』と言われるのも平気でブイブイいわせたものですよ」
「あら、あたしもそうですよ。ニューヨークのクラブシーンでさんざん・・・」
「あら、あなたもブイブイ?」
「ええ、あたしもブイブイ」
「あの頃は楽しかったわね。ズズー (番茶をすする音)」
「栗ようかん、もう一切れどう? ところで、お孫さん、元気?」
狂乱のイエローキャブ時代も 「おばあちゃんの昔話」として、懐かしげに語られるかもしれない。

一方、海の向こうの養老院でも、ジョン爺さんが
「俺さー、日本人の一夜妻がいたんだぜ。名前はよし子」と自慢し、
怒りっぽいピーター爺さんに
「嘘をつくなよ、この野郎」と殴られて、入れ歯をふっ飛ばされるかもしれない。

旅先でのアバンチュールも結構。しかし、男なら美人局にカモられて、身ぐるみはがされる程度ですむかもしれないが、女ならバーで出会った 「素敵な人」が実は 「連続殺人者」で、後日、ホテルのバスルームでバラバラになって発見される可能性も大。
―――知らない人についていくのはお勧めしません。

投稿者 lib : 12:09 AM | コメント (0)

July 19, 2007

警察ざた (その1)

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ある朝、出勤すると社内がザワザワしている。

このざわめきぶりはミセス Tが2ヶ月も早く子供を産んだとき以来だ。
「ゆうべ食べたチャイニーズのテイクアウェイが胃にもたれているわ」と同僚に電話している内に産気づいた。 「エビチリソース」が 「胃」にもたれていたのではなく、「男の未熟児」が 「子宮」にもたれていたらしい、という話で盛り上がったことがある。

さて、今回は?

何事かと思うと泥棒が入ったらしい。

新しく購入した数台のコンピューターが積み上げてあったのが、すべて盗まれたというのだ。前日の午後、運び込まれて置かれていたのが消えている。

泥棒はなんでここに新品のコンピューターがあったことを知っていたのか?

ここで 「内部の犯行」説が浮かび上がってくる。内部といってもうちの社員じゃないけどね。というのも、盗品を売買するには 「蛇の道は蛇」のルートとマーケットがないと無理だろう。素人さんでは換金できないと思う。

「運送会社で働いていれば、ここに搬入されたのを知っている」
「オフィスに来る掃除の人の目つきが悪いのが、日頃から気になっていた」
「コピー機の修理に来たのは、きのうの午前だっけ、午後だっけ? 午後なら、箱があったのを見てるはず」
など、同僚はそれぞれシャーロック・ホームズになって、
「内部の事情に通じていた関係者の犯行」として推理を働かせてる。

・・・あの・・・そろそろ仕事に取りかかったほうがいいのでは? 
始業時間もとっくに過ぎてるし・・・。

しばらくすると警察がやってきた。

通用口のドアのノブに銀色の粉をまぶしているのは 「指紋」を取っているのか?

(テレビで見るのと一緒だ)と、ジロジロ眺める。
うーむ、これでは私も仕事にならないではないか。でも、こんな現場が見られるのは一生に一度かもしれないし。

と、ボスが出勤してきた。
「モーニング! ん? いったい何事なんだ?」
「泥棒が入ったのよ。で、コンピューターを盗んでいったの!」 
(ちょっとだけ、うれしそうに聞こえたかもしれない)
「ええ? あ、ここに置いていたラップトップがない!」

ボスのデスクにあった日本語専用のラップトップもやられていた。日本に出張の折に秋葉原で買ったもの。箱からは出してあったが、新品同様 (購入後、2日目)なので、ついでに盗んでいったらしい。

箱入りの新品はそのまま売りさばいたとして、ラップトップの電源を入れると、わけのわからない文字が浮かび上がってきて、泥棒も動揺したのでは?
「日本語」の盗品コンピューターを扱うマーケットも持っているのか? 
・・・たぶん、ないだろう。

ふん、お気の毒にね。せっかく盗んだのに。

突然の出来事によるオフィスの 「興奮状態」も午後にはすっかりおさまってしまった。

この被害も、
「全部、保険がかかっているから平気」
だそうである。

盗まれた日本語コンピューター、今はいったいどこで何をしているやら。
売り飛ばすこともできずに、どこかの倉庫で新品同様のまま寂しい一生を終えるのだろうか・・・?

投稿者 lib : 02:28 PM | コメント (2)

July 12, 2007

ウィンブルドン

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ウィンブルドンのテニストーナメントが終わった。

チャンピオンになったのは女性では 「おなじみ」ウィリアムスで男性はヘデラーだ。一度くらいは試合を見に行こうと思っているのだが、予約するのが面倒だし、炎天下、あるいは雨の中を何時間も観戦すると思うと腰が引ける。

がんばる人を見るのは好きだが、自分ががんばるのは嫌いだ。

うちの会社の接待のお供でアスコットやニューマーケットの競馬に出かけたことはあるが、テニスでの接待は聞いたことがない。それぞれの会社で 「好み」があるらしく、友人の会社はクリケットのスポンサーになっていて、試合にクライアントを招待するらしい。昔の貴族なら有り余る時間をつぶすのに絶好の機会だったかもしれないが、あんな長い試合に喜んで行く人がどのくらいいるのだろう? 疑問。

ま、ヘンリーレガッタのボートレースにしろ、アスコット競馬にしろ、ウィンブルドンのテニストーナメントにしろ、接待は飲み食いのほうが中心 (特に 「飲み」のほう)だから、試合は二の次かもね。
アスコットに行って、どの馬とジョッキーが勝ったというより、誰それが酔っ払って、みんなに引きずられて帰宅した、みたいな話しか聞かないし。

「で、勝ったのは誰?」
「ええっと、誰だっけ? 試合はあまり見てないんだ、正直なところ・・・。そうだ、アランが酔っ払ってミーナの帽子を払い落としたって、聞いた?」

酒を飲むばかりで 「観戦」なんかしていないのだ。

これでは選手も真面目に試合に臨むのがバカみたいだな。

試合の裏方として選手とトーナメントをサポートする人もいることを聞いた。
「ボールガール」というのは、試合中の「玉拾い」の役だ。男の子もいる。
ネット際にかがんだ姿勢で待機しているのと、壁を背に足を肩の幅に開いて立っている若い子たちだ。
歌舞伎の黒子のように 「見えているのに存在に気がつかない」連中である。

これを「ボールガーリング」という。・・・なんか、バカみたいな英語だな。INGをつけただけかい。
腹を立てて、ドリンクの容器をコートに叩きつけるような選手もいて、そのボトルを拾うこともあるとか。これは 「ボトルガーリング」か?

彼らは地元の中学生と高校生のボランティアで半年間もトレーニングを受ける。テニスのルールから、座り方、立ち方、手の上げ方、選手への接し方などを習うという。その中から何人かが選ばれて、晴れ舞台 (の黒子)としてテニスコートに立てるらしい。

ウィンブルドンの前哨戦ともいえるクィーンズのテニストーナメントでボールガールを務めた子の話では、バイト料は出ないが、控え室では毎日ランチやスナックが用意され、スポンサーのスポーツウエアメーカーから、ポロシャツが2枚、トレーナーが1枚、ショーツが2枚、トレーニングパンツが1枚、ソックスが数足にスニーカーが1足と帽子が支給され、トーナメントが終わればそれら一式を貰える。
クィーンズでは赤を基調としたエレッセのウエアで、もし買えば全部で200ポンド以上はするだろう。

おまけにトーナメント中の一週間は学校に行かなくてもいいのだそうだ。 (ここがポイント)

有名選手を間近に見ることができるのも役得のひとつ。一緒に写真を撮ったり、サインを貰ったり、話しかけることもできる。
時間が空けば、センターコートでトッププレーヤーの試合も見られる。

半年間のトレーニングの甲斐あって、というところだが、トーナメントが進むと、当然、試合数も減ってくる。で、同数のボールガールは必要でなくなる。
セミファイナルやファイナルの試合に出られるのは 「少数の優秀なボールガール」だけ。ここでも 「競争の原理」は働く。接待のシャンペンでヘロヘロになりながら観客席にいる連中を前にコートではボールガールも含めて激しい戦いが行われているのだ。

コートにすら行かずにテレビの前でラーメンなどをすすりながら試合を見ていた私の 「ふぬけぶり」が恥ずかしいほどである。

ま、いいや。私は 「体育系」じゃないし。 

体力の限界に挑戦して戦う、なんて言葉は私の辞書にはありません。

投稿者 lib : 12:05 AM | コメント (0)

July 04, 2007

薄着の季節

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初夏である。

薄着の季節がやってきた。私にとっては道徳的ジレンマに陥る時期でもある。

イギリスの女は私たちよりも大きい。骨格だけでなく 「肉づき」がいい。と、いうか、 「脂肪づき」がいい。肩幅が広くて身体に厚みがあるので、トレンチコートやスーツを着せるとパシッと決まるのだが、この 「脂肪づき」のせいで、ウエストが 「ダルマ」。
選挙に勝った政治家なら、思わず目に黒丸を入れたくなる体型だ。

冬のコートを脱ぎ、ジャケットも必要なくなると 「そのまんまダルマ」として歩き回る。
で、乗り物には突然 「妊娠5ヶ月の腹」をした女たちであふれかえるのだ。

私は思いやりのある性格ではないが、小学校の道徳の時間に 「お年寄りや身体の不自由な人には席を譲りましょう」と習っている。それに加えて、 「小さな子供づれやお腹の大きな女性」のために席を立つと、 「徳を積む」ことができて、パライソ(天国)に行けるかもという打算も働くようになった。

さて・・・。

妊娠7ヶ月くらいなら、間違うことはない。
「どうぞ、座ってね」
「あら、ありがとう」
と、席を譲ることができる。

が、5ヶ月くらいの腹は 「微妙な大きさ」である。
つまり、 「妊婦」なのか、 「デブ」なのか悩むのだ。

席を譲られる。
――ラッキー。でも、どうして?
妊婦だと思われたから。
――なんで?
デブだから。

という論理は明白だ。女としてショックだろうなあ。

私のほうも、
(あ、妊婦かな? 席を譲らなくちゃ)
と腰を浮かせながら、
(ちょっと待てよ、ただのデブだったらどうしよう。めちゃくちゃ、傷つくだろうな、彼女。でも、もし、本当に妊婦だったら、私のことを意地悪な女だと思うだろうし)

・・・しかたない、寝たふりをしよう。

と、寝たふりを強いられたりするのだ。

先日も目の前に 「腹デカ」な女の人が立った。腹だけではなくて、全体にしっかり 「大女」である。顔立ちはちょっとスラブ系で東ヨーロッパの出にも見える。
で、このお腹が、また、微妙な大きさ。
彼女はバッグからフルーツケーキを取り出すとパクパク食べ始めた。と、次はバナナを出し、ほおばる。で、今度はクリスプの袋。

妊婦だから 「ふたり分」食べているのか、たんに、 「大食い」で、だからこそデブなのか?

ああー、私には判断がつかないー!

隣に座っているイギリス人の男は紳士風で、さっと席を譲りそうなタイプだが、新聞のクリケットの記事を食い入るように読んでいて気がつかない。

(おやじ、顔を上げろ。君の判断が知りたい)と念力を送るが全然きかない。
(クリケットがそんなに大事なのか? 目の前の女を見るんだ! 見ろ!)

と、天の救いか、間違いようのないスイカ腹の妊婦が電車に乗り込んできて、私はその人に席を譲ったのだった。

この悩みから解放されるために、バッジかなんかをつけてくれないかなあ。
「妊婦です。席を譲ってくださいね」というメッセージのバッジ。
「ただのデブです。妊婦ではありません。運動がてら立っています」のバッジもあると、さらによろしい。

投稿者 lib : 10:58 PM | コメント (2)

June 28, 2007

ロンドン・コーリング

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「ロンドン コーリング」というハードロックカフェ主催のロックコンサートに行ってきた。場所はハイドパーク。

イベントのお誘いがあるとハイハイと色々なところに出かけるものの、自分からは動かないレイジーな女だが、今回はお気に入りのバンド 「エアロスミス」が久々にイギリス公演をするというので、「自分で」予約した。 (イバっている)

私は 「書籍の人」「窓口の人」「電話の人」なので、インターネット予約は苦手。

チケットはいくつもの事務所で扱っているが・・・聞いたこともないドイツの代理店とかは、ちょっと不安だな。トラブルがあったら、ドイツ語で文句を言わなくっちゃいけないかも。やはり、ここは名の通ったイギリスの大手の事務所にしておこう。

チケットは45ポンド。
チケット代の他に、サービスチャージ10ポンド50だの、取扱料3ポンドだのがついてくる。郵送してくるだけなのに、力いっぱい 「ボラれて」いる気がするなあ。
以前に出かけたバービカンホールでのシェイクスピアは1ポンドしか手数料を取らなかったはず。コンサートが 「終わって」から、公正取引委員会にチクってやる・・・。

さーて、チケットの手配が済んだら、「衣装」の設定だ。
プラットフォームブーツ (ロンドンブーツ)に皮のミニスカート、豹がらシャツにジャラジャラとアクセサリーをつけて、どこかにひっかかると首が絞まってしまう危険もある超長いスカーフを巻いて出かけるとするか・・・。
「ロックチック」の 「正装」としては当然のチョイスだろう。

と、思っていたら、雨が降っている。おまけに寒い。

あっさり、「正装」をあきらめて、セーターにスニーカー、防水ジャケットで 「農作業」を頼まれてもOKというヘビーデューティなカジュアルウエアに変更。
ロックチックでもなく、グルーピーでもない、 「農婦」姿で出かけることとなった。

今度は足だ。コンサートが終わると、数万人が同時にハイドパークを出て、地下鉄やバスに向かうはず。友人の車で出かけ、ハイドパークの近くに駐車しておくことにしよう。

開門は2時だが、ハイドパークに着いたのが6時。前座バンドがいくつもあって、メインバンドは9時の予定らしい。小雨も降っているので、まずパブに入って 「身体を温める」ことにする。このパブがなかなか良くて、ハウスワインのくせにスムーズなレッドだ。
ああ、しまった。2杯も飲むつもりはなかったのに・・・。

ほろ酔いでハイドパークに入ったのが8時。観客数は公称8万人だが、半分くらいかな。
雨のせいで足元はドロドロ。よく見ればみんな揃って 「農作業いつでもOKの姿」である。長靴の観客も多いしね。
ボディガードを兼ねて、身体の大きな男友達を誘ったのが正解だった。人ごみをかき分けるにも役に立ってくれるし、ステージが見えなかったら肩車だって頼めるし。

観客から仕切られた一角はハードロックカフェの関係者用らしい。
最初は 「ふふふ、私たちはね、特別待遇なのよ」みたいな顔をしていたが、
まわりの客から憎まれて「座れよ、ボケー!」と罵られたり、投げこまれる空き瓶による 「ボトル攻撃」が加えられたりして、すっかりおとなしくなってしまった。

あちこちでマリファナの匂いがしている。マリファナは煙草よりも 「5倍」も 「肺がんリスク」が高いそうだ。ま、私は官憲でも医療関係者でもないので、赤の他人の行動に目くじらは立てませんが。・・・ちょっと、煙をこっちに流さないでよ!

ボーカルのスティーブン・タイラーははるか遠く、アリのような大きさだが、ギタリストのジョー・ペリーと共にいつも大きなスクリーンに映されている。残りの3人のメンバー(ひとまとめの扱い)は1時間半のコンサートの内、アップになったのはほんの数分だけ。
人気とバンド内の力関係がよくわかるよな、これで。

スティーブンは来年60歳になるそうだ。服をベロリとめくると 「俺にxxしてくれよ」とエロいメッセージが書いてある。サラリーマンなら定年退職を控えて、残りの住宅ローンの返済計画でもたてているところだが、やっぱりロックミュージシャンは違うねえ・・・。

ヒット曲は観客が大合唱をしていたが、私が英語の歌詞を覚えているわけがない。教会で賛美歌を歌わされるときのように 「口パク」で対応。ちょっと、情けなかったけど。

25ポンドのオフィシャルTシャツが売り切れで、友人は会場の外のダフ屋のようなおっちゃんから10ポンドでブートレックTシャツを買ってくれた。
「今夜はスティーブンのTシャツで寝なさいね」とありがたいお言葉を頂戴したのだった。

投稿者 lib : 12:58 AM | コメント (0)

June 20, 2007

職場の困ったちゃん 女性編

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一番困るのが 「感情が激しく揺れ動く人」だろう。
「楽しく盛り上がる」 「落ち込む」 「怒る」といった状態が予測できないサイクルで回るので、どう扱っていいのかわからない。

「グッドモーニング」なんて言うと、
「あらー、元気? かわいい靴を履いてるじゃないの。日本製なの? やっぱりねえ。私にも日本から靴を買ってきて。ランラランララン」(原文のママ)という状態もあるが、

「グッドモーニング」と私。
「・・・・・・」
(聞こえなかったかな?)
「グッドモーニング」 
「・・・・・」
(聞こえなかったんだろうな、ま、いいか。深く考えるのはよそう)

あるいは
「グッドモーニング」
「何がグッドなの? 何かいいことでもあったの? 天気も悪いのに、どうして『グッド』 モーニングなの?」
と、つっかっかってこられることもある。

(更年期障害か? 女性ホルモンのバランスがくずれているんだな)と知らん顔をするのだが、入社したばかりの若い子は自分が怒られたと思い、すっかりびびってしまう。
「いつも、ああだから気にしなくていいわよ」と言ってあげることにしている。

他人に迷惑はかからないが、ちょっとねー、と思う人もいる。

小学生による仮装 「ディスコ・クィーン」みたいな服装をしてくる人がいる。この人はうちの会社にテンプでときどき来るようだ。 「ギョッとするまでの厚化粧」と 「フリルがヒラヒラする安っぽい生地のミニスカート」が特徴だが、

・・・40代後半から50代のはじめ、という年である。

派手なメイクといい、スカートのペラペラ感といい、 
「地方都市の小ホールでマイナーな外タレを待ちうけるグルーピーもどき、ただし年増」
という感じ。が、話してみると、ごく普通の勤め人だ。

先日はミニスカートではなかったが、巨大なチューリップがプリントされたワンピースだった。幼稚園のお遊戯会の衣装のようにも見える。
基本的に12歳以上の女性むけの服は着ない方針だと思われる。ファッションポリシーは 「ロリータ風」なのか。

イギリス人の50歳の女の 「ロリータ・コスプレ」 見たいでしょ?

そうだ、思い出した。
数週間前にビジネストレーニングコースに参加した。このコースはうちの会社のスタッフだけではなく、他の会社の人も出席している。全部で10人ほどの参加者がいた。
この中のひとり、「アートメーク」なのか 「刺青」みたいに

「赤黒い、金太郎まゆげ」をしているのだ。おまけに唇にも 「真っ黒なふちどり」がされている。

・・・・・・なぜ? 

彼女が入ってきた瞬間、全員が息を呑み、トレーニングルームに動揺が走った。が、さすがはイギリス人、すぐに何もなかったようにふるまって私を感心させたが。

「テート・モダン・ミュージアム」で、
「私のテーマは人間の呼吸と宇宙の混沌のコラボレーションなの」みたいなことを言いそうな 「アーティスト」タイプ。
とても 「シティ」で 「ビジネストレーニングコース」に参加する 「会社員」には見えない。
が、話してみると非常にまともな人だった。

今までは、
変わった格好をする人 - 変わった人
と思い込んでいたのだが、
変わった格好をする人 - でも、普通の人 

という存在もあることを思い知らされたのだった。人間って深いわね。

投稿者 lib : 11:59 PM | コメント (0)

June 14, 2007

職場の困ったちゃん 男性編

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どの職場にも 「困ったちゃん」が存在する。

私は基本的には愛想のいい女なので、日ごろつきあいのない同僚にも、こちらから積極的に近づいて、まんべんなくおしゃべりするように心がけている。
が、さすがの私も、できれば避けたい、という同僚が何人かいる。

うちの困ったちゃんの筆頭は2005年8月23日のブログ「薫の君」こと 「鼻曲がりちゃん」だろう。この人は学生時代にエルトン・ジョンと同級生だったそうだ。
・・・それがどうしたと言われそうだが。

この人のそばでは自然と 「息を止める」ようになったが、給湯室なんかでコーヒーをいれている時に彼が来るとちょっと困る。
給湯室では同僚に対する礼儀として世間話、つまり天気とか電車の遅れとかガーデニングの話をしなければ失礼だろう。私はヨガの達人ではないから、息を5分間止めたままでにこやかに対応する、というのは無理だ。

彼がその場からいなくなっても、慌てて深呼吸なんかをしてはならない。しばらくは 「残り香」があるので、せっかく息を止めていた努力が無駄になるからだ。
何も考えずにコピー機の前に立ち、(うっ、今まで彼がここにいたんだな・・・)と思い知らされることもある。

どんな感じかというと、枯れた花を入れたままの花びんを1週間そのままにして、中の水を捨てるときの匂いを思い浮かべてもらうといい。
ガールフレンドがいれば、どうにかしろと言うだろうけど、あれではガールフレンドは・・・むずかしいだろうなあ。温厚そうで感じのいいおじさんなのに・・・。

私は他人にアドバイスするときには、はっきりと物を言うことにしている。
寒い日にボスがニットのベストをスーツの下に着てきたときには、
「うわー、爺臭い。奥さん、それ見て止めなかったの? 止めなかった? もしかして奥さんから愛されてないんじゃない?」と 「正直で親切なアドバイス」をした。

でも、「鼻曲がりちゃん」には言えないよね、「息ができないほど臭いんですけど・・・」なんて。

ちなみにボスは 「うるさいな。寒いんだ。放っておいてくれ」とか言っていたが、それ以降、その爺臭いベストを着てこない。
アシスタントとして適切な助言 (爺臭い、と何度もはやし立てること。いじめの形を借りてビジネスマンとしての自覚をうながすこと)が取り入れられて幸いです。

ある同僚は生まれが謎に包まれている 「わけがわからんちゃん」で、おまけに記憶力と識別力にひずみがある。

「僕の母親はハワイにいた日系人」と言っていたが、別の日には 「父親がシンガポールにいた日本人」だったりして、家系図に混乱が見られる。
全然、日系には見えないけどねえ。

それにしても、
―――私のことを 「アキコ」と呼ぶのは止めてください。

昔、アキコという日本人のガールフレンドがいたらしい (本人談)が、2年近くも 「アキコ」と呼ばれ続けている私の身にもなってほしい。何度も訂正しているのだが直らない。
最近は 「アキコ」と呼ばれると聞こえなかったふりをすることにしている。で、
「アキコじゃなかったな、誰だっけ・・・」
と私の名前を思い出そうとする。思い出したあたりでは、私は10メートル先を歩いているので、もう一度聞こえないふりをして相手にしないが。
たぶん、まだ、その女に未練があるのだと思う。知らないけど。

ささやき声の 「聞こえないちゃん」もいる。
声が小さくて、ささやくように話し、自分のジョークに自分で笑うので、

「ボソボソ、ボソボソ、ふふ、ふふふふ (自分のジョークに笑っているらしい)ボソボソ・・・くすくす、ボソボソ・・・」という感じだ。

私は会社の着席式のパーティで彼の隣になったことがある。
前菜からデザートまでの1時間、ずっと、ボソボソ、ふふふ、くすくす、とささやかれて、 
(次回は補聴器を持ってこよう)と思ったものだ。
何を言っているのか聞こえないので、何で笑っているのかさっぱり理解できない。それでもしっかり相づちを打って、ところどころで笑ったみせたのは自分でもプロの技だと思う。
コーヒーがサーブされたら、速攻で席を立った。

仕事はできる人たちなんだけどねえ・・・。困ったもんだ。

投稿者 lib : 12:16 AM | コメント (2)

June 07, 2007

お仕立てシャツ

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オーダーメイド Made to measure でシャツを作ってみた。

シティにはビジネスマン向けの紳士服の店がいくつかある。
「スーツができたから取ってきてくれない?」
とボスに頼まれることもある。タダではお使いを引き受けないのだが、私はワイングラス1杯のお駄賃で気軽に雇える 「低賃金労働者」なので、ときどき使い走りをさせられる。(私はシティのワインバー価格でラージグラスの7ポンドをお駄賃として設定している)
紳士服店では女性客が珍しいのか、やたらとチヤホヤしてくれるのもうれしい。

そんな紳士服のオーダーメードの店のひとつに 「女性用のシャツもお任せください」とサンプルがショーウィンドーに飾ってあった。

私はちょっと 「くせのある体型」をしているので、日本製、イギリス製に限らず既製服のシャツが身体に合わない。この店のシャツは49ポンドから99ポンド。オースティンリードの既製品シャツが60ポンドと思えば高くない。ちょっと聞いてみようか。

マネージャーがにこやかにやって来た。イタリア系か、スペイン系の女性だ。
うーむ、アングロサクソン系に囲まれているとラテン系の女の色っぽさが際立つねえ。 
(おやじ風のコメント)
紳士服の店に美人の女性マネージャーを置くとはうまいビジネス戦略だな。

さて、オーダーメードの方法だ。
1.生地を選ぶ。ここで値段が決まる。この店では49ポンドから99ポンドまで数種類。当然だがカッコいい生地は99ポンドである。サンプルの生地を身体に当てて鏡うつりを見てみた。どうせなら白よりはシティ風に 「フラムボヤント」つまり 「伊達男風」 (私は女だが)の派手な色合いがいいよね。
2.サイズを測る。胸囲、肩幅、袖丈、胴回りなどだ。 「もうすぐ、やせる予定なんです」と言ってみたが、その手のたわごとは聞きなれているらしく相手にされなかった。
3.襟の生地を選ぶ。私はここで別の色の生地にした。
4.襟の形を選ぶ。5、6種類の実物大のものを並べてくれる。
5.袖口の生地を選ぶ。ここでは襟と同じものにしてみる。
6.袖口の形を選ぶ。カフリンクスをつけるタイプにした。
7.ボタンを選ぶ。
8.前金の支払いをする。

いつもは仏頂面のおねえさんが働いている安物の服の店にしか行かないのだが、オーダーメイドの店だけあって、客扱いが丁寧だし、好みを尊重しながらも上手にアドバイスしてくれる。
なんだか自分が 「素敵なシャツを着る、素敵な私」という気分になるから不思議だ。

うふふ、スーツも作っちゃおうかしらん。
(商売上手なマネージャーにすっかり手玉に取られている)

2週間かかるということだったが、1週間後にはできたという連絡が店から電話が入った。
1週間と言いながらも、実際は2週間かかるイギリスでは 「前倒し」の連絡はうれしい。

さて、試着だ。
おおっと、自分で選んだとはいえ、マジでフラムボヤント (別名、派手)なシャツだ。
ちょっとうろたえる。シティ以外では着れないだろうな、これ。
首の部分のボタンを2つにしたので襟がもたつく気がするなあ。
襟の形は失敗したかな、と思っているとマネージャーがササッと手を加える。
「こう着こなしてね」
あーら、不思議。ジャケットにすっきりと収まった。さすがはプロ。

会社にもどってボスや同僚に見せ、そこそこの評価を受け、ご満悦であった。
ま、似合わなくても、そうは言える状況ではなかっただろう。相手は私だし。

「これからは私を 『フラムボヤントな女』とお呼び」と、たった一枚の派手シャツを作っただけで有頂天になる私であった。
貧乏人は褒めるとすぐにつけあがるから始末が悪い。(自分のことだが)

いつ、お披露目しようと思いつつも、新しい靴を履いて雨が降ったりするとキィーッとなる性格である。
ビジネスランチで、レッドワイン、トマトソース、コーヒー、チョコレートムース、その他の 「邪悪な色物」がおろしたてのシャツに飛び散るのを想像しないわけにはいかない。
クライアントをテーブルに残したままでレディスに駆け込むのもなあ。

で、いまだに着る機会をつかめずに家のハンガーにかかったままになっている。

・・・早く着なくちゃ。季節が変わってしまう。

投稿者 lib : 09:23 AM | コメント (4)

May 31, 2007

女子トイレ イギリス編

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先に忠告しておくが、 「イギリスの女性に憧れを持っている人」は今回お読みにならないほうがいいと思う。「スカトロ系は苦手」という人もパスをお勧めする。

イギリスの女子トイレといっても、場所によって会話が違う。

オペラハウスやラグジュアリーホテルとかメイフェアの店の 「レディス」なら、
「来週のチャリティパーティにお出かけになります?」
「ええ、あたくし楽しみにしておりますのよ。ウィリアム王子がお見えになるしね」
と優雅な会話を耳にする。この手のパーティの参加費は200ポンドくらいするだろう。

場末のショッピングセンターの 「女子便所」では、難民風の人にたどたどしい英語で生活の苦しさをこぼされる。「大変ですねえ、おばあさん」(で、私にどうしろと?)。また、万引きした商品をトイレに持ち込ませないように店員が見張っているので緊張感もある。

イギリスで暮らし始めて 「女子トイレの異変」に気づくまでに時間はかからなかった。
隣の個室に入っていた人が水を流してドアを開ける。で、きっちり2秒後には外のドアから出て行く音がする。

さて、どこがおかしいでしょう?

はい、正解は・・・2秒間では手を洗っている暇がありません。

最初はなんとなく変だな、と思っていたのだが、よく考えると手を洗わずに出ていることがわかった。

ひえー、汚いよう!

私は神経の太い女だが、衛生観念は微妙に繊細なのだ。

チャイナタウンにある某レストラン
ここは従業員と客の兼用トイレ。壁には 「さあ、手を洗いましょう」のポスター。
が、ウエイトレスは洗面台を素通りして出て行った。
(あの手で料理を運んでくるのか・・・)
そう思うとその場で失神してしまいそうだった。保健所に通報してやるー!

パーティ会場のレディス
きれいにドレスアップした女の子たちが次々入ってくる。で、個室から出てきて鏡の前に進み、バッグの中のリップスティックを取り出して、グリグリと塗りつけ、パウダーをはたくと・・・そのまま出て行く。

おい、メイク直しをする暇があったら、手を洗わんかい!

ダンスフロアではさっき手を洗わなかった女の子が若い男にしなだれかかりながら踊っている。女の子の手を取り、うっとりしている男に、
「おにーさん、その子はトイレの後で手を洗っていないのよー」と思わず駆け寄って教えてあげそうになる衝動を押さえるのが大変である。

私的統計によると、10-20%の女の子が手を洗わないようである。誰も見ていないところではもっと高い率かもしれないが。

オフィスパーティの前の会社のトイレ
このごろは誰かが借りているホテルの部屋にみんなで押しかけて、そこのバスルームを使ったり、自分のスポーツジムでシャワーを浴びてからドレスに着替えることが多いのだが、そうでない人は会社のビルの中の狭いレディスでひしめき合いながら準備をする。

で、パーティ用のストッキングをはく前に洗うのである。

足を――
洗面台で――

同僚たちが 「大また開き」で足を洗面台につっこんで洗っているのを見た瞬間、私はチャイナタウンと同様に失神寸前であった。イギリス婦人の気品あるマナーはビクトリア女王の時代で終わってしまったのか? 女王もきっと草葉の陰で泣いている。

・・・と過ぎていった10数年。潔癖症の私も少々のことでは驚かなくなりました。

余談だが、某コンサートホールの個室内の荷物かけはものすごく上のほうについている。利用する女性の平均身長を185cmとして設定したらしい。
小柄な人がこれにバッグをかけるのは 「輪投げ」の技術が必要である。

投稿者 lib : 09:37 AM | コメント (4)

May 24, 2007

日本大使館vs英国大使館

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ロンドンの日本大使館 (パスポートは領事館か?)には世話になった。数年前のことだ。

数週間後に日本への出張を控えたある日、何気なくパスポートを見ていて息が止まった。
「き、切れてる・・・」
パスポートがすでに無効になっていた。どうしよう。

クライアントとのミーティングは延期してもらえるだろうが、すでに航空券は購入してある。ディスカウント・チケット(出張なのにケチな会社)だから変更はできないだろう。

泡を食って必要書類を準備し、大使館 (領事館だってば!)に持っていった。
「いつ新しいパスポートができますか?」
「二週間後です」
「二週間後のいつですか?」
「朝、開館する時点で、できています」と窓口のおねえさんは毅然たる態度で言い切った。

二週間後の朝一番でパスポートを受け取った私は、白雪を頂きにした富士山を背景に、左手には満開の桜、右手には風にはためく日の丸を見た気がしたね。

ここまで感激したのも、日ごろイギリスの役所でひどい目に遭っているからだ。
だーいたい、イギリス人の役人なんか真面目な顔でいろんな約束をするくせに守るほうが珍しいって。おまけに言うことがみんなバラバラでさあ。
クロイドンにある 「某」ルナーハウスで何回、裏切られたことか。

さて、ロンドンの日本大使館、パスポートを出してくれる窓口があるだけではない。上の階にはちゃんと広いホール(宴会場か?)もある。パーティで中を見たことがあるが、
―――ちょっと・・・質素だ。
というのも、これでもかという過剰な装飾の大使館に行ったことがあるからだ。

そう、それは東京にある英国大使館。
ロンドンの日本大使館が慎ましく 「ビル」なのに、東京の英国大使館はどーんと広い敷地を占領していて、でかい態度である。どちらの都市も土地代が高いのにイギリス側には相手国に気を使う、という謙虚さが見えない。

さて、ここにも 「奥の間」が存在する。
一部は 「ビジネス・サポート部門」である。正式な名前は忘れたけど。
日本に進出するイギリス企業にアドバイスしたり、パートナー企業を紹介する機能を持つ。

ボスと行ったミーティングの途中でトイレに立ったら、「もう一度入室するときには身分証明をしてください」と言われた。・・・にも関わらず、トイレから戻ったら、「ハイハイ、どうぞ」とあっさり入れてもらった。厳しいルールの割りにチェックは甘いという、いかにもイギリス的なノリだったのを覚えている。
テロ事件が増えた現在はたぶん違うと思うけど。

しかし、ここの英国大使館ですごいのはホールだ。式典に招待されて行ったら、シャンデリアに肖像画、猫足テーブルにフカフカのカーペットでキンキラな装飾だった。
ベルサイユ宮殿か、ここは。

うーむ、このきらびやかさと仰々しさ、負けてるじゃないの、日本大使館!

「女王の代行」として駐日大使が登場すると、礼服がまるで 「ナポレオン」だったのでびっくりした。勲章だの、金ボタンだの、ふさ飾りだのと仮装行列のような服装である。
当時の駐日大使はもう任を退いて帰国している。ロンドンで時々その顔を見ることもあるのだが、そのたびに、
(あ、ナポレオンのおじさんだ)と国籍の混乱を招く記憶がよみがえる。

大使はフェンシングのような剣をシュッパッと抜いて、栄誉を受けるためにひざまずいた人の両肩をそれで軽く叩いていた。(見ていて、ちょっとこわかった。あの剣は本物か? 間違って首が切れちゃったりしないのか?)

あのわざとらしさは迫力があったなあ。

その国らしさを出すというのなら、日本大使館のホールもあの地味さを逆手に取って、 「わび」と「さび」で勝負するのがいいかもしれない。

ヨーロッパの外交官をレセプションに招くとき、ホールの四隅に 「虚無僧」を立たせる。
で、尺八の四重奏でお迎えするという趣向だ。どうかしら?

でも、招かれた側が 「ナポレオン」で来たりすると、ちょっとね。

「虚無僧」vs 「ナポレオン」か・・・。勝負にならんな。

投稿者 lib : 09:00 AM | コメント (0)

May 17, 2007

キッチンの攻防

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夕方、家の電話が鳴った。この時間にかかってくるのはセールスが多い。電話会社、ブロードバンド、ガス会社等々の勧誘である。
玄関に人が来ても基本的には無視することにしている。ま、そのせいで配達物を受け取りそこなったりすることもあるのだが・・・。電話はそうもいかないし。

「こちらはキッチンXXです。リーズナブルな価格で高品質のキッチンをお客様にお届けします。一度お伺いして、見積もりを出させていただきたいのですが」
キッチンの改装は考えていなかったが、いくらかかるものなのか興味はある。
週末の午前中にアポイントを入れた。

と、友人や同僚に言うと全員に 「えー、大丈夫なの?」と心配された。
「セールスマンがからむから割高になってるよ」
「ものすごく強引なセールスで断れないよ」
「いつまでもしつこく勧められて、うんざりして契約しちゃうよ」
・・・まずかったかしらん。

さて、土曜日だ。
ちっ、人が来るならキッチンを掃除しなければならない。
が、こんなときに限ってクリーナーのおばちゃんは休みである。
えー、私がキッチンを掃除するの? (当たり前だ) 土曜日の朝っぱらから? (アポに同意しただろ) と自分で自分につっこみを入れながら、イヤイヤ掃除する。

約束の時間にぴったり、南アフリカ出身という白人のおばちゃんがやってきた。

私は人を見る目はないのだが、いかにも 「強引」が 「サイズ18」の服を着て歩いているという雰囲気のおばちゃんの押しの強そうな性格はさすがの私にもわかる。
安請け合いしたのをちょっと反省した。

「今日の見積もりはね、今日だけしか有効じゃないの。だから、今日中に契約書にサインしてもらうわね」
「いいな、今日中にカタをつけてもらうぜ」って、まるで借金の取立てのような雰囲気だ。
「今日中に耳をそろえて借金を返さないと、女房と娘を女郎屋に叩き売るぞ!」と脅迫されている気分である。
じゃ、私の立場もはっきりしておきましょうね。で、
「高いものだから、今日中に契約するつもりはないわよ」とあっさり宣言しておく。
カウンターパンチを受けたセールスのおばちゃんはちょっと沈黙したが、とりあえず見積もりを出すことにしたらしい。

「どんな色がいいの?」とおばちゃん。
「無難なところで白かしらね」と私。
「白なんかダメよ。他の色にしなさい」
おい、いったい誰のキッチンだよ?
「でも、白がいいなあ」とねばる。
「うちのカタログに白はないのよ。クリーム色でどう?」

「ここにカウンターのテーブルをつけましょう」とおばちゃん。
「いや、そこはがらんとした空間がいい」と私。
「つけたほうがバランスがいいわ。本当よ。私を信じなさい」と設計図に勝手にかきこむ。
もう一度聞く。いったい誰のキッチンだよ?
「ううん、いらない」と譲らない私。しぶしぶ、かきこみを消すおばちゃん。

おばちゃんは見積もりを出すのに3時間もうちにいた。途中で 「コーヒーちょうだい」と飲み物までねだる始末だ。長く時間をかけることで (いまさら断れないかな・・・)という効果を狙うのだろう。「急がないとストックは品切れ寸前よ」と言ってみたり。
そんな小細工は効かないよ、私には。

「本当は9000ポンドだけど、会社には内緒で6500ポンドまで値引きするわ。もし、今、決められないなら、100ポンドの手付金でストックを押さえておくわよ」
―――9000ポンドの根拠はどこに?
「100ポンドの手つけ金だけでもしてよ。 契約が不成立の場合は返金するから」
―――このオババから、すんなり手つけ金が返るとは思えない。
「する気はないわ。今日中に電話する」
と、なんとか無事に追い返した。後から 「悪いけど、いらないわ」と短いメッセージを送る。余計な言い訳をしないほうがいい。

私はああいう強引なタイプは苦手だし、逆に反発してしまう。でも、気の弱い人ならうまく断れず、設計の内容にも納得できないまま契約してしまうかもしれない。
あの手の会社から見積もりを取るのは、きちんと反論できない人にはお勧めしない。

で、相変わらず、私のキッチンはボロのままだ。土曜の朝から掃除して損したな。

投稿者 lib : 09:08 AM | コメント (0)

May 10, 2007

スリ

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やられた。
会社の帰りにスーパーに寄り、お金を払おうと思うと財布がない。
ちょっと、待ってー、と青い顔になった。
「お取り置きしますよ、このまま」と親切なレジのおにいさん。
あのね、焦っているのは、ここの支払いができないことじゃないのよ。

ものすごく混んでいた帰りのバスだろうか? 

家に帰るとあわててカード会社にキャンセルの電話を入れる。
「最後にカードを見たのは、いつですか?」
ランチタイムのサンドイッチショップだ。その時間と場所を聞かれる。
「最初にカードがなくなったのに気づいたのはいつですか?」
夕方のスーパーマーケットだ。時間を答える。
カードに盗難保険をかけていてよかった。専用電話番号なのですぐにオペレーターにつながって 「グリーンスリーブス」も聞かずにすんだし。

スリに狙われるのは 「いかにもカモになりそうなマヌケ顔の奴」と思っていたのだが、自分が被害に遭ってみると、この持論を撤回しなければならない。
本日をもって宣言するが、スリにやられるのは 「優しそうな顔の人」である。
(どうして気がつかなかったんだろう? 私のバカ、バカ、バカ!)と思ってはいけない。

このように、いけ図々しい自己正当化・・・いや、柔軟性のある考え方を心がけるのは、ストレスの多い外国生活では必要不可欠である。
私はいくらドジを踏んでも、決して自分を責めないことにしている。

さて、 「顔の優しい」私がイギリスでの10数年間で、財布を抜かれたのは2回目だ。最初はビクトリア駅に近いパブでやられた。足元に置いていたので安心していたのだが。

「未遂」は2度ばかり。
一度は地下鉄の中、ふと、気がつくとバッグの口がパックリ。ハッとしたが、財布は無事。
横に立っている若い女の子がなぜか赤い顔をしている。おまけに腕にふわりとスカーフをかけた様子がなんとなく不自然だ。何も盗られなかったし、証拠はないので何も言わなかったが。

2度目の未遂事件もやはりパブだ。ここはロンドンブリッジの近く。
飲み物を注文しようとバーにいると男がハンドバッグに手をかけた (らしい)。このときは一緒にいた友人が気づいて声をかけたので、そいつはゴニョゴニョと言い訳をしながら、どこかに行ってしまった。

現在のところ、すられたのが2回、私が先に気づいたのが1回、友達が止めたのが1回だ。

スリ2、私1、引き分け1 というスコアである。負け越しなのがイヤだけど。

イギリス暮らしが続く限り、このスコアは更新されていくことだろう。

私の 「ものすごく、しっかりした」友達もオックスフォードストリートの店でやられたという。自他とも認めるタフな人間で、私なんか 「東京銘菓 ひよこ」に見えるくらいだが、さすがの彼女もプロのスリにはあっけなくカモられて 「まさか、あの人が?!」とみんなを絶句させたのだった。

武勇伝も聞いた。ある日本人女性がローマに旅行中にジプシーの子供たちに取り囲まれた。
ん? と思うと、ウエストポーチ(日本人ツーリストのお約束)のファースナーが半分開いている。が、ラッキーなことにまだ盗まれていない。
と、頭に来たその人、ジプシーのグループの中の一番年長そうな子供を捕まえると日本語で怒鳴りながら、

――――パッチーンと頬をひっぱたいたそうだ。(危険です。マネをしないようにね)

後ろ暗いところがある子供たちなので、文句を言いながらもさっさと逃げていったという。

先週、メールが回ってきた。
セントラルロンドンのキャッシュマシーンでお金を下ろそうと、暗証番号を打ち込んだ瞬間に、左側から新聞の無料紙が差し出された。右側にも人が立ったのが見えたが、しつこく差し出される新聞を払いのけるのに必死。200ポンドの現金が引き出されたのに気づいたのはふたりがいなくなってからだ。後ろに人が並んでいたのに、新聞の男に気をとられていて、もう一人の女が右からボタン操作をして現金を奪ったのはわからなかったらしい。警察に行くと同じパターンの被害届けがたくさん出ているので、現金の引き出しはなるべく銀行内のATMを利用してくださいと言われたとか。

悪い奴らがいっぱいいる。みなさんも気をつけてね。

投稿者 lib : 08:28 AM | コメント (4)

May 03, 2007

蜷川幸雄ロンドン公演

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蜷川幸雄のロンドン公演を観てきた。シェイクスピアの 「コリオレイナス」である。
演劇にはそれほど興味ないけれど、彼のロンドン公演は楽しみにしていて、これで3、4度目だ。35ポンドの席を手に入れた。

「超マザコンの不幸なローマの英雄とその非業の死」というよくある話である。シェイクスピアの作品でもあまり有名ではない。一応、あらすじや登場人物を予習してから行った。

「ニナガワ」といえばイギリスの演劇界での評価も高いようで、有名な俳優もたくさん見に来ている。 「ショービジネスのチャラチャラしたセレブ」ではなくて 「しぶい演劇人 - 自他とも認める演技派です」みたいな連中だ。
ハリーポッターの映画に出てた人とか、テレビのコメディ番組の常連とかの顔もある。

この日は緊張して早めに着いた。何せ 「恐怖の迷宮」バービカンセンターである。
コベントガーデンのロイヤル・オペラハウスとか、ウォータールーのロイヤル・フェスティバルホールに出かける日は普通の精神状態だが、バービカンセンターは 
(何とか迷子にならないようにしなければ・・・。無事に会場に行き着けるだろうか?)
と、不安で一杯だ。
「ロイヤル」という言葉がついているのといないのでは、ここまで違う。さすがは女王様の威光 (ナビゲーションつき)だな。

開演の1時間以上前に着いたら、中のバーがまだ開いていない。
天気もいいし、テラスのテーブル席でワインを飲みながら時間をつぶすことにする。
あー、いい気分・・・だった、おやじが来て目の前でカレーを食べ始めるまでは。
おまけに私の風上だ。急にお腹が空いたが、もう時間がない。

さて、館内に入ると日本人でいっぱいだ。いつも日本人の割合がドワッと多いウィーンフィル以上である。サントリーホールか、ここは。

しかし、こうして日本人の女の人を見るとみんな本当にほっそりとしてきれい。
日ごろ 「ビア樽のようなイギリス女の軍団」・・・いや、私たちに比べて 「大きな体格で胴回りの肉づきが豊かでいらっしゃるイギリス人女性の皆様」を見慣れた目には
(わー、小さくてかわいい!)と思ってしまう。服装もおしゃれだしね。
「あらー、鈴木さん、お久しぶりー!」とか、「まあ、ミユキちゃんのママ、お元気?」
などと手をふりあう様子もほほえましい。

ただし、日本人女性の弱点として 「トイレが近い」のも露呈した。幕間の休憩での女子トイレの行列は 「食料をもらうために必死の形相で並んだ難民の群れ」状態だった。
私? もちろん並びましたよ。
4-5時間も平気でトイレに行かないイギリス人のほうが不思議だわ。

さて、蜷川氏の舞台。豪華絢爛な衣装と派手な装置がいつも楽しみだ。

今回の衣装は主役が 「武士」で、母親役が 「西太后みたいな中国宮廷風」で、敵役が 「スペースオペラ」で、貴族役が 「キリスト教のモンク」で、民衆が 「コサック、ロシアの農民」だった。
どこの国の話だっけ? え? ローマ帝国?

舞台の大部分が階段になっている。ここですそを引きずるような舞台衣装の俳優が激しい 「殺陣」をするので、ハラハラしてしまった。練習中には相当数の俳優がねんざをしたのではと思われる。カキーンと刀がぶつかる音響効果。わーい、チャンバラだ!

この日のお気に入りは白石加代子。ローマの英雄の母親役は強烈な存在として、どの女優にもおいしい役だろうけど、この人も大迫力ですごかった。
息子でない私ですら思わず 「ママー」と叫んで、ひれふしそうになったもん。

そういえば、何年か前の公演で印象が強かったのは高橋恵子という女優だ。その昔は関根恵子といって 「元祖 魔性の女」と呼ばれていたらしい。地味な衣装の固い役だったにも関わらず、ものすごいフェロモンのオーラを発散していた。私はそれを 「色気玉」と名づけたのだが、直径3メートルもの色気玉が彼女と共に舞台を移動したので度肝を抜かれた。

「色気をふりまくつもりはないんですけど、含有量が多いのであふれ出てしまうんです。うふふふ・・・」みたいな雰囲気だ。

白石加代子といい、高橋恵子といい、女優というのは 「魔物」だと思った。

・・・「魔性の女」に 「魔物」か、かっこいいなあ。うっとり。

あ、そうだ。主役の唐沢寿明と敵役の勝村政信も超かっこよかったです(おまけ)

投稿者 lib : 08:50 AM | コメント (2)

April 26, 2007

狐つきの家 その2

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日曜日、隣のおばあちゃんがやってきた。
「お宅の庭にきつねがいるの。死んでるんだか、死にそうなんだか・・・」

この人が前回に私の家に来たのは、「ねずみ」(2006年12月7日のブログ)の件である。で、今回は 「きつね」か。 「動物シリーズ - 殺りく編」はまだまだ続く。

「庭のどこにいるのか、教えるわ」と家の中に入ってきた。
実はクリーナーのおばちゃんはこの3週間、ラトビアに帰省中である。彼女なしでは家の中の片づけに少し自信がないのだが、80歳を過ぎたおばあちゃんにダメとは言いにくい。

ほら、そこに、と裏庭を指差されてみると、確かに茶色いものが芝生の中にいる。芝生がのびているので草に埋まっている感じだ。きれいに芝刈りされた隣の庭ではなく、私の庭を選んだのは、草の感じが 「より自然に近かった」からだと思われる。
「ヨタヨタって感じで庭に入ってきて、そこに寝転がったままで動かないの」

私の頭に、
「庭に横たわる 『きつねのえり巻き』しかも無料」という 「鬼畜」のような考えが浮かんだ。
が、それに続いて、
「・・・を手に入れるためには、血みどろの解体作業が必要である」という文章がこだまする。しかたない。穴を掘って庭に埋めるか。

「あのね、役所に電話をしたのよ。でも、きつねの死体をひきとってもらうには50ポンドもかかるらしいの」とおばあちゃん。

なんだ、動物愛護よりは費用を心配していたのか。

「でも、公道に出しておけば、無料で回収するって」
きつねの死体を家の前に出しておくのも、何だかなあ。

と、その体の上をハエが飛び回ると、耳がピクピクと動いた。まだ生きてはいるらしい。
フラフラと立ち上がるとほんの数歩だけ移動して、そこに寝転がる。
「あら、生きてるわ!」と慌てるおばあちゃん。
歩き回ったあげくに自分の庭で死なれると50ポンドの費用が・・・と思ったのか、いったん、家に戻り、電話帳を持ってやってきた。

「出すぎたまねだと思わないでね。ちょっと動物保護の協会に電話してもいいかしら?」
はい、はい、何でもして下さい。
「お金はかからないから」
そこが重要なのね、おばあちゃん。

日曜日の午後だ。
死にかけたきつねを無料で引き取るような酔狂な・・・と思っていると、
「傷ついたきつねがいるんですって?」と保護用の檻を持った女の人がやってきた。
電話をしてからたったの20分。

以前に悪ガキが庭に入ったらしく、ガラスは割れなかったが窓に卵が投げつけられていたときに警察に電話をしたが、
「このたびは大変でしたね」という 「慰めの手紙」を受け取っただけだ。税金を返せー!
なのに、野生のきつねのトラブルなら日曜日でもたったの20分で駆けつけてくれるのか? 私はきつねになりたい (嘘だけど)

見るときつねは10メートルも移動していて、塀に鼻づらをくっつけたままで寝ている。

・・・・まさか、だらだらと昼寝しているだけでは?

が、動物保護協会のおねえさんが捕まえようとすると、すごい勢いで逃げていった。

後ろ足を怪我しているらしい。元気がなくてぐったりしていたのはそのせいか。
「あれでは狩りができないわ。何日もつらい思いをするくらいなら、安楽死させたほうがいいわね」と保護協会の人とおばあちゃんが相談している。

おい、足の怪我くらいで殺すなよ。
安楽死に対する考えは日本人とイギリス人ではかなり違う。日曜日なのに動物保護のために働くおねえさんは尊敬するけど、ちょっと違和感もある。
医者とか獣医にならなくてよかった。安楽死といいながらも、生きている人や動物の命を絶つのはちょっとね。

でも、ビジネスで同業のライバル社の 「息の根を止める」策略を練るのには罪悪感はありません。

投稿者 lib : 08:46 AM | コメント (0)

April 19, 2007

セクハラ

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セクハラといっても業界によってずいぶん違う解釈なのではないだろうか。

友人のひとりは 「地方公務員」である。オフィスの飲み会に呼ばれたこともあるが、(なぜ招待されたのかは忘れた)同僚の人たちはおっとりした雰囲気だった。古き良きイギリス、ビクトリア時代の道徳観を思わせるお行儀の良い人たちで、セクハラみたいなきわどい話題なんかとんでもない。職場でも飲み会でもお天気とかガーデニングの話しかしないような感じだった。

もうひとりは 「国家公務員」である。ここもまたオフィスの飲み会に呼ばれたことがある。 (どうして、私はやたらと他人の飲み会に行っているんでしょう?)
鋭いジョークが飛び交ってはいたが、口のきき方には気を使っている様子だった。
と、言うのも、ものすごく厳しい規律があるらしい。

たとえば、コピー機の修理に黒人の若い男の人が来ているとする。で、その人のことを 
「あのコピー機の前にいる 『黒人』の」という言い方をしてはいけないそうだ。
「若い」(年齢差別)と 「男の」(性差別)はまだ大丈夫らしいが、時間の問題かもね。

ちなみにその友人の奥さんは黒人なので、彼は人種差別で言っているのではないと思うが、
「性差別と人種差別をしないようにというルールが行き過ぎて、『黒人』で『女性』なら、いくら怠慢で仕事ができなくても、クビにはできない」と苦笑していたのが印象的。
ここまで来るとなんだかねえ。

さて、シティである。
ここはキャピタリズムの権化で男社会なので、何でもあり、だ。

ボスによると彼の若い頃にはシティで働く女性などいなかったそうだ。
「何で女性がいない職場で働く気になったの?」
「他にチョイスがなかった。でも、だんだんシティで働く女性が増えてうれしかった」
ふーん、でも今は私がアシスタントでかわいそうだね。

しかし、女性が多くなっても、シティはいまだにマッチョな習慣が生きている。
ドアは必ず開けてもらえるし、リフトでも先に乗せてくれ、レディファーストできちんと扱われる。パブで女が金を払うことはないし、ワイングラスが空になれば気を使うのは男のほうだ。

が、上記の 「地方公務員」に聞かれると目を回しそうで、 「国家公務員」なら 「諮問委員会」にかけられそうなお下劣さも日常茶飯。シティにある友人の会社では女性の胸の形のコンピューターのマウスパッドを使う奴、ヌードクッションを置いている男なんかもいるそうだ。もっとも、そんな会社で働く女性はまったく気にしないらしいが。

時々、新聞などで、
「セクハラをされたのでノイローゼになり、その結果クビにされた。賠償金を請求する」
という記事を見る。これがシティだと20万ポンド (年俸4600万円、もちろんボーナスは別)くらい稼いでいた女性ディーラーかなんかで、請求額は数ミリオンポンドだ。
(シティで数十万ポンドも稼げるなら、殺しても死なないくらいにハードでタフな女に違いない。そんな女に 「セクハラ」をするような 「向こう見ずな会社」があるのか? それを受けて 「傷ついたりするヤワな神経」を持っている女なのか?)と疑問に思うのだが、まあ、真相はわからない。

私に対して、ボスや同僚はセクハラまがいのジョークを言わない。
これは彼らが 「紳士」だからではない。下品なジョークは日本語、英語に関わらず、私の 「もっとも得意とする分野」で、下手なことを言うと、大の男が顔を赤らめちゃうくらいの事を言い返されるのを知っているからだ。
ふふふ、諸君、いつでもかかってらっしゃい。受けて立つわよ。

と、愚にもつかない事を自慢していると、元同僚のイギリス人の女性からメールが来た。 (たぶん、このメールはシティのあちこちで回覧中だと思う)
「ホリディに行った友達から、つまらない家族写真を送られてうんざりしていませんか? 大切なあなたには素敵な写真を添付しました。楽しんでね」のメッセージについてきたのは

若いイケメンのセミヌード写真が1ダース!

早速、職場の女の子と一緒に鑑賞、品評会を開いた。
ボスからは 「みんなでオンラインショッピングかい? その3番目の男なんかどうだ?」とからかわれ、男の同僚も 「好みの男の写真をスクリーンセーバーに設定してあげるよ」と親切である。
うちの会社がお堅い職場でなくて良かった。

・・・しかし、このイケメン写真。ゲイの雑誌からのコピーのような気がするんですけど。

投稿者 lib : 12:00 AM | コメント (0)

April 12, 2007

スピタルフィールド・マーケット

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数年ぶりにスピタルフィールド・マーケットに行った。目的は占いのおばちゃんに見てもらうためである。

リバプールストリート駅のそばのマーケットは会社の近くだが、週末にわざわざシティにやってくることはない。ずいぶん長い間、このおばちゃんに会ってないなと思いながらも、なかなか腰が上がらなかった。

週末は基本的に電車に乗らないことにしている。毎日、通勤しているのだから、週末くらい家でのんびりしたい、というのはまるで 
「日本のサラリーマンのお父さん」のようである。
私が 「間違って女の身体に生まれてしまった、おやじ」と呼ばれているのは満更はずれてはいない。

さて、スピタルフィールド・マーケットである。
おおっと、すっかり様変わりしている。
場末の青物市場、みたいだったのに、いつのまにかトレンディな店がショッピングセンターのように並んでいる。
まずい。存在そのものが骨董品のような私の占いおばちゃんはまだいるのだろうか???

と、奥まで進むと昔なつかしいマーケットのたたずまい。
「おばちゃん、おばちゃん・・・」と捜し求めると、いた、いた。
「久しぶりー!」と頬にキスをしてあいさつすると、名前をウェイティングリストに書いて順番を待つように言われた。

1時間くらいは待ってね、ということだったので、マーケットで時間をつぶすことにする。

ここにある品物は大量生産された既製品を見慣れた目には新鮮に映る。
「私が作りました」という感じで並べられた洋服は切り端も縫い目もけっこうずさんなのだが、パワーがあって良い雰囲気。ここで店を開いている荒削りのアーティストの中から未来のビッグネームが生まれてくれば楽しいかも。

食べ物屋のそばを通るとプーンと強烈なチーズの匂いがする。土がついたままの野菜やオーガニックの豆腐もある。一切れが10cmx10cmくらいで5000キロカロリーあるんじゃないかと思われるブラウニーやカスタードパイにも心ひかれる。
つい誘惑に負けて2ポンドのカスタードパイを買い、口のまわりを粉砂糖とパイ皮だらけにしていると、 「3D」で目に飛び込んできた人がいた。

ピート・ドハティだ。
スーパーモデル、ケイト・モスの麻薬ジャンキーなボーイフレンドである。
まわりの人に聞くと全員が彼の名前と顔を知っているが、誰も彼のバンド、ベビー・シャンブルの音楽を聴いたことがない。私もないけど。

新聞と週刊誌でおなじみの彼。えらの張ったベビーフェイスで、全然、好みのタイプではないのだが、本人を目の前にすると、
(ううむ、ケイト・モスが別れられないのは、これか・・・)という感じだった。
もちろん背が高いせいもあるだろうが、人ごみの中でもパッと光るような存在感があり、びっくりした。カリスマ性があって華やかなのだ。 
(ミュージシャンとして一流かどうかは知らないよ)

何であんな奴とつきあうんだ、とバカにされているケイト・モスにしても、
「負け犬のミュージシャンから離れられないスーパーモデル」という話題でメディアへの露出度は他の真面目なスーパーモデルに比べれば10倍以上である。

「商売上の損得」だけ考えれば、 「正しい男の選択」といえる。

まともな男と幸せな結婚生活をしているスーパーモデルの話なんかじゃ、つまんないもんね。

と1時間をつぶして占いおばちゃんの所へ行った。
このおばちゃんは仕事関係の占いが強いので、大いに期待している。15分から20分くらいのタロットカード占いで20ポンド。マーケットの中なのでガヤガヤと騒がしく、真横を歩く客からも茶々が入ったりして、集中するのは大変だが。

「私はお金持ちになれるでしょうか?」と聞いたら、
「カーキ色のショーツを履いた姿が見えるわ。あなた、砂漠へ行くわよ」と言われた。

―――砂漠で油田でも掘り当てるのだろうか?

誰か、どこかの砂漠で油田の採掘権をお持ちの方、私と組みませんか? 

投稿者 lib : 12:07 AM | コメント (2)

April 05, 2007

ミュージカル

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久しぶりにミュージカルを観に行った。 WICKED という魔女の物語だ。

ミュージカルよりはオペラの方が好きだが、会社の催し物にオペラはない。
35ポンドのチケットで自己負担が15ポンド。いつもこの 「自己負担分」というところにうちの会社のセコさを見るのだが、ま、いいか、わりといい席だったし。

仕事を終えたのが5時半でシティから劇場のあるビクトリア駅まで行かなくてはならない。7時半開演というのはその前に食事ができるか、できないかの微妙な時刻である。確実性をモットーとする日本人の私はとりあえずビクトリアまで行ってから考えることにして、 
「まず、シティで一杯飲んでからね」という同僚と別行動をすることにした。

何をするにも、なぜ 「まず、一杯」なのか、よくわからないのだが、ふふふ、この日に笑ったのは私だ。 (いつものことだが)

サークルラインに乗ったら、信号のトラブルがあったらしく、トロトロ運転でやたらと時間がかかる。これだから、電車では読むものを準備するようにしているのだ。
そういえば、夏の間、
「地下鉄に乗る前に飲み物をご用意ください」
というアナウンスが流れていたな。いったい何時間閉じこめるつもりなのか?

いつもなら20分くらいのところ、1時間近くかかってやっとビクトリア駅にたどり着いた。もうレストランでちゃんとした食事をする時間はなさそうだ。
(ワインでも飲んでから行こうかな)と思っていたのに無理みたい。

しかたなく、駅構内の店で適当なものを買って食べることにする。 
「適当なもの」はマークス・アンド・スペンサーのドライ・ブルーベリー入りホワイトチョコレート。いくらなんでも 「適当の度」を越えているが、これが「プリ・シアター・ミール」になってしまった。地下鉄サークルラインは責任を取って欲しい。

さて、劇場だ。
「ロンドンの地下鉄の不確実性」を考慮せず、シティで飲んでから来るというボケた同僚たちは当然まだ来ていない。とある列の真ん中に私ひとりがポツンと座って待った。周りの席がどんどん埋まっていくのに、隔離された皇族みたいに誰もそばに座らない。
みんなちゃんと来るのだろうか。ちょっと寂しいんですけど。

同僚たちも開演直前になんとか間に合い、あせった顔で席についた。
この機会に 「とりあえず、まず、一杯飲んでから」行動する習慣を考え直すように提案しておきたい。

見渡すと満席で、小さな子供の姿も見える。でも、煙を吐くドラゴンとか巨大なマスクが動くので幼児には少し怖い場面もあるかも。

緑の顔に真っ赤なルージュを塗った黒装束の女に白い帽子と服のきれいな女が内緒話をしているポスターは駅のあちこちで見かけていた。「悪い魔女」と「良い魔女」の恋と友情の物語だ。悪い(とみんなから思われている)魔女役は顔を緑に塗って、ジム・キャリーの映画 「マスク」みたいな感じで登場。この女の子は人気があり、歌うたびに大喝采を受けていた。

昔のイギリスのTVコメディ Young onesをご存知の人は、あれに出ていた長髪ヒッピー男のニールがちょい役で出演しているのも笑える。

ロンドンの劇場はときどき有名人が出演して、その人目当ての観客を動員するようだ。
EQUUS ではハリー・ポッター役の男の子(現在 17歳)がヌードで出演ということで、劇場の周りにティーンエイジャーの女の子のファンが押し寄せたという記事を読んだ。

・・・ちょっと見たくないなあ、ダニエル・ラドクリフのヌード。

最近はオペラでもオールヌードのシーンがあって、
(ヌードになる必然性はあるのか・・・?)と思うし、観客も気が散って音楽に集中できないのではないかと心配する。まあ、これも最近のオペラ歌手が 「普通の体型」をしているからできることで、もし、パバロッティがヌードで・・・いや、話題を変えよう。想像しただけで背筋の産毛が逆立ってしまった。

このミュージカルは有名人が 「ヤングワンズのニール」というレベルなので、実力で勝負というところだな。

いままでにロンドンで観たのは 「オペラ座の怪人」「シカゴ」「リトル・ショップ・オブ・ホラー」「サタデー・ナイト・フィバー」「ロッキー・ホラー・ショー (一番のお気に入りだ。映画も好きだし)」あたりだが、「ウィキッド」も楽しめた。

投稿者 lib : 07:27 AM | コメント (0)

March 29, 2007

怒りのキティちゃん

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キティちゃんから思わぬ襲撃を受けたので報告しておく。

先日のブログのコメントで 「眉毛つきの偽キティも見慣れれば、まー、いいか、笑えるし」と、つい 「容認」とも取れる発言をしたところ、キティちゃんより抗議行動があった。

真夜中、チリリンと鈴の音。

(ん? 鈴の音?)とぼんやりと薄目を開ける。

経験してみないとわからないと思うが、真夜中に部屋の暗がりのどこかから、ひそやかな鈴の音がするというのは相当コワイ。
まるで怪談 「牡丹灯篭」の下駄の音が 「カラン、コロン」と聞こえてくるようなノリである。

と、突然、頭の上にキティちゃんが落ちてきた。

心臓が一瞬止まる。夜中に大声で叫ばなかったのはラッキーだった。

このキティちゃんは90cmx50cmx50cmくらいの結構大きなビニール人形である。日本の友人が 「夏祭りの夜店」で購入してプレゼントしてくれた。
純正のキティで サンxオ製、メイド・イン・ジャパンと書いてある。

大きさからいって 「ドサッ」と落ちてくるところが、ビニール製で軽いので、どちらからというと 「パサッ」という感じだったが。

ベット脇のクロゼットの上に何年も置いてあったのに、なぜ、急に???

それから二日後、また、「チリリン」と鈴の音。
(あ、また来た!)と思う間もなく、キティちゃんの巨大な顔が私の顔の上に乗っている。

もうこうなると 「地縛霊」が部屋に住み着いているような状態である。
まあ、「来る」瞬間に 「金縛り」がないところはキティちゃんの優しい性格の成せる業か。

さらにもう一度、1週間に3度もこれがあった (しかも、全部が真夜中)さすがの私も考える。

―――キティちゃんは何か言いたいことがあるのではないだろうか。

で、上記の 「容認発言」が彼女の神経を逆なでしたのではと思い浮かんだ。

「眉毛つきの偽キティもOKって、一体どういうつもり? 許せないわ。あたしはね、悲しいときも寂しいときも女の子の永遠のお友達、

日本のスーパースター 『ワン・アンド・オンリー・キティ』なのよ!」

ということであろう。他には考えられない。

ごめん、キティちゃん、私が悪かった。

ここに訂正します。私は眉毛つきの偽キティは認めません。
(これでいいかしら、キティちゃん?)

原因不明の心臓発作により死亡。傍らにキティのビニール人形がころがっている。という状態で発見されるのを防ぐため、この場を借りて 「お清め」をしておく。

やっとこれで安心して眠ることができる。

・・・待てよ。

うちのキティに 「鈴」なんかついていたっけ?

家に帰ってから確かめるのが怖いんですけど。

投稿者 lib : 12:36 AM | コメント (2)

March 22, 2007

サクラ咲く

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桜が咲き始めた。

家の近くの駅のそばに桜の木が数本あり、そろそろ薄ピンクの花が見られるようになった。
日差しも明るくなって、日照時間も増え、春らしくなった証拠なのだが、桜を見る気分は複雑である。

というのも、イギリスの桜は日本に比べて華やぎと情緒がないからだ。

まず、数週間もずーーーーと咲いているのが気に食わない。3月の中旬から咲くとして5月でもまだぐずぐずと咲いていたりする。日本の桜のように、ほんの数日だけ満開の姿を見せ、さっと風や雨に散っていく、あの 「いさぎよさ」や 「はかなさ」に欠ける。

これでは木に咲く「ただの春の花」ではないか。安い、安すぎる。

最初から 「葉桜」の木があるのも、物事の順番を無視した行動と言える。

チャイナタウンあたりのバッタ屋 (安物のコピー商品を売る店)でキティちゃんの財布があった、なんて思って、近づいてみるとこれが偽物。われらのキティちゃんが 「眉毛」のあるマヌケな顔をしているのを見て、許せない気分になるのと似ている。

数年前、イギリス人の取引先、ミスター Mと一緒に日本に出張した。
うちの会社のクライアントと日本で一緒にミーティングをしましょうというのが目的だったが、実際はミスターMが 「抜け駆け」しないようにと 「お目付け役」としてボスから送り込まれたのだ。

(彼はビジネスクラスで飛び、私はエコノミーだった。まー、しかたないけど)

彼があるとき、
「ミーティングに行くたびに 『いやー、良い季節に来られましたね。いかがですか、日本の桜は』 『どうです? みごとな桜でしょう。イギリスにもありますか?』とみんなが桜の話ばかりするんだけど、どうしてなんだ?」と聞かれた。

「桜といえば、まさに日本の美なのよ」
「ふん、ふん、それで?」
「で、日本の美といえば桜なの」
「だから?」
「桜といえば、日本の美、日本の美といえば桜。わかる?」
「・・・・全然、わからないけど」
「もちろん富士山もあるけどね。そうそう、秋の紅葉も忘れちゃダメ。これも目で見る日本の美だけではなくて、心の面での日本の美。わかる?」
「????」

彼をますます混乱させてしまった。

日本の桜、あるいは 「大和なでしこ」と言えば、イギリスならイングリッシュ・ローズだろう。故ダイアナ妃なんかがよくそう呼ばれていた気がする。

しかし、日本の土でのバラの栽培はけっこう大変だが、イギリスではまるで 「雑草」のようにそこらじゅうに生えている。まあ、特別なバラならばそれなりに手間もかかるのだろうが、その辺のバラは何もしなくても好き勝手に花をつける。

何を血迷ったのか、12月ごろポンと咲いているバラを見かけることもあって、

(・・・節操のない花だ。季節というものを知らないのか?)と思わずなじってやりたくなる。

自国の花だって、季節感のないこの調子だから、日本の桜のように、この数日に生命のすべてをかけて咲き乱れる、ようなノリは理解できないのだろう。

こんなことなら、ミスターMを日本酒の匂いとカラオケが怒涛のように渦巻く、上野公園の花見に連れて行き、「桜フィーバーの極致」を見せてやればよかったと思っている。

イギリスの郊外電車に乗って線路脇を見ていると 「スギナ」に似た草があった。スギナがあるなら、 「つくし」もあるのだろうと、翌年、目をこらして探したら、確かにつくしも生えていた。しかし、これが巨大で直径1cm、高さは15cmくらいあるつくしだ。
これではおひたしにできない。

これもまた 「眉毛つきのキティ」だな。

投稿者 lib : 08:42 AM | コメント (7)

March 15, 2007

フリーメイソン

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フリーメイソンのパーティに行ってきた。

元同僚から 「友人が今年の会頭を勤めるのでお披露目のパーティにペアで招待されたけど、一緒に行く女性がいないので来てくれない?」と頼まれたのだった。
パーティの 「パートナー代行業務」といえる。

この手のお誘いはときどきある。正式なパーティはパートナー同伴が多いのだが、離婚率の高いイギリス人のこと、連れて行くべき妻がいない人もいる。
でも、イギリス人の女性に頼むと 「どんな関係?」 と面倒な憶測を呼ぶ。
で、 「妻とは別れたし、ちょうどガールフレンドもいないので、文化紹介がてら外国人女性 (私のことだ)を連れてきた」ということにするらしい。

代行してもお金を貰えるわけではないが、タダ酒が飲める上、50ポンド程度の食事も出るので、物見遊山も兼ねてお誘いに乗る。パーティは基本的に好きだし、11月、12月のパーティラッシュシーズンを除けば、仕事がらみでないパーティに出かけるのはいいものだ。

(ついでに言うと、「スピードデート」(2006年3月9日のブログ)の主催者からも、ときどき、「女性の人数が足らないから来て」と頼まれる。これは完璧に 「サクラ」だな。ただし、これもお金は貰えない。ネタにはなるが)

しかし、この招待を受けるときには少しもめた。
「フリーメイソンのパーティなんだけど、来てくれない?」
「ええ? ちょっとまずくない? 私、白人じゃないわよ」
「白人じゃないとまずいってどういうこと?」
「リンチされたりして」
「・・・もしかして、KKK団と間違えてない?」
「あ・・・」
・・・失礼しました。アメリカ南部の白人至上主義、人種差別ハードコア集団、秘密組織のKKK団と混乱してました。

リンチの心配がなくなったので参加することにする。

某地方都市のホールにフリーメイソンのメンバーが集まる。白人の中年男性が中心で奥さん連れのブラックタイ、ロングドレスのフォーマルディナーである。

「あれが友達なんだ。今年の会頭」
見れば彼の友人はなんと黒人のおじさんで奥さんは白人だった。
なーんだ。有色人種の人が会頭じゃないの。心配して損しちゃったよ。
(と、まだイメージはKKK団の呪縛からのがれていなかった)

「こいつさー、フリーメイソンとKKK団をごっちゃにして・・・」と私の無知をばらされそうになったのを何とかごまかした。

こういう会が主催のパーティはやたらと乾杯がある。まず、女王陛下に乾杯 (この国で一番えらい人だから当然か)それから創立者に乾杯、去年の会頭に乾杯、今年の新会頭に乾杯・・・と延々と続く。女王陛下以外は誰も知らないけど、まあいいか。

やはり、地方都市では「イギリス系白人」が多い。
あまり東洋人なんか見たことがないイギリス人のおばちゃんたちに色々と質問をされ、
「今度、お寿司の作り方を教えてね」という依頼をたくさん受けた。

イギリスの一般的な主婦は、米をとがず、水につけおくこともせず、たっぷりの水で、鍋にふたもせず、強火で 「ゆがく」。火が通ったら 「ざるで水切り」しておしまいだ。
そんな人たちに高度なお寿司の調理法など、というか、それ以前に 「米の炊き方」なんかを説明しようと思うと気が遠くなりそうだ。
はいはい、いいわよー、と安請け合いはしたが、実行する気はない。
(一夜の戯れ言だと思って、私のことなんか忘れてね)

メンバーのおじさんたちは何かのビジネスをしている自営業がほとんどで、現代のフリーメイソンは 「中小企業社長の寄り合い友愛会」であることが判明した。
こんなパーティも目的は 「奥さんにロングのパーティドレスを着せる機会を年に一回ぐらいは作らないと機嫌が悪くなるので」開かれているようだ。

目の部分だけ開いたとんがり帽子の白い被り物をして、パジャマのような服を着たKKK団に火あぶりにされたりしなくて本当に良かった。

リンチと火あぶりがないなら、また行きたい。イギリス人のおばちゃんたちにもかわいがられたし。次回までに彼女ができなかったらまた呼んでね。

投稿者 lib : 10:06 AM | コメント (4)

March 08, 2007

消防士

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今日もまたオフィスの非常ベルが鳴る。

ロンドンでは法律で決まっているのか、やたらと避難訓練がある。仕事の途中でもビルから出なくてはならない。

以前はみんな面倒がって、ベルが鳴ってもそのままデスクに残ったりしたものだが、テロ事件が増えてからというもの、きちんと指示に従っている。

うちの会社のビルは地下鉄であったロンドンのテロ事件の現場のひとつに近い。
午前9時ごろに爆発があった頃、同僚のひとりはもう出社していて、爆音と揺れを感じたらしい。それほど衝撃は大きくなかったので爆弾だとは気がつかなかったという。
しばらくして、警察がやって来てビルを出るように言われた。
クライアントと電話中だったので「この電話が終わってからね」と追いやったが、消防士が来て避難勧告すると、すぐに従ったらしい。

そうか、警察官よりも消防士のほうが 「格が上」ということだな。

現場に近かったので2日間はビルに立ち入り禁止 (会社も休みだった)。2週間ばかりは立ち入り禁止の青と白のテープが張られて、警官のガードが立つ中で、会社の身分証明書を見せ、テープの下をくぐって出社。
「おっ、山さん、ご苦労」
そう言いながら、警察のテープで囲まれた現場に入るという経験を一度してみたいと思っていたが、こんなことでかなえられるのはちょっとね・・・。
おまけに、正面玄関は封鎖され、毎回ぐるりと裏口に回らなければならず、面倒だった。

去年、非常ベルに何か問題があったらしく、一度、間違って作動すると1日の間に何度も繰り返して鳴り響き、ビルの外に出なければならなかった。
で、そのたびに消防車が来るのである。
「もしも」を考えれば、非常ベルの装置を切るわけにもいかず、消防署もベルを無視してしまうわけにはいかないのだろう。

しかし、日に何度も呼び出される消防士はいやだろうな。
内心、「ちっ、また、あのビルか。どうせ、ガセネタだろうな。でも、行かないといけないし。一度、ボヤでいいから燃えてくれないかな」などと思われていたのではないか?

ベルが鳴るたびにビルの外に出されるのもたまらない。毎回、消防車が来るのを待ち、消防士によって内部の安全が確認されるまで中に入れないのだ。
で、つい 「パブやワインバー」に 「避難」する連中もいる。一度、何度目かに鳴ったとき、同僚に誘われてワインバーに行ったら、そこのおねえさんが、
「あら、また来たの?」と言っていた。

非常ベルごとに酒を飲んでいるのか、君たちは?

さて、「消防士」というのはイギリスでは「たくましい男」の代表格である。自らの危険も省みず、炎の中に飛び込んで人命救助するヒーローなのだ。また、消火活動を行うためにトレーニングをかかさず、鍛えられた身体をしていると思われているらしい。
で、消防車がやってくると女性はいっせいに彼らに注目する。 

「ねえ、あの3番目の消防士、悪くないわよね?」
「そうかしら? ちょっと背が低いわよ」
「もう少し若いのを揃えればいいのに」
「この消防署、イマイチいいのがいないね」

といってガセネタで呼びつけられた上に、品定めまでされる。

悔しそうな男の同僚にこっそりと聞かれた。
「日本でも消防士はああやって女性に騒がれるの?」
江戸時代の 「火消し」は大人気だったと思うが、 「消防士」はどうなんだろう? 
小さな男の子にはヒーローかもしれないが、日本女性の憧れナンバーワンの職業とは思えない。
「さあ・・・イギリスだけじゃないの」と言うと、
「ふーん、そうなの」とうれしそうだった。

しかし、一日中デスクについて、コンピューターを見ているような運動量のせいで 「丸い体型」をしている同僚と軽やかに階段を駆け上がって行った消防士では 「勝負は明白」。

女の子にもてたいのだったら、スポーツジムに通って筋肉でもつければ? と思ったが、ま、その辺の判断は本人にまかせることにする。

投稿者 lib : 11:50 AM | コメント (2)

March 01, 2007

ランボルギーニ

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シティAMという無料新聞紙がある。

その名の通り、シティで朝、配られている。ほとんどが経済記事で企業のトップの交代とか、株価とかが中心だが、 「成金 サラリーマン」つまり、ちょいとボーナスを貰って懐具合のいいシティの連中むけの商品情報も載っている。

私のようにシティ勤めをしながらも給料の安い女にとっては、たいへん苦々しく思えるページなのだが、時々おもしろい話を見つけることができる。

ランボルギーニの社長のインタビューが載っていた。

私は車にはまったく興味がない。
赤い車として、二階建てバスのダブルデッカーと消防車と赤いポルシェがあったなら、
「乗るときにお金を払うのがバス」で
「はしごとかホースがついているのが消防車」で
「乗るときにお金を払わなくても良くて、はしごもホースもついていないのがポルシェ」
という区別しかつかない。

ポルシェもミニもランドローバーもすべて 「乗用車」であり、違いは 「ドアの数」と 「色」しかわからない。

しかし、さすがの私でもランボルギーニの名前くらいは知っている。
この社長は 「ボーナスが出るとフェラーリを欲しがる男が多いが、ランボルギーニのほうが個性的でクール」みたいな話をしている。

で、その値段だが、10万ポンドから17万ポンドとある。(2300万円から3900万円)
ふーん、車ごときにねえ。ロンドンの移動なんて地下鉄に乗れば、初乗り料金がたったの4ポンドじゃないの。(・・・考えてみると公共交通機関のくせに、めちゃくちゃ高いな。日本のタクシーの初乗り料金のほうが安いってなんなのよ)

さて、この値段はロンドンのワンベッドルームのフラットくらいだと書いてあった。
10万ポンドでロンドンに不動産なんか買えないだろうと考えていて、ふと、ひらめく。
(と、いうことは、私にも買えるじゃないの)
こう見えても家はある。それを売ればランボルギーニが買えるのだ。

BMW、ベンツ、ポルシェ、ジャギュアくらいの車には乗ったことがある。バービー人形とケン人形が乗ったら、残りのスペースはゼロ、というイタリアの小さなスポーツカー(名前は覚えていない)にも乗った。

ただし、すべて助手席だ。助手席に乗せてもらうのと、所有して運転するのでは、
「えびの天ぷらを食べる」のと 「えびの養殖場を経営する」くらいの違いがある。

そうか、ランボルギーニか・・・。

あ、しまった。ミルクを買うのを忘れた、なんて時も、
「スーパーまで車を走らせてくれない? ランボルギーニの新車なんだけど」と言えば、
100人くらいの応募者があるだろうから、ショッピングも楽勝だ。

「お母さん。あのね、ランボルギーニを買っちゃったの」と日本に電話をする様子を想像してみた。どうだ、親戚の誰もランボルギーニなんか持っていないだろ。
しかし、
「そうなの。ランボルギーニを買ったの。よかったわね。それで、ロンドンの天気はどうなの?」
という会話になると思われる。まず第一に、ランボルギーニが何なのか知らないはずだ。

私の小説が出版されたときも、
「お母さん。あのね、小説が出版されることになったの」と電話したら、
「そうなの。小説が出版されるの。よかったわね。それで、ロンドンの天気はどうなの?」
と言われたことを思い出した。(実話)

うーむ、これでは全然、見栄を張れないではないか。

親にすら自慢できないランボルギーニなど、コストパーフォーマンスがいい車とは言えない。

それによく考えると 「ランボルギーニのオーナー」にはなれるものの、その代償として 「家なき子」になるのである。

この車の購入に関しては 「人生における優先順位」に関しての熟慮を要するようだ。

投稿者 lib : 09:12 AM | コメント (2)

February 22, 2007

ちょい詐欺事件 その2

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ピカディリー・サーカスやコベントガーデンあたりで、小さな花のブーケを押しつけられることがある。 一度、電車の中で座席や床にゴミを撒き散らしながら、せっせとこのブーケを作っていた親子を見た。会話からはとてもチャリティには思えなかった。

日本から来た親戚の子と歩いていたときに、さっと差し出されたことがある。 
「ロンドンの歩き方 - 詐欺編」は教えこんでいたので、ふたりで知らん顔をしたが、
「これはね、チャリティなのよ」と追いかけられた。
「あーら、そうなの? じゃ、どうしてIDカードをつけてないの? チャリティの登録番号を見せて証明しなさいよ」と問いつめてやろうと思ったが、
親戚の子に 「ロンドンの広場でチャリティの人に喧嘩を売ってたよ。こわかった」などと私の親に 「通報」されるとまずい。しかたなく、「英語がわかりません」と逃げた。

「ロンドン貸し部屋フェア」という広告が新聞に載った。
ビクトリア駅に近いビルの一室に 「たった今、運び込まれたばかり」といった感じでデスクが置かれ、5-6人のスタッフによって 「一時的に」開かれている。
部屋探しに来ているのはイギリス、あるいはロンドンに 「来たばかりで様子がわからない」旅行者か留学生という雰囲気の連中。
バイトで雇われたが、不動産のことは何も知らない。雇い主の顔も見たことがないのではないかと思われる若いスタッフが対応する。

探している部屋の場所や予算を聞くと、その場でどこかに電話を入れる。
「はい、わかりました」と言い、電話が切られる。
「あなたの希望にあう物件がいくつかありますが、紹介料として100ポンドを内金で払ってください。部屋が決まった時点でその内金は部屋代の一部となります。トラベラーズ・チェックはダメです。現金でお願いします」ということだったそうだ。

友人は怪しいと思ってやめたというが、数日後には 「フェア」の会場はもぬけのカラで 「内金」にもさようなら。部屋なんて元々ないしー、の世界だったのではないか?

先日はシティの道端で呼び止められた。
「きれいな髪ね。どこでヘアカットしてるの?」
「よく言われるの、きれいな髪だって。特に男の人にね。パーティなんかで・・・ペラペラ」
(ご推察通り、ワインバーから出てきたところで、私は酔っ払っていた)
話しかけたおねえさんは私の話をさえぎる (誰でもそうするだろう)
「有名なヘアドレッサーがカット、プロがメイク、それをカメラマンが写真をとるイベントだけど、興味あるかしら? キャンペーン価格でたったの45ポンドなんだけど」
―――この場で現金を払う人だけ予約できるとか。 
「わー、素敵! お金とって来るから、ここで待っててねー。きっとよー」
と言ったきり、帰ってこなかったのは私だ。

何せ、酔っ払っていたからねえ。

「ナイジェリアからの手紙」は有名だ。
「ジョーンズ氏が死去されましたが、遺産を受け取る家族はおられません。当弁護士事務所が調査したところによると、貴殿が遠い親戚関係にあるようです。遺産の200万ポンドを受け取る気があればご連絡ください」
おお、ジョーンズ氏という親戚があったのか、知らなかった。なになに、200万ポンドの遺産だと? 欲しい、欲しい、と返事をする。
この後の展開はたぶん、
「ご親戚の方が見つかって、当弁護士事務所も責務を果たし安心しました。つきましては送付先として貴殿の銀行口座をお知らせください。また、この案件に関しまして、弁護士費用と銀行送料の1500ポンドがかかりますので、お支払いくだされば幸いです。それを受け取り次第、遺産をお送りいたします」といった感じではないだろうか?

200万ポンドのためならと1500ポンドの手数料を払う・・・人がいるのか?
手数料を払った後で、すんなり200万ポンドを受け取った・・・人がいるのか?

しかし、日本の「何百万円、何千万円」とかの詐欺に比べて、イギリスの詐欺はせこいねー。

M資金とか徳川の埋蔵金とか日本陸軍の隠し金塊みたいに派手な詐欺を聞いてみたいものだ。

おもしろい詐欺話があれば、教えてください。(いえいえ、まねをして、ひと稼ぎするつもりはありませんよ・・・)

投稿者 lib : 09:31 AM | コメント (0)

February 15, 2007

ちょい詐欺事件 その1

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日本では「オレオレ詐欺」が天文学的被害額になっているらしい。

イギリスでもときどき 「ちょい詐欺」を見かける。

毎週、金曜日になると会社に送られてくるファックスがあった。
「ショッピング・モニターになりませんか?」
「格安の旅行に興味はありませんか?」
「ミュージカルや映画を半額で観ませんか?」
とチラシ風のものである。

添付されたアンケート用紙をファックスで送り返すか、電話で質問に答えると、服やバッグ、旅行、観劇といったものが、半額とか割引されるという内容だ。
デザイナー・ブランド、ハイストリートのブティック、カリブ海のホテル、最新の映画やロングランのミュージカルの名前が列記されている。

ちょっと見ると、「マーケッティングの会社」が 「消費者動向」を調べているような感じ。
興味があれば、この番号に電話するか、ファックスを送り返してください、という。

で、一番に下に超小さな文字で「通話料は一分間で2ポンド50ペンス」と書いてあるのだ。

この番号につながると、あっという間に通話料が10ポンドなんてことになるのだろう。
ファックスに書いてある特典が本当にあるのかどうかは知らない。

無視していると、「このキャンペーンのファックスを受け取りたくない場合には、当方までお知らせください」というファックスが送られてきた。もちろん、その番号も一分間で2ポンド50ペンスだったが。

先日は「元気にしてる? オランダから帰ってきたよ」というメッセージが私の携帯に入っていた。なじみのない番号からだ。 「ドリンクしようよ」とか 「週末、暇?」なんてのも来た。イギリスとオランダを行き来している友人がいたのを思い出す。
最近、会っていないけど、彼かな?

「電話があったよ。名前はえーと・・・」
なんて状況でも、相手が女友達なら、
「電話した? してない? じゃ、xxさんかもね。そっちにかけてみるわ」
ということができるが、

男友達だと、
「ケビン、電話した? してない? じゃ、マイクかしら?」
「マイクって誰だよ?」
「え? 誰でもないわよ・・・」
みたいな状況を招きかねない。

ボスの携帯には「あなたにひそかに憧れている人がいます」というのが来て、彼はてっきり 「私」がいたずらをしかけているのだと思ったそうだ。
(10年間も働いている自分のアシスタントに対する信頼はいったいどこに?)

どうもこれは詐欺らしい。「誰だろう?」と思ってメッセージを送ったり、電話をかけてしまったりすると、数10ポンドの通話料がかかるという噂だ。

「文句があるなら言ってみろ」と脅すタイプとか 「どうして来ないの? ずっと待ってるのに」と心配させるタイプとか、いろいろなパターンがあるらしい。

道で配られていたスクラッチカードで 1000ポンドの「当たり」が出て、大喜び。
(たぶん、これは全部のカードが「当たり」になっているのだと思う)
数年前、オーペアがモジモジしながら、「ちょっと・・・」と聞く。
公衆電話から、「当たりが出たらかけてください」という番号に電話をしたらしい。 
(オーペアがいたときは、うちの電話はプレミアレートの番号にはつながらないようにしてあった)

「次はああして下さい、それから、こうして下さい」と電話のボタン操作を指示する録音が延々と続き、何ポンドもの通話料を取られたが、「当たったので賞金をください」というところまでたどり着かないというのだ。
「これね、実は詐欺で・・・」と説明すると、がっかりしていた。

当時、チェコ、スロバキア、クロアチアあたりでは中級公務員の月給が200ポンド程度だったらしい。1000ポンドあったら、帰国しちゃおう、という気持ちもあっただろう。
オーペアの週給が50ポンドくらいだったから、たかが数ポンドの損失でもかわいそう。
このスクラッチカードを受け取ったうちのオーペア3人の中でひっかかったのは1人だった。 三分の一か、けっこう確率高いな。

投稿者 lib : 02:01 PM | コメント (0)

February 08, 2007

社内研修

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社内の研修でエクセル(中級)の1日コースに参加した。

ワードとか、パワーポイントなんかのコンピューターのコースの他に、時間管理術とか法令順守とかの一般的なビジネスコース、それから仕事に直接関係する専門的なものと豊富。
けっこう勉強になる。

日本人のクライアントの中にものすごくコンピューターができる人がいて、その人がときどき高度な仕掛けのついたエクセルの表を送ってきて、
(・・・・・?)という状況になることがある。

私はエクセルの入力はめったにしないのだが、日本語のものだと仕事上、関わりがある。
エクセルは一通りできるが、もう少し複雑なテクニックを習うことにする。

「おはよー」と講師がやってきた。
あ、この人、知ってる。
何年も前に別のコンピューターのコースで講師をしたおじさんだ。
人の顔を覚えられない私が、なぜ彼を覚えていたかというと、
「ものすごく強烈なくせのある労働者階級英語」を話すからだ。

東ロンドン、下町のブリックレーンあたりの「公用語」(最近はアジア系の人が多いから、ヒンズー語とかのほうが多数派かも・・・)

最近、これを聞いたのは「ペストコントロール」こと、「ネズミ捕りの専門家」のおじさんだ。(12月7日のブログ参照のこと)

正直、前回も苦労した。10年前の私なら、この手の英語は1%ぐらいしか聞き取れなかったと思う。地方なまりとも違う 「階級」あるいは 「特殊なグループ」なまりである。
これは外国人には厳しい英語だ。

「まろは京都の公家じゃ。はんなりと香をきくのが好き・・・」とか
「あちきは吉原のおいらん、桜太夫でありんす」とか、
「おいらは江戸っ子だい。宵越しの銭は持たねえよ、べらぼうめ!」
で始まる自己紹介を 「外国人向け」の 「日本語検定」の 「聴き取りテスト」に出されるようなものだ。

全身を耳にしてトレーニングに臨んだ。

「じゃ、ここで 『オーム・キー』を押して」
・・・オーム? 鳥の鸚鵡?
そんなキーはどこにあるのか、とモタモタしていると、
「お姉ちゃん、これだよ。 OME キー」

おじさん、それは 「ホーム」HOME キーです。

労働者階級英語は H が落ちるのだった。

「それから、Fフリーを押す」
・・・Fフリー? F free?
「ここ、ここ、お嬢ちゃん」
おじさんの指はF3を指し示す。

そのキーは Fスリー threeだってば。

労働者階級英語を話す人は TH が発音できないのだった。

あー、疲れた。講師のおじさんは 「コンピューターのキーの位置もろくにわからない外国人労働者」の私に親切だったけどね。

翌日、会社の同僚に
「おほほほ、これでエクセルもバッチリよ。これからは 『エクセルの魔女』とあたくしをお呼びなさい」と宣言したのだが、トレーニング中にとったメモは
「ここで同時にコントロールキーを押す」
・・・「何」と同時に?
「この後でF4から選ぶ」
・・・「何」の後で 「何」を選ぶんだっけ?
と、わけがわからない。
講師の英語の聞き取るのに必死で、メモがすっかりおろそかになっていたらしい。

トレーニングの内容は別冊子でもらったので、それで復習したが、
「パワーポイントのコースも行けば? 同じ講師だと思うよ」と同僚から意地悪を言われている。

投稿者 lib : 09:56 AM | コメント (0)

February 01, 2007

ポッシュな人々 成金編

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先週の続きです。

「成金 = 最近になって金持ちになった人」は 「古い家柄の特権階級 = 何代か前に金持ちになった人」から嫌われることになっている。

で、最近の 「成金」の象徴は 「ヘッジファンド・マネージャー」らしい。 

新聞によると、某金融機関のシニアパートナーの 「基本給」は年俸で10ミリオンポンド (22-24億円、ポンドと円の為替レートが2円違うと2億円の差!)だそうだ。 
これに、バーーーーンとボーナスが上乗せされる。
(40ミリオンポンドものボーナスを貰った人の記事を見た。もし、今までに 「殺意」というものを感じたことがない人は、この記事を読んでみてください。)

毎年、毎年、巨額の宝くじが当たっているようなものだ。こんなに貰っていてはきっと財産管理に困るだろうな。
(ヘッジファンド・マネージャーの皆さんへ、もし、使い道に悩んでいる場合にはご相談に応じるつもりです。いつでも声をかけてくださいね。)

ロンドンのウエスト・エンドにあるバークリー・スクエアは 「新 スクエア・マイル」と呼ばれている。 「スクエア・マイル」は本来、金融街 「シティ」の別称。
ウォーターフロント地区のカナリーウォーフに銀行がつぎつぎと本社を構え、 「新興 金融街」を形成していたのだが、いつの間にか、こんなところにも・・・。

伝統ある金融街、シティのビジネスマンが 「カナリーウォーフの成金」連中をねたんでいたが、ここで、 「バークリー・スクエアの 『新』成金」の登場でもって、さらなるバトルが展開されているのである。 
これからの進展が見逃せない。
ロンドンで開かれるオリンピック関連用地の不動産ビジネスで、下町のおやじが由緒正しき 「土地成金」などになれば、 「成金」のバラエティがさらに豊富になり、楽しいと思う。

さて、成金に群がる女性たちのウォッチングも欠かせない。
金持ちの男を捜すプロジェクトは 「バークリー・スクエア」で働く男が行きつけのクラブやスポーツジムを中心に行われるらしい。 

「ゴールド・ディガー」 は離婚話の持ち上がっているポール・マッカートニーの 「将来の前妻」ヘザーを罵倒するのに最近よく使用されている 「玉の輿を狙う女」である。

「結婚とは 男の社会的地位と財布の重さに対する、女の顔と若さの等価交換である」
そうだから、64歳の元ビートルズのポールと39歳で元モデルのヘザーとの 「商取引」に不正はなかったと思うけど・・・。

WAGS(ワグス)といえば、もともとはサッカー選手のワイフ・アンド・ガールフレンド(複)で、夫やボーイフレンドの巨額の収入でデザイナーブランドを買いあさる女たちのこと。

で、このごろはヘッジファンド・マネージャーのWAGSが幅をきかせ、ダブルバレルのポッシュな人々を悩ませているそうだ。

ここでの「悩ませる」というのは
「成金のくせに、私たちよりも金回りがいいのを見せつけて、頭にくる行動と買い物をするので腹が立つ」という意味のことを「上品な言い回し」で表現したものである。

「いくらお金持ちといっても、それは商売で築いた財産。代々の名家ではない(お下品な)家族」というのはジェーン・オースティンの小説で出てきたフレーズ。
作品は200年も前のものだが。
でも、200年前の「成金」なら、もう「成金」じゃないだろうね。

ヘッジファンド・マネージャーの皆様も2-3世代、50年もたてば 「成金」とさげずまれなくてすむので、しばしのお待ちを・・・。

あー、庶民でよかった。

申し込み用紙の書き込みも楽だし、新興勢力の財力に追い立てられる余計なプライドもないしね。 もちろん、成金なんて呼ばれることもなし。

プライベートヨットで開かれるサントロペのパーティなんかに興味はないよーだ。

(本当です。強がりではありません。決して、悔しまぎれの強がりではありません)

(・・・もう一度、念のため申し上げますが、羨ましがっているのではありません・・・)

投稿者 lib : 09:38 AM | コメント (0)

January 25, 2007

ポッシュな人々 名家編

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「タxラー」という雑誌を買った。3ポンド60ペンス。いつも読み捨てる1ポンドの雑誌に比べてドーンとぶ厚くて紙の質も数段にいい。

広告を見ると読者層がよくわかる。
シャネル、プラダ、グッチとお馴染みのブランドの広告が並ぶ。ただし、「なんちゃってモノ」はなく、2500ポンド (55万円)なんてニットワンピースがさらっと載っている。 一般女性誌の 「カタログショッピング」の 「16ポンド99のカーディガン、2枚目は半額」の10倍ではなくて、100倍以上だ。 「本物の宝石」のネックレスなんかもあって、フランス革命で貴族をギロチンにかけた庶民の気持ちがわかる気になってくる。

女性誌の巻末広告は「占い師」が定番だが、ここでは「パーティ業者」とか「離婚専門の弁護士」がメインである。

そのほかにエキゾチックな旅行 (格安チケットではない)
高級エステ (ドラッグストアのお手ごろ価格のクリームではない)
デザイナーブランドもの紹介の間にあるのは・・・・

「読者のみなさん」の「パーティ風景」

場所はポロの試合(サッカーのように庶民的なスポーツではない)。
ロンドンではウィリアム王子やハリー王子も常連のホットなプライベートクラブ (会員以外は入れない)。
あるいは「プライベートジェット」で行く「サントロペ」にある「プライベートヨット」でのお誕生日パーティ。

・・・そう、サントロペ。

これが庶民なら、「パッケージツアー」で行き、「コンドミニアム」に泊まる 「イギリス人のハワイ」であるスペインの「コスタデルソル(太陽海岸)」の「英国風パブ」が舞台だが。

スナップショットの顔ぶれにはショービズの人はほとんどいない。
有名人ではないが、名字がすべてを物語る。ロスチャイルドとか、ギネスとか、アルファイド(ハロッズのオーナー)。フランス人なら名字に de がついている。

XXXさんのお招きでXXXさんのヨットで開かれたパーティに行ったら、XXXさんとXXXさんが来ていました。みたいな文がある。

こ、これはもしかして「社交界マガジン」???

ダブルバレルと呼ばれる名字がつながっている人もいっぱいいる。
数世代前の「名家」と「名家」の婚姻を示す、リーズ=ジョーンズとかスミス=ベイリーみたいな人たちだ。
すごいのになると3つもつながっている。
ウエスト=ブラックネル=シェリングスとか。たぶん、下の名前に加えて洗礼名に堅信礼名もあるだろうから、
ジェイムス トーマス デヴィッド・ウエスト=ブラックネル=シェリングスとかが正式な名前だろう。
ジョン・スミスさんなら1行ですむところ、この人なんか名前の紹介だけで、3行くらいの場所を取る。

日本なら、さしずめ「徳川=水戸=綾小路」だ。下の名前が「ハチ」なんて軽いと、ちょっと座りが悪いなあ。「柿右衛門助清」とか「秀麻呂五郎太」くらいの重みは欲しい。
縦書き文化のつらいところである。

一時期続いた銀行の合併を思いだす。(古い話で申し訳ない)
「太陽神戸X井」とかね。私はひそかに「北海道X殖」も、ここと合併して欲しいと思っていた。
「太陽神戸X井北海道X殖銀行、飯田橋四谷新宿合同支店」なんて、もう日本語を離れて、すっかり漢詩の世界。4行に分けて墨絵の掛け軸に書いてあっても違和感がなさそうである。

もっとも、こんな銀行名を書かされる経理の人は頭にくるだろうな。
50回も書けば、うんざりして辞表をたたきつけることになるかもしれない。
私の望みはかなわず、あっという間にひらがな3文字の銀行が続々と誕生したが。

このトリプルバレルの人たちも名前を書くたびに、かったるい思いをしているのだろうか? 
「お申し込み用紙のここと、ここと、ここにお名前をご記入ください」などと言われると、他の人の3倍も時間がかかる。名家に生まれるのも楽ではない。

投稿者 lib : 09:25 AM | コメント (2)

January 18, 2007

ロンドン塔でスケート

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会社の主催でアイススケートの会が開かれた。場所はロンドン塔の外堀 (水はない)に設えられた屋外スケートリンクである。団体用滑走券は1時間で10ポンドだが、そのうち参加費として5ポンドが個人の負担。一般料金はもっと高いかもしれない。

うちの会社はロンドン塔まで歩いて5分。5時半ごろから参加者は次々と着替えを始めた。
ジーンズにセーターとスポーツジャケットという姿であるが・・・。
女のほうはともかく、男の同僚のカジュアル姿のダサいこと、ダサいこと。
さっきまで 「シティのクールなビジネスマン集団」だったのに、今は 「ド田舎のむさ苦しい青年団」に成り下がっている。やだなあ、こいつらの服装センス。

私はイギリス男の 「ディナージャケット」と 「ビジネススーツ」は世界トップクラス(おしゃれ着はイタリア男やフランス男に負けるだろうからね)と個人的には評価しているのだが、彼らの 「カジュアルウエア」は世界最低グループに入れている。

アイスリンクまで数人の同僚と歩くのに、
「どうしたの? 珍しく静かだね」と言われたのは、
(寝ぼけた服を着た男たちと一緒に歩いているのを見られたくない)という思いがあったせいである。なるべく彼らから離れて足早に歩く。

タワーヒルの駅から地下道に下り、ロンドン塔に出るとスケート場が現れた。
ロンドンの冬の夕暮れ、ナイター施設の照明にアイスリンクはキラキラと輝き、まるで湖のようである。なんてロマンティックなんでしょ!

・・・と思ったのは浅はかで、湖のように見えたのは、実際に 「湖」状態だったからだ。
氷の表面を覆った水に 「さざ波」が立っている。
あの水たまりの上をすべるのか? ここで全員の腰がひける。

アルミのフレームにガラス戸、天井はビニールシートで、風が吹くと 「震度5」という仮設テントに入ったのが6時。早速、同僚はその中にあるバーに群がり、ビールだ、ジントニックだと飲み始める。

こら、スポーツ活動の前に酒を飲むな!

スケート靴を借りに並んだ。イギリス人のスタッフが暇そうにブラブラしているのに、混雑している貸し靴コーナーでは、東ヨーロッパ系らしいアルバイトが走り回っている。
その昔、植民地の労働力をイギリス人は搾取してきた。このごろは東ヨーロッパからの出稼ぎを働かせて、自分たちは遊んでいる。
大英帝国の頃の悪い癖がまだ抜けていないようだな。

さて、いよいよスケートだ。
実はこの日を楽しみにしていた。小学生のとき、スケートは得意だったのだ。
恐る恐る、氷の上に上がる。おおー、こわい。
私が小学校のころなんて、昔も昔、まだ男の人はチョンマゲを結ってたくらい昔の話だから無理もない。

運動神経は悪いくせに、イギリス人には妙に強固なチャレンジ精神がある。 
「スケート、生まれて初めて・・・」 と言いながらも、怖がらずに一生懸命やっている。
「子供の頃、スイスイ滑ってたんだよねー」と威張っていた私の立場はどうなるの?

手すりにしがみつきながら、一周する。まるで、シベリアの永久凍土の氷原を100kmも踏破したみたいで、足の筋肉がカチカチになった。
「ちょっと休憩・・・」とリンクから出る。

シティのビジネス街の高いビルを背景に、片側はテムズ河、一方は首をはねられた受刑者の怨念がドロドロとこもるロンドン塔・・・というユニークなロケーションである。
心細げな女の子を支えながら滑る男の子がいて、銀盤の初々しい恋人たちという雰囲気。
スーツ姿のままで滑っているお兄さんもいた。ころばない自信があるらしい。

いつまでも見学していてもしかたがない。もう少し滑るか、と思った瞬間、女の人が転倒して、後頭部を打つ。どこから現れたのか、赤いユニフォームの係員が彼女を拉致して・・・いや、助け起こしてリンクから連れ去った。
思わずテント内に逃げ戻り、その後の飲み会までこっそりと待機することにする。
なんだか悔しいなあ、思うように滑れなくて。

スケートが終わり、パブのドリンクではいつものきりっとしたビジネススーツ姿ではなく、田舎臭いジャージ姿の男たちに囲まれる。
「きょうはおとなしいじゃん」と言われたが、
(老けた貧乏学生みたいな格好の男たちと一緒に飲んでいるのを見られたら、私の評判にかかわる)といつもより口数も少なく、同僚から距離を置くのに必死な私だった。

投稿者 lib : 09:20 AM | コメント (0)

January 11, 2007

今年の運勢と抱負

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2007年である。「今年の抱負」のつもりで、つい、「今年のホース」と打ち間違えてしまい、年初から、これからの1年に暗雲を見たような気分だ。

海外に住んでいて何が冴えないって、お正月の盛り上がりに欠けることである。
「紅白歌合戦」に続いて 「永平寺の除夜の鐘」と 「年越し蕎麦」を食べながら、正統派のおおみそかを過ごしている親に電話をするのが、時差の関係でイギリス時間の午後3時というのも雰囲気が出ない。

イギリスでは真夜中に 「ビッグベン」の大時計がテレビ中継され、カウントダウンが終わると 「ロンドンアイ」で花火が上がり、車がクラクションを鳴らす。
・・・で、「新年のお祝い」はおしまい。
クリスマスでエネルギーとお金を使い果たしてしまい、厳粛なる年の初めをダレた態度で臨むイギリス人も気に入らない。

私は真空パックのお餅で 「お雑煮」はなんとか確保したものの、「初詣で」も「おせち」も「お年玉」もない新年だ。つまらないなあ、特にお年玉のないのが悲しい。

さて、今年の運勢はどのようなものか。

あちこちのウェブや雑誌でいろいろと調べてみる。
生年月日の数字をすべて足し、偶数年、奇数年に分ける。で、それを7で割って、円周率(嘘)を掛ける・・・みたいなのをやってみた。
占いのツールは普通、水晶玉やタロットカードだが、カシオの電卓というのも渋い。

私の運命数 「あなたは人に気を遣い、自分が犠牲となるのを厭わない人です。恥ずかしがりやなので、異性と口をきくことさえできません。もっと、自分に自信を持ちましょう。そうすれば運が開けます」というのが出て、一緒にいた友人は床に倒れて笑い死にしそうになった。
うーん、私の性格とは若干の相違点が見られるようだ。

やはり西洋占星術が一番好きなので、これを中心にチェックする。
しかし、占い師によってずいぶんと違うことを言っているな。すべてがうまく行くというラッキーなのから、何をやっても空回りで結果は来年まで出ないとか。

別の銀河系の星を見てるんじゃないのか?

今年は恋愛関係がダメらしいが、まったく気にしていない。なんせ数年前に 「恋愛、結婚運が悪い30年周期の中にいます」という運命を見たばかりである。
・・・30年周期って。

ま、これは考えようではめでたいことである。
素敵な人と知り合ったと思っていたら、実はその人の性別が女だったり、すごいハンサムから話しかけられてうっとりしていると、その男から 「マルチ商法の肌がけ布団」を勧められるとかしても、すでに運の悪さは予言されていることなので気にならない。

こんな時期には気に入った人がいればバシバシ声をかけ、次々とデートに出かけて楽しめばいい。どうせ、恋愛はうまく行かない星まわりなのだから、だまされたり、ふられたりしても本人が悪いのではなく 「運命」のせいである。好き勝手しても自分に責任はないという気楽な年と思えばいい。

逆に、「今年こそ、運命の男性に巡り会います。あなたの魅力にひれふした彼は今年中にプロポーズをするでしょう」なんて書いてあったとする。
で、会う男、会う男がとんでもないスカだったり、誰からも相手にされなかったりすると、12月31日の夜8時には、
(結局、おめでたい話は全然なかった。なぜ? なぜ? なぜなの?)とがっくりしてしまうだろう。
(でも、後4時間ほど残っているわ。外に出て、白馬に乗った王子様を待ってみようかしら?)とせつなく考えるかもしれない。

ところで、そのほかの目標はどうしよう?

同僚に、「今年の抱負はねえ・・・」と言いかけると、「ダイエットして、痩せること?」と即答され、(この女、読心術ができるのか・・・?)と一瞬思ったのだが、よく考えると、毎年毎年、同じことを私は言っているのだった。

ここ数年間、体重は一定。2年前からランチタイムにほぼ毎日スポーツジムに通っているのだが、体重は減らない。もしかして、どこかの魔女に 「痩せない呪い」をかけられているのではないだろうな。

それとも、やはり30年周期でダイエット運が悪いのだろうか? 気になるところだ。

投稿者 lib : 09:37 AM | コメント (0)

December 21, 2006

酒とバラの日々

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今年はパーティが多い年だった。ま、イギリスの景気がいいということだな。

私はパーティと聞けば、ウルトラマンのように現場に駆けつけるのだが、これまたウルトラマンのように長居はできないタチである。さすがに3分間とは言わないけど、立食パーティなら1時間、着席式のでも2-3時間で飽きる。

たまのお呼ばれは楽しい。
が、クリスマスのこの時期、1週間に何度もご招待があると、少し苦痛になってくる。
肩のこらない気軽な飲み会ならいいけれど、仕事関係のものなら、やはり出席はマストだし、気も使う。作り笑いのしすぎで顔の筋肉が凝り固まちゃうくらいである。
コートの下からロングドレスの裾を出し、微動ともしないアルカイック・スマイルのまま、終電に乗りこむ不気味な女となるのだ。

パーティが次々と開かれていると、招待客の口から、パーティの「格」、「客層」、「会場の設定」、「ワインの質」、「料理の量と内容」、「サービス」といったものに対する 「比較と評価」が出る。
「ずいぶん安っぽい料理だったわね。どこのケータリング・サービスを使ったのかしら」などと、金を使って人を招待した上に、悪口を言われたりするので恐ろしいことである。

また、これだけパーティの数が増えると、全部には出席できない人も出てくる。

パークレーンにある超有名ジャパニーズ・レストランの 「xOBU」に招待された。映画 「ノッテイングヒルの恋人」のシーンにも出てきた店だ。
「xOBUでパーティ? 行く、行く、絶対に行く!」と喜んで出かけたのだが、会場のプライベートルームはスカスカだった。100人くらい入れば 「盛況」に見えたのだろうが、集まったのはせいぜい30人くらいで、おまけにほとんどが招待側の人だったという情けない状況。
プライベートルームの外のテーブルはびっしり埋まっていて、まるで 「社員食堂」のようなノリ。これだけ人気のある店の名をもっても、人が集まらないとは・・・。

友人もあるパーティに出かけたが、やはり人数が少なくて出席者はおじいさんばかり。
これはかなり格式の高い会の主催だが、最近は活動があまりアクティブではない。
で、現役のビジネスマンは他のパーティへ出るのに忙しすぎて、顔を出せなかったのではないだろうかと言っていた。

先週はうちの会社のパーティがあった。
いつもは200人くらいなのだが、今年は系列の会社も加わって300人以上。シティのにあるG・・ホールで開かれた。高い天井にキンキラのシャンデリアがいくつも下がり、雰囲気のいい会場だ。が、ディナーの前のドリンクが配られたバーエリアは満員電車状態で、
「次は新宿―、新宿―」とアナウンスが聞こえてきそうだった。
いつもなら、ここでみんなに挨拶をして回るところだが、身動きも出来ない。
こんなとき、背の高いイギリス人の間をくぐって無理に歩き回ったりすると、ワイングラスにぶつかって、ドレスが濡れたりする (何度も目撃したことがある)のでじっとしていることにした。

数年ごとにパーティ会場が変更されるのだが、「そろそろ場所を変えましょうか?」というときもあれば、 「誰かが飾ってあった彫像を倒して壊したせいで、『来年からは他の会場をお探しください』とブラックリストに載せられたらしい・・・」という噂も囁かれたりする。(いえ、いえ、うちの会社ではありませんよ・・・)

友人の会社は特殊な業務で 「交渉のプロ集団」ともいえるメンバーだ。ちょっと料理の出方が遅かったりすると、強硬な値引き交渉に突入するという、レストランにとっては恐怖の客のようで、やはり来年から別の店をさがすはめになったりするらしい。

酒の入ったイギリス人はけっこうタチが悪いからな・・・。

私は 「10時半の女」である。
酒もほどほどにして、ダンスの前にこっそりと消える。「帰るわ」と言うと引き止められるので、「レディスに行く」と言って、そのままクロークでコートを受け取り、会場を去る。
12月にブラックキャブなんか捕まらないし、流しのミニキャブは犯罪の温床、レストランと提携して店の前で待っているキャブはぼったくり、なので電車で帰る。

帰りを心配しなくてすむように、近くのホテルに部屋を取る同僚も多いし、帰りが午前2-3時になるのでも良ければ、会社がタクシーを用意してくれる。 しかし、イギリスのオフィスパーティにおける 「男女間の乱れよう」は目も当てられない様である。
余計なことに巻き込まれないように、さっさと帰宅するのが正解だ。
離婚原因の多数が、このあたりに起因すると思われる。オフィスパーティを禁止すれば、イギリスの離婚率が下がることは保障する。
パーティの翌日、思わせぶりな視線を交わすカップルとか、いかにも後悔している、って顔の連中が多いもんな・・・。

皆様、良いお年を。 お正月はホリディを取るので、来年の2週目に戻ります。

投稿者 lib : 08:30 AM | コメント (0)

December 14, 2006

怠け者のクリスマス

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またまた国民的行事のクリスマスがやってきた。

「まだ、何も準備できてなくて・・・毎年、金もかかるし、結構ストレス」 と言う人も少なからずいる。毎年だから面倒なので、うるう年とか、オリンピックみたいに4年に一度くらいの割合でクリスマスが来ればいいのかもしれない。

対策としては、踏み絵をして 「転び バテレン」となり、「もうキリスト教徒じゃないもんね。クリスマスも関係なし」としがらみを避ける方法もあるのだが、イギリスではあまり知られていない。

クリスマスは宗教行事というよりは冠婚葬祭だ。
それも、七五三の年齢の子を持った親みたいなものか。
(子供に何を着せよう? 洋服か、着物か? 貸衣装か、購入するか? 自分たちが買うか、祖父母に買わせるか? どちらの親に頼むか?) と悩みはつきないが、
それ以外の人 (あるいは本気で取り組まない人)は羽織袴の小さな男の子を見て、
「あらー、かわいい」などと言っていれば、それですむ。 できれば、こちら側の立場でいたい。

「クリスマスまでのカウントダウン、1週間前までにすませること、前日しておくこと、当日の料理のための時刻表」 なんてのも、毎年見かける記事だ。
段取りの悪いイギリス人のことだから、スケジュール通りに物事を進めるのはハードワークらしい。

年末になれば、日本でもお正月とおせち料理の準備に追われる。
私は子供の頃、アトピーで皮膚炎が出ていた。
そのため、おせちに使われる栗だの、里芋だの、れんこんといったアクの強いものに触れないように言われて育った。(食べるのは平気だよ) お正月の生花なんかもダメである。

「・・・アトピーのため、家族が忙しそうにお正月の準備をする中、私は手伝うことを許されず、さびしく台所の片隅でみんなの様子を見守るだけでした・・・」というのは大嘘。

アトピー体質と怠惰な性格が美しく融合していた私は、
「アレルギーが出るから、手伝わなくていいよ」と言われて、
ラッキー、と外に遊びに出ていたのだ。
家に帰るとすでに準備は完了。おせちはきれいにお重に詰められて、年越し蕎麦を食べるだけの状態であった。
あの頃はよかったなあ・・・。(しみじみ)

と、いうわけで、お正月やおせちの準備すらしなかった私が、外国まで来て、異教徒のお祭り行事にあれこれ頭を悩ませるわけがない。
発光体つきの人工ツリーを出して埃を払う (15分)、クリスマスカードは名前をサインするだけ (10分)、私に何かくれそうな人だけにプレゼントを贈って、おしまいだ。

プレゼントは男なら酒、女ならチョコレート、子供なら現金と決めている。
相手の好みを上手につかみ、気がきいて喜ばれるものを贈る人もいるが、私はそういったことが苦手なので、余計なことは考えないことにしている。
ときどき、(・・・・・・・・いやがらせか? 喧嘩、売ってるのか?)というものをくれる人もいるので、「無難で無個性が一番」と思っている。

クリスマス・ディナーも時間のかかる大きなターキーではなく、小さめのチキンをローストして、温野菜をつけ、出来合いのクリスマス・プディング (私はこれが嫌い)を買うだけ。読書しながらの2時間でできる。
どうせ、この時期はパーティが多い。で、出されるものはクリスマス・メニュー。

パーティ会場には巨大で豪華なツリーが鎮座しているし、クリスマス・クラッカーもテーブルに用意されている。プロのシェフによるターキー、スタッフィング (私はこれも嫌い)、何種類かのソース、手の込んだデザート。
椅子に座ったまま、クリスマスが満喫できる。
食後にお皿も洗わなくていいし。(満腹でほろ酔いのとき、本当にありがたい)

と、楽勝なのだが、ひとつだけ問題がある。

体重計に乗ったとき、顔が 「ムンクの叫び」になることである。これは私だけではない。スポーツジムでは、それぞれの女が 「私流 ムンクの叫び」を表現している。

サンタはあんなに太っているのに、どうしていつもニコニコとしているのか、疑問である。 
そろそろ 「心臓疾患」とか 「糖尿病」が気になるお年頃のはずだが。

投稿者 lib : 08:48 AM | コメント (2)

December 07, 2006

ペストコントロール

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ねずみで思い出した。先日、家にペストコントロールがやってきた。ねずみ取りの専門家である。

数週間前に隣のおばあちゃんが青い顔をして訪ねてきて、
「ねずみが出たのよ。お宅にはねずみはいない? 私はもう、怖くて、怖くて」とパニックを起こしていた。
「いや、いないみたいだけど・・・」
「ペストコントロールを頼んだら、隣近所にも被害がないか聞け、って言われたから」ということである。

「ペスト」コントロールってすごい名称だよな。たかが、ねずみでしょ?
「うちにねずみがいます」なんて言おうものなら、ドアに赤いペンキで X印をつけられて、白装束の人が来て家中に消毒剤を噴霧され、近所から村八分にされそうなインパクトである。

この数年で何度かねずみが出たことがある。
最初は日本から 「ねずみホイホイ」みたいなものを送ってもらった。
強力な粘着剤が付いている組み立て式の紙の箱で、真ん中に餌を置き、そこにやってくると、あーら不思議、足が箱について離れない、というシロモノだ。
ねずみがかかるとそのままポイという仕組みで、簡単ではあったが、
(私って悪い人。人間って・・・)という罪悪感を伴うものだ。

あっという間にこの仕掛けはねずみに知れ渡り、数年後、再びの出現には効力を失っていた。
で、今度は友人から貰った 「猫いらず」 (クラシックな響きがするな)
毒が効くのに数日かかるので、「この餌は危険」というメッセージがいきわたる前に一族が食べてしまうということらしい。
目も覚めるような青い色で、カクテルの 「ブルーハワイ」を思わせる。

この 「猫いらず」は効いた。が、数日後、こともあろうにクリーナーのおばちゃんの前に、ヨロヨロした瀕死のねずみが現れて、
「#&%*!!!!!」とラトビア語の叫び声を上げさせたのだった。
(この人は私の家に2年くらい通ってくれている。ずっと 「リトアニア」の出身だと思い込んでいたのに、実は 「ラトビア」の人だった。ここにおわびして、訂正する。 おばちゃん、ごめん)
たいせつなクリーナーにもしものことがあっては大変、と私は箒を持ってねずみに立ち向かった。

「窮鼠、猫を噛む」との例え通り、ねずみは箒にガブリと噛みつく。

(へー、ことわざ、本当じゃん)と思ったが、同情せずに、そのまま庭に掃きだしておいた。

尊敬のまなざしでクリーナーのおばちゃんに見つめられた。
「私は危機に強い日本人ですから、ねずみくらい難なく処理できます」と言ったが、どのくらい英語を理解していたかは知らない。

と、今回、隣の家から逃げてきたのか、ねずみが出た。
姿は見ていないが、床下からカリカリと音がする。ちょうど、隣にペストコントロールの人が来ていたので、ついでに見てもらう。ねずみに齧られて、漏電で火事はいやだ。
「いますね」とペストコントロール。
「いると思います。だって、匂いますもん」と思わず、動物的な臭覚を自慢した私だった。

ガス台や戸棚の後ろ、床下、下水溝のギャップ等の数箇所に針金の付いた石鹸のようなものを仕掛けていく。そして、この色がまた、
「ブルーハワイ」なのだった。
これって、ねずみの食欲を増進する色なのだろうか? 
「2週間後にまた来ます」ということである。
無料だったので驚く。たぶん、地方自治体の「衛生課」が払うのだろうね。(どっちにしろ私の税金だ)

そういえば、中学のとき、教室にねずみが出て、すごい騒ぎになったことがあった。
女子はキャーキャー叫んで、逃げ惑う。
(ちっ、小娘どもがねずみごときに・・・)と悠然と席に座っていると、
「お姉さま、助けて!」と言わんばかりにねずみが私の足を駆け上がった。
さすがの私も泡を食ってねずみを払い落とす。

結局、ねずみは捕らえられ、校庭の端で解放されたのだった。

しかし、教室に出たということはそこに巣があったのだろう。校庭のむこうなんて、ねずみにしてみれば10000マイルも先の知らない場所に捨てられたのと同じ。

(親兄弟、友人、フィアンセ、と別れ別れになったのではないだろうか?)と心を痛めたものである。

・・・と言いながらも、2週間後の結果を待っている私だ。
動物愛護で有名なイギリス人ながら、
「隣では5匹もバッチリ処理したぜ」と威張っていたペストコントロールのおじさんがチェックに来るからである。 合掌

投稿者 lib : 09:26 AM | コメント (0)

November 30, 2006

ホストファミリー

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修学旅行でイギリスに来たドイツ人の中学生を一週間、ホームステイさせた。

「・・・というわけで、 『もし』受け入れしてくれるホストファミリーの数が足らなかったら、お願いする 『かも』しれないけど、いいかしら?」と友人に聞かれて、
つい、「いいわよ」と言ってしまったのだ。

ちっ、本当に回ってきたか・・・。

まず、クリーナーのおばちゃんに因果を含めて、家中を丁寧に掃除してもらう。枕、デューベ (かけ布団)、シーツ等を新しく買い求め、水を通しておく。フロントガーデンに植木バサミを持ち出して、チョキチョキとやみくもに庭木を剪定する。 (バックガーデンにまでは手が回らないので見せないことにしよう)

準備で疲れきったところにゲストが到着した。

まず、食事の趣向を聞かなくては
「何が好き?」
「ポテトとピザ」
安上がりだな、子供だし。
食物アレルギーはないと言う。
「お肉は何が好き?」
「?」
非英語圏の人の扱いなら慣れている。耳でわからなくても単語を見ればわかるはず。
ポーク、ビーフ、チキン、ラム、フィッシュと紙に書いていく。いざとなったら、豚、牛、鶏、羊、魚の絵を描くつもりだった。
チキンが好き、ビーフはまあまあで、残りは嫌いだそうだ。そうか、メニューが限られるな。
「ランチに持っていくサンドイッチは何がいい? ハム? チーズ?」
驚いたことに「ハム」が通じなかった。
冷蔵庫に連れて行き、ハムを見せる。あ、そう、嫌いなの。

「中華料理は好き?」
首をふるが驚かない。イギリスなら小学生でもチャイニーズテイクアウェイ(中華料理の持ち帰り、出前)に慣れているが、7人のオーペアから学んだところによると、ヨーロッパの田舎から来た子はチャイニーズを食べた経験がない。私の家にあるお醤油の1リットルのボトルを見て、
(この 「黒い液体」は何だろう? こんなものを食べ物にかけるのか・・・?)と不気味そうに眺めていたのを思い出す。

嫌いなものは仕方がない。が、またこれでメニューがますます限られるというものだ。

チキンソテー、「フライドポテト」、温野菜
ピザと野菜スティック、「ポテトウェッジ」
フライドチキン、「ベイクドポテト」、 サラダ
チキン・マッシュルームパイ、キドニーパイ(嫌いだったようだ)、「マッシュドポテト」
スパゲティ・ボロネーズとサラダ
チキンバーガーと「フライドポテト」
という1週間のメニュー。
(米の飯が食べたいー)と思ったのは当然だ。ランチでお寿司や日本のカレーを会社の近くで食べたものの、やはり、きちんと「マイお茶碗」と「マイお箸」で「白いご飯」と 「お醤油のかかったおかず」をオウチで食べたい。
―――― ついでに言うと、私はポテトが嫌いである。
(何でこんな思いをしてまで・・・)とお皿を洗う手に涙がこぼれる日々であった。(嘘)

平日は先生に引率されてのロンドン観光。
「スケジュールに入っていない場所で、どこかに行きたい?」と聞くと、
「マダムタッソーのろう人形館!」と答える。

ひー、またか。日本から親戚、友人が来るたびにご指名のここ、すでに10回近く行っているが・・・・はい、はい、わかりました。
ちなみに日本では外国からのゲストのために金閣寺、清水寺、日光と東京のはとバスの「吉原おいらんツアー」に何度も行っている。

のんびりと過ごすはずの土曜日。朝早くから「ろう人形館」のあるベーカーストリートに出かける。
ラッキー、10人くらいしか並んでないじゃない。と、思ったのは早計で、建物の中にグルグルと曲がりくねった行列ができていた。窓口にたどり着くまでに1時間半。
「大人が24ポンド99で、子供は22ポンド50です。16歳以下は大人の同伴を必要とします。ところで、5ポンドのプログラムはいかがですか?」
「ロンドンアイ」にも行きたかったようだが、これも5回以上乗ったことがある。さすがにこれは勘弁してもらって、カムデンロックのストリートマーケットに連れて行った。

私自身は 「ホームステイ」をした経験がないので、ホストファミリーがゲストにどのくらい気を使うのか、どれだけお金をかけるべきなのかの見当がつかなったが・・・疲れたぞ。

が、責任は果たした、と信じている。

投稿者 lib : 07:28 AM | コメント (2)

November 23, 2006

007

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「007 カジノ・ロワイアル」のプレミアに行ってきた。友人のお招きである。

バービカンセンターは複合文化施設で、住宅のほかにミュージアム、コンサートホール、図書館、映画館、アートギャラリーと盛り沢山に揃っている。
催し物は人の流れに加われば自動的に会場に到着するものだが、ここでは前にいる人がどの施設に向かっているのかわからないので、頼れるのは自分だけ。
内田光子のピアノコンサートに行こうとして、日本人グループの後ろについていくと、アラーキーの写真展に行く人たちだったりするので、油断できない。

とりあえず、駅から「バービカンセンターはこっち」の黄色い線に沿って歩くと、たどり着くことになっている。で、着いたところは・・・図書館。あれっ?
「ははは、迷ってる、迷ってる」と友人がやって来た。
人を笑いモノにしたくせに、友人も迷ってしまい、ふたりでしばらくウロウロする。

ロンドン広しといえど、これほど「大人の迷子」が多い場所はここだけだろう。

やっと会場にたどり着く。
招待客のみのプレミア。モタモタしていたせいで、渡されたシャンペンを半分も飲まないうちに映画が始まった。

新007のダニエル・クレイグ。骨太のスパイを演じていて、予想外によかった。
彼がジェームス・ボンドに配役されたとき、
(ちょっと、役不足じゃない?)と思ったものだが。

映画が終わるとビュフェパーティになった。
「おもしろかった」というのが大勢の意見。
ジェイムス・ボンドはやっぱり「イギリス男の夢」だ。
強靭な肉体、クールな戦略、やたらと女にもてる理想の男。
世界中を飛び回り、銃を撃ちまくったり、仕掛けのついたスポーツカーを運転したり、カジノで大金を賭けたり、すごい美人とシャンペンを飲み、キャビアを食べたりする。

12Aで12歳以下は保護者と一緒に鑑賞するという映倫指定だが、けっこうバイオレント。
007といえば、クリスマス時期にTV放映される映画のひとつ。でも、この映画はクリスマス休暇に祖父母の家に遊びに行った孫が、おじいちゃんのひざの上でお菓子を食べながら見るにはふさわしくない気もするな。
それとも、ゲーム類でこのくらいの暴力沙汰には慣れていて、いまどきの子供には刺激なしか?

ディナージャケットはまったく似合いそうにないイギリス人のおじさんも、ボンドガールには遠く及ばないプロポーションの奥さんと一緒に 「シャンペンとキャビア」ではなくて 「ビールとクリスプ」なんかを口に運びながら、TV放映を見るんだろうな。

まあ、グラマラスな美人でも平気で男を裏切るボンドガールと命の心配をしながらキャビアを食べるより、普通の女とローストターキーを食べるほうがのんびりとクリスマスを過ごせると思う。 

キャビアで思い出した。
友人がハロッズのフードホール(デパ地下のハロッズ版だ)で、男の人がキャビアを買うのに居合わせた。100-200gで200ポンドかなんかを払ったらしい。
びっくりして、思わずカウンターの人にすごいね、と話しかけると、
「お得意さんですよ。毎週のようにお見えになって、キャビアをお求めになります」とのことだった。

1週間で200ポンドなら、キャビア代だけで800ポンド (17-18万円)。
いったい、この人の一ヶ月の食費はいくらなんでしょう? 
どうやって召し上がっているのかも気になる。
朝食時のトーストにベタベタと塗りたくっているのか? 毎夜、美女と共にシャンペンとキャビアを楽しんでいるのか? 

007はともかくとして、実際にはキャビアが好きなイギリス人は少ない。むしろ「生臭い」と言って嫌う人のほうが多い。 このハロッズの上得意は「生臭もの」が好きなイギリス人に違いない。

日本に来れば、おいしくて「生臭いもの」がいっぱいありますよ。

クサヤ、イカの塩辛、ホヤとかね。

シャンペンには合うかどうかは知らないけど・・・。(誰か試してください)

投稿者 lib : 09:17 AM | コメント (0)

November 16, 2006

雑誌の世界

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小説を読むのが一番好きだが、雑誌もおもしろい。雑誌は読者層がはっきり分かれているので、内容がしっかり偏っているのが楽しい。

「プレジXXト」という、おじさん雑誌はひと昔前、やたらと企業経営者を戦国武将にたとえるのが流行っていて、「XX電機の会長は武田信玄タイプ」だの、「XX不動産の社長は意外にも徳川家康型の戦略に強い」とか書いてあった。
社長が織田信長タイプだと、怖いなあ。
「売り上げが上がらない? ならば、切り捨てる」と、さらっと日本刀で袈裟がけに切られちゃったりして、パワーハラストメントの極致を見せてくれそうである。

マージャン雑誌とかヤーさん向けの週刊誌(杯の受け方とか仁義の切り方が載っているという噂だ)もあるらしいが、さすがにそこまで専門化が進むとついていけない。(でも、ちょっと興味がある)

帰国すると本のほかに雑誌を読みまくるが、
キャリアを模索し、サービス残業最前線で過労死寸前、生真面目で働き者のバイブル、「日XキャXXウーマン」と
ペットボトルとつっぱり棒の利用法(100種類)や500円でできる「豪華な」夕食5人分、ならまかせてよ、と専業主婦の味方、「すてXX奥さん」と
お嬢様学校を出てスッチーになり、玉の輿をゲットした有閑マダムの「ジュエリーボックス・ワードローブ・リビングルーム拝見」特集がある「VxxY」などを入手すれば、
日本女性のほぼ70%のトレンドがわかる。

海外にいるがゆえの「浦島太郎化」を防ぐためにはなかなか役に立つ。

ま、ランチタイムに同僚と酒を飲み、風呂の残り湯の再利用もせず、ケリーバッグも持っていない私としては、ハナからカテゴリー外ではあるが。

イギリスでは電車の中で読み捨てにする1ポンド前後の女性誌を駅で買うことが多い。

若い女性向け―― マドンナやジュリア・ロバーツみたいなショービズの話題。
イギリス人しか知らない「Cリスト」のセレブ、風船胸女ジョーダンやビッグ・ブラダースの拒食症ヒステリー女ニッキーのゴシップ。
最近よく見るのが、ハリウッド・セレブやスーパーモデルの着ているデザイナーブランドのコピーをする「なんちゃってモノ(死語か?)」特集。

「パリス・ヒルトンのベルサーチのドレスとシャネルのバッグ。ほら、ネクストの70ポンドのドレスとトップ・ショップの35ポンドのバッグでコピーできます! ね、同じでしょ? 違いがわかります?」
・・・って、わかるよ、違い。悪いけど。
チープシックの賢い女を目指せと言っているのか、セレブを気取る見栄っぱりになるように薦めているのか?

おばさん向け―― 子供の難病、非行に関する読者の投稿はお涙頂戴物語が基本だ。
読者の共感を呼ぶ、結婚生活のトラブルもお約束。
「妻より『やせた』愛人に走った夫」 写真を見ると、妻が百貫デブ(死語)で愛人が九十貫デブ(新語)だった。 この男、妻のいったい何が不満だったのか? 愛人のどこが良かったのか?

でも見出しのエグさだと日本の嫁姑モノの方が勝っていると思う。
「恐怖、親指姑」とか「鬼嫁の溶岩流ごはん」とか見た記憶がある。
・・・SF? 四次元モノ? 妖怪七変化? 

おばさんに人気のダイエット特集と若く見えるメイク法。
「ヘアカットとリップの色を変えるだけで10歳も若返る!」みたいな記事。
カレンさん(35歳)とかの写真が載っているが、
(えーっ! 35歳? 53歳の誤植じゃないの?)と思わせるくらいに、ここに出てくる人は痛々しい。で、メイクを終え、新しい髪形でもやっと40歳くらいの外見にたどりつく。読者参加のコーナーなのだが、もう少しレベルの高いのはいないのか・・・?

老婦人向け―― 巻末の広告に「多機能 車椅子」とか「入浴用 補助椅子」とか「電動式 椅子型 階段昇降機」が載っているのが特徴だ。
この年代では「椅子」がキーワードと思われる。

2ページに渡る記号と数字の羅列があって、まるで暗号特集。そこだけ「月刊 プログラマーの友」というコンピュータープログラマー向けの専門誌かと思った。
よく見てみると編み物の段別の色分けと編み方。 うーん、編み物って複雑怪奇なのね。
これを老眼鏡で確認しながらの作業か・・・。

老後といえば、「ひなたぼっこをしながら、安楽椅子にウールのひざ掛け、その傍らには猫(足元に犬でもいい)。で、のんびりと編み物をする」のが理想だと思っていたが、即、編み物の部分のイメージを削除し、修正したのであった。

このように雑誌は将来設計の一環としても、たいへん役立つものである。

投稿者 lib : 09:13 AM | コメント (0)

November 09, 2006

ケンブリッジ大学の謎

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友人の息子、M君がケンブリッジ大学へ進学した。

イギリスでは今でこそ大学へ進学するのは珍しくなくなったが、シティ勤めのお偉いさんでも50代以上の人は大卒でないことが多い。

口の悪い知り合いによると、
「シティの50代のジェントルマンなら、名家のボンボンが多い。で、オックスブリッジ(オックスフォード大とケンブリッジ大をあわせてこう呼ぶ)ならOKだが、それ以外の大学では行っても無駄、と親から進学を認められなかった。オックスブリッジに入れなかった男の子(女の子は花嫁修業『死語』か?)は親のコネのあるシティの会社で丁稚奉公をさせられたんだ」ということである。(ちなみにこの人もオックスフォード卒)

さて、友人はのんびりした性格で教育熱心には見えないが、M君はがんばり屋さんである。面接が中心だが、Aレベルという共通テストでもAの成績がたくさん必要だったらしい。もちろん、学校の推薦も重要だ。

彼は合格してから、イギリス特有の「ギャップイヤー」を使って、1年間、アルバイトをしたり、外国旅行をして、人生経験をつみ、1年遅れの今年の9月になって入学した。

ケンブリッジ大学といってもたくさんのカレッジの集まりだ。それぞれにカラーがあると思うが、彼のカレッジは2ヶ月授業があり、次の2ヶ月は帰省して家庭学習、1年のうち正味6ヶ月だけカレッジで授業を受ける、と変則的だ。大学では全員が寮生活。(部屋はシェアではなくて個人部屋)

この寮ではクリーナーが週に1度、部屋の掃除にやってくる。おまけにコンセルジュが24時間待機していて、郵便物を預かったり、調べ物をしたり、いろいろな用事をしてくれるそうだ。

学生の分際で何という高待遇!

先週、友人は数週間ぶりにケンブリッジを訪ねた。(仮装パーティのために「スクービードゥー」の犬の着ぐるみを持ってくるように頼まれたらしい)。M君は社交的な性格で早速たくさんの友だちを作り、親にクラスメートを紹介した。

「いやー、びっくりした。半数ぐらいの学生がすごい『変人』だった!」と友人。

新入生歓迎パーティが次々と開かれる中、どれにも参加せず、人づき合いもしないで部屋に閉じこもり勉学に励む留学生とか(まさに夏目漱石症候群)
紹介されても、ろくに口もきけず、他人と目を合わせることもできない対人恐怖症の男の子とか。いろいろいたらしい。

世界でもトップクラスの大学で秀才の集まりには違いないが、
「人格崩壊的なのがいっぱいいた」そうだ。

大学での自殺率も高く、特に論文を書く時期にはけっこう多いらしい。で、飛び降り防止のために上の階では窓があかないようになっているとか。

なんだか大変そうだ。

そういえば、私の知り合いのオックスブリッジ卒も極端なのがいるなあ。

ヘッジファンドマネージャーとか、企業案件の弁護士とかで大金を稼ぐ(うらやましい・・・)ピカピカのエリートがいる。かたや、家にこもってむずかしい本を読みまくり、書き物をしたり、研究したり。 ・・・で、卒業してから定職についたことがないタイプ。

後者のほうはちょっとたまらないなあ。まあ、学者なら世間知らずの変人で研究に没頭というのも許されるかもしれないが、オックスブリッジを出て、ひきこもりじゃねえ。
と言って、「働け!」とか「人生をなんと考えているんだ?」と責めても、頭脳明晰な彼らから理路整然と反論されそうで、タチが悪い。

このカレッジの「年間」の学費は1300ポンドで、寮費は1ヶ月300ポンドだそうだ。(ただし、EU外の留学生の学費は別枠でもっと高い) 現在、プライベートの寄宿舎学校の学費が「ひと月」で2000ポンド以上(40-45万円)だから、すごく安い。
どこの大学に進学しようかとお悩みの青少年に、ぜひ、お勧めする。(お勧めはしますが、合格の可能性についてのコメントは控えます)

M君は得意の語学を生かして、外交官志望らしい。3年間、大学で学んだ後は1年間、専攻した言語の国で暮らすことで卒業できる。で、その地への往復航空運賃と途中1回の帰国費用は大学持ち(つまり、税金から払うということね?)。

うーん、これがエリート教育というものか? 卒業したら、ひきこもりにならず社会に貢献してね、と納税者としてお願いしたい。

投稿者 lib : 09:15 AM | コメント (2)

October 26, 2006

クイズナイト

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会社のクイズナイトに参加した。

うちの会社には「スポーツ・レジャー担当秘書」が数人いる(本当です)。宴会の幹事みたいな人たちだ。様々な行事の計画、参加者募集、進行を牛耳っている。

たとえば、
ウエストエンドのミュージカルを鑑賞
エセックスでドッグレース観戦
テムズのクルーズボートでダンスパーティ
バーベキューナイト
などである。

クイズナイトは超ダサイ催し物だが、「社員同士の親睦を図る」ために時々参加する。

今回は4人ずつでひとつのチームとなり、「チーム名」までつけての徹底ぶり。なんだか恥ずかしいなあ。

「チームメンバー」と会場のパブに向かおうとすると、別のパブに寄って「プリ・ドリンク」(10月12日のブログを参照のこと)をしようと言う。
5時半に会社を出て、徒歩10分のところにあるパブで6時開始の予定だ。何でわざわざ「プリ・ドリンク」をするんだ、この状況で??? やめてー。

なんとか諦めさせて会場までひきずっていった。すでに会場は混み始めている。
会社の近くのパブを貸しきり、120人が集まっている。参加費はひとり4ポンドで、「ドリンク券」が各4枚渡された。手描きのチケットはかすれたコピーでいい味を出している。

さて、何を飲もう。
大人数で自社の集まりだ。どうせハウスワインの安物しか出されないはず。そんなものをがぶ飲みしたら二日酔いが怖いので、ピムズにする。

安っぽいカクテルソーセージ、油ギトギトのチップス、油ギトギトのサモサ、油ギトギトのオニオンリング、油ギトギトのフライドチキンが各テーブルに運ばれてくる。
いつもなら「こんなものが食えるか!」とちゃぶ台をひっくり返してしまうところだが、今日は会社の親睦会、抑えて、抑えて・・・。

テーブルにメンバーが揃った。
「得意の分野は?」と聞きあう。
「えーと、クラシック音楽と文学」と私。
・・・クイズナイトでこれほど役に立たない分野もない。ここは「ソープオペラ」と「ポップミュージック」と「フットボール」の世界。
「イースト・エンダースのドラマの中で交通事故に遭って役をやめ、その後ポップスターになった女優の最初のヒット曲は何でしょう?」とか
「19XX年のワールドカップで優勝した国はどこでしょう?」
とかの答えを知っている人が偉いのだ。

見ればフランス人チームも参加している。が、外国人の彼らは英語もいまいちだし、質問の内容もピンとこないらしく、すぐにクイズに興味を失い、飲み食いに専念している。

スポーツ関連の問題が続き、私も飽きてきた。ここは男の同僚にまかせ、同じテーブルの女の子と共謀、「フラート・ゲーム」をしかけて、誰かをからかうことにする。
この日は系列会社の人も来ていて、馴染みのない顔も多い。で、少し離れたテーブルのシャイそうな男の人をターゲットにチラチラと視線を向け、にっこりと笑いかける。
しばらくすると、彼もこちらに気づき、うれしいような困ったような表情になった。

他の同僚に「また、やってる。やめなさい」とたしなめられても知らん顔。
彼が(僕に気があるのかな? どうしよう、声をかけようかな・・・)という落ち着きのない態度になったあたりで「ゲーム終了」。その後はシカトする。
(あれ? 勘違いだったかな?)と怪訝そうな顔をしていた。
悪気のないいたずらである(ちょっと悪気あるか・・・)。

「チケット分、全部、飲んじゃったの。チケット余ってたらくれない?」と各テーブルを回る女がいる。うちのテーブルにはもう余ってないよー。

煙草の煙が立ち込める中、油っぽいパブフードを食べて、安酒を飲みながらのクイズナイト。福利厚生の一環ながら、どう考えても健康に悪い一夜を過ごした。

暇つぶしにからかった男の人、この場を借りて、ごめんなさい。(日本語が読めないか・・・)

-----ホリディを取るので、来週はお休みします。

投稿者 lib : 09:26 AM | コメント (0)

October 18, 2006

僧院で黙想

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Retreat(リトリート)というのは 「宗教的修行や黙想のために閉じこもること」 で、キリスト教の僧院(?)に行き、半日ばかり「黙想」した。
参加費 (寄付、喜捨、お布施かな?)が10ポンド。

「日帰り 禅寺体験 イギリス版」といったところか。
私は日本人のくせに正座ができない。20秒で下半身が麻痺して、歩行不能になる。座禅もダメ。 「宗教的沈黙」はクールだが、禅寺で「体育座り」した瞑想じゃ、まるで運動会の練習中に居眠りしている人みたいでマヌケ。お坊さんもいやがること間違いなし。

友人は洗礼を受けている「正式な」キリスト教徒だ。私のような罪深い人間を誘ってくれたのは、やはり良きクリスチャンの模範を見せたかったらしい。彼女が神の教えに従うように、私も好奇心に従い嬉々としてお供した。

郊外の小さな町に向かう。
9時までに集合ということだったが、道を間違って20分の遅刻。
出だしから文字通り「迷える子羊」というダメな二人だ。

着いた所は宗教施設には見えない。お金持ちの豪邸だったのを、遺言で教会に寄付したという感じ。駐車場も庭も広々として天気が良かったこともあり、いい雰囲気である。

遅れたので慌てて中に入ると、20人足らずのイギリス人が牧師さんだか、神父さん(違いがよくわからない)の説教を聴いている。
「・・・というわけで、神は常にあなたの傍にいらっしゃいます。今日は心静かに自分の内なる声に耳を傾けなさい」と説教は終わった。

しまった、遅刻したせいで重要な部分を聞き逃したかもしれない。

スケジュールは、
9時半から1時まで黙想する。
1時からランチ。
1時半から3時まで黙想。
3時に集合して、もう一度説教を聴き、解散。
というものだった。

で、この間、ランチも含めて誰とも口をきいてはいけないことになっている。

「じゃ、話しかけないでね」と敬虔なるクリスチャンの友人はどこかに行ってしまい、異教徒の私は一人残されたのだった。

この20人のメンバー。
「シビアな問題を抱えている」わけありタイプ。
「いまは辛いことに直面しているが、僕は負けないぞ」という感じのビジネスマン。
「少し悩みがあるのでゆっくりと考えてみたい」人。
「のんびりと半日過ごそう」という老夫婦。
「物見遊山」の日本人がひとり。

(ジョン、どうして私を捨てたの? どうして? どうして?)とすすり泣く若い女。
(あのスペインの事業さえ、うまく行っていれば、倒産することはなかったのに・・・)と図書館のテーブルの上で手を組み、むずかしい顔をするビジネスマン。
(孫の顔を見せてくれない性悪の嫁、ジェーン。どうしてくれよう)という女性。
(おや、きれいな花だ。うちの庭にも欲しいね)と顔を見合わせる老夫婦。
———注: (・・・)内は想像です。
(うーん、いい天気だねえ。ベンチで昼寝しようかな。しかし、広い庭だね。不動産価値はどのくらいあるんだろう。70万ポンド、いや、もっとかな?)と私。

ランチはダイニングルームでロールパン、ハム、サラダ、ビスケットにコーヒーや紅茶という典型的なイギリス風のコールドミール。(精進料理ではない。当たり前だ)バターやジャムを取ってもらっても、ニッコリとするだけで「ありがとう」という声も発しない。

私ものんびりと過ごし、意外にも退屈することもなく3時になった。
「すべてを神様におまかせしなさい。ひとりで悩むことはないんですよ」というお説教で終わった。

いやー、癒されたぞ、リトリート。

半日ばかり、口をきかずに庭を歩いただけで、こんなに心が落ち着くものだとは思わなかった。10ポンドで格安だし、異教徒もOKという懐の深さがうれしいじゃないの。

わざわざ「私はクリスチャンではありません」とは言わなかったが・・・、いいよね?

投稿者 lib : 11:44 AM | コメント (0)

October 12, 2006

ビジネスパーティ

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取引先のビジネスパーティに招待された。

レストランをプライベート・ファンクションにしての立食パーティである。100人くらいの「飲み会」だ。友達とワインバーに出かけて、「プライベート・ファンクション (貸切)」の張り紙がしてあって中に入れないと頭に血がのぼるが、この日はゲストである。

イギリス人はパーティの前にプリ・ドリンクをする。パーティ会場へ行く前にパブやワインバーで同僚と飲んでから出かけるのだ。酒の席に呼ばれているのに、なぜ、その前に飲まなければいけないのか不思議。

とりあえず手順としては、

1. 仕事が終わる前にプリ・ドリンクの場所を確認する。
2. 仕事が一段落した男性が数名まずパブに繰り出す。
3. 仕事が一段落した、あるいは一段落してなくても女性がメイク道具を持って、トイレに入る。
4. パウダーを塗る。
5. マスカラを塗る。
6. リップスティックを塗る。(・・・以後省略)
7. 女性もパブに行き、合流する。
8. この時点でパーティーの開始時刻は過ぎている。
9. 早く着いた人が2杯目、遅かった人が1杯目を飲み終えると、誰かが「そろそろ」と言う。
10. パーティ会場へ向かう。

これでパーティに「ファショナブルに遅れた」時間に着く。

慣れない頃はプリ・ドリンクが終わる前にヒールのつま先は痛み、酔っ払った状態でパーティ会場に着いたものだが・・・。

会場に着いたら一回りして知り合いに声をかけ、
「来たよー」と印象づけておく。
日本の宴会のように強制参加ではないが、顔を出す回数が少ないと「非社交的」と陰口を叩かれるからだ。「参加は個人の自由」と言いながらも、態度に裏表があるよなー。

この日のパーティ、
「やあ、ヨーコ、久しぶり!」と大柄なおじさん。
「まあ、お久しぶり!」
(この人、誰だっけ?)と思いながら、両ほほに軽くキスをして挨拶する。これが自然にできるようになるには数年かかった。相手の右ほほから始めないと相手の唇にキスしそうになるので注意が必要だ。
「元気だった?」
「おかげさまで」
(シティにある取引先? 海外のクライアントだったかな? それともボスの知り合いか?)

1. 白人の中年男で、
2. スーツを着ていて、
3. 名前がジョンとか、デビッドとか、マークみたいに一般的な、

人なんか、記憶に残らない。

私の名前を知っているから、知り合いには違いないが、自分では会った覚えがない男にキスができるというのも我ながらすごいと思う。(自慢にならないか・・・)

ま、めちゃくちゃハンサムな人だったりすると、話は別であるが。

こうやって相手がどこの誰だかわからないまま、話しこんだ。その間に「他の誰か」が彼に話しかけ、その人の名前がわかった。が、今度は私を知っているらしい「他の誰か」の名前が思い出せない・・・。

私はボスから「女優」と呼ばれている。
「見知らぬ人に対して、旧知のようにふるまう演技ができる」からだ。
ここ数年間でこの技術は著しい向上を見せている。

そろそろクリスマス・パーティの招待状が舞い込む季節だ。

お気楽な飲み会でもEメールでの招待状はちょっと情緒に欠けるな。
やっぱりきっちり厚地のカードを郵送して欲しい。

投稿者 lib : 08:39 AM | コメント (0)

October 05, 2006

歯医者

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歯のホワイトニングをした。

イギリスでは以前にも2度ほど歯科医の世話になっている。
1度目はシティにあるプライベートクリニック。イケメンの歯医者がいると聞いていたが、残念ながら私の担当にはならなかった。ホストクラブみたいに「ご指名料」が必要だったのかもしれない。10年以上も前のことだ。
数週間の治療で400ポンドくらい払ったのに、しっくりとこない。

その後、帰国して日本の歯医者に見てもらう。
「なるほど、これがイギリスで治療した歯ですね」
「ふあ、はふれす (はい、そうです)・・・」と口を開けたまま答える私。
「やり直しておきましょう」ときっぱり。
ああ、400ポンドの詰め物が排水溝に消えていく・・・。

プライベートでもこのレベルか、と次はNHS(国民健康保険)の歯医者に行った。
当時35ポンド。
診療所の廊下の隅の椅子に座らされる。
で、そこの歯医者は自分の手をうんと伸ばして顔をそらし、X線の撮影をすませたのだった。
ねえ、これって危なくない? 

現在は帰国の度に日本でチェックを受けて虫歯はない。が、なんとなく歯の白さに自信がなく、ホワイトニングに興味を引かれた。ローカルペーパーで宣伝をしている近所の歯科医に出かけることにする。

場所がすぐわかったのは「スマイルクリニック、白い歯をあなたに」と垂れ幕がかかっていたからだ。「祝 甲子園出場!」なみの大きさである。ちょっと、引いた。

受付に行くとおばちゃんが二人、電話の応対にバタバタしている。
電話の半分は予約の受付で、もう半分が国民健康保険の歯医者を探している「歓迎されない患者」を断る電話である。
私の場合は美容歯科だからプライベートでの診察は当然だが、歯が痛い人に向かって、
「金がないなら、診療はできません」って、時代劇の悪徳医者みたいで、なんだか感じ悪いよなー。

「お待たせしました、私があなたの担当医です」と現れたのは人工的に揃った歯並びと、まぶしいばかりの白い歯をした女医さん。うわっ、不自然・・・。

説明を受けた後、599ポンドでホワイトニングをすることにする。

「イー」の形で口を開いたままにする器具を口に入れ、歯に特殊な液が塗られると、光線を1時間当てる。その間、ゴーグルのような眼鏡とヘッドホーンをつける。これはVDV鑑賞用のゴーグルで「フォルティ・タワーズ」という昔のTVコメディの30分物をふたつ見た。
ちょっとしみるが我慢できないほどではない。

厚みが10cmもあるゴーグルをかけ、器具のはめられた口を大びらきにし、青い光線を歯に当てられているのはハタから見たら、相当マヌケな図だ。
599ポンドも払って、こんなことをしている私の人生って・・・。

さて、1時間後、鏡を渡された。
歯はすっきりと明るくなったが・・・白くないじゃん?
歯科医も(あれ?)という表情である。
ホームキットのホワイトニングセットを貰い、朝晩、これから2週間も使用するように指示される。
「レッドワインを飲まないこと。コーヒーもできれば避けてね」
ひえー、そのふたつがないと、私は生きていけないんですけど。

とりあえず、その教えを「なるべく」守った。2週間はホワイトワインを飲み、コーヒーを飲むと、即、歯磨き。しかし、あまり白くならない。・・・どうして?
「何度もやると歯のエナメル質が傷むんだけど・・・」と言いながら、もう一度、光線を当てて、さらに1時間。それでも今ひとつの結果で、女医さんも納得していないようだった。

うーむ、もう一度、日本の歯科医でホワイトニングをするべきか。

アフリカの某、独裁者。世界からの援助金を個人的に利用して、プライベートジェットでロンドンまで歯の治療に来たことがあるという。

彼の行動は二重に間違っていると思う。

投稿者 lib : 09:25 AM | コメント (2)

September 30, 2006

サンドイッチ

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イギリスでサンドイッチといえば、日本のおにぎりであろう。(こじつけ)

昔のおにぎりの中身は梅干、昆布、かつおぶしが基本だったと思い出される。
が、コンビニで海苔がパリッとした感触を楽しむために別包装され、そのパッケージも改良が繰り返されたあたりから、おにぎり革命が始まったようだ。

明太子、ツナマヨ、炊き込みご飯とバリエーションが豊かになり、お米の種類や産地を表示し、水にこだわり、と20-30円の違いで多様なチョイスができる。

さて、イギリスのサンドイッチはこの10年で・・・ほとんど進化してない。
芸のないことである。

稲穂の国から来た私はポテトもパンも嫌いという、本来、この国の食文化に向かない人間だ。パンといっても、イギリスの「食パン」がいやなので、パニーニとか、シバータのホットサンドは食べている。

用事があって郊外へ出かけた。

お腹が空いていたが、駅前にハイストリートが存在せず、改札の前はバス乗り場と駐車場という、商業地開発には無縁、資本主義国にあるまじき都市計画である。
と、駅の売店でサンドイッチを売っているのが見えた。
りんごのほっぺ(死語)で、ドラッグに手を出したこともなければ、クラブ通いもしていない、日曜日は教会に行きます、という雰囲気の田舎娘が立っている。

私が近づくと田舎娘が緊張した。メトロポリタン化していない郊外に行くとこんな反応をときどき見る。
(あ、外人だ。おまけに東洋人。話しかけられたら、どうしよう? ああ、どんどん、こっちに近づいてくる・・・。いやー! やめてー! こないでー!)と顔に書いてある。
大丈夫ですよ、噛んだりしませんよ、と愛想のいい笑顔を浮かべる。
「ハロー」ほらね、英語だって話せますよ。
たかがサンドイッチを買うのにたいした手間と気の使いようである。

地元の「パン屋さん」で作りましたという感じのサンドイッチ。安い! 値段はシティにある強欲なサンドイッチショップの半分以下だ。
飲み物は紅茶を選んだ。めったに紅茶を飲まないが、この手の店でコーヒーを買うとイギリス人好みの超うす味のインスタントで、「コーヒー」ではなくて、お湯の入った「コ」みたいな飲み物になっているからだ。

まず、紅茶を飲み(これは当然マトモである)素朴なサンドイッチを一口・・・。
衝撃が走る。こ、これは・・・。

ひえー、マズーイ!

思わず中を見ると食パンにマーガリンを塗り、ハムがはさんである。昔風で「ごく普通のイギリス家庭の・・・ただし、あまり料理が得意でないお母さんの、サンドイッチ」であった。

あまりのショックに頭の中が10数年前にタイムスリップした。

シティで働き始めて間もなくのこと、レデンホール・マーケットにランチを買いに出かけた。どこにしようかと悩んでいると、一軒のサンドイッチ・バーに長蛇の列。

これだ! とそこに並んだ。
「行列のできるラーメン屋」みたいに「シティのサンドイッチならここだぜ」という店に違いない。で、延々と並んで自分の番になり、カウンターのおねえさん(2人いた)を見ると「超スロー」なサービスぶりだ。おまけに当時の私は巻き舌もケバケバしい「アメリカ英語」で非イギリス系の店員に注文が通じず、横に並んでいたイギリス人のおじさんが見るに見かねて「通訳」までしてくれたのだ。

そこまでして買ったサンドイッチは・・・まずかった。列が長かったのは店員がトロくて時間がかかるせいらしい。

10年前の出来事に思いをはせながら、じっとサンドイッチを見つめる。あまりのまずさにそれ以上食べる気もせず、かといって捨てるにも気が引ける。
あちこちのレストランで食べ歩きをして、「イギリスの食事も、最近はイケてる」と豪語していた私の口には、
「時代の流れに逆行してでも、この味を守ります」と自己主張の強いマーガリンがべったりと残っているのだった。

この、頑固者・・・。

投稿者 lib : 12:28 AM | コメント (1)

September 21, 2006

ウォータールー・アンド・シティ・ライン

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「匠(たくみ)の国」から来た日本人にとって、イギリスの「物が壊れる」「物が直らない」「物を直すのにものすごく時間がかかる」のはカルチャーショックのトップ項目ではないだろうか。

日本から10数時間のフライトを終え、疲れきった身体でフラフラと飛行機から降りて、ヒースロー空港の建物の中に進む。
で、最初に目に飛び込んでくるのが「動く歩道」の「故障中」のサインである。
「あー、またか」という思いと同時に、久々に帰宅して古女房から、「おかえりなさい」と気だるく迎えられているような気分になるものだ。(古女房の部分は想像です)

先週、ウォータールー駅とバンク駅をつなぐ、「ウォータールー・アンド・シティ・ライン」の改修工事が終わった。たった一駅、4分間の路線である。4月から始まった工事の「予定期間」は5ヶ月。9月の「初め」に工事が完了すると公示されていた。

「9月1日、再開通!」ではなくて、「9月の初め頃に、たぶん、できるかも・・・(予定)」みたいな曖昧さは日本人には受け入れがたい。
「9月が予定なら、11月ごろに完成か?」
「ま、今年中に乗れれば、『良し』としようか」と利用客の声。

というのも、数年前、バンク駅の動く歩道の修理には延々と時間がかかったからだ。
トロッコ電車のようにガタンゴトンと動き、ときどき石につまずいたようにガタンと盛り上がるのが少しスムーズになった。(100%ではない)それから、手すりのベルトの速度と歩道の動くスピードが微妙に違うので、ときどき手の位置を調整しないと、手と身体がうーんと離れてしまい、ストレッチ運動を余儀なくされていたのが改善された。(100%ではない)
なんせ「先進国」の「首都」の「ビジネス地区」の「メジャーな駅」に存在するのが間違っているようなシロモノだったのだ。

しかし、数10メートルの動く歩道を直すのに確か1年以上かかったはず。他にどこを直したのか知らないが、あれだけの時間がかかった理由は謎だ。

それで、シティの勤め人の間ではなんとなく、
(9月初旬予定なら、実際の完成は11、12月ごろ)と暗黙の理解があった。

すると・・・。

あーら、びっくり。9月に完成した。1週間遅れだったらしいが、すごい、すごい(イギリスの基準にしては)。
「できるものなら、やってみろ」と馬鹿にしていた2歳児にイナバウワーの演技を見せられたような衝撃である。・・・やれば、できるじゃん。

新聞によると、このウォータールー・シティ・ラインは1日に4万人が利用して、日本円なら2億円の売り上げがあるそうだ。 (ちょっと、眉唾。 イギリス人は「総工費10ミリオンポンド」で「6ヶ月で竣工」して「年間売り上げ予想120ミリオンポンド」みたいな話を平気でするのよね、根拠もなしに)

で、1日開通が遅れれば2億円の損失(?)ということで、この工事を落札した建設会社に1日1億5千万の「工事遅滞罰金」を科したという。

そうか、そういうトリックだったのか。

イギリス人でも競争させたり、罰金があったりすると、いつもは引き出しに隠してある「効率性」とか「段取り」とか「確認作業」とか「残業(引き出しの一番奥にある)」を出してくるらしい。
日本ではこの手のものは無料でついてくるが。

新装再開通のウォータールー・アンド・シティライン、なぜか新しいペンキやコンクリートの匂いはしない。なんだか地下牢から流れてくるようなよどんだ空気である。もしかすると、古い壁に穴を開けたとき、埃とかカビ、あるいは「人柱からの邪気」が出てきたのが浮遊しているのかもしれない。身体に悪そうだが、ずっと息を止めておくわけにもいかないし。

これで喘息になった場合、通勤時に罹患したということで「労災」に認定されるだろうか?

しかし、ローラーコースターのような揺れはなくなった。(100%ではない)
今まで(この激しい横揺れ、いつか脱線するかも)と心配しながら乗っていたのだ。
一度、アナウンスで
「電車に少しトラブルがありますが、とりあえず出発します。事故は起こらないと思いますが、座席に着くか、つり革にしっかりつかまっていて下さい」と言ったきり、びびった乗客に降車する間も与えず、扉が閉まり発車したことがあった。
乗客はちびまる子ちゃんのように斜線が入った真っ青な顔でお互いを見つめあい、恐怖の4分が過ぎて無事、バンク駅に到着すると、へへへ、とほっとした笑いを交わしたのだった。

通勤客をおどすなよ。

投稿者 lib : 09:51 AM | コメント (4)

September 14, 2006

冠婚葬祭 オフィス編

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イギリスのオフィスにも「冠婚葬祭」はある。

が、規則に従って統一の取れた行動を取るのが苦手なイギリス人の集まりだから、「掟」はけっこう緩やかだったりする。
日本のようにマニュアル本で勉強したり、水引の格を考えなくてもいいから気楽。

とりあえず入門編は「誕生日カード」か。
「顔見知りの同僚」レベルなら職場で一枚のカードに寄せ書きする。名前を見てもどの部門の誰だか、よくわからない場合もあるが、まさか、「知らないから書かない」わけにもいかないあたりが、まさに理不尽なしがらみを強要される「冠婚葬祭」のノリ。

(子供じゃあるまいし、今さら、お誕生日おめでとうでもないだろうに・・・)と思うが、カードが回っているのを見たことがない人もいて、
(この人、もしかして嫌われている?)と邪推を呼ぶ。

カードのメッセージはほとんどが「おめでとう」「これからもがんばって」という類のものだが、さすがはイギリス人、気の効いたジョークもありで、それに次々応えるような書き込みもしてあって、なかなか楽しめる。
英語がネイティブではない私にはひねりの効いた一言はなかなか思いつかず、
「お誕生日おめでとうございます」と日本語で書いてお茶を濁すのが悲しい。
内心、(こんなところで妙にがんばって、文法やスペルのミスしてもちょっとね)という自制心も働くし。

「XXが素敵」とか、「取引先のXXがカッコいい」などとミーハーを言っていると、それをネタにカードでからかわれることが多い。
とんでもないデザインのカードにきわどい下品なジョークがてんこ盛りで、とても人様に見せられないシロモノに仕上がっている。

「バースディ・ドリンク」のお知らせがメールで送られてくる。
誕生日のランチタイムで、オフィスのそばのパブかワインバーだ。稼ぎのいい連中はポンとカードをカウンターに預けて、誰にでも奢ってくれる。若い子の場合は参加したメンバーが自分の飲み物代を払う、と様々である。
この日の午後、本人はもちろん使い物にならず、そのセクション全体の仕事の質が低下するのは公然の秘密である。
「来てね」とは言われても、実際に行かなくてもそれはそれ。
だって、全部に参加していると一年中、毎日のように・・・。

21歳、とか30歳、40歳、50歳は「大台の誕生日」だ。
カードも大きめで、その年齢の数字バッジも贈られる。(わざわざ付ける人はいないが)
大台の年や結婚祝い、出産祝い、退職、転職はカードに集金袋(?)がついてきて、有志でお祝い金を入れる。
額は決まっていないので、中身を見て適当に判断する慣習だ。
ま、嫌いな奴ならパスしても構わないらしい。

ご祝儀慣れしている営業職のセクションや管理職を回ってくると20ポンド、10ポンド札、最低でも5ポンドくらいで、カサカサと軽い袋が回る。地味なセクションならじゃらじゃらと小銭の音をさせながら、重い袋が回る。ひとり平均して1-3ポンドと思われる。

結婚祝いに3万、5万という日本に比べれば信じられないほど小額。

お祝いをしてくれるのはうれしいが、気をつけていないとリフト(エレベーター)の中に、
「ジョンは今日で30歳です。おめでとう!」というメッセージと本人の写真をデカデカと貼られたりするので注意が必要だ。
(30歳? どう見ても40歳だ。老けた奴・・・)と社外の人にまでさらしものにされる。

私も年令の入った風船をデスク周りに山ほど飾られて、偶然オフィスに来たクライアントに年がバレてしまい、準備した秘書の子の首を絞めに行ったことがある。

バースディボーイには両ほほにキスをしてあげることにしているのだが、

「お返しにおひとつ・・・」と迫ってくるのがいる。
「いえ、いえ、とんでもございません」とかわし、
「まあ、そうおっしゃらずに」と、さらなる挑戦に、
「きょうの主役は貴殿ですから・・・」

と、「お返しのキス」は受け取らないことにしている。

礼儀上、遠慮しているわけではない。

投稿者 lib : 09:03 AM | コメント (1)

September 07, 2006

夏の思い出

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9月になり、夏が終わろうとしている。

7月は暑かった。
ヨーロッパの夏は「天気が良くて、日が長い」季節であって、決して「ギンギラに照りつけられて、サウナのようにムシムシ」ではなかったものだが・・・。
この数年、30度を超える日がイギリスでも珍しくなくなってきた。

「女はいいよな、ノースリーブとか着られるし。僕たちはいくら暑くてもスーツを着なければならないんだぞ」とボス。
「このくらいの温度で泣き言とは情けない。オタクの先代は暑さをものともせず、アフリカやインド、ジャマイカなんかを無理やり植民地にして暮らしてたじゃない」
そう、いやがらせを言ってやるのだが、
「暑いものは、暑い」
と、軟弱者もいいところである。
大英帝国の衰退、ここに見たり。さぞや、ご先祖様も嘆かれることであろう。

30度なら、日本人の私には平気。
しかし、外に出ているぶんにはそれほど暑いとは思わないが、問題は乗り物の中だ。
イギリスの乗り物はどう見ても「冬仕様」で、暖房は効くようになっているが、窓は小さくて少ししか開かないし、もちろん冷房の設備はない(一部の新型電車にはついているらしいな)。

私は朝夕の通勤時間、日が当たらず少しでも風が入る位置に電車の席を選ぶ。そして、先人の知恵、花鳥風月の文様の入った扇子で涼をとるという原始的な戦術をとる。
日本なら、
「クーラーが効きすぎて、乗り物の中は寒いから、カーディガンを持っていこう」というのも同じく暮らしの知恵である。

「こんなに明るいのにまっすぐ家に帰るのは間違っている」気分にさせるのも、夏のしわざ。
よく考えると、外のテーブルならともかく、ワインバーの中で日が長いも短いも関係ないのだが。
フルボディのレッドワインではヘビィなので、ホワイトにするか、ロゼになるのもこの季節ならでは。

金融街シティでは季節により服装はあまり変化しない。
ビジネススーツというのは生地の厚みは違っても、パッと見目にはかわりばえするものではない。女のスーツも通年ダークカラーで長袖がほとんどだし、男はよほど寒くなければ冬でもコートを着ない人が多い(なぜだ?)

夏のパブ、昼休みでもネクタイを取り、ジャケットを脱いだシャツ姿は少ない。
聞いてみると、
「タイをはずしたりすると、楽になって気が緩み、午後クライアントに会う前にもう一度、身だしなみを整えようという気がなくなる」のだそうだ。

身体の仕組みが違うのか、暑いと言いながらも、上着も脱がず汗も浮かべない姿はちょっと不思議。

シティはデブ度が低い地区である。
それに少々太めでもダークスーツを着ている限りは見苦しい贅肉も目につかない。

が、ショッピングセンターでカジュアルウエアの連中はすごい。
Tシャツやタンクトップで身体の線がモロに・・・。

「臨月の妊婦」のような腹をした「おじさん」。 下着やスカートのベルトで身体のところどころを締めつけられ、その他の部分はボヨヨーンと膨れた「ミシュランのタイヤ男」のような「おばさん」。 チビピタTシャツから、「コブとりじいさん」のコブのようなお肉をプルプルとはみ出させた「おねえさん」。

こうなると、「視覚による暴力行為」といえよう。

お願い、その霜降り肉を人目にさらすのはやめてくれる?

夏のビーチホリディのためにダイエットを計画したが挫折した連中は冬のクリスマスパーティという目標を立てる (私もだが)。しかし、贅肉をジャケットで覆い隠すと、ホッとしてしまい、クリスマスへ向けた減量作戦も危うい様子。

イギリスの食べ物には季節感がなく、「食欲の秋」になりにくいのがせめてもの救いか。

松茸、さんま、柿、栗、と懐かしい日本の秋の味覚を思う9月である。

投稿者 lib : 09:26 AM | コメント (0)

August 31, 2006

ローリング・ストーンズ

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ローリング・ストーンズのコンサートに行ってきた。

ファンではないものの、40年も続いている伝説のグループのステージを一度は見たい。でも、ツアーが発表された瞬間にチケットは完売、プレミアがついて値段は10倍、と聞いていたので諦めていた。

と、コンサートの前日、
「ストーンズのチケットがあるけど行かない?」と友人が電話をくれる。
「ストーンズ? おまけにタダ?」
接待用のチケットが回ってきたらしい。ロックコンサートで接待するのか、この国では。

トィッケナム・スタジアムは有名なラグビー場で、ミック・ジャガーの住むリッチモンドから車で5分。
数万人が集まるスタジアムのまわりには、パトカー、騎馬警官隊、医療関係者と万全の体制である。ロックコンサートだし、乱闘のひとつやふたつあるかもね。

しかし・・・。

予想はしていたが、観客の年齢層はめちゃくちゃ高かった。
メンバーは60代に入っている。で、彼らとともに青春時代を過ごした人たちも同じ世代なのは当然である。最多年齢層は50-55歳、と見た。

会場に向かうほとんどが、カジュアルウエアで白髪、ハゲ、中年太りの集合体。
ロックコンサートにつきものの、歌舞伎調派手派手メイク、原色染髪ツンツンヘア、これ見よがし全身ピアス、黒皮豹柄じゃらじゃらメタル、ヘルズ・エンジェルス刺青おやじは・・・いないな。
おお、ロンドンブーツことプラットフォームブーツを履いた日本人らしき女の子。
「ん、まー、すごい靴ねえ。ちょっと、このお嬢ちゃんのブーツ見てよ」と中年婦人グループに取り囲まれている。

本当にロックコンサート? 
実は「チェルシー・フラワーショー」で、花や庭園を愛でる催し物だったりして。

チケットは40―60ポンドからだが、上は300ポンド、450ポンド、600ポンドまである。これは正規の値段だから手数料、交通費、駐車場代を入れたりすると安くはない。よく見るとカジュアルウエアといっても、ラルフ・ローレンだの、バーバリーだ。
お金に余裕がある感じの中年夫婦や管理職風の男のグループで、
「ストーンズって好きだったんだよね、大学の頃」とか話している。

バーには「18歳以下には酒類をお売りできません」の掲示があったが、18歳どころか会場に38歳以下の観客なんか・・・あ、家族づれの中に小学生がいるな。
ティーンエイジャーは、「ふん、結成当時、まだ生まれてなかったくせに・・・」と冷たい視線を受けている。
煙草を吸っている人も少なかったが、「最近、血圧が高くて医者から禁煙させられちゃってさあ・・・」みたいな雰囲気だ。

なんだかロックしてないなあ。

前座バンドの演奏が終わると、観客席では人の波を作ったりして大はしゃぎ。
明日、腰痛になっても知らないよ。
接待用の席だったので場所はよかったが、前の列の客が途中でやたらと席を立って、ビールだ、ワインだ、ジントニックだ、と買ってくるのがわずらわしい。
コンサートに来ているのだか、パブに来ているつもりなのだか。座って音楽を聴きなさい。

「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」から始まって、「サティスファクション」で終わったコンサート。花火に火炎放射、移動舞台にレザー光線、巨大な唇のバルーンとたっぷり楽しませてもらった。
ミック・ジャガーは孫までいる63歳だが、ステージを走り回って観客を扇動する姿は若いというよりも幼稚園児のようなハイパーさ。

何年も前に、ロンドンの小さなクラブに出かけたときは、トイレのドアは蹴破られ、マリファナの匂いが立ち込め、割れたビール瓶が飛び散っていた。流血騒ぎに巻き込まれずに五体無事に帰宅できるのだろうかと心配したものだ。

この日、中年の観客たちはコンサートを堪能した後、自分たちの飲んだビールのプラスティックカップをきちんとゴミ箱に捨て、鼻歌を歌いながらもお行儀よく帰路についたのだった。

ロックンロールは永遠なり・・・。

投稿者 lib : 08:52 AM | コメント (4)

August 24, 2006

一時帰国 その2

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日本の物価は高いだろうねとイギリス人から言われるが、ロンドンの方が高いと思う。ヨーロッパの他の都市に駐在する日本人からも、
「ロンドンは何もかも高いですねえ」という声を聞く。

この「高い」というのは、「この程度の品質の商品なのに」とか 「このレベルのサービスなのに」のニュアンスがあるのも見逃せない。

特にパリやブルッセルからのビジネスマンは、ロンドンのレストランで「庶民的レベルの食事」に「女王様価格」がついているのにびっくりする。
・・・日ごろから安い値段でおいしいものを食べているらしいな。

交通費にも驚くようだ。
ロンドンの地下鉄やバスの運賃は1ポンド50ペンスからで400円近い。
こんなに取るくせに 「来たり、来なかったり、すぐ来たり、ひどく待たされたり」 と 「女心と秋の空」みたいに思わせぶりで気まぐれな運行である。

以前はよく、駅と駅との間に電車がじーっと停まったまま、何が起こっているのか知らされずに30分も待たされたものだが、情報開示に積極的なこの頃、
「乗客の皆様にお知らせいたします。現在のところ、どのような理由で電車が停まっているのかについての情報は・・・ありません」
と、情報がないことの情報を流してくれる。

帰国中に見た日本の電車の運行の正確さも美しきカルチャーショック、その2である。

駅員の「指差し確認」は 「殺人的満員電車」に次いでイギリス人にも知られている。テレビなどで見たことがあるらしい。

新幹線をプラットフォームで待っていたときのこと、偶然、駅員さんの傍にいた。
柱には「三種の神器」ともいうべき、赤と緑のランプがついた「信号モニター」と赤い線のついた棒が移動するようになっている 「時刻表」とまるでストップウォッチのような「デジタル時計」。

おおい、イギリスの鉄道会社の人、「ストップウォッチ」だぞ、「ストップウォッチ」。
君たちのように「日時計」あるいは「花時計」ベースで運行していないぞ。

そして、この三つと電車とを行き交う「指差し確認」はひと電車につき、十数回に及んだのだった。(思わず数えてしまった)

今考えれば、日本人のくせに物珍しそうに彼の動作に見入っていた私も不気味だったかもしれない。そのプレッシャーにもめげずに芸術的確認作業をしてくれた駅員さんはりっぱだ。

折り返し地点でもある東京駅は電車が入ると作業員の出番である。
手早くゴミを集め、座席の白い布カバーを取り替えていく。その手際のいいこと。
イギリスの電車に乗り込んでくる清掃員の、
「イヤイヤながらやってます。全くやる気はありません。あー、ヤダヤダ。適当にやって早くオウチに帰ろう」
のメッセージが聞こえてくるようなタラタラした態度とは雲泥の差。

「さあ、乗客のみなさん、どうぞ。快適な旅をお祈りします」と言わんばかりの顔で作業員が降りてきた。

いいなあ、働き者の日本人。ウルウル。

新幹線の車両の中はそこはかとなく消毒液が匂う。
なにもかもが効率的で清潔。
でも、ここまで衛生的だと免疫力が落ちて、かえって病気に罹りやすくなったりして・・・。

新幹線では数列ばかり離れた座席にサラリーマンのグループが陣取った。うなぎ弁当がそれぞれに配られ、ビール缶のプルトップがつぎつぎと開けられる。
出張の帰りなのか、一仕事終えた充実感に満ちた顔つきで開放的な雰囲気だ。

と、ひとりのうなぎが一切れ通路に落ちた。
(誰かが踏んですべったりすると危ないなあ)と見ていると、その手が通路に伸びる。
(よし、よし、公共道徳に則って、ちゃんとゴミ箱に入れようね)と思っていると、彼はなんのためらいもなく、そのうなぎを自分の口に放り込み、私をあ然とさせたのだった。

うーん、さすがは日本経済の屋台骨を支えるサラリーマン。そして、彼らによって日本の免疫力も支えられていくのだな、と、そのサラリーマンの豪快さに感心したのだった。

投稿者 lib : 08:30 AM | コメント (2)

August 17, 2006

一時帰国 その1

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今年は梅雨明けが遅く、帰国直前にも大雨が降ったらしい。機内のスクリーンのニュースで、家が丸ごと、どんぶらこ、どんぶらこ、と流されていく洪水の映像を見ながら、
(もしかして、「自然災害危険地区」として日本は「渡航禁止国」に指定されていたかもしれない。イギリス外務省のホームページをチェックしてくればよかった)と不安になる。

無事、到着した。で、空港には例の「狂牛病進入防止」の赤いじゅうたんが敷いてある。
(こんなもので防げるのか?)と、いつも思うのだが、余計なことを言って、全身に消毒液の噴霧を受けるハメになっても困るので、黙ってその上を歩く。

さて、毎年、この時期に人間ドックを受けるのだが、イギリスに住んでいる私にとっては美しきカルチャーショック。なんせ、ここには、

検査の流れの効率のよさ。
施設や器具の清潔さ。
検査技師、看護士、スタッフの礼儀正しさ。

というイギリスの病院では決してお目にかかれない優れものがあるからだ。

日本に住んでいないので、当然、日本の国民健康保険は適用されない。実費で5万円近く払うが、健康チェックのためのみならず、「日本の効率美、医療編」の鑑賞代と思っている。
すぐに結果が出て、健康アドバイスを受ける。「血小板」の数値が基準値よりも高かった。血が止まりやすいってことか? 自分に切りつけて、止血までの時間を計ってみることはしなかったが。

イギリスでは近所にGP(登録医)がいるが、めったに行かない。なかなか予約が取れないせいもあるが、経験上、役に立ったことがないからだ。

その1
風邪をこじらせてしまい、数週間たっても症状が改善しない。仲のいい友人が肺炎で入院したので、思わず会社を早退してタクシーでGPに駆け込んだ。
・・・医者は「うがい薬」の処方箋をくれた。それも、ごく普通に薬局で売っているもの。
タクシー代返せ。

その2
花粉症か何かのアレルギーになった。涙目、鼻水、全身の皮膚炎をGPに見てもらったら、「目薬」の処方箋をくれた。
目薬って、目薬だけ? もしかして、皮膚炎にもこの目薬をつけるとか?
私は平和的な人間だが、(本当です)このときばかりは医者を表に引きずり出して、ボコボコにしてやろうかと一瞬思ったぞ。
・・・・・
・・・・・
・・・・・
その 100
精密検査のため郊外にある大病院を紹介される。検査の当日、受付の人が、
「ごめんなさい。あなたの名前は間違って別の検査のリストに入っていました。予約を入れなおすので、改めて来て下さい」
あの、検査まで数週間待たされて、今日は会社を休んで、電車を乗り継いで2時間かけて、ここまで来たんですけど・・・。

私は音大生だったころに腱鞘炎を患ったことがある。で、ときどき再発する。今回の帰国でうっかり重い荷物を持ってしまい、右腕を傷めてしまった。

久しぶりにGPに予約を入れる。
痛み止めの飲み薬の処方箋を出してもらう。これを薬局に持っていって、6ポンド65ペンス払い、薬を買うのだ。 (この薬は効かず、途中からレッドワインという「家庭の医学」に切り替えた)
「痛みがひどいので専門医に見てもらったほうがいいでしょうか?」と私。
医者はしばらく沈黙したが、
「国民健康保険の専門医だと、たぶん3ヶ月待ちになるから、プライベートに行ったほうがいいですよ」
「はあ、そうですか」 (不満の声)

現在、
マッサージ治療、1時間 40ポンド
針治療、30分 25ポンド
物理療法 (フィジオ)、30分 35ポンド

以上を続けている。腕も痛いが、財布も傷む。

給料から山ほど天引きされている国民健康保険料はいったい何のため? 関係者に強く抗議したい。

日本の病院はよかったなあ。 

投稿者 lib : 12:51 AM | コメント (3)

July 20, 2006

サマーパーティ

career2.gif 11月、12月は忘年会シーズン、イギリスではクリスマス・パーティ・シーズンなのは当然である。 が、6月、7月もやたらとパーティが多いことに気がついた。

ワールドカップでは大の男が徒党を組んでドイツでテント生活、という様子をテレビで見たが、なかなか楽しそう。
少年に戻った男たちが野外パーティをしている風である。気分はトム・ソーヤの冒険かも。

今年はワールドカップにニュースが集中したが、6月にアスコット競馬、ウィンブルドン・テニス、7月にはボート競走のヘンリー・レガッタがあった。
スポーツイベントだが、「天気もいいし、みんなして外で飲み食い」するのが目的と見た。
基本的には桜にかこつけて酒席を設ける日本の「お花見」と同じだな。

馬、テニス選手、ボート漕ぎの学生たちが汗をかいているのを横目で見ながら、冷えたシャンペンにホワイト・ワイン、そしてイギリス国民に大人気サマー・ドリンクのピムズもクイクイ飲まれていく。

しかし・・・・。

ライチタイムのアルコールは「効く」。 太陽にさらされながらだと、夕方や夜よりも3倍(当社比)は確実に酔っ払う。

ああいった場所での飲み物の値段は馬鹿高いのだが、会社持ちだと、いくら飲んでも自分の懐は傷まない。で、ついつい飲みすぎてしまう連中が出てくる。

アスコット競馬にはドレスアップして出かけるものだが、女子トイレにはぐでんぐでんに酔っ払って、床にのびている若い子を見かける。
競走馬による白熱した勝負を見るよりも、この子たちの将来を考えるほうがハラハラするぞ。

友人は接待で出かけたウィンブルドンで、すっかり酔っ払ってしまい、大声で応援して、何度かの注意を受けたあと、警備員につまみだされたらしい。
しばらく警察の「トラ箱」で仮眠し、厳重注意をされてやっと家に帰してもらったとか。
由緒あるウィンブルドン・テニスマッチにて、このお下品ぶり。
(来年の招待客リストから、こいつの名前を抹消しておけ!)の指示が飛んだに違いない。

会社のサマーパーティ。今年はテムズ川のクルーズパーティだった。ボートを借り切って150人ばかりが参加した。

シティに近いスワン・ピアを6時に出航。
気張ってサマードレスに着替えたり(新人の若い女の子)、ボートだからとジーパンに着替えたり(実際派)、面倒なので仕事着のまま参加したり(私とか)。
ひとつの会社のパーティにも関わらず、バラバラで統一に欠けるのがいかにもイギリスらしい。

飲み物を受け取るバーは長蛇の列。そちらは同僚にまかせ、眺めのいい甲板のテーブルと席を確保した。
もう慣れたもので、バイキングの食事がサーブされるのが見える位置にいて、準備ができしだい、一番に駆けつけようという魂胆である。 (実際には3番目だった。悔しい)

ボートはトロトロと進む。
岸に係留されているパブ・ボート、川に面したワインバーでは、やはりオフィスパーティらしいグループがそれぞれ楽しそうに飲んでいる。
川を挟んだお互いのグループ(当然、知らない人)が手を振りあったりして、のんびりとなごやかな雰囲気である。

いいなあ、テムズ川。

早く帰宅したい人たちのために、8時にいったんポートに着く。
私もここで降りた。
この後はイギリスのパーティおなじみのダンス・パーティになる。

今年初めて参加する同僚は「もう少しだけ」とボートに残った。
次の下船時間は2時間後なんですけど・・・。 
適当な時間に船を降りて岸まで泳ぐつもりなのか?

遅くまでボートに残った連中は「二日酔い」と「ダンス疲れ」おまけに「船酔い」でヨレヨレになって、翌日、出社してきた。

追記 * 出張と夏休みを兼ねて日本へ帰国するので、しばらくお休みします。 

投稿者 lib : 09:34 AM | コメント (1)

July 13, 2006

霊媒師

career2.gif 霊媒師のところへ行ってきた。

ハロッズのあるナイトブリッジに近く、大使館なども並んでいるポッシュなエリアだ。
SAGB/イギリス霊媒師協会の建物は広々として天井も高く、由緒ありげな内装。シャーロック・ホームズを書いた作家のコナン・ドイルの名をつけたレクチャールームもある。
霊媒師などという怪しげな商売とご大層な雰囲気の団体の対比がなかなか憎い。

ロンドンに住む日本人女性の間で「ブーム」になっているのか、受付のおじさんも、
「この頃、やたらと日本人が多いんだよ」と言う。私たちも日本人に推薦された。

友人に予約を入れてもらい、土曜日に一緒に出かけた。帰りにはチャイナタウンで飲茶のランチを食べようね、と準備万端のスケジュールを立てる。

何の飾り気もない小部屋 (ほとんど警察の尋問室だ。 いや、そんな所に行ったことはないけれど・・・)に案内される。タロット占いとか霊感占いのようなところは、おどろおどろしいインテリアだったりすることが多いので、ちょっと拍子抜け。
霊媒師といえば、「恐山、イタコの口寄せ」(酢タコの口寄せではない)みたいなイメージがあったのだが、出てきたのは歯科医みたいな白衣(協会のロゴ入り)を着た小太りのおじさんだ。

えらく旧式で、製造中止されて10年以上のようなテープレコーダーを出して、
「録音しておきますか?」と聞かれる。
「いえ、別に・・・」
テープを再生して聞くことがあるとは思えない。

「親しかった人で、誰か亡くなられていますか?」
・・・いたっけ?
うちの一族は長寿で健康、みんなピンピンしている。困ったな。
あ、おばあちゃんがいた。

「母方の祖母が・・・」
「・・・ここに来られています」
早い! 孫娘のために二分の一秒でイギリスまで駆けつけてくれたのか! 
ばあちゃん、マッハの技である。

仕事のこと、人間関係のことを霊媒師の口を通して、
「お前はお調子者」とか「いい加減に落ち着きなさい」だのと、いかにも祖母が孫にさとすような当たり前のことが語られる。
「仕事も必ずうまくいくから、がんばってごらん」と励まされもした。

別に悩みがあって行ったわけではないので、30分の予定が15分で終わってしまう。
「何か聞きたいこと、気になっていることはありますか?」
「いえ、特に・・・」
おい、時間がもたないぞ。

えーと。

あるプロジェクトがあって、そのパートナーとして、ふたりの候補者がいる。別に急ぐわけではないが、どちらの人と手を組むのだろうと思っていた。で、聞いてみる。
「その人は・・・」と霊媒師。
と、相手の身長、話し方、肌や髪の色、めがねの有無を具体的に次々と上げていく。
ところが、ふたりとも非常に似たタイプでどちらなのか判断できない。
「ふたりの名前は?」
名前を告げると、霊媒師は片方の名前を挙げて、はっきりと、
「この人と一緒にプロジェクトをします。もう一人は来週どこかへ行ってしまいます」と宣言。

おい、おい、いいのか? そこまで言い切って。

とりあえず、お礼を言って退室した。30分で30ポンド。

でも、祖母は生前、巫女とか千里眼だったわけではない。普通のおばあちゃんに私の未来がわかるのだろうか? 霊界に行って予知能力をつけたのか? すごいぞ、ばあちゃん!

その答えは一週間以内に出るようだ (たぶん出ないと思うが、出たらお知らせする)。

お愛想で霊的なことに興味があります、と言うと、もう少しで通訳としてリクルートされそうになった。この協会で髪の長い日本人の女が働いていたら、それは私です。(嘘だよ)

祖母が守護霊でひと安心である。楽しみにしていた飲茶を食べてから帰った。

投稿者 lib : 08:56 AM | コメント (0)

July 06, 2006

ワールドカップ

career2.gif イングランド代表はポルトガルに負けてワールドカップを去った。

この手のお祭り騒ぎには個人の人柄、お国柄が表れて、人間観察、社会観察には最高である。
私も自宅で日本戦を2ゲーム見た。
もともとスポーツ観戦には興味がないので、90分もじっとサッカーを見るというのは、かなりの自己犠牲を伴う愛国精神の表れである。
そういえば、前回見たのは4年前のワールドカップ。
4年に一度の愛国精神って・・・。

夕方の5時からのイングランド戦では4時45分に全員がオフィスから消えた。
残ったのはフランス人チームの同僚だけ。みんな大画面テレビのあるパブに出かけたらしい。
私も誘われたが、「うん、あとで行くね」と言いながら、そ知らぬ顔で友人とベトナム料理を食べに行く。

「ならず者の一団」が来るという情報の入った西部の町のようにゴーストタウン化したロンドンの町。 いつもの夕方のラッシュもなく、車はスイスイと道路を進む。
思ったとおりでレストランはガラガラだった。

と、そこにもテレビがあり、スタッフのベトナム人の男の子達が歓声を上げながらゲームを見ている。グリーンパパイヤとかマンゴーのサラダ、生春巻きなどを作りながら、必死でイングランドチームを応援。
出身はベトナムでも、イングランドが「わがチーム」らしい。試合時間に便乗し、さっさとオフィスを抜けて、ご飯を食べにやってきた私たちとはイギリスに対する忠誠心(?)が違うな。

フットボールといえば、私はかつて、「サッカーの女王」と呼ばれた学生時代があったことを思い出した。先生に「では、彼女にやってもらうので、よく見てみなさい」とお手本とされる学生だったのだ。
ただし、音楽大学である。なんで音大の「一般教養」に体育があり、おまけにサッカーの実技があったのか、よくわからない。埼玉のド田舎の広々としたキャンパスの地の利を役立てようと思ったのかもしれない。

音大生というのは楽器の演奏をするので指を守る必要から、
「ぞうきんを絞ったことがない」
「包丁は遠くから眺めるだけにしている」
「フライパンを手にした記憶がない」
などと、社会的に役立たずの連中がいっぱいで、つき指を避けるために球技類は禁止されて育っている。
で、まがりなりにもサッカーボールを蹴ることができるような野蛮な学生は私しかいなかったのである。
「女王」のわりにはレベルが低いが。

近所の家の窓にはイングランドの旗 (こっちに来て初めて見たぞ)、車にも棒つきの旗がなびく。
「国家主義になりかねない。旗を掲げるのはやめよう」という政治的議論もあったようだが、ワールドカップが終われば、いつもの「マンチェスター・ユナイテッド」だの「チェルシー」ファンにもどるだけ。 ま、お祭り時の「衣替え」みたいなものだろうか。

ブラジルやイタリアの旗を出している勇気のある人たちもいて、お調子者の私も一瞬、日本の国旗を窓に・・・と思ったが、右翼的政治団体のチンピラに目をつけられるのも面倒なので、やめておいた。

イングランドチームが敗退すると、近くのスーパーマーケットでイングランドの旗を25ペンスでたたき売りしていた。

神をも恐れぬ売国奴による国辱的行為である。

・・・でも、安くて手ごろ。日本の親戚の子供たちへのおみやげにしようかな、と思って買ってみた。

どうせ私は非国民(イギリス人に非ず)だしね。

投稿者 lib : 09:20 AM | コメント (0)

June 29, 2006

隣の芝生は青い

career2.gif 雨の週末が続き、ガーデニングができなかった (しなくても、よかった)。
やっと週末に晴れる。 
ワーイと言いながら、テムズの川岸にある、レストラン、ワインバー、パブに出かけた。
次の週末も晴れる。 
やったーと、中庭や外にテーブルのあるレストラン、ワインバー、パブに出かけた。

で、ガーデニングなど自分に関係のない、遠い国の奇習と思い始めた頃、久しぶりに自宅の庭に出てみて、腰を抜かす。

数週間前までは、「芝生」 だったのだが、いつのまにか総丈が70-80センチもあり、「穂先」のついた草がボウボウと生えているではないか。
風が吹くと穂先がそよそよと揺れる。 爽やかな風に吹かれて草原の中にたたずむ私。 
気分は 「アルプスの少女」 あるいは 「サウンド・オブ・ミュージック」

・・・なんて、うっとりとしている場合ではなかった。 この植物はいったい何?

芝生が成長してこうなるはずがない。別の品種じゃないの?
・・・そう言えば、思い当たる節がある。
ヘンリー8世のハンプトンコートや名門ゴルフコースなどで見かける青々とした芝生には美と品格がある。 英国王室御用達、これぞ由緒正しい芝生の姿であり、うちの芝生に比べると色、つや、華やかさがまったく違う。 種類が違うのでは、という漠然とした疑問。
ひまわりを右手に、たんぽぽを左手に持たされ、「ほーら、同じお花でしょ?」 と言われているような納得がいかないものを今までずっと感じていたのだ。

偽物だったのか、うちの芝生? 「芝生もどき」だったんだな!

と、友人に話したら、これはやっぱり芝生が育ったものと、あっさり判明。
「でも、普通はそこまで伸ばしっぱなしにはしないよ」とバカにされた。
こうしてガーデニングが後手後手に回るのは 「肉体労働」 が苦手だからだ。
嘘、言い訳、丸め込み、悪だくみ、といった方面の 「頭脳労働」 は得意なのだが。

しかたがない。 ガーデナーを雇うか。

日本の両親の家には年に何度か、庭師のおじさんが来ていた。
「無口な庭師、職人肌の源さん (仮名)」みたいな人で、子分、ではなくて、見習いみたいな人とテキパキと仕事をし、葉っぱひとつ残さないように片づけて帰っていった記憶がある。

源さんに海外出張を頼めないので、現地調達しなければならない。

今までとった方法としては、
1. 家に配られてくるチラシの庭園業者に連絡する。
2. 近所の店の掲示板で宣伝しているハンディマン(便利屋)に電話する。
3. 自分で掲示板に 「庭仕事してくれる人を探しています」の張り紙をする。

その結果は、
1. 庭園業者はイギリス人だが、口ばかりでドタキャンが多く、当てにならない。
2. 使い方がわからなかったらしく、オーバーヒートさせて芝刈り機をおしゃかにしたスロバキア人。 植木はさみで刈ると言い張ったのはいいが、半分で力尽きてしまい、庭の半分を「虎刈り」にしたまま、姿を消したポーランド人。 ハンディマン(便利屋)が、雇い主にハンディキャップ (不利益)を負わせてどうする?
3. 張り紙をしたら、「ルワンダの出身です」「ソマリアから来ました」などと、こちらが泣きたくなるほど英語のできないエキゾチックな人ばかり電話してきた。 何語で仕事の指示すればいいんだろう?

いやな思い出が脳裏に浮かぶ。

と、モタモタしているうちに、芝生はさらにスクスクと育ち、すでに象の一家が棲んでいても不思議ではない「ジャングル」になっている。 
重い腰 (総重量4トン見当)を上げ、今回は自分でガーデニングをすることにした。

「花粉を通しません」という日本製の高性能マスク、目を守るサングラス、頭にはタオルという姿はどう見ても「反政府ゲリラ」。
(近所の人に見られたら、警察に通報されるかもしれない) とちょっと心配した。

小さな庭だが、「ジャングル」から「芝生もどき」の状態にするのに3時間。
しかし、その甲斐があって、芝刈り後特有の青臭い草の匂いがたちこめ、日本の夏、玄関先に「打ち水」をしたようなすがすがしい気分だ。 

芝生よ、芝生。 このまま二度と伸びないでね。 (無理か・・・)

投稿者 lib : 09:15 AM | コメント (1)

June 22, 2006

インド人の逆襲 その2

career2.gif 私は冷静に会社の変更と契約のキャンセル、請求書について説明した。 
オペレーターはしばし沈黙したが、私の話なんか聞こえなかったように、
「お金を払ってください」と言う。
だから、と説明をくりかえす。
「私はあなたの電話会社の加入者ではありません」
今度の沈黙は少し長かった。 で、
「・・・マネージャーと代わります」
私はホッとする。 これで話が通じるだろう。

ところが・・・。 

「僕はマネージャーのX%&#です」
はい、はい、もう名前なんか、どうでもよろしい。

私はもう一度、ここ数ヶ月の状況を説明。 すでに 「口にタコ」 ができている状態だ。
「・・・と、いうわけで、私に請求書が来るのは納得できません」
彼の英語はわりと聞き取りやすかったが、またもや、おごそかにこう言い放った。
「早く、請求書のお金を払ってください」

あのね、うちの家には眠っている間に、大判、小判がわいてくる米びつはないのよ。 (日本人以外にはわかりにくい表現だな) お金が有り余っているわけじゃないのに、どうして加入もしてない電話会社の請求書を払わなければならないの?

「払わなければ、裁判所に行くことになります」
上等じゃないの。 出るとこに出て、はっきりと決着をつけようじゃない。 望むところよ。
「キャンセルを連絡した手紙のコピーはすべて保管してあります。 いつでも提出できます」
「手紙のことは知りません。 お金を払ってください」
「同封してあった封筒で、カスタマー・サービス宛に出しました。 それも一度ではありません。 内部の連絡ミスは貴社の問題であって、私の責任ではありません。 消費者協会に訴えますよ。 なぜ、キャンセルされていないのですか?」
「・・・とりあえず、お金を払ってください」
キィー! 
小学校のときに「質問の意味をよく考えてから、答えましょう」と習わなかったのか?

結局、他の部署にもう一度連絡を取るから、そう言って、こちらから電話を切った。 
怒鳴りはしなかったが、頭から大量の湯気が出た。冷凍シューマイでも頭に載せていれば、ホカホカに蒸されているところだ。

もう一社の電話会社 (旧) はイギリス国内にコール・センターがある。 オペレーターにつながるまでに流れてくる 「グリーン・スリーブス」の曲を30回くらい繰り返し聞かされてから、やっとイギリス人オペレーターと話すことができた。 その人に調べてもらう間、さらに 「グリーン・スリーブス」 20回ほど聞いた。 やはり 「ダブル請求書」 問題は簡単な連絡ミスのせいだった。

友人や同僚に、「この前、インドのコール・センターでねえ・・・」と言うと、内容を聞く前から大笑いされることがわかった。 どうやら、たいへんな目にあっているのは、私だけではないらしい。 
「インドなまりの英語というよりは、英語なまりのインド語で、何を言っているのかよくわからないが、相手は自分が英語を話していると信じているので始末が悪い」
「手紙や書類がやたらと消えうせるが、知らぬ存ぜぬの一点張り」
「トラブルがあっても解決しない、する気なし」
コール・センターを開設する前に、スタッフ・トレーニングを徹底してよ、頼むから。

それ以降、銀行や業者を選ぶ際、「当社のコール・センターはイギリス国内にあります」という一文に注意することにしている。 
「グリーン・スリーブス」 が耳にこびりついてしまうのが難点だが。

と、ある日、またその電話会社 (新)から請求書が来ていた。 ただし、請求額はゼロ。 
他の電話会社 (旧)の加入者だとはっきりしたでしょ? 手紙を送るのはやめてくれる? 

このまま、一生つきまとわれるのはいやなので、次の新月の夜、この請求書をわら人形の中に封じ込めて虫ピンで刺し、とかげの黒焼きと共に庭の片隅に埋め、盛り塩をしておくつもりである。 

それでも、翌朝、土にまみれた請求書が枕元に戻ってきていたら・・・。
いやだなあ、こわいなあ。

投稿者 lib : 09:16 AM | コメント (1)

June 15, 2006

インド人の逆襲 その1

career2.gif イギリスにはインド系の人が多い。 
もちろん、バングラデッシュ出身とか、スリランカ出身とか、パキスタン出身とかを 「インド系」 と、ひとくくりにするのは宗教上の問題もあって乱暴なのだが、基本的に「あのあたり」の人たちだ。

私は最初に住んだ「外国」はアメリカだったので、イギリスに来て、 「インドの人が多い」 と素直に驚いたものだ。 アメリカにはヒスパニック系の人がたくさんいたが、インド系の人にはほとんど会わなかった。

そのうち、イギリスに住むインド系の人が私にとってどれだけ重要な仕事をしているのかがわかった。

まず、インディアン・レストラン。 イギリスのインドカレーはコリアンダーがきいているらしく、慣れるまでには少し時間がかかったが、すっかりはまっている。 会社では女性だけが所属する 「カレー友の会」があり、1、2ヶ月に一度カレー・ランチを楽しんでいる。 午後は全身からスパイスの匂いがプンプンして、誰もそばに寄ってこない。 おかげで仕事を頼む人もなく都合がいい。

オフ・ライセンス (酒屋)。 なぜかインド系の経営が多い。 友人によると、営業時間が夕方以降にかかるような商売をイギリス人はいやがる。 で、働き者のインド系の人たちがどんどん進出してきたのだそうだ。 たしかに夕方5時に酒屋が閉まっては、私の人生に大きく影響がある。 近所の酒屋もインド系の人たちがやっているが、私の顔を見ると何も言わずにいつものワインを棚から取ってくれる。
(きょうはビールにしようかな) と思っても、7ポンド99のワインがすでに袋に入っていて、いまさら99ペンスのビールを頼みにくいような、うむを言わせぬサービスである。 

ニュース・エージェント (新聞、雑誌、お菓子の小売店)もインド系のオーナーが多い。 会社のビルの隣の店のおじさんもそうだ。 ランチをダイエットのためにサラダにするとお腹がすく。 で、栄養補給のためにお菓子を買いに行ったりする。 (無意味で不毛な行為といえるな)
このおじさんは、「うちで売っているチョコレートはノー・カロリー」 と、女心のすきまに入り込むような嘘をつくので、たいへん気に入っている。

このようにして、インド系のイギリス人とは友好関係を築いていると信じていたのだが、とんでもない出来事があった。

ガス会社が2社、電力会社が2社、電話会社が2社からダブルで請求書が届くようになってから数ヶ月。 (3月16日と22日のブログを参照のこと) 何度も手紙を出しているのだが、請求書が送られてくる以外には連絡がない。 文通 (ただし一方的)にもすっかり飽きてしまって、しばらく放っておいた。

と、ある日、自宅に電話が入る。
「こちらは@¥会社です。 #&様ですね」
「は? どちら様で?」
「@¥会社です」
「・・・よく聞き取れませんが、どちらの会社ですか? どちらにおかけですか?」
「@¥です。 #&様ですよね」
「?」
インド系の人独特のくせのある英語なのは顔を見なくてもわかる。 が、何度聞いても会社名も私の名前も聞き取れない。 それでも、何となく、オペレーターは正しい相手と話していることに確信を持っている感じである。

「今日は @¥::$&#¥? ところで &&$%@+¥@# でしょうか?」
な、な、何なんだ??? 
「雰囲気は英語」 だが、実際に耳に聞こえてくるのは 「他の言語」。 まるで、漂ってくる香りは 「バラの花」 だが、鼻先に突きつけられているのは 「たまご豆腐」 というシュールな違和感がある。 

(あなたの英語はよくわからない)と、のど元まで出かかったが、しょせん、こちらも外国人。 じゃんけんで相手のパーに対して、チョキを出さずに同じくパーを出してしまい、「だって、おあいこじゃないの」 と言われる情けない立場になりかねない。

「*&$¥ 請求書 *%$#¥*+%?」
そのうちに請求書という言葉が聞こえた。 どうやら電話会社 (新) が「未払い」になっている請求書にしびれを切らしてかけてきたらしい、と「推測」する。 試しにその電話会社名を出すと、そうだと言う。
・・・どうして会社名が聞き取れなかったのだろう?

続く

投稿者 lib : 08:06 AM | コメント (0)

June 08, 2006

ライフ・コーチ

career2.gif 「ライフ・コーチ」 の 「セッション」 を受けてきた。

パーティで会った50代の女性で、名刺に 「ライフ・コーチ」 と書いてあったので、何をする人なのか聞いた。 精神科医でもなく、人生相談でもない。 人生の問題点を見つけたり、将来の方向性を一緒に探ったりする仕事だそうだ。 
・・・よくわからない。

よくわからないので、一度セッションを受けることにした。 目新しいことは一通りやってみる主義である。

渡された住所に行ってみると・・・すごい高級住宅地。 大邸宅が並ぶ通りできれいに手入れされた前庭が美しい。 家を出たときは元気いっぱいで、何ひとつ問題を抱えていなかった私だが、金がうなる音がゴーゴーと聞こえるような界隈を歩いているうちに、だんだん 「貧乏人コンプレックス」 が形成されていくのがわかる。 なんだか、本末転倒だけど。

「あら、いらっしゃい」 と、にこやかに迎える姿は裕福なイギリスの主婦そのもので、
(この人、お金なんか有り余っていて、本当なら働かなくてもいいんだろうなあ) と余計なことを考える。

さあ、どうぞ、と通されたリビングルーム。 インテリア雑誌に出てくるようなおしゃれな空間で、私の家が一軒すっぽりと納まった上、たたみの2、3畳ぶん、おつりが来てしまいそうな大きさだ。

優雅にハーブティーを入れてもらったあたりでは、物見遊山の気分も消えて、自分の生活レベルがすっかりイヤになってきていたぞ。 
「あなたはお金持ち、私は庶民。 この格差はどこから来ているのでしょう? 不条理ではありませんか。 私の人生設計は間違っているのですか?」 と、思わず涙ぐみながら相談しそうになった。

が、私は人間性に深みがなく、物事を浅く考えるタチなので、すぐに立ち直る。(回復に要した時間は約3秒)
それから、彼女の資格や生活ぶりとか、どんな人が 「教えを受けに」 来るのか、いろいろ質問した。

イギリスにはいろいろな個人向けコンサルタントが多く存在する。 ビジネス・コンサルタント、ファイナンシャル・アドバイザー、スピーチ・コンサルトント、マナー・コンサルタント、ファッション・コンサルタント、ショッピング・アドバイザーと、いろいろある。 
専門家による大人のための家庭教師みたいなものか? ライフ・コーチもこの延長線上にあるように思われる。

しかし、ちょっと考えさせられた。

占い師         (学歴不詳、霊感持ち)1時間 30ポンド
パーソナル・トレーナー (体育系の学位持ち) 1時間 40ポンド
ライフ・コーチ     (博士号持ち)    1時間 60ポンド

彼らに共通しているのは、知らない人 (クライアント) がやってきて、悩みを打ち明ける。 占い師の場合は恋のゆくえとか、パーソナル・トレーナーの場合は万年デブを治したいとか、ライフ・コーチの場合は昇進するための処世術とか。
で、自分の専門知識を使って、クライアントにいろいろとエラソーなことを言うのである。

似たような仕事にもかかわらず、この料金の違いというのは?  人間、学歴ではないというが・・・。 受験生に聞かせるとプレッシャーを大きくしてしまいそうだ。

さて、このライフ・コーチによる私という人間の評価は、
「やりたい事がわかっていて、そのために何をやるべきかもわかっている。 ライフ・コーチは必要ない」 ということであった。 
・・・わざわざ何しに行ったんだろう、私。

「幼児期のトラウマにより、金魚とミドリ亀が怖いですね? これを分析すると、あなたには南の島に住んで漁師になりたいという隠れた願望があります。 その夢を実現させるために、まず、トロール船の操縦免許を取りなさい」 などと予想もつかないことを言われれば面白かったのに。

前世療法、催眠療法、精神分析などの他に、白魔術、黒魔術、霊媒による霊おろしなどの「セッション」に参加し、主催者の学歴と資格に対する、料金との相関関係表の作成をしようかと密かに考えている。

投稿者 lib : 08:16 AM | コメント (3)

June 01, 2006

酔っ払い

career2.gif  イギリス人は日本人に比べると酒に強い。

これはアルコールを分解する酵素の含有量の違いだそうだ。 ランチタイムにパブで軽く1、2杯ビールをひっかけても平気な顔をしているのでもわかる。 パイントグラスは半リットル近くあるから、空腹時に1リットル飲んでも大丈夫ということか。

でも、まったく酔わないのかといえば、そうではなくて、大量に飲めばやはり酔っ払いができあがる。 その行動も酔っ払い独特のものである。 
元々の性格がパワーアップされ、しつこい同僚は同じ話を何度も繰り返すし、女好きの同僚は近くにいる女の人に、やたらと話かけて、迷惑な顔をされている。

酔っ払って信じられない行動を取るのはどこも同じ。
私の知る限り、一番すごかったのは学生時代の友人。 目が覚めたら部屋の中に黄色と黒のテープがトラトラに巻いてある棒がある。 よく見れば、数メートルもある踏み切りの竹ざおだ。 なぜ、そんなものが部屋にあるのか、まったく記憶にない。
 
前夜、何者かによって運び込まれていたようだ (何者というのは、たぶん本人)

ちなみに、この人は当時、某、芸術大学の学生で20歳の女性である。 それをどう処理したのかは聞き忘れた。

私が酒を飲み始めたのは数年前からだ。 
おかげで誰もが持っている 「酒の上での武勇談」 とか 「若気の至りによる大失敗」 はない。 学生時代から飲んでいたら、どんなことになっていたのかは知らないし、知りたくもない。 

きちんと分別のついている現在 (?) みんなと飲んでいる間は大騒ぎをしているのだが、帰り道でひとりになると自己防御機能が働くらしく、降りる駅を乗り過ごしたり、持ち物をなくしたことは一度もない。

実を言うと、親指と人差し指でまぶたを引っ張って電車に乗っている。 乗り合わせたイギリス人はギョッとした顔をするのだが、その時間帯の電車の乗客なら、酒に関しては私と同様の状態になっているので、すぐに見知らぬ東洋人の女の奇妙な行動には無関心になり、トロンと目を閉じていく。 (そんなことをしていると、寝てしまうぞ、いいのか?)

私は人の目を気にするよりは、乗り過ごさないという実務的な利益を取ることにしている。 (反論が多いかもしれない・・・)

酒を飲んだ翌朝にいやだなあと思うのが、記憶にない前夜の行動だ。 
たんすの引き出しの中が整頓されていたり、メイク用のおしろいパフやブラシがきれいに洗ってあって、丁寧に並べて乾燥させてあったりする。
 
・・・いったい誰の仕業? もしかして、私?

当然のことであるが、ちゃんとお風呂に入り、パジャマに着替えて、歯磨きもすませて寝ている。 

・・・本来の私は几帳面な性格なのか? 日ごろ抑圧されている、もうひとりの自分が酒によって解放され、黙々と部屋のかたづけをしている図を想像すると、ちょっと怖い。

さて、「帰巣本能」 は誰にでもある。 
日本の場合、家に帰って靴を脱いだ瞬間に玄関で眠り込む、というのをよく聞く。 靴を脱ぐという行為が、「外と内」 の境界線を越え、無事に安全地帯に戻ってきたという区切りになるのかもしれない。
イギリス人は水を飲もうと思うのか、トイレに行こうとするのか、とりあえずバスルームまではたどり着くらしい。
朝、目覚めるとバスルームだった、というのが多いと聞いた。

なるほど、イギリスの七不思議のひとつ(本当は、もっとあるけど)
「なにゆえ、イギリスではバスルームにカーペットが敷いてあるのか?」 という疑問の答えがここにあった。 
水を使うバスルームにカーペットは合理的でないと思っていたが、酔って帰った夜はこの床で爆睡することを考えれば、その理由が説明できる。

やはり、行動様式に合った家のつくりになっているのだ。 なるほどね。

投稿者 lib : 08:51 AM | コメント (0)

May 25, 2006

イギリス製のお尻

career2.gif  「いいわねえ、そんなに細くて。お尻も小さいし」と同僚のイギリス人女性。
「あーら、サイズ8の服を探すのって大変なのよ。なかなか見つからなくて」とイヤミな私。

イギリス人だからといって、みんな背が高くて大柄というのではないが、身体の厚みや足の大きさは日本人よりは大きい。
しかし、かっちりしたビジネススーツや、体型を覆い隠すような服だと、その体型はよくわからない。

さて、長年の疑問がひょんなことから解けてしまうことがあるものだ。

疑問 その1
「ねえ、この服を着ると、お尻が大きく見える?」とイギリス女が心配そうに問う。 
「これ着ると、太って見える?」と聞くのならわかるけど。

疑問 その2
イギリスでは出産しても翌日あたりには退院する。 日本なら正常分娩でも少なくとも一週間は入院する。 悪名高きNHSのベッド数は足らないにしろ、あんな大仕事の後ですぐ退院して平気なのか。

疑問 その3
「日本人の女の子はきれいでかわいいけど、お尻が小さすぎてセクシーではない」という友人。
「日本人の悪口を言うと首の骨を折る」 と常日頃から言ってあるのに、すぐに警告を忘れるのだ。 

そんなに違うか、私たちのお尻?

これらの疑問がスポーツジムのロッカールームで氷解した。

・・・なるほどね、イギリス女性のお尻は大きい・・・マジで。 

真面目にジムに通うような人たちなので、さすがに、「ごっつあんです」 体型ではない。 が、皆さん、圧倒のボリュームをお持ちである。 
黒人の女の子なんかお尻の位置が高くて、背中のすぐ下にらくだのコブのように盛り上がっていて、スゴカッコいい。 乳幼児の2、3人くらい、おぶいひもなしで軽く乗りそうである。 
日本人の理想とする 「水蜜桃」 みたいに控えめなお尻なんか、鼻息でふっとんでしまう迫力だ。 

これだったのね。上記、その1、2、3の秘密はこの安産体型にあったのね。

イギリス人は小顔である。
それゆえに日本人が、顔 1: お尻 1.5という割合とすると、イギリス人の場合は顔 1: お尻 2.25くらいある。 

肥満したイギリス人女性の身体のシェイプには、りんご型とか、なし型 (ただし、洋ナシのほう) があるらしい。 りんご型は太鼓腹タイプで、全体的に太っている。 ま、これは日本でも見かける。 
で、下半身に向かって太くなっていくのがなし型だ。

そうだ、洋ナシタイプといえば、通勤電車で一緒になるおばちゃんがすごい。 普通の顔の大きさ、 (つまり日本人に比べると、ぐんと小さめの顔) で肩から胸のあたりまではそれほど太っているようには見えない。 が、お腹からお尻にかけて、特にお尻なんかドーンと顔の5倍くらいありそうな体型だ。 

あの顔にあのお尻。同じ人間に所属するのが間違っているような身体の造りである。

「うらやましいわ、ほっそりしてて」 と言われるのはうれしいが、ロッカールームに居並ぶ、重量感のある巨大なお尻の面々を見ていると、

「動物のメスとして負けている・・・」 

そんな敗北感に打ちのめされてくる私だった。

投稿者 lib : 09:08 AM | コメント (3)

May 18, 2006

ひざまずいてプロポーズ

career2.gif この半年で同僚の女の子がふたり婚約した。

人生長いといっても、大手を振ってノロけることができる機会は少ない。 
職場の先輩としては、ランチでもおごって、話のひとつも聞いてあげようという気になった。

L嬢は27歳。25を過ぎると坂道をころげおちるように老けていくイギリス人にしては、小柄でなかなかキュート。 
つきあって3年のボーイフレンドがいて、そのうちに結婚というのは考えていたらしい。

「ロング・ウィークエンド(週末を利用した小旅行)に行こうよ」と彼氏に誘われたL嬢、郊外のマナーハウスのホテルを見て大感激。
部屋はスィートで、イギリス女性の憧れ、四本の柱に支えられた「天蓋つきベッド」

もしや、の予感通り、L嬢をベッドの端に座らせた彼氏は彼女の前にひざまずいて、
「結婚してくれ」とプロポーズ。

「涙が止まらなかったわ」と、スパゲティ・ボンゴレを食べながらL嬢はうれしそうにつぶやいた。

なかなか憎い演出である。

もうひとりは23歳のA嬢。共同名義で購入した家で、彼氏と一緒に暮らしている。
彼女の場合は去年の12月。 ニューヨークへ出張したフィアンセがティファニーに寄ったのに、「これといったおみやげ」 がなかったのでピンときたそうだ。 
「とっておきの品物」は隠してあるのでは?という女のカンらしい。 

クリスマスの朝、彼女は「手のひらサイズの四角い箱」がツリーの下にないかと必死で探したが、該当する大きさのプレゼントが見つからず、がっかり。 
と、彼氏は「じゃ、これ」と靴箱サイズのプレゼントを渡した。

指輪にしては大きすぎるし、重すぎる箱を開けると、重しに入った文庫本、かさを増やすのに使った新聞紙があり、わけのわからない布にぐるぐる巻きにされていたのは、
・・・そうです、ティファニーの小箱。もちろん中には指輪。
ここで彼はひざまずき、
「結婚してくれ」 とプロポーズ。

・・・小細工が多いのがちょっと気になる。そこまでして、箱の中身を隠す必要があったのか?

彼女は 「どうしようかな」と、じらしてみせたが、うれしくて目はウルウル。
で、彼が「この牛女め。ティファニーの指輪が欲しくないのか?」

ちょっと説明が必要だが、この「牛女」(牝牛)というのは、バカな女という英語で、ここでは「お馬鹿さん」くらいのニュアンスだと思う。

「牛女」に求愛する男ねえ。彼のほうも半身が馬だったり、頭の部分が菩提樹だったりすると、まるでギリシャ神話だ。

イギリスのプロポーズにおいて、男 - ひざまずく、女 - 泣く、というお約束が再確認された。

さて、私も毎日のようにイギリス紳士からひざまずかれている。ただし、相手はボスだ。

入社してすぐのとき、ボスが私のデスクの真横にひざまずいたのを見て、
(おやじ、気でも違ったか?) と、びっくりしたのだが、彼は手にした書類を見せながら、淡々と仕事を頼んだ。

実は、ボスには 「腰痛」があり、「中腰」より、ひざまずくほうが楽なことを知った。
・・しかし、その姿勢、誤解をまねくぞ。

正直なところ、腰痛持ちの初老の男(= ボス)なんかにひざまずかれても、ちっともうれしくない。 
おまけに、知らない人が見るとギョッとするらしく、変な顔をされることが多い。 
(恐ろしい女だ。年上の男をあごで使っている・・・)なんて思われているようだ。 

やだなあ、もう。

投稿者 lib : 12:41 PM | コメント (0)

May 11, 2006

ニューマーケットで金縛り

career2.gif 競馬が終わると馬の競売を見学した。競馬場のすぐそばである。

馬が連れてこられてグルグルと歩くのを見下ろすような階段席になっている丸い建物だ。
ハンマーを持ったダミ声のおじさんが堂上で競りを仕切り、客席に立った係が会場を見回して買い手をチェックして、交通整理のような動作で、どんどん、競り値を吊り上げていく。
電光掲示板にはギニー、ドルや日本円、ユーロでの競り値が同時に表示される仕組みだ。

競りの参加者用の特別な一角がある。 
携帯電話を耳に当てた鋭い目つきの人たちはエージェント (馬の仲買人) らしい。 数千万、時には数十億円にもなるという馬の売買の指示を電話一本で受けるのだから、すごいなあ。 
ちょっと聞き間違ってしまったら、どうするんだろう、と他人事ながら心配になる。
「その馬は500万ドルならば、買・・・(う必要はない、の部分が電波が悪くて聞こえない)」
「もしもし? もーし、もし? じゃ、500万ドル・・・(で買いますよ、の部分に雑音が入る)・・・いいですね?」
「じゃ、頼んだぞ」
「承知しました」
なんてことはないだろうか?

その人たちをじっと観察していても、何をもって合図しているのかわからないくらいに動きが少ない。 ちょっとうなずいたり、わずかに指を上げたりしているのか? 
それでも、きちんと伝わっているらしく、日本円の数値を見ていても100万円単位で競り値が上がっている。

そのうち、一般席に座っている人も競りに参加していることがわかってきた。
「はい、階段席のマダムにXXギニー」
え? ・・・私じゃ、ないよね?

途端に不安になる。

髪に手をやったり、鼻の頭をこすったりして、知らないうちに 「買いの意思表示」 をしてしまったらどうしよう?

たとえば、服のほこりを何気なくパンパンと払う。 
で、会場を出ると、
「マダム、先程、1億5000万円でお買い求めになった馬です」
なんて艶やかな毛並みの黒馬が待っていたりして・・・・。

困るだろうな。 どこで飼おう? 庭か? 
一瞬、馬が自宅の庭で草をはむという牧歌的な図が頭に浮かんだ。 
しかし、馬のほうが家より何倍も高い。馬のたてがみの部分が玄関口の一坪分と同じ価値というのは、やっぱりバランスが悪い。 

1億5000万円も財布に入ってないし。 払うまでは家に帰してもらえないのだろうか?

そう思うと動けなくなった。金縛り状態である。

立会人と目が合わないようにする。 痒いところがあっても、くしゃみが出そうになっても、首の向きを変えるのもじっと我慢。 石像のようにカチンカチンに固まってしまった。
案内人のおじさんが不思議そうな顔で見る。
「どうかした?」
「いいえ、何でもありません」 とまっすぐ前を向いたまま、唇を動かさずに答える私。
そのせいで、ひとつの競りが終わり、次の馬が連れてこられるまでの間に、髪の毛をかきむしったり、ゲホゲホと無理やり咳こんだ。

これはクラシックコンサートの演奏中に音を立てないように気を使い、交響曲の楽章と楽章の間で 「まとめて」 咳をしたりするのに似ている。

自分に厳格な金縛りを律したおかげで、無事、馬を購入せずに帰宅することができた、やれやれ。

投稿者 lib : 11:16 AM | コメント (0)

May 04, 2006

ニューマーケットで競馬

career2.gif ニューマーケット (サフォーク州) の競馬に行ってきた。 ロンドンから1時間ほどの場所にある。

アスコット競馬と女王陛下のお膝元ウィンザーの競馬には何度も行ったことがあるが、ニューマーケットは初めてだ。クライアントのお供である。

ニューマーケットは詳しくないので、ボスの知り合いの競馬場関係者が案内してくれた。愛想のいいおじさんで、ものすごく顔が広いことを発見。

顔も広いが、競馬場も広い。
3番の 「チョコレート・ファッジ」 か、7番の 「バニラ・アイス」 のどっちにしようかな、と思いながら、パドックに馬を見に行く。
7番の 「バニラ・アイス」 が興奮して暴れ、厩務員を引きずりまわしているのを見て、迷わず3番にする。
売り場に行き、馬券を購入。 レース・コースに入り、馬が疾走するのを見る。
パドックから馬券売り場へ、馬券売り場からレースコースへ、レースコースからパドックへ、パドックから・・・と何往復もしていると足がクタクタになってくる。

ものすごい人出だ。
木曜日の昼だったが、わざわざ仕事を休んできているのか?
日本のデパートのように、 「木曜定休日」 の人ばかり来ているのではないだろうな。
しかし、よく見れば年配の人が多い。 退職者か? それにほとんどが男性。 おまけに白人しかいない。

数千人の白人のおじいさんの集まりというのもなかなか壮観である。 
若さと華やかさには欠けるが。

ここは長い直線コースで有名らしく、スタート地点ははるか遠くにあり、肉眼では見えない。
そのせいか、双眼鏡を持っている人が多いのだが、これが超クラシックで重厚なタイプ。
ノルマンディー上陸作戦で使われたような、ちょっと地雷に当たったくらいではこわれそうもないシロモノだ。 
メチャクチャ重そう。 歩き回る距離といい、双眼鏡の重量といい、体力に自信のあるおじいさんの集合体とみた。

被っていた帽子を少し浮かせて、案内人に挨拶をする人がいる。
「今のはね、ロード XX」と教えてくれる。

ロードと言えば、XX卿という貴族らしい。

「ごきげんよう」ともったいぶった感じの老紳士が話しかける。
「ごきげんよう、ロード XX」
またまたエラソーな感じのおじいさんが、
「今日は遠方の客人を案内かね?」
「左様でございます。 ロード XX」

数時間の間に10人以上の 「ロード XX」に会った。

シティで10年以上働いているが、「ロード XX」なんて、ほんの数人しか見たことがない。 きっと、貴族はビジネスなんて「お下品」なことはしないのだろう。

「ロードっていうくらいの貴族だからお金持ちなの?」と案内人に聞いたら、
「全員が金持ちってわけじゃないよ」と笑っていた。

他の競馬場でもそうだが、久しぶりに顔を合わせた友人と酒を飲みながら話すのが目的のようで、競馬の開催日を 「ミーティング」 というのはそのせいなのかもしれない。
その横をときどき馬が走る、たまには馬券も買うといった感じ。 私も買った馬券3枚に対して、飲んだのはジントニック2杯にレッドワイン3杯だった。

さすがに、競馬新聞を手に赤えんぴつを耳にはさんでいるおじさんはいなかった。

続く

投稿者 lib : 08:57 AM | コメント (0)

April 27, 2006

パスポートコントロール その2

career2.gif ビザの裏書が読めないのは私のせいではない。
「何年間も出入国を繰り返し、10人以上の入国審査官がこのビザを認めています」
そう言って、私はパスポートの他のページをパラパラとめくった。

彼の顔に動揺が走る。
他のページに山ほど押されたスタンプをよく見ていなかったらしい。
「それでは、他の10人の入国審査官は、みんな判断を間違っていたのですか?」
「・・・・・・・・そうです」

これではダメだ。
イギリス人が一旦、意地を張るともう進展はない。 自分が間違ったと気づいても、持論を撤回しないからだ。
「それで、私はどうすればいいのですか?」
「クロイドンにあるホームオフィスへ行って、きちんと手続きをやり直して下さい」

はい、はい、はい、はい。 わかりました。 (はい の数がやたらと多いときは、納得していないときだ)

私はパスポートを受け取って、ユーロスターに乗った。 いつまでももめていると、駅の売店で買ったベルギー特産のチェリービールがぬるくなってしまう。

役人といえど、しょせんは万事がいい加減なイギリス人。 
私は審査官の話を真に受けて、ホームオフィスまで行き、難民と一緒に長蛇の列に並ぶような小娘ではない。

イギリスに帰ると、新旧のパスポート全ページと永久ビザが出たときの書類一式のコピーを用意した。 君たち公務員の給料のために幾ら税金を払っていると思ってるんだ、と給与明細書も添付しようかと考えたが、それは思いとどまった。

「ユーロスターの入国審査にいたスカタンが、いちゃもんをつけたので、何とかしてくれ」という内容の手紙をホームオフィス宛に書いた。

まあ、文面はそこまで露骨ではなかったけれど。

数日たって、ホームオフィスから会社に電話があった。
上品な英語を話す、感じのいい女性である。

「特別な手続きの必要はありません。 すべて合法的に整っています。 もちろん、ホームオフィスまで来る必要もありません。 担当官の勘違いでしょう」

(末端の職員にも、きちんと職務のイロハを教えとけ、このボケ!) と思ったが、思っただけで言わなかった。 当然だが。

「迅速な対応を頂き、ありがとうございます」と言って電話を切った。

「え? 手紙と電話だけで解決したの? ホームオフィスまで行かないの?」 と残念そうなのは私のボス。
「君が強制送還されたら、18歳くらいのピチピチした、優しい女の子を新しいアシスタントとして雇おうと思っていたのに」

投稿者 lib : 07:59 AM | コメント (0)

April 20, 2006

パスポートコントロール その1

career2.gif イギリスの入国審査は厳しいそうですね。 
何か入国時のコツといったものがありますか? と聞かれることがある。
そんなものはない。なんせ「十人十色」だからだ。 
つまり、10人の入国審査官の対応は10通りある。

「外国人を入国させるかどうかと、滞在の期間については、その日の気分によって決めること」(入国審査官のための入国ガイドライン、第16条より抜粋)みたいなマニュアルがあるに違いない。

前日の夫婦喧嘩でイライラしている担当者に当たったりすると、運が悪い。

姪がイギリスに遊びに来たので、一緒にベルギーのブルッセルとブルージュに行った。
ワッフルやムール貝を食べて、馬車や運河の観光ボートに乗り、とさんざん遊んだ。  
で、帰り道ブルッセル側でパスポートを見せる。 
姪は観光です、来週には日本に帰ります、で問題なし。ところが、私の方がひっかかった。

「あなたも観光ですか?」
「いいえ、イギリスに住んでいます。これがビザ」
とパスポートのビザのページを開いてみせる。
担当官が眉をひそめた。

無理もない。最初に貰った永久ビザは大きな収入印紙みたいな紙がパスポートに貼ってあって、それに仰々しいスタンプが押されていた。 
が、パスポートが切り替わったとき、ヒースロー空港の審査官は新しいパスポートにサラサラッと手書きのビザ(の裏書)を記入したのだ。

それも、かなり汚い字で。 

「あなたも日ペンの美子ちゃんで、きれいな字に・・・」 と思わせる悪筆だ。
しかし、その手書きビザで数年間、何ひとつ問題はなかった。

「これではダメです」
そう言って、
「4週間以内に国外退去の事」のスタンプを押した。
こらこら、何をするんだ。 この木っ端役人め(時代劇用の差別語)。 
永久ビザが失効するのは2年以上継続してイギリス外の国に住んだときだけ、と書類にきちんと書いてあったぞ。

「私は永久ビザを持っています」
「このパスポートのビザでは認められません」
虫めがねで文字の拡大までした後で彼はそう宣言した。


続く

投稿者 lib : 09:32 AM | コメント (0)

April 13, 2006

靴フェチ

career2.gif イギリス人女性は平均して30足の靴を所有しているそうだ。

フィリピンの故マルコス大統領の妻だったイメルダ夫人がアメリカに亡命したとき、宮殿には3000足の靴が残されていたというのは有名な話だが、普通の女性で30足というのは多くないか?

同僚の男性がぼやいていた。

彼の奥さんは靴が大好きで、次々と買ってくるのだが、ほとんど履きもせずにベッドの下に並べておくという。(どうしてベッドの下なんだろう? 靴箱はすでに一杯なのか?)「うちの女房は足が2本しかないのに、どうして、あんなにたくさんの靴が必要なんだ?」

みんなで笑ったが、イギリス人の靴に対するマニアックな態度の片鱗を示す発言だった。

電車が「ストかもしれない。ストでないかもしれない」という微妙な日があった。
「確実にスト」というなら、「じゃ、会社には行かないね」と言い切ってしまうのだが、少し忙しい時期でもあり、間引き運転はあるようだったので、がんばって行くことにした。

駅で延々と待たされる可能性を考えて、ヒールのないカジュアルなぺたんこ靴を履き、会社に出かけた。 

準備万端、用意周到の日本人としては当然の選択だろう。

と、会社の同僚(男)に、
「一体どうしたんだよ、その靴!」とびっくりされた。
「え? 今日はストかもしれなかったから、楽な靴を履いてきた」
「ふーん・・・」と不満そう。

また他の同僚(男)に、
「どうしたの? 今日の靴」
「・・・だから今日はストで・・・」
「そう・・・」 といやな顔。
それほどひどい靴だろうか? と自分の足元を見る。
おしゃれなデザインではないが、ひどく古いとか、うす汚れてはいない。

この調子で5人の同僚(全員が男)に詰問された。
人の意見には耳を貸さない私もさすがに不安になる。

シティでは女性もビジネススーツが多い。 
で、それに合わせてヒールが高くて細い「スティレトゥ」を履いている。見た目は格好いいのだが、見ているだけでふくらはぎが「こむらがえし」を起こしそうなシロモノである。

それに、シティの裏通りはボコボコした石畳がたくさん残っていて、ハイヒールで歩き回るのはつらい。私は以前、足を痛めたことがあって、このごろは「弱気の中ヒール」を履いている。

それでも、パーティなどでスティレトゥにすると、「いいねえ、その靴」と褒められることが多い。(足を褒められているのではない)

女同士なら、靴とか服なんかを、
「買ったの? よく似合うわ」 
「そう? 安かったのよ」
みたいなお気楽な会話はあるものだが、

男も同僚の女の靴をチェックしていたのか・・・。

ボスや同僚と行ったワインバーにブロンドのかわいい子がいた。 

彼女に対する男性の評価は、
「せっかくきれいな顔なのに、お堅い雰囲気。あの子は靴が良くないな」

見てみれば、高さは10センチ近くあるのだが、太いヒールで「安定した」フォルム。ヒールの高さだけが問題ではないらしい。

もしかして・・・イギリス人男性は「靴フェチ」なのか? 
うちの会社の連中を見ているとそんな気がしてくる。

そのせいで、イギリス人女性が30足も買い揃えているのでは?

職場においては中庸の精神をモットーとし、これからも私は「弱気の中ヒール」路線を死守したいと思っている。

投稿者 lib : 09:33 AM | コメント (0)

April 06, 2006

文学論

career2.gif  いろいろな人に会って話すのが好きだ。

小説を書いているので、本を出したことがある人とか、小説家志望の人なんかをときどき紹介してもらって、おしゃべりをすることもある。

いやー、変な人が多い。 (自分を含めてだが)
先日、極めつけの人に会った。

某、有名大学を卒業したイギリス人男性、35歳。
日本のことを題材にした小説を書いているということだった。 ただし、まだ出版には至っていない。 知識が豊富で、経済の話でも、政治の話でも、自分の意見をしっかり持っている。 学歴で人を判断してはいけないと思いながらも、さすがにあの大学を出ているだけのことはある、と最初は感心するばかりだった。  

小説に関していえば、三島由紀夫や村上春樹だけでなく、吉本ばななや遠藤周作の本 (英語版だが) まで読んでいるのに驚いた。 日本で宗教弾圧の頃にあった隠れキリシタンを見つけるための 「踏み絵」 の話だの、村上春樹の文学的評価には疑問がある、などの話で盛り上がった。

さて、私は手を振り回しながら、話す癖がある。 ジェスチャーが大きく、そのせいで、会社では 「イタリア人」 と呼ばれているくらいだ。

と、私のその手がとられた。
ん? と思うと、ギュッと握られた。
何、これ? と呆然とすると、私の顔を見ながらにっこりとするではないか。
はじめて笑顔を見せた彼の口元を見る。

ギャー !!!

歯が煙草のヤニで真っ黒だー!

次々と煙草に火をつけて吸う、チェーンスモーカーで、唇を開かない話し方をする人だとは思っていたが、こういうことだったのか!

おい、歯を磨いていないのか? XX大卒のくせに? (学歴は関係ないか)

男の人に手を握られ、笑いかけられたせいで、気が遠くなりそうになったのは、生まれて初めてだ。 
大正時代のうぶな女学生か、私は?

しかし、私はパニックに強い女だ。
すぐに平常心をとりもどすと、黙って手をふりほどき、テーブルの下に手をしっかりと隠したまま、何事もなかったかのように、話を続けた。

彼は私にその気がないのがわかると (当たり前だ) びっくり仰天するようなことを言い出した。

「僕は日本の女性が好きだ。 ぜひ、日本人の彼女が欲しい。 が、まだ小説家としてひとり立ちしていないので、自分の家を持つ、収入のいい日本人の女性と、一緒に暮らしたい。 そして、僕が大成するまで、養ってもらいたいと思っている」

作家志望のみならず、ヒモ志望だったのか!

「誰か、君の知り合いの中でいないかな?」
いませんよ、そんな人。
私は統計学の権威ではないが、無作為抽出で1000人ばかり選んで聞いてみても、そんな酔狂な女性はいないと思う。

「楽しかった。 また、会いましょう」 と言われたが、
あの真っ黒な歯と 「僕は日本人女性のヒモになりたい」 という浮世離れした発言のせいで、ちょっとパスさせていただこうと思っている。

誰か、彼に会いたい人いますか?

投稿者 lib : 08:15 AM | コメント (0)

March 30, 2006

フレンチ・コネクション

career2.gif  会社にフランス人のチームがいる。

全員が20代のフランス人女性で、契約書類の翻訳はフランス語のできるイギリス人男性が担当しているらしい。
「自分たちだけで固まっている」とイギリス人の同僚たちが悪口を言うのも無理はないほど、フランス人チームは人づきあいが悪い。 給湯室で会っても 「アロー」 と言うだけ。 

これがイギリス人の同僚だと、
「今日はいい天気だね」 とか
「もうすぐ週末だけど、何か予定はあるの?」 とか
「僕の息子が水泳教室で溺れそうになったので、コーチをなぐってやった」 
みたいな、たわいのない会話をするのだが。

イギリス人なら用事がなくても、挨拶したり、名前を呼んだり、ちょっとにっこりしたりするが、フランス人チームは廊下ですれ違っても知らん顔だ。

いやー、無愛想。 悪気はないだろうから、文化の違いか。

しかし、着こなしには感心する。
電話連絡だけでクライアントと顔を合わせるミーティングはないので、スーツ姿ではなく、ややカジュアルな服装だが、センスがいい。 
微妙な色の組み合わせ、粋なスカーフの巻き方、計算ずくのベルトのずらし方はさすがだ。
 
イギリス人が着ると 「茶色」 だが、 フランス人が着ると 「落ち葉色」
イギリス人が着ると 「にごった赤」 だが、 フランス人が着ると 「ワインレッド」
・・・に見えるのは私の偏見か?

おまけにランチがおいしそう。 手作りのスープを持ってきて、会社の電子レンジで暖めていたりする。 

やっぱり、イギリス人は飲み食いと服装では逆立ちしてもフランス人には勝てないなあ。 ま、フランス人チームの愛想の悪さも何とかならないのか、とは思うけど。

彼らのボスはイギリス人とフランス人のハーフのおじさんだが、あの感情的な言動はぜったいにフランス人の血である。  
フランス語で声高に話すのを聞くと、
「亭主を捨てて、僕とパリで暮らすというのは嘘だったのか?」 
みたいなことを言っているように聞こえる。 (パリの部分しか聞き取れない) 
で、部下の女性が、
「あなたとの情事は遊びだったのよ」 とどなり返す、ように聞こえる。
実際には、
「パリのクライアントが頼んでいた書類が届かないと文句を言っているぞ」
「あの書類なら昨日の便で出しましたよ」
といった会話なんだろうけど。

会社の飲み会でパブに行った。 焼き鳥屋のように煙がもうもうと立ち込める一角があったので、何かと思うと全員がスパスパと煙草を吸っているフランス人チームだった。 
「和の精神」 をモットーとする日本人の私としては、しばらく彼らの輪に入った。 

「日本人の若い女性が、パリでブランド物を買いあさってるけど、どうしてあんなお金があるの?」
私のほうが聞きたいよ。
「ブランド品、欲しいと思う?」 と私。
「欲しいけど、ブランドの名前が前面に出てるデザインはダサイから、いやだ」
なるほどね。
「イギリスで洋服を買うことある?」 と聞いたら、全員が爆笑した。
ロンドンとパリ間は近いので、頻繁に帰国して買い物しているらしい。
「イギリスの服は変な色、変なデザイン、おまけに高い」 と文句を言っている。 
婉曲な言い回しはせず、すべてにおいてダイレクトな発言。 このあたりがイギリス人と違う。

彼女たちからパリでの夏のバーゲン情報を聞いておいた。 
が、フランス語ができない私は、不親切と意地悪で有名なパリの店員と互角に勝負できる自信がない。 感じの悪い店員の態度に頭にきても、言葉は通じず、思わず頭突きをくらわしたりすると、警察沙汰になるだろうし。

どうしようかと現在、悩んでいるところだ。

投稿者 lib : 08:17 AM | コメント (0)

March 22, 2006

恐怖の冬 その2

career2.gif  金曜日の午後、会社に電話が入る。

「マダム、ぜひ、聞いていただきたいことがあります」
いやな予感がする。
ガス会社 (旧) が顧客奪還をしかけてきたのだ。

ペラペラと滑らかなセールストークで話しまくる。
「でも、もう変えちゃったし・・・」
「インターネットでご覧ください。 他社との比較が出ています。 当社はたいへんお得なんですよ」
「はあ、そうですか・・・」
あのね、インターネットで光熱費を調べるほど、私は細かい金銭感覚は持ってないのよ。 

50ポンドに値上げしたのはシステム上の間違いで、元にもどしてくれれば、月々の支払いは35ポンドにすえ置く (当たり前でしょ)  新しい会社とのキャンセル交渉や銀行の手続きは、ガス会社 (旧) が全てするからと約束する。
で、面倒になって任せてしまった。 

数週間後、私の家には、

ガス会社 (旧) 月額50ポンドなり。 35ポンドに戻すって言わなかったっけ?
電気会社 (旧)
電話会社 (旧) これは継続されていた。

これに加えて、キャンセルなどなかったのか、

ガス会社 (新) 私の名前はTOTO 様になっていた(便器のメーカーかい?)
電気会社 (新) 名字までスペルミス。 いったい誰あてなんだ?
電話会社 (新) 先日送った手紙はどうした? 無視か?

以上、6種類の請求書が舞い込んだのだった。 いったん、元栓を締めたり、回線を切ったりするのではないらしい。 

6社から供給を受けなければならないほど、うちの家は大邸宅なのか?

しまった。 イギリス人の事務処理能力の稚拙さをすっかり忘れていた。 A と言って、きちんと A と伝わるようなお国柄じゃなかったんだ。

小学生の頃、よくやった 「伝言ゲーム」 がある。
「家から5000円を持って出ました。 まず、八百屋さんでオレンジを3個とりんごを2個買います。 それから、魚屋さんで鯛のお刺身を買います。 そのあと、花屋さんで母の日のカーネーションを5本買いました」

みたいなメッセージが、何人もの間を伝言されていくうちに、
持って出たのは2000円。 オレンジ2個にりんごが3個。 魚屋さんに行くのを忘れる。 花屋さんで恋人のためにバラを買う。 と伝えられて、最後にその間違いを笑うゲームだ。

懐かしいな、伝言ゲーム。 この年になって、イギリスでガス会社と電気会社と電話会社を相手に、これをやるはめになるなんて、信じられない。

その後、「これが最後の請求書です。 クレジット分は返金します」 といいながら、さらなる銀行引き落としがあった。 手切れ金か?

銀行ですべての口座引き落としを停止し、前に出した手紙のコピーをつけ、新しい日付を入れ、また各社に手紙を出した。 もちろん、これらの手紙のコピーもとっている。 (きっと、また使うことになるだろう。 実践 「英文手紙の書き方」 は続く)

何度も頭に血が上ったおかげで、血液の循環もよくなり、ポカポカと暖かい冬を過ごさせてもらった。

来年の冬までには、なんとか解決する予定である。

投稿者 lib : 11:51 PM | コメント (0)

March 16, 2006

恐怖の冬 その1

career2.gif  それは、ある冬の夜、ひとりの男の訪問から始まった。

ヨーロッパに寒波が来た。
ロシアは他国へのガスの供給をしぶる。元衛星諸国の政府は、ガス欲しさにロシアへとすり寄る。それを見たアメリカは、ロシアがガスを餌に政治力を行使していると批判する。

そんなニュースを冷戦 (死語) 政治ショー、対岸の火事として見ていた私にも、火の粉がふりかかった。

「ガス会社はどこを使っていますか? ご不満はありませんか? 当社はたいへんお得ですよ」
インド系らしいセールスのおにいさんは白い息を吐きながら、一気に売り込みをはじめる。

いつもなら、訪問してくるセールスマンは約三秒で断ってしまう。
1. 英語ができません。
2. 留守番です。ここの家の住人ではありません。
3. 宗教上の理由により、満月の夜以外は異教徒と話ができません。 

しかし、この数日前、私はガス会社 (旧) より、お馬鹿な手紙を受け取って頭にきていたところだった。

光熱費が上がることはニュースで聞いている。ま、しかたがない。ただし、値上げのしかたに納得がいかなかった。
月々、定額料金を払っている。 ガスは35ポンド (7000円) だが、実際にはそんなに使用していないので、200ポンド近くが余ってクレジット状態になっていた。

「諸事情により、値上げが避けられません。翌月から毎月50ポンドを引き落とします」って、35ポンドでも多すぎたのに、一体いくら値上げするつもりなのよ?

ダメもとで来たセールスマンに、
「よーく、来てくれた。お宅にお願いしようじゃないの」

それが、大きな間違いだった。

「電気会社もこちらになります」
ふうん、セットメニューらしい。

数日後、電話会社 (旧) から手紙が来る。
「貴殿のご愛顧を失って残念です」
あれ? 電話の会社を変えた覚えはないぞ。

電話会社 (新) からも手紙が来る。
「私どものサービスにようこそ」
だから、お宅に変えてないってば。

電話会社までセットメニューだったのか? 電話会社に電話するとオペレーターが、
「ごめんなさい。 実はコンピューターシステムがダウンしていて、アクセスできません。 日を改めてご連絡ください」
あ、そう。 コンピューターシステムがダウンする電話会社って、信頼できるよね。

しかたなく、それぞれの手紙のコピーをとり、電話会社 (旧) には、このまま継続すること、電話会社 (新) には新規契約は無効だという手紙を書いた。 当然、日付を入れ、全部のページをコピーして保管しておく。

しかし、これはまだ序の口だった。

続く 続く まだまだ続く

投稿者 lib : 08:00 AM | コメント (0)

March 09, 2006

スピードデート

career2.gif  「スピードデート」 に行ってきた。

これは 「お見合いパーティ」 である。 女性と男性にそれぞれ番号が配られる。 女性はテーブルから動かないが、男性が順番に席を移って、全員に自己紹介する。 ひとり当たりの制限時間は三分間だ。 

もし、好みの人がいれば、 「3番のジョン (と18番のマイク、 それから21番の・・・)」  と主催者に告げる。 相手も自分の名前を書いていたら、お互いの連絡先を渡される、という仕組みである。 「両思い」 でなければ、それで終わり。 参加費 20ポンド。

同僚のイギリス人の女の子がボーイフレンドと別れて、何ヶ月もどよよーんと落ち込んでいたので、最近、話題のこれを推薦した。
「ひとりでは行きたくない。ついてきて」 と、たわけたことを言う。
いい年をした大人の女にあるまじき発言だが、
「じゃ、一緒に行ってあげる」 ということになった。 (実は、興味しんしんだった)

私はただの 「つきそい」 である。
一応、丁寧にメイクをして、会社のスーツからドレスに着替えたのは、 「もしかして、あれでも、念のため」 である。 人生、何がおこるかわからないし。

指定されたワインバーに行くと、すごい熱気だ。
「やるぞー」 と勢いにあふれている。

が、よく見るとけっこう個人差もあり、
(やる気があるのか、ないのか?) という地味なブラウスとスカートで、ノーメイクのおばちゃんタイプから、
(踊り子さん?) みたいなラメ入りミニドレスのおねえさんまで、いろいろである。

年齢制限は、25歳から40歳というものだったが、男のほうは 「大学生」 みたいなおにいさんから、 「そのお父さん」 みたいなおじさんがいる。 
彼は 「つきそい」 なのか? それとも、 「参加者」 なのか?

7時半、イベントの始まりだ。
3分おきに約20人の人とおしゃべりをして、いくらメモをとるといっても、誰がどんな人だったか、覚えられるものだろうか? 正直なところ、5人くらいと話した時点でギブアップした。

さて、ここで困ったことになった。
実は、私はたくさんの人 (特に知らない人) の中に入れられると、大はしゃぎをするという 「問題行動」 を起こす。 これは、科学的、医学的にまだ解明されていないが、民間では 「お調子者」 という名称がつけられている。

そのせいで、さんざん騒いだ挙句、来ていたラジオ局のインタヴューまで受けるしまつだ。

スピードデートで顔あわせの後は、 「ディスコ」 (これって死語じゃないの?)  になる。 気に入った相手ともう少しお話をしたり、踊ったりしよう、という趣旨のようだ。
「じゃ、後でダンスフロアで会おうね」 と何人もの相手に約束したくせに、ディスコが始まると、速攻で会場を抜けて、他のワインバーに向かった。

「どうだった? いい人がいた?」 と同僚に聞く。
「イマイチだった。 それより・・・」
つきそいの分際で、ノリノリに盛り上がっていた私の横にいるのが、ものすごく恥ずかしかったらしい。

「今度から、ひとりで来る」 と同僚。

怪我の功名で、同僚の自立を助けることになった。 複雑な気分である。

投稿者 lib : 07:27 AM | コメント (1)

March 02, 2006

ボーナスシーズン

career2.gif  シティのボーナスシーズンが終わった。

景気のいいシティでは、巨額のボーナスが支払われる (らしい)。 ダイアモンドリングが買えるレベルの 「せこい」 額から始まって、 新車が買える額、 家が買える額、すごい人になると、郊外にある古いお城 (ヘリコプターつき) が現金で買えそうな額を貰っている。

この時期、シティで配られる新聞では 「スペインのヴィラ」 とか、 「テムズ河を見下ろす高級フラット」 が 「ほんの50万ポンド (1億円) 」 ばかりで買えるという特集をやっている。

友人がレストランの隣のテーブルから聞いたのは、
「税金が高くて、イヤになる。ボーナスの所得税だけで8万ポンド (1600万円) も取られるんだ。 やる気がなくなるね」

・・・そりゃ、大変ですね。心からご同情申し上げます。

うちの会社はマネーマーケット業界ではない。
そのため、きらびやかなボーナスとは 「100%」 無縁である。

「ああ、仕事の選択を間違えた」
「薄給の奴隷作業に従事する、薄幸な私」
「青い鳥はいったいどこに?」

この時期になると、毎年のように愚痴るハメになる。

まあ、まあ、まあ、まあ、とボスが慰める。
「新しいレストランを見つけたんだ。行ってみる?」
ボスや同僚とランチに出かける。
これは 「部内ミーティング」 と呼ばれるが、ランチつき、ワインつきの場合、なぜか仕事の話はぜんぜん出ないことが多い。

「最近、調子はどうだね? 庭の花は咲いたかい? それはよかった。 隣に住むおばあちゃんは元気かな? うん、元気そうで何よりだ。 まあ、飲めば?」
そういって、給料とボーナス以外の話題がつぎつぎと展開される。

数人でランチに出かけ、ひとり一本ずつワインが空く頃になると、もう給料だの、ボーナスだの、仕事だのといった 「些細なこと」 なんか、どうでもよくなってくる。
たぶん、ここでボスの頭には 「しめたー」 の文字が浮かんでいるのだろう。

それとも、彼もすでに 「部下の不平不満を静める」 みたいな 「些細なこと」 なんか、どうでもよくなっているのかもしれない。

昼過ぎにランチに出かけ、退社時間の直前に全員がごきげん (酩酊状態) で帰社する。

「また、明日ねー」と言いながらも、
今年もボーナスの話を飲み食いでごまかされた、という思いが、酔った頭の中で渦巻くのである。 (10年間、これが繰り返されている)

投稿者 lib : 07:15 AM | コメント (0)

February 23, 2006

通勤電車 化粧事情

career2.gif  毎朝、同じ時間の電車に乗り込むとおなじみの顔の乗客がいる。

学生の通学時間には少し遅いので、乗客はほぼ全員が勤め人風である。女性のうち、そのメイクが気になってしかたがない人たちが数人いる。

全工程パブリック公開型
席に着くとすぐに化粧ポーチの中身を膝の上にしっかりと広げる。メイクの基本はまず乳液から、 (イギリスではあまり化粧水や下地クリームを見かけない。なぜだろう?) というわけで、乳液を顔にのばし、ファンデーション、パウダーと進む。慣れた手つきだ。

が、見ているほうは、電車が揺れるたびに膝の上のコスメが落ちないか、マスカラのブラシを目の中につっこんでしまうのではないかと、いつもハラハラしていてしまう。

「使用前」 に 「使用後」 とか 「ダイエット前」 に 「ダイエット後」 の写真をよく見かけるが、彼女の場合は 「乗車前」 と 「乗車後」 である。 刑事が尾行していても、あれだけ顔が違えば降車駅で見失ってしまうだろう。


舞台化粧型
60歳前後だろうか? 白髪の長い髪をカチューシャでまとめている。通勤電車に乗っているイギリス人には珍しく、ブランド物のバッグを持ち、高価そうだが有閑マダム風ではない、しゃれたデザインの服装をしている。
品の良さそうなおばちゃまで、日本語を話せば (話さないとは思うが) 「あたくしはね・・・」 なんて口調が出そうである。

しかし、ものすごい厚化粧、というか舞台化粧のメイクである。黒々としたアイラインが上下に入り、真っ青なアイシャドー、眉の下のハイライトはなんと、オレンジ色だ。日によっては、ピンク色のときもある。
朝っぱらから、ロイヤル・バレエのプリマドンナを目の前で見ているようで、目がチカチカする。
この大げさなメイクで出勤するとは、いったい何をする人なのか気になっている。


ハリウッド女優型
マレーネ・ディートリッヒという往年のハリウッド女優がいる。たしか北欧出身のクールビューティで、みごとな脚線美と細い弓形の 「おもいっきり不自然な眉」 で有名だ。
この 「ディートリッヒ眉」 をした女性がふたりいる。

よく 「目鼻立ちのはっきりした、外人みたいな顔」 なんて言い方をするが、イギリス人のなかには、白人らしからぬ、平面的でインパクトの薄い顔が存在する。
ひとりはそういった典型的 「洋風 こけし顔」 をしている。もし、この人の髪と瞳が黒ければ、日本のひなびた温泉宿の売店でおせんべいを売っていても、まったく違和感がない雰囲気である。

で、もうひとりはものすごくエラが張った顔で、野球のベース、将棋の駒、アメリカ国防省の建物である 「ペンタゴン」 という名詞が頭に浮かぶ。そのなかにちいさな目、みごとな団子鼻とおちょぼ口がおさまっている。
彼女もよく、電車内でメイクのしあげをしているのだが、その真剣すぎるまなざしに、胸が痛む。

この 「地味顔」 のふたりが何ゆえに、あえて 「ハリウッド女優眉」 を選んだのか???

やはりこれが、 「女のサガ」 というものだろう。もって生まれた目鼻立ちはどうしようもないが、顔の中に何か華やかさをとりいれたい。きっと、そんな思いが、過激な 「ディートリッヒ眉」 に二人を走らせたのだ。
女心に国境はない、と、いたく心を動かされる通勤電車である。

投稿者 lib : 07:51 AM | コメント (1)

February 16, 2006

バレンタイン・ディ

career2.gif  会社にバレンタイン・ディのカードが送られてきた。

差出人の名前が書いていない。
例の 「シークレット・アドマイヤー (心ひそかに君に恋する者) より」 である。 イギリスのバレンタイン・ディは男性が女性にプレゼントをしたり、カードを送る。カップルならカードを交換したりする。

私も昔はどーんと大きな花束が届けられたもんだが・・・ (遠い日の思い出)

さて、 「シークレット・アドマイヤー」 とはいえ、普通はボーイフレンドとか、最近、親しくなりかけている男性からがほとんどである。受け取った女性は、 (彼ったら、お茶目ね) と微笑む。ちゃんと身元はわれているのだ。

しかし、今回は違う。 私の頭に浮かんだのは、大きなクエスチョンマークであった。
・・・すみませんが、どちら様でしょう? どこかで、お目にかかったことがある方ですか?

イギリスでの疑問は、イギリス人に聞け。
というわけで、ボスや同僚などを動員して、 「犯人」 ではなかった、この 「シークレット・アドマイヤー」 を見つけることにした。

郵便の消印の地区を光にすかしてみる者 (これが消えていた)、 印刷されたあて先の印字を調べる者 (科学捜査班)、 カードの雰囲気から性格を推測する者 (行動心理学者)。

で、ち密なる分析から浮かび上がったプロファイル (人物像) は 「イギリス国内に住む、25歳から50歳までの、白人男性」 になった。
・・・全然、絞り込まれてないじゃない。

ところで、メッセージの手書きの文字。これがわかるのは私だけ、のはず。
「知り合いに違いないんだから、筆跡でわからない?」
「まったく」と首をひねる私。
この頃の連絡はEメールか携帯のテキストで、生文字 (?) の手紙など受け取ることはない。

「身に覚えがありすぎて、どの男だか、見当もつかないんだろう」
「自分でカードを書いたんじゃないのか」
「実は誰かから恨まれているとか?」
などと、人格を否定されるような発言がつぎつぎと飛び出してくる。

「シークレット・アドマイヤー」 がすっかり、 「差出人不明」 扱いになってしまった。いくら 「心ひそかに」 といっても、どこの誰だかわからないんじゃ、意味がないのではないだろうか? 

差出人に告ぐ。いまからでも遅くはない。名乗って出なさい。悪いようにはしないから。

投稿者 lib : 08:18 AM | コメント (0)

February 09, 2006

LIB ブラックキャブ

career2.gif  少し以前の話だが、ブラックキャブの運転手と口論になった。

親戚の子が彼女の友人とロンドンに来た。まず、ロンドンアイの大観覧車に乗せ、その後、チャイナタウンでランチという日程だった。ロンドンアイで客待ちをしていたブラックキャブに乗る。
もろ、観光客コース。

チャイナタウンに到着した。5ポンド20ペンスという料金だったので10ポンド札を出す。
と、キャブの兄ちゃんが、
「なんで、たった5ポンドなのに10ポンド札を出すんだよ」
ん? 一瞬、聞き違えたかと思った。
「なあに?」
「非常識だよ。おつりがないよ」
はあ? いったい何を言っているんだろう?

日本で両替してきた高額紙幣50ポンド札で払おうとしたのなら、理解できる。50ポンドなんて、たかが1万円札だが、イギリスでお目にかかることは少なく、大きな店でないと受け取るのをいやがるからだ。

「5ポンド20ペンス払うのに10ポンド札で、どこが非常識なのよ。おつりの準備くらい当たり前でしょ? なけりゃ、 『つり銭がいらないようにご準備ください』 と書いて、フロントガラスに張っておけばいいじゃないの」 と私。
運転手は舌打ちをすると、しぶしぶ、つり銭を渡す。
なんだ、持ってるんじゃないの。

で、ふと気がついた。
東洋人のご一行が観光コースで乗ってきた。服装から見ると日本人観光客らしい。
ちょっと、文句をつければ、おとなしい日本人のこと、
「じゃ、おつりはいいです」
とか言って、4ポンド80ペンスは丸儲け。
そう思ったに違いない。

甘いぜ、兄ちゃん!

カモになりそうだと、私たちを日本人と判断したのはほめてやろう (ほめなくてもいいけど)。 ただし、観光客の中にロンドンの住人が入っていたのに気づかなかったのが、敗因だな。

「もちろんチップはあげないからね。ナンバープレートの番号も控えたから、監督局に報告しとく。こんな商売のしかたをしてると、ライセンスを取り上げられるよ。わかった?」

そう言って、私は運転手に二本指を立てたのでした。 (この部分、よい子は決してマネをしてはいけません。相手がなぐりかかってくる恐れがあります)

さすがの私も、年中ブラックキャブの運転手とケンカしているわけではない。 (時たまです、時たま)
でも、悪徳運転手には言うべきことは言っておかないとね。

投稿者 lib : 09:50 AM | コメント (4)

February 02, 2006

女子トイレ 日本編

career2.gif   トイレというものは、その国の文化や習慣を如実に表すものである。

女子トイレ文化のユニークさにおいて、日本はかなりの水準ではないだろうか? 10年以上もロンドンで働いていると、日本の会社の女子トイレに行くのは 「海外出張」 における 「異文化との出会い」 になってしまった。

まず、化粧ポーチがトイレに置いてある。
さっと、マイポーチに手が届く効率のよさ。化粧品を公共の場に置いても盗まれない犯罪の少なさ。イギリスではとても考えられない環境である。イギリス人でも同僚のポーチに手を出す連中はいないと思うが、外部の人も入ることのできるトイレに私物を置くのは無理だろう。

OLが、昼食後にいっせいに歯磨きをする光景も、久しぶりに見ると感激する。
ランチ後は、白い歯とさわやかな息で午後の仕事を開始するのか。
なんと、感心な心がけだ。
イギリスの女の子がランチタイムに、パブやワインバーまでクィックドリンクに出かけて、酒臭い息でオフィスに帰ってくるのとは少し違う。 (まるで他人事のように言う)

壁には、山ほど標語が張ってある。
「トイレはきれいに使いましょう」
「髪の毛をシンクに流さないでください」
「ペーパータオルはしっかり丸めてから捨てましょう」
「使用中は水を流さずに 『音姫』 のボタンを押してください」

「音姫」 といえば、イギリス人の女性が日本に出張に行き、これは何なのかと首をひねったと聞いた。下手にボタンを押してとんでもないことになり、日本語もできないのに面倒に巻き込まれると困る。でも好奇心は抑えられず、彼女はトイレ内のひと気がなくなるのを、じっと個室で待ったらしい。

いざとなったら、誰にも見られないように逃げるつもりだったと思われる。

ちなみに、彼女は三十代半ばで高学歴、高収入のキャリアウーマン、おまけに美人の人妻である。そんなイギリス人が、日本の女子トイレの個室に息をこらしてこもり、胸をドキドキさせながら、そっと 「音姫」 のボタンを押したかと思うと笑える。
運命の一瞬、 「音姫」 からはさわやかに水の音が流れ出た。 ただ、それだけ。
さぞ、拍子抜けしたに違いない。

「・・・で、何のために水の音がするの?」
おもむろに彼女は聞いた。
「音姫」 の設置目的がまったく理解できていないのだ。

これがいつもの私なら、
「トイレはご不浄といって、悪い 『気』 がこもる所だから、使用のたびに呪文をとなえて、悪魔を退散させなければいけない、そう日本では信じられている。その手間をはぶくために、川のせせらぎが録音してあるものが備えつけられていて・・・」 と、もっともらしい話でからかうのだが、彼女は重要な取引先で働く人である。 ちょっと、まずい。

というのは、彼女には他にも日本人のクライアントがいるので、私のボケ嘘がばれる可能性が大きいからだ。

「使用中の音を他人に聞かれるのがはずかしい」 という日本人女性の心理を説明したのだが、当たり前の生理現象の何がいけないのか、いまひとつ納得していないようだった。
「水がもったいないから」 という日本的な公共道徳観にも、不思議そうな顔をしていた。

日英女子トイレ文化の溝は深い。   イギリス編もそのうち紹介したい。

投稿者 lib : 08:39 AM | コメント (1)

January 26, 2006

狐つきの家

career2.gif  ロンドンから南に下った郊外に住んでいる。

郊外といっても住宅街なのだが、ロンドンの中心に比べると緑が多く、庭の大きさもゆったりとしている。そのせいか野生の生き物も多い。

夕暮れに家路を急ぐと、道を横切るペルシャ猫が一匹。
いや、猫よりは大きいな。 犬か? でも、尻尾がふさふさと・・・。
あの特徴のある尻尾は確か・・・マッコウくじら? 違うな。 
たぬき・・・ではなくて、きつねか? きつねだ。

きつねといえば、ロマンティックなイメージがあった。
たとえば、お使いに行く子ぎつねを心配する母ぎつねの愛「手袋を買いに」の話。あるいは過酷な大自然に生きる「北きつね物語」。

このふたつを合わせると、

子を呼ぶ母きつねの声が、北の大地の冷え切った空気に響く。
――コーン、コーン、コン、コン。
(坊や、早く帰っておいで。吹雪が来るよ!)
―― コン、コーン!
(はい、お母さん。今、帰るよ)

大自然の中で繰り広げられるロマンと親子の愛、のはずだ。

なのに、住宅地を犬猫のようにチョロチョロされると、何だかなあ・・・。おまけに生ごみをあさっている。
これだと、「野生のきつね」というよりは、「野良きつね」ではないか。

鳴き方も、はすっぱで下品な感じだ。
―― ギョン、ギョーン、ギョン!
―― クワッ! ギョン、ギョーン!
犬が風邪で声を嗄らすとこんな風だろうかと思わせる、耳障りな、いがらっぽさがある。

呼び合い通信の内容は、
(アカシア・ロード、3番地に生ごみ発見。昨夜の残りのフライド・チキンと思われる)
(了解。現場に急行する)

てな、感じか。

私の家の庭にもよくきつねがやって来る。
暖かい日には昼寝をしているのだが、このきつね、ノミでもいるのかあちこちの毛がまばらに抜けていて、尻尾なんか向こう側が透けて見えるくらいの情けなさ。
ふさふさの尻尾のないきつねはカンガルーに似ていることを発見した。

これが、毛並みの良いかわいいきつねなら、「コンちゃん」などと勝手に名前をつけて、餌を置いたりしてもいいのだが、しょぼくれて貧相な姿を見ていると、何でこんなのが私の庭にいるのかと気が滅入るばかりだ。
(貧乏臭くて、いやだなあ)というのが正直な気持ちである。

(どこか他の家に行ってくれないかな)と、こっそりパンくずを隣の家の庭に投げ込んでいる。

投稿者 lib : 08:13 AM | コメント (0)

January 19, 2006

欧米では、の嘘 その1

career2.gif  よく女性誌の後ろの広告に、
「欧米で大人気! ゼッタイ彼のできる奇跡のブレスレットを特別価格でお譲りします」とか
「欧米の女の子のマストアイテムのコスメ」
みたいなのが載っている。

あの手の広告を真に受ける必要もないのだが、真面目なコラムや本でも「欧米では」がよく語られている。

そのひとつがブランド物だ。

内容はだいたい、
「ブランド物を若い女の子が持つのは身分不相応です。『欧米では』これらのアイテムは上流の女性、それも成熟したマダムのみ、持つことが許されるのです」
なるほど、なるほど。
「金にあかせてブランド物を買いあさるなんて、はしたない行為です。自分がブランド物を持つのにふさわしい女性として成長し、洗練される日まで待つことを厭わない「欧米の」の女の子を見習いなさい」

でも・・・。

嘘つきー、イギリスの若い女の子も持ってるじゃないかー!

シティで働く女性の中には結構な高給取りがいる(本気でうらやましい)。ブランド物のバッグをシティで働く若いOLの手に見かけるようになったのは数年前からだ。
それまでは、いかにも有閑マダム風の女性がエルメスのバッグを持っているのを見かけるくらいだった。(お約束通りに前面のベルト部分をはずしていたので笑った)

が、歴史上、女王の統治下の英国は必ず発展すると言われているように、好景気が続いてずいぶん長い。で、一部の特別な階級(ごく簡単に「金持ち」と呼ぶこともできる)にのみ「許されていた」ブランド物の所有も、高給取りOLがまず参入し、「ごくフツーのOL」もクレジット・カードを使ってそれに続いた。
このごろは高校生くらいの女の子も時々持っている。(どうやって手に入れたんだろう。まさか、日本の女子高生と同じ「手段」を使ったのでは?)

ということは・・・。今まで「欧米の」若い子がブランド物に手を出さなかったのは、ただ単に、金がなかったからじゃないの? ううう、日本の女たちは何のために自分たちを卑下してきたのか。

同僚が新品バッグを持ってきたので、
「これ、ルイ・ヴュトン?」なんて聞くと、
「えへへ、実は『スペイン・ヴュトン』なの。親からのおみやげ」
何とコピー商品まで出回っている。よく聞いてみるとティーンエイジャーが持っているのはこの手の偽物らしい。

ちなみに私はブランド物を持っていない。飲み食いに対する情熱のせいで「エンゲル指数」が高く、服やバッグにまで回る金がないのだ。これも女として、なんだかねえ・・・。

投稿者 lib : 08:11 AM | コメント (0)

January 12, 2006

馬鹿受けマスク

career2.gif  年末に風邪をひいた。

タチの悪い風邪で1週間も熱が下がらず、頭痛に鼻水、喉の痛みに咳とフルコースでやられた。いつもなら、さっさと休み、ちょっと調子が良くなったら、ちょいと半日ばかり平日のショッピングを楽しんで、(風邪のトラウマから回復するために必要な、精神面における「医学的処置」であり、他意はありません)それから会社に出るところだ。

しかし、イギリスはクリスマス前でランラン気分でも、日本では追い込みの年末、仕事がガンガン入ってくる。

イギリス人は風邪をひいている同僚が会社に来るのをいやがる。もちろん、うつされると迷惑だからだ。しかし、日本では風邪をおしてでも会社に出る「むちゃくちゃな根性」がある人のほうが尊敬される。

私が働くのはロンドンにあるイギリスの会社で、日本人は私だけ。でも、クライアントは日本にいる日本人である。ふたつの文化の間での板ばさみ状態だ。

さあ、困った。

というわけで、私は風邪用のマスクを持って会社に出かけた。
日本人には子供の頃からおなじみで、冬にははずせないアイテムだが、ほとんどのイギリス人にとってはテレビでしか見たことがないという「超レアもの」だ。

ずっとはつけなかったが、同僚がそばに来たり社内ミーティングのときに着用した。
働き者、かつ、なんて思いやりのある私。

ところが、これが期待以上に受ける、受ける。

「鳥インフルエンザの検査官」
「外科医」
「マイケル・ジャクソン」(なぜか、これが一番多かった)

などと言われ、他のフロアからの見学者まで出る始末だ。どうせ見世物になるなら、お金を取ればよかった。

もちろん日本製のマスクなので、プレーンな白タイプのほかに、キティちゃんの絵入りのも用意して、バラエティとファッション性に富むように工夫もしてみた。

ボスは新年になってから、風邪をひき、ずっと会社を休んでいる。一応、家で働いていて、メールのやりとりで仕事をしている。たまに電話をしてくるのだが、声が嗄れていて、まるっきり違う人のようだ。

「僕だよ、僕だ。ゴホゴホ・・・」
「いいや、うちのボスはそんな声ではない。ボスを騙って、当社の機密(どこにそんなものが?)を盗む気だな。 本物なら、ちゃんと会社に来て顔を見せてもらおうか。え? 資料を作ってクライアントに送れ? 偽者にそんな指示をされる覚えはないね」

などと、病人の熱がますます上がるような、弱いものいじめをして楽しんでいる。

ボスが会社に来たら、懐かしの「ピカチュー」マスクを提供するつもりだ。きっと似合うと思う。

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January 05, 2006

宴の後

career2.gif  クリスマスが終わった。

11月の半ば頃より、クリスマス向けの広告がガンガン流れていたのが、やっと終わりになった。クリスマスプレゼント用の商品である。ゲームやCDのコマーシャルは年中だが、香水や高級チョコレートは「季節もの」といえる。

日頃、チョコレートのコマーシャルは50ペンス程度の「日常チョコ」だが、この時期のは3-5ポンドくらいの気軽なプレゼント用。ただし、一箱が10-20ポンドもするアッパー・マーケット用のは限定された客がターゲットのせいか、テレビコマーシャルはない。

雑誌で見かけるような美男美女モデルがカップルでいちゃつく香水の広告も鼻につく。
が、何といっても問題を提起したいのが下着の広告だ。あちこちの駅で、どでかいポスターにブラとパンツ姿の女がニコニコ笑っているのが、この時期の風物詩。ガールフレンドや奥さんに下着を贈る男性も少なくないからだ。

何年か前にスーパーモデルのクラウディア・シェイファーがこの姿で登場したのが最初だった記憶がある。当時、フェミニストの団体から、
「バービー人形のイメージ」
「女性を商品化している」
そんな批判が出たようだ。

元祖プッシュアップ・ブラの広告が女性に支持されたのに比べて、クラウディアのポスターが女性の反感を買ったのは確かだと思う。ただし、フェミニスト団体とは別の理由だ。

それは広告が出された時期にある。

1年中、ダイエットが頭から離れないのはイギリス女性の宿命だろう。しかし、クリスマス時期には友人や家族、親戚と旧交を温めて、パーティだの食事会、飲み会が続く。休暇中は家でゆっくりとテレビを見ながら、プレゼントでもらったお菓子を食べることが許されるフェスティバル・シーズンである。

ここへ、クラウディアの登場だ。
すんなりと伸びた、1グラムの贅肉もない肢体をさらして微笑む、この憎たらしさ。
毎年、クリスマス後に自分の腹の脂肪にギョッとしてスポーツジムに駆け込むのはわかっている。でも、せっかくのクリスマスだしね・・・という免罪符がピリピリと破れていく。
私も正直、ムッとした。お祭り気分に水をさして、いったい何様のつもりなのか?

クラウディア、仕事をよく選んで、女性を敵にしないようにね。

しかし、私の願いも空しく、今年も完璧なプロポーションのモデルたちによる下着姿のポスターは駅や街角を飾り、クリスマスの楽しみか、ダイエットかの選択を女性に迫ったのだった。

1月のスポーツジムは異常に混むのよね、まったく。

投稿者 lib : 08:43 AM | コメント (0)

December 22, 2005

クリスマス

career2.gif  会社のクリスマスパーティが終わると、家庭のクリスマスの話になる。

「日本でもクリスマスを祝うの?」とよく聞かれる。
「ショッピングセンターはクリスマス一色で、サンタクロースもいるし、ジングルベルの音楽が流れるけど、わざわざツリーを飾ったり、ケーキを食べるのは子供がいる家庭くらいかな?」と私は答える。
「日本ではクリスマスは休日じゃないから、みんな平常通りに働いてるよ」
そう言うとびっくりされる。

日本はキリスト教の国じゃないから当然ですけど・・・。
でも、それだと何故クリスマスを祝うのかと言われれば・・・どうしてだろう?
日本人の宗教に対するユルーイ観念が、
「お祝い事なら、どの宗派でもとりあえずOK。商売繁盛よろしく」の態度をとらせるのだろう。
そう言えば、恵比寿、大黒あたりのふくよか系の神様は、ひげと服装を変えればサンタクロースへ軽く変身できそうな感じでもある。

「クリスマスはどうするの?」と季節の挨拶。
クリスマスの準備というのは女性にとって、かなりのストレスになるらしい。
が、いろいろな人と話すうちに、これが会社での仕事ぶりや性格を反映していることがわかった。

日ごろから仕事の段取りがいい人は11月の初めから、
「クリスマスプレゼントの準備はもうできた。ターキーの予約も済んだし、ミンスパイの用意もしたし。あとはいつものところでツリーを買って・・・」と余裕のある口ぶりだ。

パニックに陥りやすく、そのくせ仕事の遅い人は、
「ああ、どうしよう? もう日にちがないのに何もできてない。プレゼントは誰にあげよう? どこで買おう? 料理は・・・。わー、どうしたらいいの、私?」と泣き叫ぶ。
会社でも、この手の人に重要な仕事をまかせることはできない。

ごくまれに、
「とりあえず、ターキーを焼いて、それでおしまい」
というリラックスした(なげやりにも思える)人もいて、もしかして複雑な事情があるのかも・・・という家庭環境を垣間見ることができる。

よく日本の女性週刊誌の相談コーナーで、
「私は長男の嫁ということで、正月の間、台所に立ちっぱなしなのに、義理の妹は手伝いません。不公平だと思います」
といった類の話が載っているが、イギリスのクリスマス期間も同じらしい。

イギリスの女性雑誌に載っているのは、
「金持ちの姉夫婦が高いプレゼントをするので、私たちの贈り物が貧相に見えて不満です」とか、
「私はベジタリアンなのに、何度言っても、夫の母は私の皿にソーセージを入れます。これは孫を産まない私に対するいやがらせなのでしょうか?」とか。

親戚縁者が揃ってのお祝いの席の陰で、壮絶な悪口大会が繰り広げられるのだ。

神よ、罪深い人々を許したまえ、アーメン。

投稿者 lib : 08:34 AM | コメント (2)

December 15, 2005

クリスマスパーティ

career2.gif 恐ろしくもクリスマスパーティの時期となった。

酒が入ると本性が出るというのは万国共通のことだ。
日本の宴会は社会の縮図だから、「無礼講」といいながらも、本当に好き勝手やったら、将来の昇進に影響する。

イギリスのオフィスパーティの無礼講は、文字通り無礼講だ。(もしかして、うちの会社だけ?)

ロングドレスやディナージャケットに着替え、澄ました顔でクランベリーソースのかかったローストターキーなどを食べている最初の1時間はともかくてして、テーブルの上のワインがつぎつぎと空になるころには、みんなどんどんお行儀が悪くなる。

クラッカーを持って、こっそり人の背後に忍び寄り、パーンと鳴らして驚かせたり、重役の膝の上に乗って、一緒に写真を撮ったりする。(両方やったことがある)また、角砂糖やデザートについてきた生クリームを他のテーブルに投げて知らん顔をしたりして、(これは私ではありません)DJに叱られたりする。

しかし、なんといっても、ダンスフロアの光景はしらふでは見ることはできない、ものすごさだ。

60にもなろうとするイギリス人のおやじがハードロックの音楽にのって、真夜中まで踊りまくる。若い嫁入り前の女が、玄人はだしで、とても堅気には見えないような踊り方をする。もしかして会社の就業時間以降、別の仕事も持っているんじゃないかと心配になる。

イギリスの会社のクリスマスパーティは日本の忘年会と一緒で、仕事の延長よねー。なんて甘い考えがふっとぶイベントである。

硯と墨、毛筆をとりだして、

「この宴会に『無礼講』の真髄、見たり!」

と思わず書いちゃおうと思うくらいだ。(実際には、パーティバッグは小さいので書道セットは入りません。念のため)

投稿者 lib : 08:54 AM | コメント (0)

December 08, 2005

就業時間

career2.gif  うちの会社の就業時間はシティでも特別なのだろうか?

営業のほうは本当にバラバラだ。外に出ている時間も長いし、クライアントの面倒を見たりするので、オフィス内にじっとしているほうが悪いという風潮もある。これはわかる。

事務職のスタッフも勤務時間がいろいろだ。
基本的には9時-5時なのだろうが、仕事により、というよりは家庭の事情で勤務時間が違うらしい。小さい子供がいる女性は週に3日で、4時過ぎには会社を出るとか、年寄りの父親がいるので週に数日は自宅で働くとか。各自が会社と交渉して、曜日や時間を組み立てるらしい。
会社の規則だから、と一方的に決まった時間以外は認めないということはないようだ。

私は9時半から5時半の勤務だ。帰りはなるべく5時半を過ぎないようにする。ボスに5時以降は新しい仕事を言いつけないように躾けてあるので、よほどのことがない限りは残業しない。
この躾には最初の数ヶ月を要したことを覚えている。
「4時半になりました。デスクや書類のチェックをして、今日中に仕上げなければならない業務の確認をしましょう。気づいた用事はすみやかにアシスタントに報告する義務があります」
「5時です。この時間より後の仕事のリクエストは受付のみで、明日以降の出来上がりになります」
「就業時間外での作業を承りましたが、この報酬につきましては、来週以降のランチを要求します。よろしいですか?」
軌道に乗せるまではそれなりに苦労をしたが、そのかいがあって、ダラダラした仕事の流れはなくなった。

ロンドンで働くようになってから「残業」という経験がすっかりなくなった。夕方6時を過ぎても働いているのは、ざっとフロアを見渡してみても・・・私のボスくらいだ。

彼は日本とアメリカにビジネスがあるので、朝早くから日本時間に合わせて働き、午後から夕方にかけてはアメリカのクライアントのために働く。

えらいなあ。 (賞賛の声)

最初はアシスタントの私も同じく残業させようとしたのだが、
「私は日本の担当で、アメリカのクライアントは関係ありません」と優しく宣言したので、その野望は砕かれた。
ボスの言によれば、「あまり優しい言い方ではなかった」ということだが、10年も前のことなので、きっと覚え間違いをしていると思う。

このようにして、労使関係の不条理はきちんと説明すれば、すんなりと受け入れられるものである。

投稿者 lib : 08:14 AM | コメント (0)

November 30, 2005

天国への道 

career2.gif  先日、会社帰りのことだ。

道の向こうから、ものすごく目の細い東洋人の女の子が歩いてきた。
(ほほー、珍しい)
この頃の若い子は身体改造に熱心で、黒人の女の子はみんなストレートヘア、東洋人の女の子はみんな二重まぶたに整形をしているものと思っていた。
(親から貰った体を大切にしているのね。親孝行、親孝行)と思っていると、話しかけられた。
「ハロー、私は韓国人のキムです。あなたは日本人ですか?」
「はい、そうです」と私。
と、突然、
「あなたは神を信じますか?」と聞かれた。

神といっても、色々いる。
キリスト教の神から、お釈迦様に、アラーの神、インドなんかは腕が何本もあるのとか、象の鼻をしてるのとか。
象の鼻の神様に「安産」とか「希望校への合格」なんかお願いして、効き目があるのか、ちょっと不安だが。

韓国の人はキリスト教の信者が多いと聞いたことがあるので、たぶんキリスト教だと推測する。

「ええっと、そうですね・・・。子供の頃、友達と一緒に教会に行ったことがあります」
キム嬢は大げさに首をふる。
「教会に行くことと、神を信じることは違います。いいですか、神を信じると天国に行きます。信じないと地獄に落ちます。さあ、どうします? 神を信じますか?」

そんなこと、急に言われてもなあ。

キム嬢はもう一度、噛み砕くように繰り返した。
「簡単なことです。神を信じると天国に行きます。信じないと地獄に落ちます。さあ、神を信じますね?」

会社帰りの道ばたで、18歳の宗教少女から改心を迫られて、はい、そうですか、と3分間で転向する人が何人いるだろう?

これがイギリス人の宗教おやじだったら、間違いなく議論をふっかけるか、おちょくるかのどっちかをしていた思う。
しかし、異国に住む同じ東洋人どうし。おまけに若い真面目そうな子に、それはかわいそう。で、しかたなく、
「たいへん重要なことなので、この場でお答えできません。考えてみます」と答えた。

迷える子羊を救うことができなかったキム嬢は、がっくりと肩を落として立ち去ったのだった。

キム嬢、宣教師への道は遠い。(というか、話しかける相手を間違っていると思う)

投稿者 lib : 09:09 PM | コメント (0)

November 22, 2005

携帯電話  その2

career2.gif   私は乗り物の中で携帯を使うのがあまり好きではない。しかし、連絡事項はしかたがないだろう。

「7時に着くから、駅まで迎えに来てね」と親に電話する子供。
雨が降っていたりするとき、携帯って便利よね。親も安心だし。

朝の電車でよく聞くのが、遅刻の連絡。
「電車が遅れたので、遅刻します。いやー、ひどい目に遭いました。すごく待たされてしまって・・・。すいませんが、クライアントに連絡を入れておいてください」

(あれ? この電車は定刻通りに到着したはず・・・)

イギリスの電車はメチャメチャ遅れる。それをいいことに、寝坊を電車の遅れのせいにしたことは私もある。これはお互い様。

帰りの電車で私の携帯電話が鳴った。夕方、6時半。
日本出張中の上司からだ。
日頃、乗り物に乗っているときに電話がかかると、後でかけなおすようにしている。
しかし、上司は日本である。
「今、日本は何時?」
「朝の3時半」
ずっと連絡を取ろうとしていたのにとれなかったのは、寝ていやがったな。
ま、時差ボケもあるからしかたない。

「XXの件はどうなってる?」
「ああ、あれ。ミスAは米ドルで10万欲しいらしいけど、ミスターBはせいぜい5万ドル。それも実物のチェックが済んでからでないと、ダメだって」
周りが急にシンとした。気まずい空気を感じる。
視線を私から逸らしているのは、なぜ? 
ええっと、どんな話をしてたっけ?

みんなの耳に聞こえていたのは・・・、
「ボス、例のブツの件で。女は10万ドル欲しがってるんですが、男のほうが承知しないんで。野郎は5万ドルしか出したくねえ。それもきっちり、ブツをこの目で確かめてから、決めさせてもらうぜ、そう言うんですよ」
10万ドルの実物のチェック・・・。
麻薬の取引だよ、これじゃ。
どうしよう? でも、ここで席を立つとますます怪しまれる。

私は冷や汗をかきながら、上司の質問には関係なくビジネスの詳細をペラペラと説明した。脈絡のない話の展開に上司は少し混乱していたが、背に腹は変えられない。
駅で警察が待ち構えていてハンドバックの中身を見られたり、尋問を受けたくない。

やっとのことで「ブツ」が何で、どういう「取引」なのかを説明した。
非合法な取引の話ではなくて、なんとなく周りの乗客も安心した風である。

めでたし、めでたし。

投稿者 lib : 08:31 AM | コメント (0)

November 08, 2005

ドッグレース その2

career2.gif  さて、ドッグレースである。

ギャンブルだ。
競馬のパドックの代わりに、調教師なのか、なぜか薬剤師のような白衣を着た人が、トラックの真ん中に立って、レースドッグを見せる。
グレィハウンドだと思うが、図体もでかいし、全身これ筋肉みたいな感じ。公園をのん気にお散歩しているような「愛玩犬」にはほど遠い。ごつい針金でできた口輪(?)をはめている。
ということは・・・噛むのか? 噛むんだな?
いかにも「闘犬」という面構えだ。いや違うか。彼らは「闘犬」ではなくて「走犬」なのだ。ま、細かいことはともかくとして・・・。

「紳士方に、お嬢様(ちなみに私のことだ)、お賭けになりませんか?」
言葉は丁寧だが、場末の映画館のチケット売りみたいなノリのお兄さんが来た。
「馬券」ではないから、「犬券」だろうか。
「2番の勝ちに5ポンド」
「3番と5番の勝ちに10ポンド」
「4番の負けに20ポンド」
同席者は次々と賭けていく。
私は戦略を練るためにしばらく様子を見ることにした。(正直なところ、賭け方がよくわからなかったのだ)
ポータブルの「犬券発行機」で、ちゃちなレシートみたいな「犬券」がプリントされる。何だか、安っぽいなあ。競馬に比べると。

笑ったのが犬の名前だ。
「みんなに会ってくれ」だの「中国の医者」だの「インドのトルコ人」だのと、ふざけた名前がついている。
たぶん「芸名」というか「レース名」だと思うのだが。

「さあ、ちょっと走ってみようかな? こっちにおいで、『インドのトルコ人』、『中国の医者』、『みんなに会ってくれ』。 おお、千切れるほどに尻尾を振って、かわいい奴らだな。 お手! いい子だ。 こらこら、『インドのトルコ人』、『中国の医者』を噛むんじゃない。仲良くしなさい、仲良く。 何をしているんだ、『みんなに会ってくれ』! そんなところで糞を・・・。みんなに合わせる顔がないだろ、『みんなに会ってくれ』。しかたがないなあ」

って、無理だ。トレーニングにならないと思う。

結局13レース中、5レースに5ポンドずつ賭け、全敗して帰宅した。

投稿者 lib : 04:18 PM | コメント (0)

November 01, 2005

ドッグレース その1

career2.gif   ドッグレースに行ってきた。

会社で「ロムフォードでドッグレース観戦」という催し物があったのだが、帰りが遅くなりそうなのであきらめた。
と、数日後、偶然にも知り合いからウィンブルドンのドッグレースに招待されたのだ。
ラッキー。

ウィンブルドンと隣の駅、アールズフィールドの中間地点くらいにあるウィンブルドン・スタジアム。
競馬は何度か行ったことがあるが、ドッグレースは初めてだ。
シャンペンにキャビア、派手なお帽子のご婦人が「社交」していたアスコット競馬とは大違い。なんだか地味なつくりの建物と雰囲気である。地方公共団体の体育館みたい。

接待用のレストラン席に予約が入っているという。
接待といっても、日本なら、地元の商店街の酒屋のおじさんが「今日は俺のおごりだ」とか言って、近所の八百屋のおじさんを連れて野球観戦に出かける。そんな庶民的な感じだ。
私は知り合いの「接待」に関係はなく、「おまけ」でくっついてきただけである。

スタートラインが見下ろせる位置にレストラン席があり、目の下にゲート、各テーブルの上には小型のテレビがあって、掛け率や犬の紹介が行われている。

メニューを渡される。スターター、メイン、デザートの3コース。
接待用のせいか値段がついていない。いくらくらいするのだろう? 自腹を切るのではないが、気になる。25ポンドくらいと見た。飲み物はもちろん別料金だろう。

さて、何にしよう? 
スターターはフィッシュケーキ、つまり魚肉入りのポテトコロッケだな。スモークサーモンは無難なところだ。え? 北京ダック? ふーん、こんなところで北京ダックねえ。
で、メインコースは何がある?
当たり前なところでパスタはわかる。豚の腹肉(ポークベリー)にジャンバラヤ? 珍しい。イギリスの店でジャンバラヤを見たのは初めてだ。
何だ? ハンバーガーがある。マクドナルドか、ここは。
何を基準に設定してあるのか、よくわからないメニューで3コースを選ぶ。

ワインはそこそこだったが、食事は意外にもおいしかった。

その2に続く

投稿者 lib : 08:11 AM | コメント (0)

October 27, 2005

携帯電話  その1

career2.gif  乗り物の中の携帯電話は嫌いだ。

大声で意味のないことをペチャペチャおしゃべりされるのは迷惑だ。しかし、それはせいぜい耳障りなくらいで、それほど罪はない。
いやなのが、プライベートな話題を無理やり聞かされることだ。

若いインテリ風の女性、声は抑えていたが内容が内容なだけに、つい耳を傾けてしまった。どうやら親が病院で死にかけているのだが、見舞いに行くことを拒否しているらしい。
「あの人が私をどれだけ苦しめたのか、知っているでしょ? たとえ親でも会いにいくつもりわないわ。死にそうだからって何なのよ? もう5年も会ってないのよ。今さらどうしようもないわ」

周りの乗客はシーンとしている。
しかし、彼らの思いはわかる。
(親の死に目に会いたくないというほど、いったい何をされたのだ?)
きっと、私が考えていたことと同じだと思う。
そこまでプライベートな話をするなら、全体像をみせてくれないだろうか? 不親切だ。


先日は30歳くらいのサラリーマン。
ボソボソと話す感じから、余り楽しい話ではないらしいが、はじめは気にも留めなかった。
「今は電車の中だ。かけなおすから」
何度もそう言っているが相手が切らせないらしい。
「じゃ、二度とその男と会わないことを約束するんだな!」
そんな声が聞こえたので、彼を囲むシートの3人はいっせいに沈黙。
一人は新聞のパズルを始め、もう一人はいままでパラパラとめくっていた雑誌を熱心に読み始めた。不幸なことに私は読むものがなく、英語のわからない外国人のふりをしてぼんやりとするしかなかった。

「僕たちはお終いだな。もう話すことはない」
そう言いながら、なかなか電話を切らない。
周りの乗客にどれだけ緊張を強いているか、わかっているのだろうか? 早く終わりにしてほしい。
ああ、やっと切ってくれた。
と、携帯が鳴る。
メッセージが入ったらしい。顔をしかめる男。
一瞬、天井を眺めると、自分もメッセージを打ち始めた。
また、携帯が鳴る。男もメッセージを返す。
それが何度も繰り返された。

今度は電話が入った。
「ハロー?」
しばらく、真面目な顔で相手の声を聞いている。
なぜか男の表情が少し緩む。
「じゃ、後でね」
??? 仲直りしたのか?

男が私の駅よりもひとつ手前で降りる。
できることなら、彼についていって、恋の結末をこの目で見届けたかった。

投稿者 lib : 08:20 AM | コメント (0)

October 19, 2005

占い師 

career2.gif   時々、占い師のところへ行く。

ロンドンでのお気に入りはリバプール・ストリート駅の横、スピタルフィールド・マーケットのアンおばちゃん、グリニッジのアンディ兄ちゃん、ビートルズで有名なアビーロート・スタジオに近いマリーおば・姉さん(年齢不詳)である。
それぞれに、仕事、恋愛、人生相談など得意分野が違う。

私は人の言うことを聞かない。親、友人、教師、上司の意見などふんふんと聞き流すだけだ。占い師も例外ではない。彼らのアドバイスを本気で取り入れたりはしない。
では、なぜ高い金を払ってわざわざ出かけていくかと言えば、純粋にエンターティメントである。結構、話のタネになることがあるのだ。

友人は占いの結果、
「仕事上、諍いがある。『女の』上司と意見が衝突する。しかし、落ちついて対処すれば解決するので、短気を起こさないように」というのを聞いた。
確かにこの友人は数週間後に上司とかなり激しい意見の応酬があり、辞職まで考えたが、占い師の言葉を思い出し、とりあえず気持ちを抑えて対応し、その後はその上司ともうまくいっている。

しかし、わざわざ「女の」上司というだろうか?

この占い師の「予言」は厳格に言えば、正確ではない。彼女の上司は「女」ではないからだ。が、彼はカミングアウトしているゲイである。だから、本質的には「女の上司」というのは当たっている。
「アタシ、身体は男でも心は女、その辺の女より、うーんと女よ。わかって、お願い!」という思いが通じたのだろうか?
これには友人と一緒にバカ受けした例である。

私も何度か不思議な思いをした。

タロット占いの一番最初のカード。
占い師が言った。
「音楽、あるいは物を書くこと。あなたはどっちがしたいの?」
あんまり驚いて吹っ飛んでしまった。
私は音楽大学の卒業生でクラシックの勉強をずっとしてきた。
しかし、日頃から楽譜を持ち歩いたり、首にバイオリンでできるタコがあるわけではない。
どうして、わかったのだ。音楽のこと。

占い師は客を見れば、大体のことがわかるという。
金のありそうな有閑マダム風の女が来れば、たぶん夫の浮気。
やつれた主婦なら、子供の非行か、健康問題。
私は能天気な顔で占い師の前に座る。子供の頃から物事にわずらわされない性格なので、基本的に悩みはない。服装や顔つきから状況を推測できないはずだ。


それに物を書くこと。
今年、小説を出版したが、これを言われたのは五年以上も前のことで、当時はまだ書き始めていなかった。何か書きたい、と漠然とした気持ちはあったが、具体的にはっきりとした計画はなかった。

びっくりしたので、その後の会話は覚えていない。

他の占い師にも言われた。
「あなた、お金が入るわよ。これで・・・」
その占い師は右手を空間に上げ、何かを書く仕草をした。
(あ、ここでも物を書くことが出ている)と思った。
「何かしら。えーと、・・・あなた、絵を描くの?」
この占い師はものすごく霊感があるのだが、うまくイメージを言葉にできないことが時々ある。

せいぜい半年に一度、彼らのうち誰かのところへ行っているのだが、そろそろ電話で予約を入れてみようか。
またまた面白い話が聞けないものかと思っている。

投稿者 lib : 08:57 PM | コメント (2)

September 23, 2005

イギリス人の同僚 その2

career2.gif 声というものは職場環境においても、なかなか重要なファクターを占めていると思う。

同僚の男の子にかなりの線をいっているハンサムな子がいる。オーランド・ブルーム似のナイーブな青年風。細身の長身。もちろんシティの制服、きりりとしたダークスーツ。廊下ですれちがうと、「やあ」なんてかわいい笑顔を見せてくれる。たぶん二十三、四歳。

が、しかし、こいつの声が問題なのだ。
身体のどこかが破れていて、空気が漏れているんじゃないかというくらいフニャフニャ、スカスカした声である。徹夜をして、やっと眠りについたと思ったら、電話がかかってきて起こされた、なんて状況のときに、こんな声が出るかもしれない。

一時期、彼のデスクの真後ろに席があったことがある。
クライアントと話すその声を聞いていると、ずいぶん不安になったものだ。こんなやる気のない声の奴とビジネス取引をする人間がいるなんて信じられないとまで思った。

このセクションのチームセクレタリーの女の子もすごかった。
二十歳くらいだったのだが、舌足らずの子供しゃべり。この声には聞き覚えがある。そうだ、サザエさんにでてくるタラちゃんの声だ。もちろん英語版だが。

この二人が打ち合わせをしている横にいると死にそうな気分になった。
夜明けの寝ぼけ声男、対、タラちゃん。
スカスカ声が冗談を言い、タラちゃんがケケケケ、なんて声で笑うと、もう、こんなところで働きたくない。このままヒースロー空港まで行って、日本に帰ってしまおうと何度思ったことかわからない。
ここまで脱力感を誘う声の組み合わせはなかなかあるものではない。

逆の例もある。
別のセクションにシルバーヘアのマネージャーが入社してきた。
私の厳しい審美眼にも耐えるなかなか素敵なルックスだ。
グループごと別会社に引き抜かれるのはよくあることで、さささ、と周りのデスクの配置替えがあったかと思うと、彼が引き連れてきた部下が数名そこで働き始めた。

早速、ランチタイムにウエルカム・パーティが開かれる。
こうやって、理由をつけては飲み会になるのは日本もイギリスも同じ。
ま、とりあえずご挨拶、ご挨拶。で、ワインを片手にすり寄っていった。
「我が社に、ようこそ」
「これから、よろしくお願いしますね」
きゃー、かっこいい。
低音の渋い声。いっぺんにファンになってしまった。お育ちもいいらしく、物腰も優雅で丁寧。

ランチタイムの軽いパーティなのに、興奮したせいか酔いが回ってしまい、午後から仕事にならず、
「もう帰っていいよ。電車を乗り過ごさないようにね。また明日」
とボスから4時にはお帰りの許可を貰った私だった。
情けない。

投稿者 lib : 07:53 PM | コメント (0)

September 08, 2005

通勤電車

career2.gif 郊外の町に住んでいる。シティにある会社まで通勤時間は約1時間だ。

毎朝、同じ時間の電車を待つ、同じ顔ぶれがロンドン方面行きのプラットフォームに並ぶ。


この顔ぶれの中には数軒先に住む男の人がいるのだが、何年もの間、家から駅まで同じ道のりを同時刻に歩きながらも挨拶をしたことはなかった。誰かの紹介がないと、お近づきにはならないという、イギリスの典型的な人間関係である。

が、この人の奥さんが異様にフレンドリーな人で、ある日、通りかかった見知らぬ私に急に話しかけてきた。天気がどうの、という話だったが、適当におしゃべりをした。
と、翌日から急にその人から朝の挨拶をされるようになったのだ。

妻の友達(?)なら、僕の友達(?)ということらしい。ただし、長い会話をするまでには至っていない。もちろん名前も知らないままである。

私が「タイムスの君」と呼んでいるのはロマンスグレー(死語)の男の人だ。端整な顔をして、長身のスーツ姿の品のいいイギリス紳士。なかなか素敵なおじさんである。語源の通り、いつも新聞はタイムス。

一度だけ、奥さんらしい女性と一緒に立っていた。若くはないが、エレガントな美人。なかなかお似合いのカップルだ。

少し年上ながら、心ひそかに憧れているのだが、映画のように何かのきっかけで話を始める・・・なんてことは起こらないだろう。だいたい一度も声を聞いたことがない。話してみれば、渋いハンサムな顔からは想像もつかない妙に甲高い声だったりして、百年の恋も覚める可能性もある。これはこのまま、そっとしておくのがいいに違いない。


古着屋「チャリティショップの女王」なのは、白髪のボサボサ頭にベレー帽をかぶっている女の人だ。年齢不詳の雰囲気だが、とりあえず50歳の半ばくらいか。色々な服を着てくるが、いつも着古された10年以上も流行遅れのものばかり。

よれよれのコートはあちこちのボタンが取れたままなのに平気。真っ黒に汚れた「白のエナメル」のバックはファスナーが壊れて全開だが、ここ3年くらい、このバックをご愛用されている。履いている靴は例外なく、すべて踵がつぶれている。

毎日、電車に乗ってくるから、どこかで働いているのだろうと思うのだが、どうしてここまで貧乏臭いのか? 

帰り道で見かけたことがある。チャリティショップの中の品物を真剣な表情で物色していた。できれば早く新しいバックを買って欲しい。

さて、私はどう思われているのだろう?

私は毎日、朝シャンをするのだが、髪を乾かさずにそのまま出勤する。ドライヤーを使うと熱風で髪が傷むと信じているからだ。ま、時間がないせいもある。1時間後に会社に着く迄には乾いているのだが、プラットフォームに立つ頃はまだしっかり濡れている。

これは真冬も同じ。

(あのオリエンタルの女、冬でも濡れた髪で吹きさらしのプラットフォームに立っている。風邪をひかないのだろうか? 見ているだけで、こちらまで寒くなる。せめて冬の間だけでも、髪を乾かしてくれたらいいのに)

きっと、そう思われているに違いない。


                                                          続く

投稿者 lib : 01:46 PM | コメント (0)

August 23, 2005

イギリス人の同僚たち-その1

career2.gif  英国企業に勤めている。

イギリス各地にある関連会社を含めると700人くらいの小さな会社で、ロンドンには数ヶ所のオフィスがある。同じビル内で働くのは200人ほどだろうか。

いままでの階は全員がクライアントを持つ部署で、いつも華やかな雰囲気があった。

いかにも金融街シティのビジネスマンといった連中で、男なら仕立てのいいダークスーツにカラフルで鮮やかなシャツとネクタイ。ひねったデザインのカフスボタンにピカピカに磨かれた靴。いつもグルーミングされた髪に自信満々の笑顔。

女のほうはビジネススーツにスティレトーヒール。完璧なメイクで、口元には微笑みを目には闘争心を、というタイプに囲まれていた。

職場の雰囲気もいい意味でピリッとしていたのだ。

ところが最近、ビル内で引越しがあった。今までのところが手狭になったので、他の階の部署で余ったスペースに移らせてもらったのだ。

新しいオフィススペースはキャビネットも大きくなり、電話の回線も増えたものの、デスク周りの顔ぶれがずいぶん違う。同じ会社で働いていてもパーティや講習会でしか会ったことのない連中だ。

仕事上は関係ないが、同じスペースを使うので給湯室やコピー機で顔を合わせるようになる。


薫の君 (かおるのきみ)

50代の半ばだろうか。不細工とはいえないが、冴えないおじさんである。キャビネットあたりですれ違うと・・・匂う。独特の匂いがする。
最初は気のせいかと思ったが、毎回である。

そのうちこれは「加齢臭」、お年寄りの家を訪ねるとよくある匂いだと気づいた。日本人もイギリス白人も加齢臭は同じだということを発見。
それにしても、どのくらいの頻度でお風呂に入ったり、着替えているのだろうか?

独身で母親と二人暮しだそうだ。お母さんの「加齢臭」も一緒に家から持ってくるのかもしれない。

クリスマスパーティの席割りの話をしていた秘書が嘆く。臭いので誰も隣に座りたがらないという。私も堪忍してほしい。

話をしてみると温厚で、恵まれない子供のためのチャリティ募金なんかして、性格はよさそうである。
ガールフレンドもいないようなので、彼に興味のある方は私までご一報ください。


ミニスカート美人

一人はブロンド、もう一人はブルネット。美人でカービィな身体つき、おしゃれで趣味のいい服を着ている。

ほとんど毎日、ミニスカートにスティレトーヒールの靴。二人とも女の私が見ても惚れ惚れするほどのみごとな脚線美である。

バリキャリ(バリバリのキャリアウーマン)で仕事もできるし、部下の面倒見もいい。パブでは話を盛り上がらせるチャーミングな二人である。

が、問題は二人とも50代の後半であることだ。あの年でミニスカートにスティレトーヒールか。うーん。

しかし、職場の男性はきちんと二人を褒めてあげている。
「今日もとってもきれいだね。そのピンクのスカート、よく似合うよ」とかなんとか。
間違っても、
「ずいぶんXづくりしてるね」
(Xの伏字部分には「若貴騒動」の中から、一文字をお選びください。)
などとは言われない。

自分の服装ポリシーを貫く二人といい、女性は必ず褒めるという男たちの態度。これは日本のオフィスでは見られない光景かもしれない。


海水浴客

客商売の部門ではない人はスーツ姿でないこともある。私は10年も今の会社に勤めながら、スーツ以外で働いているのはメッセンジャーボーイ(郵便や書類を配る人)だけかと思っていた。

Tシャツあり、ポロシャツあり、夏なんかゴム草履もどきで会社に来るのもいる。服装規定があるのか、ジーンズはいないのだが、なんだかシティのオフィスには思えない雰囲気である。

スーツを着れば、それなりにエラソーに見えるイギリス人だが、カジュアルなシャツだとデブな腹回りがむき出しになる。

なんとなく視線がぽっこりした腹回りにいってしまい、そのユルそうな雰囲気に、
「こいつは仕事ができないのでは?」
などと科学的根拠のない疑問がわく。

(まさか妊娠?)
そう思わせる若い女の子もいるが、それ以上大きくならないところを見ると、その腹に入っているのは赤ちゃんではなく、ポテトやチョコレートらしい。

サマーホリディから帰ってきて、日焼けした顔をほころばせ、Tシャツにぽっこり腹の同僚を見ると、会社ではなく海水浴に来ている気分になり、労働意欲が著しく削がれてしまう。何とかして欲しい。


会社では日本人は私だけなので、ここに書いていることはバレないと思う。(たぶん)

でも、みんないい人たちです。(無理やりのシメ)
続く

投稿者 lib : 07:36 PM | コメント (1)

August 09, 2005

バーベキュー LiBホームページへ

career2.gif イギリスの夏といえば、バーベキューだ。

しかし、これを家でやるには手間がかかる。
まず人を呼んでも恥ずかしくないように、丁寧に庭の芝刈りをするところから始まる。剃り残りなし、という二枚刃かみそりの宣伝のチャッチフレーズが使える状態まで芝生を整える。
そして、重いバーベキューの燃料を買いにいき、肉だの野菜だのを大量に用意する。日本人としては、やはり「焼肉のたれ」も買っておきたい。サラダや野菜スティックを作らなければならないし、ビールだ、ワインだと冷蔵庫は満杯状態で他のものが入らなくなる。もちろん、夏の飲み物、ピムズも忘れるわけにはいかないだろう。

バーベキューといえば、男が料理するのがお約束だが、あまりの手際の悪さに思わず手を貸してしまうと、即、料理人奴隷に身を落としてしまうことになる。
煙にゲホゲホと咳き込みながら焼いた肉は他の人にすっかり食べられてしまい、みんながお腹一杯になってから、やっと残りの材料をコゲコゲになっている網の上で自分の為に寂しく焼く破目になる。おまけに、この頃になると雨が降ったりする。

皿をどうするか、という問題もある。普通の皿なら後で洗わなければならない。といってペーパープレートだとヘタっとなってしまって持ちにくい。使いにくいが後片づけの楽なプラスティックのナイフとフォークにするかどうかも同様である。

さて、油でギトギトになったバーベキューセット。さあ、どうする? 手間ひまかけてきれいにするのか、それとも、来年また新しいのを買おうと決めて、すっきりとそのまま捨ててしまうのか。

バーベキューはこのように多くの使役と選択を迫られる奥の深い料理である。

というわけで、私は自宅ではバーベキューはしない。だって、面倒なんだもの。

ラッキーなことに今年は会社が中庭のあるパブを借り切って、バーベキュー・パーティを開いてくれることになった。去年の夏はテムズのボートクルーズでダンスパーティだった。ウエストミンスターから出発して、ロンドン塔を過ぎ、テムズバリアーでターンして戻ってくるお馴染みのコース。それなりに盛り上がったが、料理はいまひとつ冴えなかった。ま、豪勢な料理の並ぶ屋形船じゃないんだから、仕方がない。

今年のパーティも希望者だけの参加なので、120名くらいらしい。この同僚たちもみんな私と同じく、バーベキューは好きだけど「面倒くさがりやさん」と見た。楽しみにしている。

投稿者 lib : 04:19 PM | コメント (0)

June 28, 2005

オー・ペア LiBホームページへ

career2.gif オー・ペアというのは、住み込みで家事や子守の手伝いをするためにイギリスにやって来る若い子たちのことである。年齢制限もあり、一種のワーキング・ホリディのようなものだろうか。昔は日本人にもオー・ペア・ビザが出ていたらしいが、今は廃止されているようだ。

1日に5時間程度働き、週休2日。自分の部屋をあてがわれ、食費もホストファミリー持ち。お小遣いとして、週給50−70ポンドが支払われる。仕事の内容は簡単な家事。家の掃除をしたり、ホストファミリーの子供の学校の送り迎えである。

私もずいぶんとお世話になった。

1年間にひとりずつ、7人の女の子が順番に私の家に住んでいた。国籍はクロアチア、チェコ、スロバキア。あのあたりでは大学に進学するのは大変らしく、(政治家や役人にコネがないと入学できないとか言っていた)高校を卒業すると、就職に役立つ英語を身につけるためにイギリスをめざすという。

オー・ペアの紹介業者から写真つき履歴書と手紙が送られてくる。候補者を選ぶと電話でインタビューをして、英語の能力をみる。

あまり英語ができない子では困る。ロンドンの希望者が多いので、私はたくさんの中から選べる立場だった。イギリスでも、ものすごい田舎だと、オー・ペアが行きたがらない。田舎に回されてくるのは、町中のホストファミリーが欲しがらない貧弱な英語力の子らしい。

日本人英語もいろいろと問題があるが、彼女たちの英語も楽しかった。

「私は自転車を運転したい。自転車を買ってください」

Rideではなく、Driveを使うところがシブイ。意味は通じるけど。

「歯を洗います」

Wash(洗う)ではなくて、Brush(磨く)を使いましょう。

「彼女が壊れてしまった。水が流れてくる」

彼女って誰? 誰から水が流れているの? と慌てると、洗濯機を指さしている。たぶん洗濯機は女性名詞なのだろう。

真夜中に国のボーイフレンドから電話がかかってくる。

「ごめんなさい。彼は兵役中で、この時間だと見張りに立っている兵舎の電話から、無料で国際電話がかけられるんです」

兵役?

「空襲があったときは、防空壕の中で家族の安否を心配しました」

空襲? 防空壕? 旧ユーゴスラビアから来た子たちには戦争の経験がある。みんな18歳くらいだったけど。

「英語はまだ苦手ですが、ロシア語ならできます」とスロバキアの子。

そう言われても、私のほうにロシア語の心得がないんですけど。

世界は広い、と思い知らされた。

それぞれのオー・ペアは箸の使い方をパーフェクトに習得し、日本のカレーの大ファンとなって、家族へのみやげにハウスバーモンドカレーの大箱とキティちゃんグッズを持ち帰っていった。

もうオー・ペアは置いていないが、週に2回ほどクリーニング・レディが来て、家の掃除をしてもらっている。それというのも、私は掃除をしようとすると頭痛がしたり、倦怠感が現れるという奇病にとりつかれているのだ。2時間で10ポンド。キッチンからバスルームまでピカピカにしてくれる。

現在のクリーニング・レディはポーランドの女の子とリトアニアのおばちゃん。最近、晴れてヨーロッパ連合の一員となり、ビザなしでイギリスで働けることになったからだ。

投稿者 lib : 02:26 PM | コメント (0)

June 14, 2005

パーソナル・トレーナーの巻 LiBホームページへ

career2.gif スポーツジムで「夏までにお腹をへこますシェイプアップ」セミナー(無料)に参加した。

7時過ぎのスタートまでに少し時間あったので、つい友達を誘ってパブに行ってしまい、遅刻した上にほろ酔い加減という状態で見学した。

翌日、ジムから電話が入る。

「きのうのセミナーはどうでした? 興味はありますか? もっと詳しく説明しましょうか?」

実を言うと酔っていて、内容をほとんど覚えていない。で、話を聞いてみることにした。

これは特別プログラムで、パーソナル・トレーナーによる個人指導だという。
パーソナル・トレーナーといえば、マドンナやJ−LOなどセレブが雇っているアレか? これで私もセレブの仲間入り、と思ったわけではないが、ちょっと興味がある。

で、ハウマッチ?

一時間40ポンド、最低5セッションでセレブのようにへこんだお腹はあなたのもの、ということだ。ふーん、全部で200ポンドか。これが高いか安いかは結果が出るかどうかによる。私はがんばりに欠ける人間だが、セコイので「高い金を払ったからには元をとらなければ」的な考えはよく効く。試してみることにした。

エクササイズは確かに効いた。衆人環視の中、へそ下までトレーニングパンツをおろしてお腹をむき出しにし、姿勢を正す長い棒を背中に押し当てられ、筋肉の動きを見るために腰にひもを巻かれるというマゾなトレーニングだったが、さすがに高い金を取るだけのことはあった(と信じたい)。

笑ったのはダイエットの方だ。

「完璧に同じものである必要はありません」という事だったが、2週間の短期集中メニュー(家庭調理用)がすごかった。

月曜日
朝食 いわしかサバをグリルしたもの。グレープフルーツサラダ。
昼食 「天然物の」鮭の蒸し焼き。グリーンサラダ。
夕食 ハリバット(タラの一種)のステーキ。温野菜。

普通の家庭です。シーフードレストランじゃないんです、うちは。

水曜日
昼食 バッファローか鹿肉のステーキ。蒸し野菜。

困ったな。近所で売ってるかしらん? 
「バッファローか鹿肉のステーキをお願い」などと肉屋に頼んで、
「今日はいいのが入ってますよ。腰肉あたりをお切りしましょうか?」と言ってくれるだろうか? 無理な気がする。

投稿者 lib : 05:25 PM | コメント (0)

June 07, 2005

スポーツジム 入門の巻 LiBホームページへ

career2.gif 大柄なイギリス人に囲まれて暮らしていると、自分が痩せていて、ほっそりと華奢な体型をしているような気になる。しかし、これは「環境のいたずらによる大いなる勘違い」というものだ。

その証拠に日本に帰国すると、
「どうしたの? そんなに太っちゃって!」と友人や家族から正直なコメントを聞くはめになる。

洋服を試着しようと、つい、いつもの習慣でSサイズの服を手に取ろうものなら、店員がダッシュしてくる。

「お客様はその・・・(しばし沈黙)・・・グラマーでいらっしゃるので、こちらの方がよろしいかと思います」

そう言って、Lサイズの服を手渡される。無理に着て縫い目がほつれたらどうするつもり? ということか。ごめん、私が悪かった。

というわけで、会社の近くのスポーツジムに通うことにした。

キャンペーン中につき入会金は無料(年中キャンペーンをしている気がするが)で月の会費は55ポンド。一年間はキャンセルできない。

目的は健康管理とシェイプアップだが、まったく下心がなかったとは言わない。

厚い胸板と二の腕がきっちり筋肉で盛り上がり、イギリス女の憧れのシックスパックと呼ばれる引き締まった腹筋をした男が、
「やあ、君も毎日ワークアウトをがんばっているね。もしよければ帰りにクィックドリンクでも?」
なんて白い歯を見せて微笑みかけてくるかもしれない。

ただし、男があんまり健康フリークで、
「いい店があるんだ。筋肉増強剤入りのプロティン・ドリンクがうまくてね。サラダはオーガニック野菜とフリーレンジの卵しか使ってないから安心だよ」
とか誘われたら、どうやって断ろう。

「それよりも、キリッと冷えたビールとカルビにビビンバのおいしいコリアン・レストランなんてどう?」などと答えると二度と口をきいてもらえないかもしれない。

しかし、そんな心配は杞憂に終わった。

私が通うのはランチタイムだ。ランニング、バイク、ウエイト・リフティング等のマシーンに自分のキーを差し込む。強度や時間が個人別に組まれたプログラムがコンピューター管理されている。それに従ってのエクソサイズが約20分。前後のストレッチ体操が15分で、軽くシャワーを浴びると、近くでサンドイッチかサラダを買って会社に戻り、ランチを済ませなければならない。これを1時間で消化しようとすれば、ナンパをしかけている暇はないのだ。

これがローカルのスポーツジムなら、もう少しゆったりとした時間が過ごせるのだろうが、ここはビジネス街のシティ。よく言えば目的意識が高い、悪く言うと気持ちに余裕がないジムかもしれない。

おかげで私も余計なことに気を散らされずに、健康保持にまい進できるということだ。

でも何故か、少しだけ悲しい。  

投稿者 lib : 02:04 PM | コメント (0)

May 26, 2005

お局

career2.gif もちろんイギリスの職場にも「お局様」は存在する。

古株で独身の社長秘書あたりが多い。オールドミス(死語)とか、この頃のはやり言葉なら負け犬などと陰口を叩かれる。


ベテランと呼ばれずに、お局と呼ばれる条件としては、こんな感じか?

1.長く勤務しているわりに、たいした仕事をしていない。

2.一目置かれているというよりは、敬遠されている。

3.新人に仕事を教えず、文句をつける。

4.どれほど不便でも、自分のやってきた方法、業者を決して変えようとはしない。

5.同僚の女性にかかってきたボーイフレンドの電話に異常につっけんどんに対応する。

6.インターネットやエクセル等、コンピューター関連が苦手。


私が入社したとき、お局様の最初の言葉が、

「コロネーション・ストリート、見てる?」

「え? いいえ」

「これから見るといいわ」

「はあ? はい」

私はほとんどテレビを見ない。しかも、コロネーション・ストリートのようなソープ・オペラは大の苦手である。そのままシカトしたが、どうも「コロネーション・ストリート友の会」があるらしい。

「ジョンの浮気、絶対に許せないわ。奥さんが病気だっていうのに」

などと真剣な顔をして言っているのだが、よく聞いてみるとテレビの話である。おい、自分の知り合いなのか? と突っ込みたくなるほどの力の入れようである。

おしゃべりはいい加減にして仕事しろよ。


私は日本関係の仕事をするために雇われたので、彼女との関わりが少なくて被害は少なかった。しかし、電話の応対をしたり、コピーをとったりするジュニア・セクレタリーはとにかく居つかない。電話の取次ぎひとつでも、気に入らないと皆に聞こえるように大きくため息をつく。機嫌が悪いと一日中ぶつぶつと文句の言い通しで、異様に元気な日は鼻歌を歌う。彼女のその日の気分がどちらに転ぶのかわからず、新人はピリピリとしっぱなしで、疲れてしまうのだ。


急な案件で日本に出張を命じられたときのことだ。お局様から内線電話が入った。

「日本に出張ですって? ねえ、もう少し考えて欲しいわね。来週は秘書の子が一人ホリディで休むじゃないの。人手が足りないときに勝手なことをされると困るわ」と言う。

遊びに行くわけではなく出張である。それに私は電話の取次ぎなどの秘書業務はしていない。それを説明したが、なかなか納得しない。私は電話を切り、その場で彼女のボスである社長の所に直談判に行った。優柔不断なイギリス男の典型で、女同士の問題に関わりたくないのが見え見えだったので、仕方なくお局様に直接かなり強い口調で抗議した。お局様を皆の前で泣かせてから、自席に戻った。

私を怒らせないように、というメッセージはしっかり伝わったらしく、それ以後、お局様は私に対して余計な事は言わなくなった。よくやってくれた、という他の女性たちの賞賛の声も聞いた。日本女性がおとなしいとか従順だのといった偽情報に騙されないようにね。50年前じゃあるまいし。

しかし、と私は不安になった。もしかして、私が新お局などと呼ばれてはいないでしょうね?

投稿者 lib : 05:12 PM | コメント (3)